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「何処へ行かれる」「江戸では、若いものが待っておりやす」又之丞の声で、襖が開き雪姫が現れます。又之丞「兵部、貴様の目は節穴ではあるまい。よく目を開けて二人の姫を見比べる がよい。何れが真の雪姫か・・・どうじゃ」兵部が「他人の空にということもある」とうそぶいた時、雪姫と名乗っていた早苗がいたたまれず、内膳正に「申し上げます。私はまさしく偽りの者、まこと、田島主馬の娘早苗にございます」、そして恐ろしいことは止めてほしい、耐えられないと主馬に訴える早苗めがけ兵部が「馬鹿者」と小柄を投げます。早苗は千代姫に詫びを言いながら息絶えます。それを見て主馬もその場で切腹します。又之丞「奸賊、馬場兵部、もはや逃れぬところだ、武士の情けいさぎよく自決せい」(余分なことですが・・江戸っ子は「ヒ」と「シ」の発音の区別が難しい・・・この時の「兵部(ヒョウブ)」が橋蔵さま江戸っ子のため、気をつけているのですが「ショウブ」と聞こえてしまっていますね・・ごめんなさい)稲垣が又之丞に斬りかかります。永山も斬りかかろうとした時、雪姫がかんざしを投げます。 「出会え、出会え」と声がかかった時、姫の姿を脱いだ吉三がいます。(時代劇っていいですよね・・お姫様の髪型から若衆の髪型になってもおかしくはない、違和感はありません)吉三は、兵部と稲垣達に、扇山まで乗り込んだのは悪事を暴く為と、吉兵衛の仇を討つためだと、「分かったらこの長脇ドスを受けてみろ」で万事大立回りとなる体制が出来上がります。(又之丞も襷を掛けていつでもと羽織を上に羽織っている態勢になっています)馬場兵部を追いかけての立回り(橋蔵さま得意の休みなく動いての立回りです) 吉三は永山と稲垣を討ちます。そして、又之丞も兵部を追い詰め斬ります。 吉三に駆け寄る又之丞、吉三は吉兵衛の位牌に向い仇を討ったことを報告します。そこへ、千代姫がやって来て又之丞に声をかけます、又之丞「おう、千代姫殿」吉三を少し気にしながら、又之丞千代姫のところへ走り寄ります。 千代姫「御懐かしゅうございます」又之丞「逢いとうござった」千代姫「千代も、あなた様のお出でになる日をどんなにお待ち申したことか」二人は、手を握りあいます。分かって入るのですが、又之丞に思いを寄せた吉三には辛いことでした。 その吉三がそこを立ち去ろうとした時、又之丞が「お吉さん」と呼び止め「そなたの姉、雪姫君だ」と千代姫に言います。千代姫が吉三に「姉上様」というと、吉三は「お姫様、あっしとおめえさんは、姉妹でもなんでもねえ」と・・・その吉三に、又之丞もどうしたことかと。 そこへやって来た内膳正にも雪姫ではないと言うのです。双子だと思うから、お家に波風が立つ。「雪姫という人はもうこの世にはおりません。あっしは、江戸屋の二代目吉三郎で・・ご免なすって」と言う吉三に又之丞が「何処へ行かれる」といいますと、「江戸では、若いものが待っておりやす。どうかいつまでもお姫様を可愛がっておくんなせい」と言う吉三。金八は吉三の気持ちが分かっているだけに辛そうです。又之丞も吉三の気持ちを分かっているのではないでしょうか。(いや、分かってやってほしい) 赤とんぼが飛ぶころには江戸の秋祭り、お揃いで祭り見物においでなすって・・・と言って吉三は行ってしまいます。江戸の秋祭りです。山車に乗って歌を歌う吉三がいます。金八が、祭り見物に来ている又之丞と千代姫を見つけます。金八が吉三の様子を心配しています。二人の姿を見て泣いている吉三。金八に「泣くもんけい、こんなうれしい日に泣いてたまるけい。二人ともあんなに嬉しそうじゃねえか」 身分の違いもあるし、まして扇山には許婚がいることを分かっていても、女として神月又之丞に恋心を抱いた江戸屋吉三郎の想いも、又之丞と妹千代姫の幸せを願って・・・吉三の淡い初恋も秋祭りと共に吹っ切れたでしょう。でも、片思いはちょっと悲しいですね。(完)ここで、お話すること・・・余り触れないほうが・・・いいのでしょうが、「花笠若衆」の映画を見ていて、ラスト祭り山車を見ている千代姫と又之丞のところです。顔が映し出されるところは、勿論ご本人です。顔がアップされるところは橋蔵さまご自身でなければ・・いけませんものね。アップの時の橋蔵さまの座っている姿勢が固く、いつもの橋蔵さまではないでしょう。又之丞の橋蔵さまの上半身の動きがなく胸のところのふくらみがちょっとおかしいように感じられると思います。橋蔵さまは、この「花笠若衆」と「若君千両傘」を掛け持ちで撮影に入っていました。そのため橋蔵さまだけの出番のところは集中的に前に撮り、「若君千両傘」の撮影班の方にも行っていました。ひばりさんと一緒のところはスケジュールを合わせてというようだったようです。そして、ラスト祭りの山車を千代姫と一緒に眺めているシーンで橋蔵さまが出てくるところの4カットの撮影がまだ残っていました。2作品取っている時に、橋蔵さまにとって、これで時代劇俳優として刀がにぎることができるかどうかという怪我、約1ヶ月ちょっと刀がにぎれなくなった出来事がありました。このことはあとで、違うところでお話したいと思いますので、ここではこれ以上のことには触れないことにいたします。このような事があったため、「花笠若衆」のラスト撮影は、橋蔵さまは怪我をおしての出演となりました。映像を見ていただければ、橋蔵さまを見つめていらっしゃるかたには、映像からお分かりになると思います。白の着物を着ていらっしゃいますね。橋蔵さまの動きが少しいつもと違うでしょう・・・右腕が着物の袖から出ていません。右腕を動かしてはいけないので肩から吊って前懐で固定しています。ひばりさんとのコンビとしての最後の作品「花笠若衆」が無事出来上がってよかったです。
2018年08月28日
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今こそ天の裁きを受ける時がきたのだ又之丞と吉三の寝込みを襲ってきたのは扇山藩乗っ取りを企んでいる馬場兵部の腹臣稲賀一派です。又之丞がいち早く危機を察知したので支度も十分に、稲垣一派を待ちかまえます。次から次へと襖を開けて探して行くがいないため、「逃げおったな」と言った時、奥の部屋から笑い声が聞こえ、襖がさっと開きます。又之丞「神月又之丞、逃げも隠れもいたさぬ、いつでもお相手つかまつる」吉三 「江戸屋吉三、お忘れではござんすまい、一時と忘れぬお父つぁんのにっく い敵に、こんなに早く会えようとは天の引き合わせだ、逃がさんぞ」と言うと、吉三が短刀を抜いて、狭い旅籠内での立回りとなります。 金八の手伝いもあり、賊たちは退散していきます。追おうとする吉三を又之丞が引き留めます。又之丞「長追いは禁物じゃ、またの機会があろう」 江戸家老田島主馬が娘早苗を雪姫に仕立て、国表扇山藩に向かう駕籠行列を高見浩重郎がつけていましたが途中撒かれてしまい、待ち受けていた稲垣一派は高見を斬らず生捕りにします。それを見ていた老人を稲垣がみつけて何かを・・・。(何を考えついたのでしょう)又之丞達三人が峠の茶店で休んでいるところへ、先ほど稲垣に呼び止められた老人がひどく慌てて山道を下りてきて茶店までやって来ます。その老人が茶店の女将に「この先の山道で、たった一人の旅商人を大勢の侍が寄ってたかって斬っていた」と話すのを聞いていた金八が、旅商人の様子を聞きますと、がんじがらめに縛られ甲武信小屋の方に連れて行かれたと言うのです。(稲垣が又之丞と吉三をおびき寄せるために、老人を使って言わせたことでした)三人は顔を見合わせると、急いでその小屋の方に向かうのです。 