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2023.01.08
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カテゴリ: 日常
爪が伸びてきたので、切った。
しゃがみ込んで、ぱちぱちと切った爪が床に置いたティッシュを通り越して、遠くに飛んでいく。

昔から、爪を伸ばすことが苦手だった。
薄く脆いというか、きれいに伸ばせなかったということもあるし、テーブルに手をついたときに、先に爪が当たることに苦手意識があった。
それでも、整えられた爪を見ることが好きだったし、なにも自分のものでなくとも、友人のものとか、雑誌に載っている女優さんのものでも構わなかった。
手というのはとても個人的な感じがするから。
日常生活とか衛生観念とか、そういうものが無防備に現れている。だから、興味があったのかもしれない。


ジェルストーンなどでごてごてな爪はあれだけど(それも個人の自由だとは思うが)、
伸びた爪というものは、ある種の攻撃性をはらんでいると気がする。

例えるなら、女特有の湿っぽいところではなく、カラッと乾いた潔い感じの子が好きだった。そしてそういう子は、一定期間群を離れる動物のように孤立することがある。
それがこうして、ああなってというふうに、その期間に彼女たちと仲良くなることが多かった。
大人になった今はそんな場面には出くわさないけど(大人になって本当によかったことだ)、そういう女の子たちの攻撃性というものは、やはり警戒を誘うのだろう。長い爪と同じで、わけのわからない防衛本能のようなものが、対象を遠のけるように働くのだ。


実際、私の防衛本能はポンコツだった。
過去付き合った人は、そういう子(A子としましょう)に告白した後、振られ、私に告白し、オーケーをもらった。
私はA子ととても仲が良かった。
恋人とのあれこれも、何故かまったく気にならなかっし、むしろ別れた後が本番という感じで、本当にA子と親しく付き合っていた。 思えば、私はその恋人よりA子の方が好きだったのだろう。とてもシンプルな理屈で。
本を読む子で、互いが内包する深い部分で私たちは繋がっている気がした。そういう人間のことは、なかなか忘れないものだ。


今となっては、大人のあれこれで連絡を取らなくなってしまったけど(悲しいですね)、
きっと今も、これからも会いたい人だと思う。
もう戻れない、過ぎてしまったもの。あらゆるものは通りすぎて、私たちは捉えることすらできない。いざ会ったとしても、多くの語るべきことがあるように思えるし、実際には、 語る必要があることなんて何ひとつないようにも思えるのだろう。


爪を切り、遠く飛んだ欠片を集めながら。
私、今でも本を読んでるよ。小説みたいなものも書いている。文字にまつわる仕事をして、四歳になる息子もいる。それでもね、根っこ部分というのはあの頃とまったく変わっていないんだよ。
教室で交換した藁半紙や、足首に巻かれたアンクレット、窓際の席から、見上げた空の青に溶けそうになったこと、そういうことが今の私をつくっているの、と。


爪はティッシュにおさまることなく、やはり遠くに飛んだ。私は立ち上がり、ゆっくりと欠片を拾った。





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最終更新日  2023.01.15 13:46:49
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