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2015年11月21日
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カテゴリ: 国内「た」の著者
仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて…。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。(「BOOK」データベースより)

谷瑞恵『思い出のとき修理します』(集英社文庫)
たに谷瑞恵・思い出の時修理します.jpg

◎シャッター街の小説



 そこは津雲神社通り商店街の中にあり、斜め向かいには飯田時計店があります。津雲神社通り商店街は、駅前の開発が進み、おいてきぼりになった寂れたところです。ほとんどの店は、シャッターを下ろしています。

 飯田時計店は2代目の秀司が、営業をしています。しかし小売りはしておらず、もっぱら修理を専門にしています。この店のショ-ウィンドーには、祖父の代から飾られているプレートがあります。そこには「おもいでの時 修理します」と銀文字で刻まれています。本当は「時計修理します」だったのですが、子供のいたずらで「計」の文字を失ってしまったのです。祖父はそのまま、飾りつづけていました。

 谷瑞恵は、ライトノベルの作家でした。本書は一般向けに書いた、初めての作品です。それが大ヒットしました。何となく癒されるほのぼのとした作品。『思い出のとき修理します』(集英社文庫)は、片田舎の小さな物語です。

 そのあたりについて、著者自身のインタビュー記事を紹介させていただきます。

――コバルト文庫でずっと長編シリーズを書いてきたので、頭を切り替えて違うものを書いてみたくなって、それで一般向けのお話を書いてみたい、こんなのはどうでしょう、と文庫編集部さんに相談したら書かせてもらえることになりまして。(『ダ・ヴィンチ』2013年11月号より)

 祖父の年代からある、プレートの文字に違和感がありました。「おもいで」ではなく、「おもひで」としてもらいたかったと思いました。父親ではなく、祖父が置いたプレートです。

 主な登場人物は、時計店の飯田秀司と津雲神社の息子の太一だけです。ストーリーはわかりやすく、披露するまでもありません。『思い出のとき修理します』は、現在シリーズ3冊まで文庫出版されています。第3作は膨らみの少ない、パンのようです。発酵時間が不足しているのかもしれません。したがって推薦作は、第1作に限定させていただいています。

 シャッター通り商店街なので、賑わいがないのは仕方がありません。私がシリーズ第2作『思い出のとき修理します2・明日を動かす歯車』(集英社文庫)を手にしたのは、ガラガラとシャッターが開く音を聞きたかったからです。ねじめ正一『高円寺純情商店街』(新潮文庫)のような、賑わいの兆しを求めていたのです。ところが期待は裏切られました。

 仕方がないかな、と思います。谷瑞恵が描きたかったのは、商店街ではなく若い2人の主人公だったのですから。谷瑞恵は現在、「異人館画廊」シリーズ(集英社文庫)を発表しています。まだ第1作しか読んでいませんので、断言はできません。ただし「思い出の時」シリーズよりも、ずっと手ごたえを感じています。
(山本藤光:2015.05.07初校、2015.11.20改稿)





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最終更新日  2017年10月11日 03時34分39秒
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