小屋には高見が縛られており、助けに来れば小屋もろとも地獄行きだと言うのです。助けに来た三人を待ちかまえる稲垣一派。小屋を見つけ助けに入ったのを見計らい、山の上から岩を落とし始めます。四人は間一髪・・外へ出た時小屋は跡形もなくつぶれます。稲垣達は降りてきてあたりの様子を確認して、四人とも崖から落ちお陀仏だ、と引きあげます。四人は近くの岩のところに逃げ込み無事、彼らが立ち去るまで身を隠します。 扇山藩に田島主馬一行が着きました。早苗を雪姫にしたて、牧野内膳正に目通りします。内膳正は九重に考えていた雪姫とは面差しが違うように思うと言いますと、九重も千代姫と比べてやはり違うと言います。すると、馬場兵部が、すかさず、人は環境の変化により姿形が変わります、長い間の苦労が面差しを変えたとしても不思議はないと言います。九重が、雪姫というれっきとした証拠でもあるのかと聞きますと、主馬がお墨付きを内膳正に、本物だということで、馬場兵部は雪姫に世継ぎ決定の発表を速やかにされた方がよいと促します。千代姫の事もあり返事を渋っていた内膳正でしたが、千代姫自身から遠慮しないで雪姫を世継ぎにと聞き、兵部からの催促もあり、家臣一同を大広間に集めます。その頃、三つの早駕籠がお城の門を入っていきます。大広間に家臣一同が揃っています。兵部から「跡目相続は、雪姫様とご決定」、「雪姫君御擁立にご異存はあるまいの」・・・一同顔を見合わせていますがシーンとしています。「ご異存なければ、決定といたす」との兵部の言葉に、「暫くっ」と廊下の方から声がかかり一同驚き見ますと、又之丞が現れます。 兵部と主馬は驚き、内膳正と千代姫、九重は安堵の様子を見せます。又之丞は、内膳正に「お久しゅう存じまする」と挨拶をして、千代姫の方にもちょっと視線を向けます。 又之丞「お家の一大事と聞き、急ぎ馳せ参じました。いやぁ、只今あれにて承れ ば、雪姫に家督を譲られる由、又之丞とて、とりわけ意義を申し上げる わけではござりませぬが・・・ただ、何れのものともわからぬ女を世継 ぎとするは、扇山藩のためにならぬと存じまする」 兵部 「何と申す」主馬 「又之丞といえど言葉が過ぎまするぞ」又之丞「ゆうな、奸臣ども・・・江戸屋吉兵衛を殺めお墨付きを奪い、偽りの姫を 仕立ててお家横領を謀らんとする汝らの悪行、今こそ天の裁きを受ける時 がきたのだ」 兵部 「理不尽な、何を証拠にそのような」又之丞「証拠を見なければ知らぬと言い張るか・・・ならば・・雪姫殿おいで下 され」又之丞の声で、襖が開きます。 続きます。
2018年08月25日
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やっと二人きりになれたわね眠に入った吉三は、ほのかに抱く又之丞への恋心がいつの間にか夢にまで現われるようになっていたのです。そして、夢の中で晴れて又之丞と結ばれるのですが、どんなことになるのでしょう。・・・それでは吉三のあま~い夢の中へ一緒に入ってみましょう・・・江戸屋の奥座敷で、又之丞と吉三の婚礼の式の三々九度の最中です。又之丞が盃を飲みほし吉三の方に目をやりますと、吉三も又之丞に色っぽい笑顔を見せ注がれた盃を飲みほし、二人は夫婦になりました。お互いに顔を見合わせとても幸せそうです。 外には、花嫁花婿を見ようと町内の人々が集まっていて二人を祝福します。又之丞は町人姿の旅支度になっています。 さあ、駕籠に乗り新婚旅行に出発です。「エイホッ、エイホッ」という掛け声で二挺の駕籠が街道を進んで行きます。ここで、「花笠道中」の歌と共に、駕籠に揺られながら街道を行く二人の様子が映し出されます。♫もしもし野田の案山子さん 西へ行くのはこっちかへ 黙っていてはわからない ♫蓮華たんぽぽ花ざかり 何やら悲しい旅の空 愛し殿御の心のうちは 風にお聞きと言うのかえ ◇ここで🙇 余談ですが・・・この道行のロケに関してお話しておきましょう。前にも書いたように、ここは瀬田大橋の近くの川沿いでのロケでした。人が絶えることのない景勝地のところを少しはずした場所での撮影になりました。五月の撮影のため桜並木も葉桜で五月晴れの下での撮影です。先ずは、二人の駕籠が並んで行くカットを遠くから取り終えると、今度は橋蔵さま、ひばりさん一人一人の顔のアップを取りました。所定のカットを取り終え、いよいよ駕籠とカメラのマラソン?の撮影になります。カメラを乗せた移動車のレールが長くひかれ、駕籠の動きに合わせてレールの上の移動車を動かして行きます。作品を見ていただくと分かるのですが、歌の長さだけ駕籠が走っているわけですので、駕籠とカメラ移動車の動きのテストが何度も繰り返されました。その間駕籠に乗ったご両人は、薫風に吹かれ道行に上機嫌です。O.Kが出ても駕籠から降りようとせず、「こんなロケだったら悪くないわ」「どうだろう、この駕籠で京都まで帰ったら」と言う始末。可哀想だったのは駕籠を担いだ大部屋さん。何回ものリハーサルで、O.Kが出たとたん倒れ込んでしまいました◇ 旅籠について、寛ぐ又之丞とお吉の新婚夫婦です。お吉 「やっと二人きりになれたわね」又之丞「どうやら、これで俺もほっとしたよ。お前も疲れたろう」 お吉 「いいえ」 お吉が、又之丞のお膳の前に座りますと、お吉 「あー」 又之丞「うん?」 お吉の可愛く甘える素振りを見て、又之丞は嬉しそうな表情をして箸でお菜をつまむと、「それ」と言ってお吉の口に入れ「ぅん」とお吉の顔を見て言い、お吉も「うふ」と。 又之丞が一杯飲もうかと盃を口に持っていった時、今度はお吉がお菜をつまんで又之丞の口へ持っていき、お熱い二人です。 急にお吉が身体をモジモジさせます。又之丞がそれを見て又之丞「どうしたんだい」お吉 「なんだか、背中がかゆいのよ」又之丞「えー・・かゆい・・どれ、うん」 お吉「すみません」と言うと、お吉の背中に手を入れます。 又之丞「このへんかい?」お吉 「もちょっと上」 又之丞「じゃ、このへんかな」お吉 「少し右」 又之丞「じゃあ、ここか」お吉 「そうそう、そこ」 ◇またまた🙇余談ですが・・・ここのシーンはリハーサルから大変だったようです。というのは、ひばりさんは大のゲラ子で可笑しいと笑いが止まらないのです、そこにくすぐったがりやなので背中に手を入れられ我慢が出来ないのは当然。「くすぐったい、助けてぇ」と甘いラブシーンになりません。「マミイ我慢しなくちゃだめじゃないか」と橋蔵さまに言われ、やっとのことでO.Kが出たようです。そうそう、ひばりさんの背中をかくところで、こんな具合でよいかどうか、一応原作者に聞いてみようか?と、意地悪くひばりさんと橋蔵さまは、「ママ、こんな具合でよろしいでしょうか」とやって見せると、ママは二人の甘い演技を見せつけられ飽きれたように「あなた達の好きなようにやりなさいよ」と言ったそうです◇お吉「ああいい気持ち」又之丞のかいてくれるのが気持ちがよいのでうっとりした表情を見せているお吉。その様子を見て、又之丞があきれた?ようにお吉の顔を覗きこみます。 お吉は恥ずかしそうにすると又之丞の胸に、又之丞もお吉を抱き寄せます。 その時、襖が開いて金八が顔を出し、嬉しそうに抱きあっている二人に水を差します。「コケッコウ」お吉「あら、金八」 金八 「お邪魔様で」お吉 「何しに来たの、こんな旅先へ。何かよう?」又之丞は、あきれ返った様子で窓際にいきます。金八が「いや別に」と言いながらお銚子から酒を注いで飲んでいるところを、「用がないなら、さっさとお帰りよ・・・金八の馬鹿、馬鹿っ」と言って、お吉は又之丞がいる窓際の方へ金八を突き飛ばします。 又之丞のところに飛ばされた金八は「鶏が鳴くのはまだ早い」と又之丞につかれ、金八「コケッコウ」と鳴き、お吉にも突き飛ばされます。邪魔されたお吉は「バカバカバカ」と悔しさいっぱい・・・ここで、夢は終りになったようです。 金八の出現で、にこやかに夢を見ていたお吉が夢の最後でうなされ「バカ」と言い、間を仕切っていた屏風を倒してしまいます。驚いて飛び起きたのは又之丞と金八です。どうしたのかと、お吉を見ますと何事もないようにすやすやと寝ています。二人は顔を見合わせ、また眠りにつこうとします。 その時、又之丞が殺気を感じます。 覆面をした者達が庭から侵入してきました。これからどうなるのでしょう・・又之丞が気がついたので大丈夫とは思いますが、相手は大勢です。 続きます。
