江戸こぼれ話 笑左衛門残日録

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月夜の傘 New! 朽木一空と五林寺隆さん

2023.01.31
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​​​  燻り侍  江戸詭計 9


​​  幸せな殿様でござります
​​
 崖淵藩では国元へ帰るための参勤交代の準備に忙しかった。
 ところが、芋野茂兵衛、扇菊三郎、橘千之助の三人部屋では、
 「おらあ、出羽に帰らんぞ、もうあんな田舎で
 しかも百姓仕事はいやだ。このまま江戸に残る。」
 「では脱藩して、無宿人になるのか?
 いまは江戸では帰農令が出ているほどで、無宿人狩りも行われているぞ」
 「わしゃあ、芝居小屋の山崎座の座長の市山団九郎が請人になってくれて、
 人別帳にも加えられる申し合わせになっているんだ、
 いいかい茂兵衛、見ておれ、おらあ、いっぱしの役者になるんじゃ」
 「わしも残る、わしには傾奇者(かぶきもの)が似合っておるんじゃ、 面白可笑しく生きることに決めたのじゃ、
 国元へ帰って、兄者の世話になって生きる部屋住みはご免じゃ、 田舎の隠し田での百姓仕事はわしには似わんぞ。
 茂兵衛はどうするんじゃ、柳橋にいい女ができたと聞いとるぞ それとも、郷里のおたよが捨てられぬか。」
「わしは、出羽へ帰る、出羽の白い雪が見たい、それに藩を裏切ることはせぬ、」
「茂兵衛よ、お主の耳はつんぼなのか?
 おたよはな、お殿様の許しを得て、桶屋の新吉と所帯を持ったのだぞ、
 もともとおたよは新吉のものだったのだ、おたよを恨む出ないぞ、」
  茂兵衛にとっては寝耳に水、青天の霹靂であった。
  すぐに、江戸留守居役の藩留守居役の田野倉右膳に確かめたが,
おたよと新吉が所帯を持ったことは嘘ではなった。
「こらえよ茂兵衛、殿様はな、武士が町人のものを奪うのが嫌いなのじゃ、
 お主が国元に戻っても居場所はないのじゃ。」
 ~もしかして、江戸へ行かせ、柳橋のおしのに合わせたのは、殿の詭計であったのか?
 そう考えれば辻褄があっていたのだ~
 菊三郎も千之助も藩を逐電して、江戸で暮らすという。
 帰る場所をなくした芋野茂兵衛も脱藩して江戸で暮らすしか道はなかった。
 もう、出羽の藩に戻って、隠れ田で鍬を担ぐ侍百姓をしなくてもいいのか。
 小屋で大根を燻らなくていいのか。もう燻り侍などと言われなくていいのだ。
 江戸で面白可笑しく暮らせばいいのだと、茂兵衛は涙を流しながら笑っていた。
 藩主深渕熊左衛門は争いのない、誰もが飢渇することなく、幸せに暮らしていける
 国づくりを目指していた
 理想の国造りのために邪魔になる不良侍は藩から追放するのは当然のことであった。
そのために毎年、参勤交代の時には、あれっ?と思われる侍が選ばれていたのだ。
 藩にとって厄介者の侍は参勤交代で江戸連れてゆき、江戸へ捨てることにしていたのだ。
 芋野茂兵衛や扇菊三郎、橘千之助の三人が藩から出奔するように  仕向けたのは藩の詭計であったのだった。謀られたり!燻り侍。
 帰りの参勤交代は気楽である、江戸を抜ければ、もう、格好つけることもなく、 まして、何日までに帰参しなければならぬということもない.
 貧乏行列で、下侍は馬小屋で寝ることもしばしばであったが誰も文句は言わなかった。
 参勤交代で江戸に一つ厄介な荷物を降ろして、奥羽までの15日間、殿様と燻り侍たちは和気あいあいで行列を進めた。
  奥羽の山奥には少々沢庵を燻る臭いが漂ってはいるが、
 崖淵藩という幸せな国があったとさ、、
  おしまい  朽木一空





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最終更新日  2023.01.31 10:30:08
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