歌 と こころ と 心 の さんぽ

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2018.11.07
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カテゴリ: みそひともじ

♪ 人の子が畏怖と畏敬を知り初める大蟷螂の往生の際





 塀の上にカマキリが居た。雌のオオカマキリらしい。産卵を終えたあとらしく、恍惚の中に余生を送るさ中なのかあまり動かない。しかし、案外しっかりしていて、まだ暫くは生きていそうな・・。
 艱難辛苦を乗り越えて、生き延びてきた立派なプレイングマンチス。無事に子孫を残す大役を終え、3-4月からの一生を思い起こして感慨にふけっているのか。臨終前の最も満ち足りたひと時なのかも知れない。
 風邪で微熱があり咳も少し出るので保育園を休んだらしい孫が、何時もより早めに来ていた。良い機会なので近くで見せてやろうと、捕まえて家の中へ。

 子どもは親の影響をどうしたって受ける。ママが大の虫嫌いなので当然その波動が伝わって、虫が恐いと感じている孫は触ろうとしない。ちょっと距離を置いて眺めるばかり。
 何か反応するのを期待して、「こんにちはー」とか言って手を振って見たりする。子どもなりに畏敬のようなものを感じているか。想定した結界を越えようとはせず、おずおずと畏まっている。

 写真を撮るからといって傍に座らせる。その演出を伴った写真撮影には素直に応じてすまし顔。


見つめ合ってる

 「触ってごらんよ」「あまり元気がないんだから、怖くなんかないよぉ」
 触って見せても、鎌を振り上げたりせず動作も緩慢だ。威嚇するのを無理やり二本の鎌を同時に掴んで捕まえるところなんかを見せてやりたいが、それも叶わない。

 だめだ。興味はあるんだけど何となく手が出ない。カマキリも危険を感じないのか、命を見切った強みからか、ジッとして何の所作もポーズも見せない。



 孫がいなくなると、こちらのカメラマンに危険を感じたのか或いは親愛の情が湧いたのか、その三角の頭をこちらに向けた。
 この三角頭が非常にコワくて口に出すのも悍ましいと言って、顔を引きつらせる男を知っている。その彼の前世は何だったのかとても知りたい。が、今はどうでもいい。

 「わたしの よせいを じゃま しないで ください」そう言っている様な、悲し気な眼差し。



居心地は良さそうだと感じているか・・

 「このまま、ここで逝ってしまってもいいかもしれない」なんて考えている様な風情が、この写真にはある。生を全うし、充実感に包まれている姿はなんか美しいじゃないですか。手厚く葬って上げたいものだ。

 「虫かごに入れてほしい」と孫が言い出した。興味が湧いたらしく、家に持ち帰りたいらしい。虫かごは生憎手元にないので、代わりになるものを探す。アオスジアゲハが羽化したこの容器に入れてみよう。



写真は瞬間の表情を逃さない。

 カマキリの大きさの割に容器が小さい感じ。カマキリも入るのを拒否して足を踏ん張って、いくら入れようとしても入らない。このカマキリの抵抗に何かを感じている孫。
 この顔に現れているのは、幼児の内奥に生まれつつある畏怖と畏敬のない交ぜになった、人としての感情の始まりかもしれない。




 この後、私はこの場を離れていた。
 孫が「帰るよー」というので、階下に降りてみると靴の入っていた段ボール箱をかざして、「ここに入れたよ。持って帰るんだー」と、嬉しそうな声でいう。
 「そうか、イイねぇ」「ママにも見せてやってねー」
 「はーい」



 日本には15種ほど生息するカマキリ。その最大種がオオカマキリ。
 名前の通り、他の種類のカマキリと比較しても大きめのサイズで、オスが68~90mm、メスが75~95mmほどになる。
 一説によると、卵から産まれたカマキリが成虫になれるのは僅か3~4%だそうだ。4月~5月にかけて孵化し、度重なる脱皮を繰り返して8月頃に最後の脱皮をして羽化し、成虫になる。



 羽化から1~2週間経った個体は交尾を始めるそうで、オスにとっては正に命懸けの交尾で、メスの機嫌と空腹の加減など状況によっては食べられてしまうことも少なくない。
 交尾、産卵を経て10月~12月に死んでしまう。
 産卵を終えると力を出し尽くしてしまったのか元気がなくなります。ほとんど移動することもなく、この時期は同じような場所でじっとしているのをよく見かける。



 世界にはおよそ2,400種類のカマキリがいるらしい。その形態は様々で擬態のものも多く、昆虫の世界は本当に奥深くて、興味が尽きない。







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最終更新日  2018.11.07 09:56:08
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◆2006年5月8日よりスタートした「日歌」が千首を超えたのを機に、「游歌」とタイトルを変えて、2009年2月中旬より再スタートしました。
◆2011年1月2日からは、楽歌「TNK31」と改題しました。
◆2014年10月23日から「一日一首」と改題しました。
◆2016年5月8日より「気まぐれ短歌」と改題しました。
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