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2006年06月04日
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カテゴリ: 心あひの風
 兵衛尉の目に新たな涙が溢れた。

 このままずっと千手の側にいたい。

 いつまでも涙を流し、亡骸に土をかけることも出来ないでいる兵衛尉を見かねて、老僧が一人で墓をうずめてくれた。

 兵衛尉は庭の隅に植えられていた桃の若木を僧に請い、墓標のかわりに千手の墓の上に植えた。

 桃は千手の故郷の宋の国で、ことのほか好まれる花だという。千手はいつも故郷を恋うていた。この花の咲くのを見れば、きっと故郷に帰ったような気持ちになれるだろう。

「安らかに、お眠り」

 兵衛尉は千手の墓の土の上に顔を寄せ、かすれた声でそっと囁いた。

 そして、老僧がもう一度回向を傾ける中、兵衛尉は立ち去り難い思いを振り切って、武生の国府へ帰っていった。





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最終更新日  2006年06月04日 12時42分29秒
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