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2006年03月02日
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カテゴリ: 露野
 私は和琴を手に取り、そっとその表面を撫でて見た。なめらかな絹のような手触り。深みのある暗い色合いと、片隅に小さく付けられた螺鈿の唐草模様の装飾が、実に奥床しく美しい。

「しかし、この和琴はおそらく由緒のある物であろう。このような貴重な品を、私が受け取ってよいものかどうか。それに、どうして母御がこのようなものを持っておったのか」

「母は今でこそ田舎の土豪の妻女に過ぎませんが、元は京で生まれ育った者でございます。それに、母の父は参議にもなったお方で、決して身分卑しき者ではございませんでした。母自身も、幼くして父を喪った後、さる女宮様の御所で女房を勤めていたこともございます。この和琴は、母にそれを手ずから教えてくださった宮様が、母の手の上手をことのほか愛でて、特別に御下賜くださった物だとか。その宮様が亡くなられた後、母は勤め先を失って仕方なく私の父と結婚しましたが、いつも宮御所での優雅な生活とお優しかった宮様を懐かしんでおりました。その宮様はあなたの母上様の姉妹に当たられるのだそうです」

「それで、同じ血を引く私に宮の和琴を返そうと」

「いえ、それだけではございません。母は本当にあなたのことを想い、そして感謝していたのだと思います。おそらくは母は、自分がもう長くはないと悟った時、昔の華やかな頃を思い出したのでしょう。母は若い頃それは美しく、宮様の御所では母に言い寄る公達が引きも切らなかったそうです。何人もの殿方と浮名を流したものだと、いつか笑いながら私に話してくれたことがありました。きっと、母は死ぬ前にもう一度だけ、だれかと恋をして見たかったのでしょう。そして、その思い出をこの世の名残に、と思ったに違いありません。でも、母は今ではすっかり年老いて、昔の美しさの影さえないことをよく知っておりました。その上、今は自分の息子たちにすら疎まれ、落魄れて寂しく離れに押し込められた、名もない老婆に過ぎません。それであんな夢の話を。私は何となく母の心がわかって、切なくて、何とか母の最期の望みを叶えてやりたいと思ったのです」





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最終更新日  2006年03月02日 13時26分49秒
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