2018年08月20日
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愛し殿御の心のうちは 雲にお聞きと言うのかえ意気揚々と江戸屋に帰って来た吉三や子分達は残っていた子分が斬られているのを見て急いで奥へ行きます。吉兵衛は息も絶え絶えの状態のなか、吉三に扇山へ帰るように言います。そして、吉兵衛「若殿さん、お墨付きを盗まれた、・・稲垣と永山だ。奴らは扇山の身代を 狙っている・・・お殿様、吉三を、吉三を返します。お願いします」又之丞「吉兵衛殿」吉兵衛は又之丞に吉三を頼みこと切れます。 吉三と又之丞は、吉兵衛の仇を討つためと扇山藩を乗っ取ろうとしている馬場兵部の陰謀を暴くために旅立ちます。吉兵衛が亡くなった翌日、但馬国扇山藩に向かう又之丞と、娘姿の吉三の姿があります。又之丞に送れないように歩いて行く可愛らしい吉三を見ていて、金八が何かぶつぶつと言っています。 金八 「ちえっ、人間なんて妙なもんだな、つい昨日まで男の格好をしてたのが、 女の着物を着たら途端になよなよとしてきやがら、コケッコウ、器用な もんでござんすよ。あーあーもうくたびれちゃった」とぶすくれています。金八が吉三を呼びます。「兄貴ぃ、吉三兄貴ぃ、若親分」・・・大きな声で呼んでいる金八に対して、(女とは思えないように) 「なんでぇ」と言う吉三を見て、又之丞は呆気に取られる様子です。 吉三 「あっ、いけねえ。言葉とか作法というやつは、なかなかなおらねえもんで すね」又之丞「それがいかん、それが」(あきれた顔つきです) 吉三 「あっ、そうか」二人に笑みがこぼれます。こんな調子の道中のなか、吉三は女として又之丞にどんどん心惹かれていたのです。 仲の良い二人の間に金八が割り込んで来ます。金八 「ちょいちょいちょい、ちょっ、ねえ、この辺で一休みしていきましょう や」又之丞「おい、金八」金八 「えっ」 又之丞「だいたい、その方が悪いぞ。兄貴とか若親分はいかん」(この時、吉三は水際の方へ降りていきます) 金八 「じゃ、どうです。これから、お吉っちゃんと呼ぶようにしちゃ」又之丞「お吉っちゃんか・・、扇山に着くまでは、まあそんなところかな」と楽しそうに話していましたが、お吉っちゃんはどうしたのか、二人は水際の方に目をやります。 お吉っちゃんは、又之丞との扇山までの道中が嬉しいようです。(ここで「花笠若衆」の1番を歌うお吉っちゃんが)♪ これこれ石の地蔵さん 西へ行くのはこっちかへ 黙っていては分からない ♪ぽっかり浮かんだ白い雲 何やら淋しい旅の空 愛し殿御の心のうちは 雲にお聞きと言うのかえ 金八がお吉っちゃんのところまで降りてきて、耳打ちをします。金八 「兄貴、やけに嬉しそうだけど、若殿様にほの字じゃねえんですかい」お吉 「なに言ってんだい。あの又之丞様には、お国表にりっぱな許婚があるじゃ ないか」金八 「あっ、そうかあ、・・いやだけどね・・」と言った金八の手をきつく叩くお吉です。 その頃、江戸家老田島も娘早苗と一緒に扇山へ向かっていました。早苗は楽しみにしていた扇山への旅でしたが、このまま扇山に行くと、何か恐ろしいことが待ち受けているような気がしてならないのでした。田島は心配をせず黙って雪姫になっていればよいと言います。高見が、江戸から田島一行をずっとつけていて、又之丞達が泊まっている宿に報告に来ています。偽の雪姫をしたて国表へ乗り込む魂胆と思われる、との高見の報告から、又之丞「お墨付きを証拠にお家乗っ取りの一芝居を打つつもりだ。黒幕は馬場兵部 だ。はっはっ、奴らの考えそうな筋がきじゃ」吉三の仇の稲垣と永山も一緒だとわかります。又之丞「敵に気取られぬよう、なお十分注意の上、動静を探ってくれ。次の連絡を 待っているぞ」」 高見が部屋を出て行った後、又之丞は思いを巡らしている表情をし、吉三も心配そうにしています。 そうそう、その夜は旅に出ての第一夜、屏風を隔てた相部屋での吉三はなかなか眠りにつけない様子です。金八はいびきをかいてぐっすりと、又之丞は身動き一つせず眠っています。(リハーサルの時、監督からひばりさんに、もっと悩ましそうにやって、との注文がありました)やっと寝入った吉三は・・・夢をみているようです、嬉しそうな微笑みを浮かべます。どんな夢をみているのでしょう。次回は吉三の嬉しい楽しい夢の中を覗いてみましょう。 続きます。
2018年08月14日
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又之丞、悪いようには計らわぬぞ人いれ業江戸家吉兵衛のところに、但馬国扇山から稲垣玄蕃と永山三蔵の二人連れが訪れます。15年前に御殿奉公をしていた吉兵衛の妹お園が、扇山藩から暇をとった時に一緒に連れ帰った娘の雪姫に会いたいというのです。吉兵衛は雪姫も死んだと言います。すると、御落胤の証拠となる書きつけはどうしたと言ってきたので、吉兵衛は仏と一緒に焼いたと言います。吉兵衛の言うことが真実とは思えないという稲垣と永山が店から出たとき、帰って来た吉三を見て、千代姫にそっくりの男だと驚きます。扇山藩江戸屋敷では、田島主馬が、稲垣と永山から江戸家の吉三が雪姫に似ていることを聞きます。しかし、扇山藩が正面からかけあっても警戒心を起こさせるだけ、白鞘組の力を借りるというのです。国表の馬場兵部に連絡を取り、早急に事を運ぼうというのです。 但馬国扇山藩では、藩主牧野内膳正が病弱のため、跡継ぎの問題が起こっているのです。男子がいない扇山藩は千代姫に神月又之丞を迎え跡目を相続させることにしているのですが、家老職を狙っている田島兵部が反対しているのです。扇山藩を継ぐ人物は、双子で生まれた雪姫に跡目を継がせるのが順序、雪姫は生きていると言います。千代姫は、九重から家中の騒ぎが跡目相続のことで兵部が反対し、行方知れない姉の雪姫をたてようとしていることを聞かされます。千代姫は、自分はお城の中で楽しい毎日を過ごしてきた、それに引換え、姉上は生まれたら無理やり知らぬ者の手に渡され気の毒だ、姉の雪姫が帰って来たら喜んで家督を譲る、と九重に言います。 しかし、九重は、一日も早く許婚の又之丞を迎えて跡目を継ぐことを望んでいるといいます。千代姫も又之丞に会いたいと思っているのです。ある夜、鈴木伝衛門と真木休之進が下城のおり何者かに斬られます。九重が千代姫の世継ぎに関わりがあるのでは、と言うと、千代姫が「江戸にいる又之丞の力を借りられては」と言い、藩主牧野内膳正も賛成し、側近の高見浩重郎に江戸の神月又之丞に書状を届けさせます。高見が馬を飛ばして江戸へ向かうのを追って来る者達がいましたが、うまく撒いて難は逃れたようです。 高見浩重郎が向かおうとしている江戸の神月邸。その神月邸では、又之丞が弓の稽古で汗を流しています。