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2013年02月01日
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カテゴリ: きりぎりす
「白河院はもう亡くなったが、あの時の約束は今もわたくしを縛っている。季通殿は今もあの時のまま、この都のどこかでひっそりと暮らしておられるのだろう。でも、わたくしはもう二度と季通殿に逢うことは出来ぬ」

 待賢門院はふっと堀河の方へ目を向けると言った。

「わたくしがどれほどそなたたちを羨ましく思ってきたか、そなたは考えたこともあるまいな。そなたからみれば、わたくしは栄耀栄華を極め、どんな望みでも叶えられる、わがままな女に映るであろう。確かに、わたくしは白河院に愛しまれ、湯水のように金銀を費やして育てられ、ついには国母という女の身では最高の位にまでついた。しかし、本当は何一つこの手にすることはできなかったのじゃ……わたくしが心から望んだことは、何一つ」

 待賢門院は西の対の方を見やった。そこは、白河院がお亡くなりになった場所だ。

「白河院はわたくしを守り、愛し、全てのことを教えてくださった。わたくしにとって、父であり、夫であり、師でもあった。誰もがわたくしのことを白河院にそっくりだと言う。物言いや立ち居振る舞い、諸芸の好みから性格まで、何もかも。白河院はわたくしの全てを創り上げてくれた。白河院なくして今のわたくしはない。だから、心から感謝はしている。しかし、わたくしに自由だけは与えては下さらなかった。そなたたちは、自由に生きていける。好きな相手に恋をし、結婚し、子供を育て……そなたのように、恵まれた歌の才を手に、男に頼らずに生きていける女もいる。わたくしは、白河院を写した、ただの人形。これから先も、おそらくずっと……」

 待賢門院は夜露に濡れて輝く月影の庭を眺めながら、ふっと歌を呟いた。


今はただおさふる袖も朽ちはてて心のままに落つる涙か


(あなたを失ってしまった今は、涙を押さえるべき私の袖も、長い間涙にひたされたために朽ち果ててしまいました。それで、押さえることの出来ない涙は、私の苦しい胸のうちから、ただそのままに零れ落ちるだけなのです)


「これは、季通殿がわたくしに送って寄越された歌じゃ。別れてから一度だけ、季通殿は伝手を頼って、密かにわたくしに文を寄越された。それには、ただ一首、この歌だけが書かれてあった。文は人に見られてはならぬとすぐに焼いたが、歌は何度も口ずさんで空で覚えている。わたくしに残された形見は、ただこれだけ」


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最終更新日  2013年02月01日 15時56分46秒
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