山本藤光の文庫で読む500+α
空白 216
妙に知(明日)の日記 1580
新・知だらけの学習塾 564
新・営業リーダーのための「めんどうかい」 358
完全版シナリオ「ビリーの挑戦」 261
知育タンスの引き出し 317
営業の「質を測るものさし」あります 104
のほほんのほんの本 386
乱知タイム 71
国内「あ」の著者 24
国内「い」の著者 28
国内「う」の著者 11
国内「え」の著者 5
国内「お」の著者 21
国内「か」の著者 21
国内「き」の著者 9
国内「く・け」の著者 14
国内「こ」の著者 18
国内「さ」の著者 17
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国内「て・と」の著者 14
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国内「にぬね」の著者 5
国内「の」の著者 6
国内「は」の著者B 13
国内「ひ」の著者B 12
国内「ふ・へ」の著者A 10
国内「ほ」の著者A 7
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国内「み」の著者 22
国内「む」の著者 15
国内「め・も」の著者 10
国内「や」の著者 14
国内「ゆ」の著者 3
国内「よ」の著者 10
国内「ら・わ」行の著者 4
海外「ア」行の著者 28
海外「カ」行の著者 28
サ行の著作者(海外)の書評 23
タ行の著作者(海外)の書評 25
ナ行の著作者(海外)の書評 1
ハ行の著作者(海外)の書評 27
マ行の著作者(海外)の書評 12
ヤ行の著作者(海外)の書評 1
ラ・ワ行の著作者(海外)の書評 10
営業マン必読小説:どん底塾の3人 56
笑話の時代 19
「ビリーの挑戦」第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む 124
知だらけの学習塾 105
銀塾・知だらけの学習塾 116
雑文倉庫 44
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■ユゴー『レ・ミゼラブル』(全5巻、新潮文庫、佐藤朔訳)わずか一片のパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになった男、ジャン・ヴァルジャンの生涯。19世紀前半、革命と政変で動揺するフランス社会と民衆の生活を背景に、キリスト教的な真実の愛を描いた叙事詩的な大長編小説。本書はその第一部「ファンチーヌ」。ある司教の教えのもとに改心したジャンは、マドレーヌと名のって巨富と名声を得、市長にまで登りつめたが……。(アマゾン内容案内)◎人道主義の代表的な作品 幼いころに『ああ無情』というタイトルの本を、読んでいる人は多いと思います。最近の児童書では『レ・ミゼラブル―ああ無情 (新装版) 』 (講談社青い鳥文庫)となっていました。岩波少年文庫では『ジャン・ヴァルジャン物語』 (上下巻)というタイトルになっています。 文藝春秋編『少年少女小説ベスト100』(文春文庫ビジュアル版)では、『レ・ミゼラブル』が第17位になっています。『レ・ミゼラブル』は子ども向けとしても、不動の地位を獲得している作品といえます。また『レ・ミゼラブル』は、「銀の食器」のエピソードのみに編集され、小学生向けに教科書に掲載されてもいるようです。 新潮文庫で全5巻という長い作品ですので、つまみぐいなら子どもの教科書や児童書にふれてみてください。なぜなら『レ・ミゼラブル』では、つぎのくだりが骨格ですので。 ◎叙事詩的な小説 1815年、司教館をひとりの男が訪れます。男は46歳のジャン・ヴァルジャン。貧困に耐えられずパンを盗み、その罪で19年も服役していました。出獄した彼にたいして世間は冷たく、宿泊も食事もままならない状況でした。 そんな彼を、76歳の司教は暖かく迎えてくれます。しかしジャン・ヴァルジャンは、司教が大切にしていた銀の食器を盗んでしまいます。翌朝、彼を捕らえた憲兵にたいして、司教は「食器は私が与えたもの」といってかばいます。 町をでたジャン・ヴァルジャンは、貧しい少年と出会います。そして少年の全財産である銀貨1枚を強奪します。少年は泣きながら走り去ります。少年の後姿を見送りながら、ジャン・ヴァルジャンの胸のなかでなにかが炸裂します。彼は号泣し、突然さとります。それまで社会にたいして憎悪をいだいていたジャン・ヴァルジャンは、まじめな人間として生きていくことを誓います。 『レ・ミゼラブル』について、『新潮世界文学小辞典』では、次のように解説しています。 ――著者が抱いていた人道主義や、「この世に絶対的な悪は存在しない」という彼一流の楽観的な世界観、それにキリスト教的な愛をまじえて書き上げた作品である。主人公の超人的な性格、激しくうたい出すような調子によって、叙事詩的な小説になっている。 人道主義とは「人種間や階級間の差別をなくし、人類全体の幸福の実現を最大の目的とするもの」です(三省堂新明解国語辞典)。ロマン・ロラン(推薦作『ジャン・クリストフ』全5巻、岩波文庫)や日本では山本有三(推薦作『女の一生』上下巻、新潮文庫絶版)などが、人道主義作家といわれています。 あたかも「V」の字のようにジャン・ヴァルジャンの贖罪の物語は、「銀の食器」と「貧しい少年の銀貨」以降からはじまります。悪から善。まるで別の物語のように、新たな幕があけられるのです。 ◎前科者は社会復帰が認められていない時代 数年後、ジャン・ヴァルジャンはマドレーヌと名前を変えて、実業家となります。彼はかっての司教のように私財を投げ出して、市や貧しい人々のために寄付をします。学校をつくり、病院をつくります。市を豊かにした功績により、彼は市長に任命されます。 前科者は社会復帰が認められていない時代です。ある日ジャン・ヴァルジャンは、馬車の下敷きになった老人を助けます。とてつもない怪力で、馬車をもちあげたのです。それを警視のジャヴェールに、見られてしまいます。警視は少年から銀貨を奪った罪などで、ジャン・ヴァルジャンを執拗に追っていました。ジャヴェールは、マドレーヌ市長がジャン・ヴァルジャンではないかと疑います。 そのころある前科者が、ジャン・ヴァルジャンだとして捕えられます。それを知った本人は一晩悩みぬいたすえに、自らジャン・ヴァルジャンであると正体を明かします。彼は捕えられます。しかし彼には、一刻も早く助けなければならない人がいました。 不幸な星のしたに生まれた、コゼットという娘を救いださなければなりません。それは死の床で交わした、母親との約束でした。ジャン・ヴァルジャンは脱獄を試み、コゼットを救出します。彼はコゼットとともに、パリでひっそりと暮らします。コゼットは美しい娘に成長します。 しかし警視ジャヴェールは、追跡の手を休めません。ジャン・ヴァルジャンとコゼットが散歩しているとき、マリウスという青年に出会います。コゼットはマリウスに恋をします。ジャン・ヴァルジャンは嫉妬に苦しみ、マリウスを憎悪します。 そして物語は終局へと向かいます。ここから先については、触れないほうが賢明かと思います。 鹿島茂に『「レ・ミゼラブル」百六景』(文春文庫)という著作があります。19世紀の美麗な木版画230葉から106のシーンを抽出してはさみこまれた、『レ・ミゼラブル』の解説書です。『レ・ミゼラブル』をお読みになった人には、感動を新たにしてくれるすばらしい1冊だと断言できます。(山本藤光:2014.10.11初稿、2018.01.03)
2015年01月31日
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