用人梶三大夫がそれを見守っています。 (橋蔵さま「緋ざくら大名」の時、作品の中で弓道の練習をしているところを使うために、その時指導を受けたのですが、映画ではその場面はカットされていました。でも、その弓道の腕がここで見られたのですから嬉しいです。弓をぐっーと引く力の入り方など素晴らしいものです)又之丞は三大夫に弓を渡し、廊下に腰を下ろしながら聞くのでした。又之丞「三大夫、その方、扇山の千代姫の顔を存じておるか」 大分以前に一、二度お目にかかったことはありますが、という三太夫。又之丞「わしも幼い頃にあっただけじゃが・・・その千代姫にそっくりな者に会っ たぞ」 三大夫がいつあったのですかと聞きますと、又之丞「うん、過日吉原でな」三太夫「吉原・・若、どうして吉原などに行かれたのでございます」又之丞「参ってはいかんのか? 」三太夫「いかんのかって、あんなところは、下賤の者の参る場所。しかも若は、近 く千代姫君とご婚儀なさるみではございませんか」又之丞「はっはっはっ、後学のために見物をして参っただけだ」 見物?と三太夫が言いますと、又之丞「うん・・なかなか良き眺めだったぁ」 三太夫「はぁ?・・それがいけないんでございますがねえ、それが・・」又之丞「参勤交代の江戸暮らし、たまには退屈しのぎぐらいせんと気がめいってた まらんわ」そこへ、扇山から火急の使者高見浩重郎が来たとの知らせが来ます。牧野内膳正からの書状を読んだ又之丞は、又之丞「高見、遠路ご苦労であったのう、僅かな縁に繋がる又之丞をよく頼りにし てくれた。必ず、又之丞、悪いようには計らわぬぞ」 梶田屋からの先日のお礼の呼び出しで出かけて行った吉三を料亭で待っていたのは、扇山藩江戸家老田島主馬と白鞘組でした。扇山の跡継ぎ雪姫であると言われ相手にせず帰ろうとする吉三を白鞘組が取り囲みますが、吉兵衛と子分達が駆けつけてきたので田島達は引き上げます。神月又之丞と高見浩重郎が江戸屋に来ていて、吉三と吉兵衛の帰りを待っていました。吉兵衛に少し遅れて、吉三と金八が部屋に入ってきます。吉三が「いらっしゃいやし」と挨拶、又之丞は吉三を見て「またお目にかかったのう」と言います。吉兵衛が、吉三に「知りあいかい」と聞きますと、「ちょっと」と吉三は照れくさそうに言います。高見が「千代姫にそっくり」と耳打ちすると、頷く又之丞です。 又之丞が見つめていると、吉三は席を立って、別の部屋で先日又之丞が忘れていった扇子をそっと出し・・又之丞に心惹かれ始めていました。吉兵衛と高見の話を聞いてしまった吉三に、吉兵衛は本当のことを告げますが、「十八年もの長い間捨てておくような親のところには帰りたくはない、お姫様なんかになりたくはない、江戸屋のせがれだ、お父つぁんの子だ」と吉三は言うのです。 川開きの花火が賑やかに上がっている夜、江戸家老田島のところでは、千代姫の婿になる神月又之丞が乗り出したからには、強行手段に出るよりほかはないということで今夜実行することになりました・・・白鞘組は又之丞を、稲垣、永山は吉兵衛を亡き者に。又之丞は三太夫と一緒に川開きに来ています。打ちあがる花火を楽しそうに見ていた又之丞が険しい顔を見せます。白鞘組が狙ってきているのを察知したようです。 白鞘組が近くまで来ています。三太夫「若、今宵は大変な人出でございますな」又之丞「月はよし、風はよし、花火見物にはもってこいの晩じゃのう。だが三太 夫、この人出では怪我があってはならぬ、その方は一足先に館へ帰るが よい」三太夫「そんな殺生な、爺めも、たまには目の保養をいたしませんとなあ」又之丞「はっはっはっ、だが今にこの辺りで喧嘩が始まるぞ」三太夫が「えっ、喧嘩」と聞き返したとき、又之丞めがけて白鞘組が斬りかかってきました。 そこへ江戸屋の子分達が通りかかり、喧嘩の助太刀をさせてもらうと言い、又之丞も「おう、ご苦労、だが怪我をするなよ」・・・立回りとなります。 金八の知らせで吉三が飛び出していったのを見届け、稲垣と永山達が江戸屋に斬りこみ吉兵衛は斬られ、お墨付きを取られてしまいます。又之丞は白鞘組と大立回りの最中、そこへ吉三が駆けつけ、又之丞の後ろから声をかけます。吉三 「若殿さん・・・敵は前ばかりにはいませんぜ」又之丞「はっはっは、これは一本まいったのう」 (立回りになります) 白鞘組の淡路が斬られると白鞘組の者達は引き上げていきました。にこやかに笑う吉三達は、家の方で大変なことがおこっているのか知らないのです。続きます。
2018年08月09日
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「花笠若衆」はトミイ・マミイコンビの映画としては最後の映画になります。そのいきさつを話す前書きが少し長くなる事こと、お許しください。ひばりさんの魅力は、凛々しい男姿での痛快チャンバラとしとやかな姫君をこなせるところです。とくに、ひばりファンは男装に魅かれますので、その魅力を存分に活かした小説を書いたのはママ加藤喜美枝さん、平凡に連載され、原作を大切にして脚色された映画「花笠若衆」は、「桃太郎侍や「幡随院長兵衛」を題材にしたようなストーリーになっていています。お相手はママも気に入っている、息の合った橋蔵さまという完璧な態勢をとって作られた明朗痛快時代劇です。ひばりさんが千代姫と男装で町民の江戸家吉三の二役を演じ、橋蔵さまが千代姫の許婚者神月又之丞を・・扇山藩の双子の一人由紀姫(吉三)と共に、お家乗っ取り陰謀から扇山藩を救うという話です。ひばりさんの魅力、威勢の良い男姿も凛々しい吉三役と、しとやかで優しい千代姫役というように演じ分けが入り、そこに、コンビとして一番の橋蔵さまが典型的二枚目役で絡んでくるわけですから、ファンは満足しない訳がありません。お二人とも、ママがひばりさんのために一生懸命書いたのだから、ママの気持ちを大切にしていい作品にしなければ、と。橋蔵さまも、ひばりさんが相手役ですと、橋蔵さまが遠慮なくご自分の魅力を出していけますので、お二人の魅力が倍増します。「丹下左膳」で見せたような大人としての良い雰囲気をこれからもっと見せてくださることをファンは期待していたと思います。映画の「花笠若衆」はゆうまでもなく興行成績はよく、主題歌の「花笠道中」も映画公開と同時に大ヒットしました。私は、映画館ではこの作品は見ていなかったのですが、ラジオで「花笠道中」の歌が流れてくると映画の内容を歌から感じようとしたものでした。曲調は楽しく明るいのですが、特に3番を聞いていますと涙が出てきたものです。好きな男の人と一緒に旅をしているけれど肝心の男の人の心が分からない、「何やらさみしい 旅の空」なんです、歌詞は悲しいと思うのです。この歌が使われている場面は・・楽しそうに駕籠に乗っているところです。それが夢の中の出来事で、吉三にとっては千代姫という許嫁のある又之丞に思いを寄せてもどうにもならないわけですから・・・でも、ひばりさんはこれを寂しくせつなげに歌っているのではない、独特の節回しでとっても気持ちよさそうに歌っているのです。人生そんなことにはめげないよ、というように。原作者加藤喜美枝さんは、東映から映画化の話があり、企画部の皆さんの協力、ひばりさんも喜んでくれましたし、仲良しのトミイが、喜美枝さんの期待通りに共演してくださり、一番気の合う佐伯先生が演出してくださったので夢のようであった、と言っていました。1958年は、ひばりさんの芸能生活十周年の年。そして、新芸術プロダクションを離れ「ひばりプロダクション」を設立し東映と専属契約をした年になります。ひばりさんの周りでは諸事情がうごめいておりましたようです。