江戸こぼれ話 笑左衛門残日録

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ケセラセラ 朽木一空と五林寺隆さん

2019年09月25日
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​    ​​忍草外伝8 枯草の最後っ屁  8​


  医者の門 暮れると しめてたたかせる  江戸千柳   ​
 ~ 開業したての医者、名医と思わせるため、人を雇って
​ 「高名な藪野先生、お願いします」と、戸をたたかせたそうだ~​​

「親分、てえへんだぃ、てえへんだぃ!」
 瓦版片手に自身番屋に駆け込んできたのは下っ匹の粂治だった。
 「どうしたい、粂治、なにがどうしたってんだい、」
 粂治、柄杓に水を汲んで、ぐいっと一杯飲んでから、瓦版をみんなが見えるように開いて、熊五郎の話を始めた。
 「天神の熊五郎一家と鬼政一家が、賭場の縄張り争いの喧嘩出入りで、熊五郎が島送りになったのは親分んも知っての通りだが、 その熊五郎が、あの黒河流庵の「よろず診療所」を支える金を出していたというんだ。 この瓦版に詳しく書いてある。だが、熊五郎が鬼政の一件で島送りになり、資金が枯渇しそうな、 よろず診療所は風前の灯だとさ、薬の仕入れもできねえ、もう「よろず診療所」もお終いだと書いてある。いつまでもつかという、町のもっぱらの噂ですよ。
 親分、あの「よろず診療所」が無くなっちゃあ、てえへんでしょうよ、、」
 それを聞いた岡っ引き伍助、頭をひねる、頭で汗をかくがいい筋が浮かばない。
 黒河流庵の「よろず診療所」の金の出処が気になって仕方がなかった伍助だが、天神の熊五郎が金を出していたことは最近になってわかってはいたのだ。
 だが、その天神の熊五郎をお縄にしたのは北町奉行で、その時、伍助も出張ったのだった。 なんだか、すっきりしねえ、複雑な気持ちが伍助の心に流れていた。
 「どうなっちまうんだい、黒河流庵の診療所、貧乏人が死んじまうよ、、」
 岡っ引き伍助は、本所見廻り同心の真壁平四郎から頼まれていた賭場泥棒の仕事も抱えていたが、 今は黒河流庵のほうが気になってしょうがない。
 「粂治、黒河流庵の診療所が気になってしょうがねえ、行ってくるか、このままじゃむしゃくしゃして、夜も眠れそうもねえ、」
 伍助と粂治が速足で柳原町の「よろず診療所」に着いてみると、心配してたのが嘘のよう、 いつもと変わらず、玄関先にまで貧乏姿の患者が並んでいた。
 「ちょいと、ごめんなさいよ、、」
 十手を振りながら伍助と粂治は黒河流庵のいる診察室に入った。
 「どうしましたかな、耳の具合でも悪くなりましたか、」
 「いや、先生、瓦版を読みましたか、町の噂じゃ、診療所がいつ潰れるかと、噂してるもんで、心配になりまして、、、」
 「それはそれは、できることをできる間やることですよ、熊五郎さんから頂いたお金はたしかにもうありませんよ、でも大丈夫、 お金は天からの廻りものですよ、熊五郎さんが島流しにあっても、ちゃんと、お金は届いています。天はちゃんと見てますから、大丈夫ですよ」
 伍助は飄々として、診察を続ける黒河流庵を見て、ますます尊敬もしたが、煙に巻かれているような不思議な気持ちにもなっていた。
 ひとまず安心して自身番屋に戻った岡っ引き伍助と粂治だが、番屋の中もまた大騒ぎだった。
 自身番に、酒臭い臭いをさせた瓢六爺さんに連れられて、お園が立っていた。
 昨日の夜遅く、お園の家の障子の穴から、十両と200文が投げ込まれていたというのだ。 そのお金を貰っていいのか、どうしたらよいのかわからずに、怖くて、お園は向かいの長屋の瓢六爺さんに相談し、一緒に番屋に来たのだった。
 「ご、伍助親分、正直者には花が咲くっていいますよね、この金は天からのお恵みだ、お園ちゃんが貰っていいお金ですよね、み、 見過ごしちゃくれませんか親分、お園ちゃん、この十両を鬼政に返さなきゃ、岡場所へ売られちまいまうんですよ」
 岡っ引きとしての伍助、また難問に頭を抱える。長屋の中に投げ込まれた金、 いってえ、誰が、何のために、どこから持ってきた金でぃ。
 どうすべきなのか、頭をぐるぐる回していると、番屋の中に居た者の眼が~お園を助けろ~と十手持ちの伍助に突き刺さる。
 「どうする、伍助親分!」
 伍助、お園の顔をじっと見る、生きていれば自分の娘の紗枝と同じ年頃のお園、そのお園が岡場所に売られる、そいつも耐えられねえね、
 「えいっ、俺は何にも聞かねえ、見ねえよ、その金、さっさと鬼政に返しちまいな、 もともと、お園の借金じゃねえんだ。
 そうだ、その金はお園のとっつあんの角助が置いていった金だ、野郎、賭場で稼いだのに違いねえ、そうに間違いねえ、なっ、そうだろうよ瓢六爺さん、」
 「そ、そうだったのか、そうだったんですね、さすが伍助親分、」

 お園と、瓢六爺さん、ぺこっとお辞儀をすると番屋を出た。
 お園は鬼政に十両の借金を返し、医者代として貰った十文、二十文に飴玉をつけて長屋の一軒一軒を回って返した。
 岡っ引き伍助も、お礼の飴玉と二十文を返してもらったのだった。
  つづく 朽木一空





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最終更新日  2019年09月25日 22時21分58秒
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