北朝鮮で穀物価格が上昇…制裁影響「庶民が犠牲」の危険性も
2017
年 9
月 14
日 高英起の無慈悲な編集長日誌
国際社会の制裁により北朝鮮国内でガソリン価格が高騰していることはすでに本欄で伝えたが、穀物と生活必需品の価格も上昇していることが、北朝鮮国内のデイリー NK 情報筋の証言でわかった。
このような現象は、 11 日午後(現地時間)に国連安全保障理事会で原油、石油精製品の輸出に制限を設けた対北朝鮮制裁決議 2375 号が採択される前から起きており、今後の推移が注目される。
貧富の格差が問題
物価上昇は、非合法な取引も含め貿易が活発に行われていた中朝国境地帯でも起きている。両江道のデイリー NK 内部情報筋は、今までの制裁ではコメ価格に大きな変動はなかったが、今回は様子が違うと伝えた。
トウモロコシ 1 キロの価格は 8 月末の 1900 北朝鮮ウォン(約 25 円)から、今月 11 日には 2700 北朝鮮ウォン(約 35 円)まで上昇した。収穫期を迎えたにもかかわらず上昇しているため、さらなる上昇が予想されると情報筋は述べた。
また、平壌、平安北道の新義州、両江道の恵山(ヘサン)でのコメ 1 キロの価格は、先月末には 5800 北朝鮮ウォン(約 75 円)だったが、今月 5 日には 6000 北朝鮮ウォン(約 78 円)を突破し、上昇が続いている。
さらに江原道の内部情報筋によると、 1 本 500 北朝鮮ウォン(約 6.5 円)だったミネラルウォーター(商品名「シンドク・センムル」)の価格は 2 倍に、 1 丁 1100 北朝鮮ウォン(約 14 円)だった豆腐が 2 割ほど値上がりしている。
価格上昇の原因としては次のようなことが考えられる。
まずは売り惜しみだ。ガソリン価格の上昇を受けて、より値段が上がってから売ろうと売り惜しみをする商人が続出し、市場での品薄がさらなるガソリン価格の上昇をもたらしているが、穀物や生活必需品でも同様の現象が起きているというのだ。
情報筋によると、一部の商人は当局の監視の目をかいくぐって中国の業者に携帯電話で連絡し、制裁対象品目や価格動向について情報を聞き出している。物価上昇で一儲けしようと考え、より儲かる品目を物色しているということだ。
次に考えられるのが凶作だ。今年の北朝鮮では、春の干ばつ、夏の大雨で農作物の生育状況がよくないと伝えられている。それにより供給量が減ったことが考えられる。
さらに一部では、当局が供給量をわざと減らしている可能性を指摘する向きもある。原油同様に、食糧も備蓄に回しているというのだ。
米政府系のボイス・オブ・アメリカ( VOA )は、中国の海関総署の資料を引用し、 今年 7 月に北朝鮮が中国から輸入した穀物の量が、前年同月比で 720 倍になったと報じているが、価格上昇は、これらが市場に放出されず、備蓄用に回っていることを意味すると思われる 。
北朝鮮は、大量の餓死者を出した 1990 年代の「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉以降、食糧事情が大幅に改善した。しかし、国家による配給システムは破たんしたままで、庶民は現金で食べ物を買わなければならない。
国民経済のなし崩し的な資本主義化が進行し、貧富の格差が広がっている今、貧困層は食べ物の価格がわずかに上昇しただけでも大きな影響を受ける。
また、庶民の生活を顧みない独裁体制が、身勝手な政策を継続し、そこに金正恩党委員長の未熟さによる失政が重なれば、北朝鮮の人々の身にいわれなき悲劇が起きる危険性もある。
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