これもその一つでしょうか?橋蔵さまの人気が上昇してきて観客動員では、逆転してきていたので、東映側は、お二人の作品に、いつまでもひばりさん主演、橋蔵さま共演にするわけにはいかない、東映側は橋蔵さま主演、ひばりさん共演で行った方がお客様が入るし、いつまでもひばりさんの相手役という扱いはできないというようなことを・・・出したようです。それが分かるのが「ふり袖太鼓」のポスターで見られます。大川橋蔵主演と美空ひばり主演と二通りのポスターが出ているのです。関係者が「もう以前の橋蔵とは人気も映画スターとしての地位も違うのだから」となだめたという事もあり、そんなことあんなことでひと悶着あったようです。そして、「花笠若衆」は従来通りの順序で美空ひばり、大川橋蔵でいくことに、その代わりコンビは解消、ひばりさんは独立させる、ということになっていったようです。こうして所属していた新芸プロから1958年4月離れ、独立する準備に入り、8月ひばりプロを設立し東映と専属契約を結んでいます。ひばりさんと橋蔵さまコンビでの作品を手掛けていた新芸プロの福島通人社長もその頃新芸プロを辞めましたので、トミイ・マミイコンビとしての二人の映画はこの「花笠若衆」が最後の作品になります。その後は、お二人の共演はオールスターでの顔合わせでしか見られなくなりました。・・・と、いろいろありましたが、この作品は無事コンビで作られましたので良かった!良かった!!トミイ・マミイの魅力を100%発揮させての、お二人のために作られたと言っていいほど、ひばりさんも橋蔵さまも大はりきりの名コンビぶりで好場面が随所に展開されています。「花笠若衆」でのロケでは、吉三の夢の中での新婚旅行のところ・・・琵琶湖畔、瀬田の唐橋に近い桜並木の堤防でのロケの場面は、お二人とも楽しかったようです。このまま駕籠に乗って京都まで帰りたいとか・・・辛かったのは駕籠かきの俳優さん、二つの駕籠の調子が合わないといけませんし、駕籠に載せての何回ものリハーサルでは~。駕籠にのって、新婚旅行が始まるところからの場面は、ファンが夢みていたところでしょう・・・ママはよく分かっていらっしゃる・・・でも、夢の中の出来事と言う、落ちがついています。撮影現場での橋蔵さまとひばりさんは、いつもの通り顔を合わせれば、楽しい口喧嘩(?)を楽しんでいました。撮影合間は遠慮のない冗談のやり取りの連発で、撮影も楽しく進んだようです。第37作品目 1958年6月封切 「花笠若衆」 江戸家吉三 美空ひばり千代姫 美空ひばり早苗 桜町弘子梶三太夫 堺駿二江戸家吉兵衛 大河内傳次郎馬場兵部 柳永二郎金八 星十郎稲垣玄蕃 吉田義夫田島主馬 沢村宗之助淡路雷太郎 清川荘司九重 三条美紀高見浩重郎 長谷部建鈴木伝左衛門 香川良介牧野内膳正 明石潮永山三蔵 須藤建神月又之丞 大川橋蔵敵は前ばかりにはおらぬからのう 但馬の国、扇山藩には双子の姫がいたが、一人は江戸の侠客吉兵衛のもとで男として育てられていました。扇山藩では藩主の病弱をよいことに、次席家老一味が、双子の一人千代姫を亡き者にして、一味の娘を雪姫にしたて乗っ取ろうと陰謀を企てていました。そのためには雪姫を探し出し亡き者にしなければなりません。千代姫の許婚の神月又之丞も、扇山藩に陰謀ありとの報せをうけ、雪姫を探していました。ある日、又之丞が救った江戸家吉三が雪姫であることを知ります。家老一味もつきとめ、吉兵衛を斬り雪姫であることを証明する品を奪い去ります。吉兵衛は息を引き取る前に雪姫を扇山藩へ返してほしいと又之丞に頼みます。そして、扇山藩の千代姫を救うために、又之丞と女になった吉三と子分の金八の三人旅が始まるのです。 花魁道中が繰り出している吉原は大変な人出です。大勢の新造や禿を従えた花魁達が男衆の肩に手をおいて仲之町を練ってやって来ています。道の両側は群衆でいっぱい。その群衆の中に、白鞘組の面々が陣取り、酒を飲みながら花魁道中を見ているところへ、群衆に押され町家の娘のさしていた絵日傘が白鞘組の淡路雷太郎の面体を傷つけたと言いがかりをつけてきます。娘が謝りますが、蔵前の足袋問屋梶田屋の娘お町と聞くと顔色を変え、付き添っていた女中を突き飛ばし連れて行こうとした時、淡路の腕をはらい、威勢のいい啖呵をきる若者、江戸家吉三郎がお町を助けます。白鞘組に喧嘩を売る気かと言う淡路に、売られた喧嘩は買うが、人に喧嘩を売るほど酔狂ではないと言う吉三に白鞘組が斬りかかってきます。(ここからしばらく、「ロカビリー剣法」の歌にのって吉三の立回りとなります)「これが正眼無念の構え、次は上段無想の構え、片手上段無敵の構え、ソ―レゆくぞ・・」吉三が派手に暴れているのを人垣から笑みを浮かべじっと見ている着流しの侍、神月又之丞がいます。吉三めがけ背後から淡路が刀を振りあげた時、又之丞の投げた扇子が淡路に当たり、助太刀に入りますと、「覚えておれっ」と言い放ち白鞘組は引き上げて行きます。吉三 「忘れたら、聞きにいかぁ」 (この場面、歌舞伎の助六を思わせる華やかさがあります)又之丞が立ち去ろうとした時、吉三が呼び止めます。吉三 「お待ちなすって」又之丞「わしか?」 吉三 「どなたか存じませんが、随分とおせっかいな真似をなさるじゃありませ んか」又之丞「ほほう、おせっかい」吉三 「町奴とお侍衆とは犬猿の間柄、そのお侍が、あっしの見方をするなんて」(子分の金八は吉三の言うことにハラハラしています)又之丞「あっあっは、わしは、いつも正しい者の味方だ。・・だが、味方のおらぬ ときもあるから、気をつけたほうがよい。敵は前ばかりにはおらぬから のう」 又之丞「江戸家吉三と申したな」吉三「へい」 (小さく返事をします)又之丞「うーん、わしはその方に、どっかで会ったような気がいたす。大分昔の事 とは思うが・・」吉三「あっしは、初めてで」又之丞「そうか・・やはり、気のせいであったなあ・・」と言うと、さっさと行ってしまいます。呆然として又之丞をじっと見ている吉三に金八が、「立派なおさむらいですねえ、どっかの若殿様ですぜ」と又之丞が投げた扇子を持ちながら言うと、扇子を取り上げ扇子を見つめる吉三です。 (吉原仲之町でのシーンは花魁道中の華やかさに負けないくらいの、ひばりさんと橋蔵さまの衣装に目がいってしまいます。その橋蔵さまのうすい水色に花模様を大胆に浮かした豪華な衣装。このいで立ちについて雑誌記者から聞かれた橋蔵さまは「ちょっと照れちゃったあ。市川右太衛門先生の有名な旗本退屈男をちょいと小型化したような衣装でしょう。僕は華奢な方ですからね、衣装に食われそうになっちゃうんですよ」と笑って話をしていたそうです・・・そんなことありませんね、とっても似合っていらっしゃいます、素敵です) 続きます。
2018年08月02日
