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2006年06月10日
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カテゴリ: 心あひの風
 老僧の庵からの帰り道、兵衛尉はふいに敦賀の海が見たくなった。

 千手が死んでから、敦賀には一度も行っていない。千手のいない敦賀を見るのが辛かったからだ。

 だが、越前を去れば、もう二度と敦賀へ行くこともないだろう。

 そう思うと、兵衛尉の胸に敦賀での千手との日々が甦ってきた。何も知らず、千手に甘え、日々を優しさに包まれて過ごしていたあの頃。賑やかな敦賀の町並み、人々のざわめき、陽光に輝くどこまでも蒼い海。全てが兵衛尉には懐かしかった。

 気がつくと、兵衛尉は馬に鞭を宛て、敦賀へ向かう街道へ馬を走らせていた。

 峠を越え最後の丘を上ると、敦賀の海が見えた。

 冬枯れたような暗い海だった。灰色の空を映した濃い鈍色の海に、寒々しい荒い白波が立っている。湊に舫う船影もない。海から吹く強い風は細かい氷の粒を含み、兵衛尉の額を打った。

 もうあの頃の輝かしさはどこにもない。

 冬の荒涼として空虚な海は、そのまま兵衛尉の心を映したかのようだった。



 兵衛尉は千手のいたあの遊女屋の高楼を思い出す。そして、初めて会った時千手が歌ってくれたあの催馬楽も。

 道の口 武生の国府に われはありと……千手、あの催馬楽の文句が、本当になってしまったな。

 敦賀の湊にいた千手は、今は武生に眠っている。この湊に吹くあいの風は、千手の故郷の宋の国まで渡って行くのだろう。どうか、千手の想いを届けてやってくれ。そして、いつかお前に乗せて故郷へ連れて帰ってやっておくれ。





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最終更新日  2006年06月10日 13時16分19秒
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