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2013年01月25日
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カテゴリ: きりぎりす
「御簾を上げておくれ。月が見たい」

 辺りを見まわすと、珍しく他の女房たちは誰もいない。先程まで待賢門院のお側に控えていた乳母の但馬殿も、局に下がってしまったようだ。嗜みにうるさい但馬殿がいなくなったので、待賢門院は端近に出てくる気になったらしい。

 堀河は頷いて御簾を巻き上げ、奥に灯っていた燈台を移そうとしたが、待賢門院は止めて言った。

「灯りはよい。今宵は月が明るくて、まるで昼間のようではないか」

 確かに、月明かりが庭の白砂に反射して、辺りはほのかに明るい。几帳の陰の待賢門院の顔さえも、はっきりと見える。

 堀河がまた簀子に腰を下ろすと、待賢門院は月を見上げながら問うた。

「さっきの歌は、恋しい男を想って詠んだ歌か」

「いえ」

 堀河が少し赤くなって打ち消そうとすると、待賢門院は真顔で堀河を見つめて言った。



 実能は獅子王のことを待賢門院に話したのか。堀河は待賢門院がその後の獅子王について何か知っているのではないかと思って訊ねた。

「女院様は、実能様から何かお聞き及びではございませぬか。その後……あの男がどうなったかとか」

「わたくしが聞いたのは、そなたが局に匿っていた男は源義親の名を騙る偽者だということだけじゃ。今は、また元の鴨院に連れ戻されておるとか」

 堀河はがっかりして俯いた。待賢門院は堀河を宥(なだ)めるように言った。

「想い人が連れ去られて、さぞかし寂しい想いをしているであろう。だが、たかが、名もない男一人くらい、何ということもないではないか。そなたには、そなたの歌にこがれていい寄ろうとしている殿上人が、まだ幾人もいると聞く。それに、その男とは、ほんのつかの間の逢瀬だったのであろう」

「それでも、わたくしにとっては、かけがえのない男だったのでございます」

 堀河は思わず強い口調でそう言ってしまった。

 獅子王は他の男と取り替えることの出来ない、堀河にとって特別な男だった。

 獅子王は、堀河が名高い歌人だから好きになってくれたのではない。それに、他の誰とも違い、獅子王の想いだけは正直で真実のものだと、堀河は信じることが出来たのだ。

 堀河もまた、そんな獅子王を心からいとおしく思った。人の想いに時間の長さは関係ない。

「わたくしは、歌詠みとしてのわたくしではなく、ただの一人の女としてのわたくしを、ただそれだけで愛しいと思って欲しかっただけでございます。あの男はその夢を叶えてくれました。ほんの短い間だったとしても、わたくしは初めて、本当の意味で人を想い想われる喜びを知りました。どうして忘れ去ることが出来ましょうか」



「わたくしにも、たった一人だけ、そんな男がいた」


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最終更新日  2013年01月25日 15時43分17秒
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