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父上の仇、討ち取られい畷之介と百合姫は自然斎の館へ急いで戻ってきた時、戸隠城の武士達がやって来ました。四方田玄蕃が丹波守勝久の使者として、自然斎と手を結びたいとの書状を持参、断れば輝政の命はなく、大群を持って山をせめるというのです。しばらく待っているように言って自然斎は奥に入っていきます。勝久を城主と認め今後信仰を誓う事、百合姫を勝正と一緒にさせる事、その二つを聞けば、輝政は隠居しとて一命を許すというものでした。百合姫は父上を救えるなら行きますというが、それだけは受け入れることは出来ないと自然斎は言います。百合姫は泣き崩れ、自然斎が返事をするために立ち上がった時、じっと聞いていた畷之介が「お待ち下され」と自然斎に声をかけます。 自然斎「何事じゃな」畷之介「姫の決意のほど、お受けなされませ」 畷之介「この畷之介にも、策がありますれば・・」 百合姫はどういうことか・・というように、畷之介を見ます。畷之介「姫、おゆきなされ・・」百合姫が頷きます。 百合姫が山を下りる日がやってきました。自然斎は、もし万一の事があった時は、城に登って天守の太鼓を鳴らせば、城に大急ぎで参上すると言います。戸隠城門前で百合姫と輝政の輿の何事もなく交換されます。 畷之介「確かに、殿をお受け取り申しました」玄蕃 「百合姫様は、確かにお受けいたした」 引き上げる畷之介に、侘助がおじぎをして、城の中に入って行きます。 その頃、山道を城かたの兵が自然斎の館の方へやってくるのを麻耶が見つけます。一方、山道を行っていた輝政の乗った輿から、うめき声が聞こえてきました。畷之介「輝政殿」 うめき声が気になり輿を降ろさせさせます。畷之介「輝政殿」と声をかけた時、輝政が輿から倒れてきました。畷之介「あっ、毒殺じゃ、謀りおったか・・」畷之介は、馬を急ぎ走らせて、自然斎の館へ向かいます。 麻耶が自然斎に城かたの兵がやって来たことを告げに行きます。畷之介は馬を走らせます。途中、山道を登ってたどり着いた時には自然斎の姿はありません。知らせに行こうとして斬られた麻耶から、自然斎は城かたの兵に生け捕りにされたと聞きます。麻耶は百合姫様にお詫びを・と言ってこと切れます。侘助と入れ替わった百合姫は、勝久と玄蕃の話を庭から聞いています。生け捕った自然斎を処刑にするときけば、百合姫だけではなく甲賀者も一網打尽に捉えることが出来ると言うのです。 翌朝、自然斎の張り付けが行われようとしています。牢から侘助を救い出した百合姫は、自然斎の処刑の時間が迫っている、それを助けに行く畷之介は刑場で取り巻かれるかも知れない、一刻も早く天守の太鼓を鳴らさなければ・・と勝久についた家臣たちを振り払いながら天守へ向かいます。いよいよ、処刑の時刻になり、番兵の槍が自然斎の前に持って来られた時、番兵に化けていた畷之介が阻止します。畷之介「我こそは、九州菊池家の遺子畷之介、義によって自然斎殿をお救い申す」 (立回りです) 天守に登った百合姫は自然流の急太鼓を打ち鳴らします。その太鼓を聞いた甲賀者や野武士たちが刑場と戸隠城にやって来て、周りを取り囲みます。城へ逃げ帰った勝久と玄蕃を待っていたのは、百合姫でした。百合姫「逆賊丹波守勝久、戸隠城主左衛門尉が遺子、今こそ父の恨みを晴らすぞ」そこへ、畷之介と自然斎が駆けつけました。畷之介「姫、父上の仇、討ち取られい」 (立回りです) 勝久も玄蕃も討ち取り、畷之介「姫」、百合姫「畷之介様」と手を握り見つめ合います。戸隠城の安泰と花婿様も決まったと、一同お喜び申し上げるという侘助たちが顔をあげると、二人の姿がありません。自然斎の「さあてなあ、何処にござったかのう」。その時百合姫の歌声が、天守から聞こえてきました。うらやましい限りの二人ですね。 ♬いつか夢見た 昔の 今はお城の 姫君姿 晴れて嬉しい 都の空に 胸もほのかな ホイホイ 春が来る (幸せそうな二人の笑顔いいですねぇ。心が癒されます。happy happy) (完)
2017年12月06日
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もう無謀なことはなりませんぞ夜、馬に乗った二人の武士が戸隠城門前にやって来ました。「開門、開門」。どうしたことでしょう・・畷之介と侘助がやって来たのです。畷之介「明智光秀の使者でござる。丹波守殿にお目通り願いたい」 大広間で待つ畷之介、勝久と玄蕃がやってきました。勝久が使者のおもむきは、と聞いてきました。織田信長が明智の城へ攻略の気配なので城にこもって迎え撃つ覚悟だ、といって、二人の様子を伺う畷之介です。 その間に、侘助は百合が座敷牢に入れられているのを見つけます。城門外に「開門」の声が聞こえます。本物の明智光秀の使者が来たのです。大広間では、畷之介「以上の件に対し、丹波守さまのご胸中お聞かせ賜わるようにとの、殿の 仰せにございました」 と時間稼ぎの最中。書状をしたためる間しばらく待つようにと言って立った勝久と玄蕃のところに、一大事と明智光秀からの書状が渡されます。不穏な気配を感じた畷之介。 書状を読んで畷之介が偽者と大広間に戻ってみると畷之介の姿はありません・・・慌てて曲者だ「出会え」と騒ぎ出します。大勢があちこち探している中、侘助が突き止めておいた座敷牢から百合姫を助けだします。 侘助「御頭」畷之介「おお、侘助」侘助「逃げ道は向こうに」畷之介「よし」 百合姫を取り逃がしたことで、輝政から自然斎の居場所を聞き出した勝久は、すぐに自然斎の隠れ家を襲うように言いますが、玄蕃はうかつには近寄れない、考えがあるというのです。 自然斎の隠れ家に畷之介と百合姫は来ていました。金森左衛門尉輝政を助け出すことが出来なかったことが残念という畷之介に、自然斎は百合姫を助けてくれ、輝政公の存命も分かったことに礼をいいます。そして、自然斎は、菊池家再興の為旗揚げの際は助勢すると畷之介に言います。畷之介「おお、ご助勢くださいますか」 百合姫「畷之介様」畷之介「姫」二人は手を取りあい喜びます。 この隠れ家も敵に知られたからは今日にでも攻めてくるかも、と心配する百合姫に、容易に手出しはしてこないだろう、時を稼いで輝政公を救い出すことだ、と自然斎は言います。畷之介「一刻も猶予はなりませぬ。木曽一円を糾合し立ち上がるならば、微力なが ら一隊を率いて直ちにお手助けつかまつります」と言いますと、自然斎は「わしの待つものは、白方の出様ひとつ」と言うのです。 夕映えが、畷之介と百合姫の仲睦まじい姿を映しだしています。(ここから、今までのトミイ・マミイコンビでは見られなかったちょっと大人になったラブ・シーンとなります)百合姫「きれい・・あたしが明智の城へ人質にやられた時も、やっぱりこんな夕焼 けでした」畷之介「私は夕焼けを見ると、ものさびしくなる」百合姫「あたしも」畷之介「菊池の城が落城したのも、やはりこんな夕焼けだったぁ」百合姫「畷之介様は、お幾つでした?」畷之介「十一の年」百合姫「十一・・・私が明智の城へ送られたのも・・十一の時でしたの」 畷之介「寂しかったであろうなぁ」百合姫は「うん」というように首を小さく動かします。(右側の画像・・二人の様子を同じ画面に入れてみました) 同じ境遇から魅かれ愛が芽生えていた二人は、ますます魅かれ合い自然と寄り添います。 畷之介「姫、もう無謀なことはなりませんぞ」百合姫「はい」・・・寄り添っていた二人は離れ、百合姫が笛を吹きながら、畷之介の方を見ます。畷之介は照れたように・・。(左側の画像・・二人の様子を同じ画面に入れてみました) (トミイ、マミイのラブ・シーン綺麗です。お二人のシーンは流石と言われたコンビです。引きこまれていってしまいます。そして、橋蔵さまのはにかんだ表情とっても可愛いい。) 笛を聞きながら、山道に目をやった時、馬を走らせ城方の武士がやってくるのが見えました。畷之介「引っ返そう」 自然斎の隠れ家に戸隠城の武士達がやってくるようです。事態はどのようになっていくのでしょう。玄蕃が勝久に耳打ちしていたこどは何なんでしょう。 続きます。
2017年12月01日
