ホスピスの日々を共に生きて～せめて旬の野菜果物ジュースが飲みたい

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August 2, 2017

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カテゴリ：ホスピスの日々を共に生きて～

平成２８年８月２９日（月曜日）　

ホスピス７日目（午前中）

５時に目が覚める。おはようmawakoと言っている。昨日よりは少し調子がよさそうです。

朝６時９分　看護師来室　（朝の様子見）

Ｓ看護師が来室、Ｓ病院からここへの転院の経過や、Ｓ病院でのショッキングな出来事、

ホスピスでの生活、食べること、眠ることなどについて長々とおしゃべりしました。

小さな声でとぎれとぎれながら話しました。ボイスレコーダーに残る夫の声を拾ってみます。

夫はあまり親しくない相手と話すときにはとても丁寧に話す人でした。相手が目下であっても、

どのような仕事の方であっても相手に尋ねたりお願いしたりするときには礼儀正しく接する人

でした。最初からなれなれしく親しめない性格なのでつい、他人との会話もこうして硬い感じに

なってしまいますが、この時の夫も看護師に対して敬意をもって接し、何とか自分の想いを

伝えたい、願いを聞き届けてほしいという切実感が伝わってきました。

夫は弱しい声ながらはっきり話し始めました。

飲むこと、食べることの指示はそのうちあるのですか？

「皆さんここに入られて私と同じような生活をしている人もご自分で立って歩いて
いらっしゃるのですか、点滴やりながら、ぶら下げながら立って歩ていらっしゃるのですか。
僕は今のところ先生から指示が出ているわけじゃないですよね。ごはんを食べていいとか、
水を飲んでも良いとかその指示が出るまでは我慢して食べないでいるわけですがやっぱり
そういう指示がそのうちあるのか、そういうことがやっぱりなくて終わってしまうのか、
その辺はどうなのかなって　思っているのです。」

「 終わってしまうのか 、」この言葉に苦しくなりました。

夫は「食べたいものも食べられずに死んでしまうのだな～」と想っているのだろう。

日ごろから食べることができなくなればそれは死への旅たちが近づいていることだといつも

私に話している夫でした。その夫の切なさと生への意欲を絶たれていく絶望感を夫は

受け入れようとしているのです。

看護師は今食べたいものはあるのかと聞いてくださいました。

「そりゃたくさんありますよ、僕が先生にお願いしたのは肉や魚をどっさり食べるという
そういうような希望はもっていません、僕はもともと肉や魚を希望する方じゃないのです。
僕が生きている間に食べられるようになるのであれば高望みはしないけれど何かその時の
旬の野菜とか果物を家内にジュースを作ってもらい思い切り飲みたい、それができたら有難い、
と言ったのですがＯＫが出ていないのです。」

ジュースを飲みたいという悲痛な願いを切ない想いで聞いていました。

私の高血圧対策としてスロージューサー(低速ジューサー) を利用しておりました。

夫が健康だった時にはスーパーに行くと夫自らがあれもこれもとたくさんの果物や野菜を

買い込んでジュースの素材をいろいろ工夫してくれていました。

病気になってからは腹にもたれるからと言って多くを飲むことを拒みましたが上澄み液を少し

飲み、野菜の味が強すぎ、この果物は甘すぎなどと味のコーディネーター役でした。

旬の果物、野菜を使ったジュースを思い切り飲みたい これが夫のささやかな願いでした。

看護師はＯＫが出ない理由をヘルペスとおなかの通りの方が問題だと思うと説明しました。

「はい、わかりました。」という夫の返事を私は哀しく聞いていました。

寝てばかりでいいのですか？

「それからもう一つ聞きたいのは眠ることが多く、気が付けば寝てしまっている。
こんなに寝てばかりいたらだめだなと思う。起きてちゃんとしていなければだめなんだと
現役時代の感覚になってね。寝ていてもいいのか、起きていなくてもいいのか、

自由に寝ていてもいいんだよと言って頂けるのか、
それともできるだけ寝ないで起きているようにして
その代わり夜きちんと寝るようにした方がいいという見解なのか、
眠たくてそれを我慢しているとか眠たいのに眠れないとかそんな悩ましいわけではないのです。
眠くないのに寝ていてもいいのかな～、その辺を聞かせてもらいたいのです。」

看護師は「口の汚れを取った方が話しやすいと思うので、それを先にやりませんか？」

「続きはそれからまた聞きますよ」

「ホスピスへ来る前に大きなショックがありました。」夫はまた話し始めました。

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