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「強情な、姫」「意地悪な、御頭」菊池家に伝わる秘宝の笛を縄田之介から「誓いのしるしに」ともらった百合姫。男装で暮らしてきた百合姫も女性です。畷之介を愛するようになります。 裏の川で畷之介からもらった笛を吹くと、畷之介が吹く笛が聞こえてきます。二つの笛が呼び合います。(月夜笛の歌が流れます。笛を吹く畷之介、笛に誘われ館に戻ってくる百合姫) ♬風に流れて ゆく笛の音は 遠く山越え 川を越え 縋りたいような 今宵の思い 知っているのは 知っているのは 月ばかり 女の着物を着た百合姫が館へ戻ってきます。「笛がお上手ですね」と百合姫、「いやぁ、姫こそ美しい歌声」と畷之介。(ここから、トミイ・マミイの映画でお馴染みのシーンになります。お二人のこういうシーンは見ていて、顔がほころんできます。良いムードがありますね) 畷之介「この笛を吹きながら月を見ていると、阿蘇の山に囲まれた、菊池の城を 思い出すのです」 百合姫「私も、この扇を見るたびに、戸隠の父が恋しくて、明智の城で泣きま した」 畷之介「気丈夫な姫が泣かれたか」 百合姫「まあ、・・あなたこそ、お気の弱い」 畷之介「はぁっはっはっは、野党のくせにとおっしゃりたいか」 百合姫「知りませぬ」畷之介「何処へ行かれる」 百合姫「男の姿が似合うとおっしゃりたいのでございましょ」 行こうとする百合姫のところに駆け寄り 畷之介「強情な、姫」 百合姫「意地悪な、御頭・・・(にこっと笑って)もう、意地悪は許しません」畷之介「もう、強情はお止めなされ」 二人が楽しそうに大笑いしているところへ、侘助が食事の用意が出来たと持ってきました。 (侘助が台所で調理をしていた様子から見て・・心配ですが、どんな料理が出来たのでしょう。楽しみです) 二人は美味しそうに食べています。畷之介に「野党料理は如何か」と 聞かれ、「なかなか結構です」と百合姫は満足そうに答えます。 特別料理であるという侘助に、畷之介「お客人は、お気にいったそうだ」 侘助「恐れ入りますでございます」 侘助は野武士では役に立たないが料理場では腕がたつ、と畷之介が言います。 百合姫「こんなに美味しいものはありません」 侘助の料理についての講釈が始まりました・・大変です! 侘助「そうでございましょうとも。大体タヌキ汁というやつは、モグラとナメクジを出汁にしますと、この一段とこの・・」 畷之介「これ、さ、下がっておれ」 慌てて、止めます。 (侘助の言うことを聞いていた畷之介は百合姫の顔色を見て、慌てて侘助を止めるのでした。百合姫も話を聞き、箸をおいてしまいます) 夜叉麿が館に忍び込んでいました。百合姫に嫉妬している麻耶は、夜叉麿に百合姫をさらっていってくれるのならと、御頭と一緒に方丈にいると教えてしまいます。夜叉麿は本堂に火をつけます。本堂が火事だとの騒ぎに畷之介は百合姫を一人にするのは気になりましたが、本堂の方へかけつけます。 そのすきに、百合姫は夜叉麿に南蛮渡来の嗅ぎ薬を香がされ、さらわれてしまいます。本堂の火事に不審を持ったのでしょうか・・畷之介が方丈へ戻ってきますが、百合姫の姿がどこにもありません。 百合姫が連れて行かれた先は、戸隠城勝久のところでした。牢に監禁している輝政のところに眠らされている百合姫を連れて行き、自然斎の居所を履かそうとしています。 その頃、城に馬で乗りつける武士の姿がありました。「開門、開門」 (百合姫はどうなるのでしょう。畷之介は百合姫がどうなったのか分かったのでしょうか) 続きます。
2017年11月27日
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九州菊池家の遺子、畷之介と申すもの遠出をしていた百合姫は夜叉麿らに追われている花田鉄之介を助けます。自然斎のところに戸隠城で丹波守勝久の謀反が起こっていると知らせに行くところでした。父上の安否が気になる百合姫は城下へ様子を見に行きたいと自然斎に願いますが許してもらえません。百合姫が山に一人で行っていますと、「おんな」と声をかけられます。百合姫が振返ります・・野党の御頭と呼ばれていた畷之介が姿を現します。百合姫が構えます。畷之介「はっはっ、その構えだけは男だが、・・はっはっはっ、・・一人で何処へ 行かれる」 百合姫「何処へ行こうと、拙者の勝手だ」畷之介は、はっはっはっはと笑いとばし畷之介「お供はどうした」誰に頼まれ待ち伏せをした、という百合姫に畷之介「誰にも頼まれはせぬ」(この画像のシーン、とても絵になるのです、カッコいい) それなら邪魔だてするなと言い先へ行こうとします。畷之介「これは気の強い。急ぎの様子だが・・何なら、お供いたそうか」 百合姫「野党のお供など、断る」巨介と小介が百合姫を追ってきました。自然斎が城下で父上の安否が判明したらすぐに山へ戻るようにと・・・そして巨介をお供に百合姫は山を下りていきます。その様子を見ていた畷之介は、何を思っていたのでしょう。 城下に入る厳しい取り締まりを歌を歌って上手く逃れたと思った所へ、夜叉麿が通りかかり百合姫と分かってしまい、取り囲まれてしまいます。巨介は刃に倒れ、百合姫も危なくなったところへ、畷之介が率いる馬に乗った一団がかけつけて百合姫を馬に乗せ、館につれていきます。 (ここからは、トミイとマミイの長い二人だけの場面となります。お二人の雰囲気をセリフから感じとってください)部屋で待っている百合姫のところへ、畷之介が女ものの着物を持ってやって来ます。百合姫「これは、女の着物」畷之介「さよう、お着替えなさい」 百合姫「男の私に用のないもの」畷之介「あっはっはっは、強情なお姫様だ・・か弱い女の身で、陰謀の真っ只中に 乗りこむなど、無謀きわまりない」 百合姫「どうして、どうしてあなたは私の事を」 (百合姫しおらしくなります)畷之介「いやぁ、失礼とは思ったが、雲霧峠出発のさい、供の男との話を聞き、 戸隠城のお姫様と知った」 百合姫「では、あなたは何もかも、わたしのことを?」畷之介「今一足早ければ、供の男も殺さずに済んだものを・・・惜しいことをいた した」しょんぼり悲しい表情の百合姫を見て畷之介「姫、このたびの大事、微力ながら拙者、ご助勢いたしたい。付いては、 拙者からもお願いいたしたきことがある」 百合姫「願いとは?」畷之介「拙者を自然斎殿にお引き合わせ願いたい」百合姫「おじいさまに、何のためです」畷之介「木曽山中に住む、甲賀者の頭目と仰がれる自然斎殿のお力をお借りしたい のです」百合姫「あなたは・・あなたはどなたです。ただの野党ではないはず」畷之介「・・・何を隠そう、拙者こそ、九州菊池家の遺子、畷之介と申すもの」百合姫「畷之介様」畷之介「菊池家再興のため、旗揚げの時日を狙っているのです」百合姫「では、あなたも、御家のために」畷之介「姫と同じ身の上」百合姫「畷之介様」畷之介「百合姫」 どちらともなく二人は手を取りあうのです。(あっ、二人とも魅かれ合ってしまったようです・・ここでちょっと・・二人が手を握りあったところですが、(この作品を見た方)・・握った時ひばりさんの左手が橋蔵さまの手の上になっているのを、瞬間に二人が指を動かして橋蔵さまの手が上になったところお分かりですか・・・私、この場面の二人の手の動きに何度見ても魅かれてしまうのです)感情が高まり見つめ合ってた二人は、”はっと”して・・・手を離し離れるのです。(トミイ・マミイコンビも愛し合う大人?の雰囲気をかもしだしてきました。衣装がカラフルな模様と色使いのよう、モノクロなのが残念です・・この衣装を着こなしているお二人綺麗ですね。ついつい画面の中に引きこまれてしまいます) 百合姫は床の間にある二本の笛に目が止まります。それを見た畷之介は一本を手に取り畷之介「これは、菊池の家に伝わる秘宝の笛・・お受けください」躊躇っている百合姫の手を取り渡すのです。畷之介「誓いのしるしに」百合姫「誓いのしるしに」 百合姫は畷之介を愛しそうに見つめ、女ものの着物を持って部屋を出て行きます。(作品の中では、畷之介と百合姫を交互に映しだしていますので、画像は合成にしています) その様子を見ていた、畷之介が好きな麻耶は百合姫に嫉妬し悪に手を貸してしまい、百合姫と畷之介を窮地に追い込んでいくことになります。 続きます。
2017年11月22日
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互いにマミイ、トミイと呼び合う呼吸ピッタリの”ふり袖コンビ・・・お馴染みになった『歌のひばり、剣の橋蔵』が描く「ふり袖太鼓」の舞台は山野、その中に息づく二人の若々しい魅力が話題となりました。各地を地盤とした英雄たちが、互いに勢力を振るって対立する頃、主家再興の悲願を胸に、野武士を率いて奮闘する菊池家の遺児・畷之介と御家横領の謀叛の真っ只中に乗りこみ苦難の道を歩む百合姫が、同じ境遇のめぐりあいから、二人はいつしか深く愛し合うようになります。二人は助け合って悪臣に立ち向かいます。「主君の仇、覚悟」畷之介の正義の剣が群がる悪の一味を倒していきます。「百合姫、ご本懐を」駆け寄る畷之介の手を固く握る百合姫。月の夜の甘くせつないラブシーンと、抜く手も鮮やかな大殺陣をちりばめた作品で、ファンの心を完全に魅了した娯楽時代劇映画です。劇中「ふり袖太鼓」「月夜笛」が流れます。手綱さばきも鮮やかに白馬に乗った美しい橋蔵さまを堪能していただける場面が沢山あります。一作だけ映画に出て見てもよいのではないかと、菊五郎劇団の了解も得て舞台公演を休み、「笛吹若武者」の撮影に入ることになりました。作品の中で馬に乗るためクランクイン数日前から、初めての乗馬の練習に毎日通った橋蔵さま。映画界に来てから、時代劇俳優は馬に乗れなければと”愛馬会”に入り乗馬の練習も欠かさなかった橋蔵さまの成果がこの作品で生かされました。姿勢も綺麗、手綱さばきも上手く素敵です。この後のいろいろな作品で橋蔵さまの乗馬姿を見ることになりますが、素晴らしいですよ、主演俳優はこうでなくちゃいけません。そして、笛。「笛吹若武者」の敦盛の笛を吹くところといい、この作品でも、畷之介が笛を吹くところがあります。笛を吹く所作が上手いでしょう。橋蔵さまは、歌舞伎時代に歌舞伎俳優達の”カッパの会”とか言ったかな?・・催しの時は笛を担当、笛は名手だったのです。単に指を動かしているわけではないのです。様になっていますでしょう。橋蔵さまが野武士をやる・・この野心的な配役は批評家の注目の的となりましたが、美男すぎて悪い結果になりはしないかと周りから心配された橋蔵さまでしたが、たくましい行動のうちにも詩的情緒もあるという素敵な野武士を見事に演じました。「ひばりさんと6回目の共演です。野武士役で、白馬に乗って駆けまわりました。ひばり姫の危機を救ったことは申すまでもありません。これで、何度ひばりちゃんを助けたことやら。実生活でお世話になった、せめてもの恩返しというわけですか」と橋蔵さまの一言。◆第28作品目 1957年9月封切 「ふり袖太鼓」 百合姫 美空ひばり菊池畷之介 大川橋蔵自然斎 薄田研二麻耶 月丘千秋お欄の方 松風利栄子侘助 境俊二四方田玄蕃 吉田義夫金森左衛門将輝政 有馬宏治金森勝政 中野雅晴安井大八郎 月形哲之介小介 富久井一朗金森丹波守勝久 堀正夫勘十 津村礼司藤太 中野文男明智光秀の密使 遠山恭二 *(画面が全体的に暗いので、画像はしベル補正をしているところがあります、ご承知おきください) この物語の主人公二人・・野武士の頭目・畷之介(なわてのすけ)と男装の百合姫が初めて出会ったのは、信州の山中でした。お互いに素性も知らないで、しかし何かがお互いを導いていったのでしょう。こいつは男だある日のこと、男装の娘(百合姫)がお供の二人を連れて山に遊びに来ています。娘は気分よく歌をうたい出します。野武士の一団がその歌声を聞き、こんな山奥に娘がいるとは、いい獲物だ、行ってみようと馬を走らせます。野武士達がやって来て娘を取り囲みます。野武士は、女のくせに男の成りか・・「貴様、女だろう」と言われ、娘は「女ではない」「野党に用はない」と言います。「そっちになくても、こっちにある」とかかっていきます。娘はお供のものに一人で沢山、見ていろと言い野武士と闘っているところに、「待て」との声が・・「あっ、御頭」と野武士達は振り返り言います。 畷之介「大勢かかって何たる様だ」白馬に乗った凛々しく美しい若者で、野武士達の御頭とはどう見ても思えません。 百合姫「その方が、御頭?」畷之介「うぅん、そうだ」 「こやつは女ですぞ。女のくせに男の成りをして、けしからん奴です」と御頭に言いますと、畷之介「なに、女?」 百合姫「無礼者、二度と女と申せば手を見せんぞ」 百合姫を見ていた畷之介の表情が変わります。 畷之介「はっはっはっは、こいつは男だ」百合姫がその言葉に一瞬「えっ」という表情をします。野武士が、女だと言い張りますと、畷之介「見ろ、女でその構えができるか、あっはっはっは。この山中に、不思議な 衆中だな」 百合姫「その方のような、野党ではない」と言い刀を捨てて走り去っていきます。畷之介も、笑って、馬を走らせ帰って行きます。(この手綱さばき綺麗でしょう) 畷之介達が館へ戻ろうとした道に、夜叉麿が木にぶら下げられていました。降ろしてくれという夜叉麿に畷之介「貴様には、似合いだ」侍大将と言う褒美がぶら下がっていて、急ぐから降ろしてくれと言うのです。畷之介「ぶら下がっているのは、貴様ではないか」 畷之介「一体、誰にやられたんだ」と聞きますと、夜叉麿は凄い老人にやられたと言います。畷之介「どういうお人だ」と聞きますと、仙人のような爺だと言います。畷之介「仙人のような・・」 夜叉麿が畷之介達には用のない大仕事だというと、・・用がなければ行くという畷之介に、言うから待ってくれと言います。 大仕事とは何だと聞かれ、「娘を探すのだ」と夜叉麿が言います。 畷之介「なに、娘だ」 明智の城へ人質にやられた戸隠城主金森輝政の娘百合姫が誰かに奪われたのだと聞き、畷之介「百合姫?」 畷之介「誰に頼まれたんだ」 降ろしてくれたら言うという夜叉麿、 畷之介「それなら聞かぬ」 畷之介が行こうとすると「戸隠城の家老からだ」と言うのです。畷之介「よーし、降ろせ」 夜叉麿は戸隠城家老四方田玄蕃の、雲霧峠で自然斎らしき者を見たが不覚にも・・と報告をすると、まさしく、木曽山中に住む甲賀者の頭目で、かつては戸隠城の軍師の自然斎であると、早々に隠れ家を突き止めるように言います。かねてから手配の自然斎が雲霧峠に姿を現したことを金森輝政の腹違いの弟勝久たちに伝えます。明智光秀の城に人質として預けられた百合姫を助け去ったのは自然斎に違いない、隠遁したとはいえ、かなりの勢力をもっているから、百合姫と一緒になき者にすればよいと、戸隠城をわがものにしょうと謀反をたくらんでいます。見張りをつけられている輝政は寝床につく前に扇を見つめ百合姫の事を思っています。同じように、雲霧峠の奥久森山の隠れ家に、夜空を見上げ同じ扇をもち、父上を思っている百合姫の姿がありました。 続きます。
2017年11月18日
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江戸の半鐘は、さすがに気が早い町人になった新三は「今の俺には不要なものだ」と、新貝家にとって大事な刀、秘刀備前長船を叔父の新貝主膳に届けてほしいと半次に頼み、半次は快く引き受けてくれました。 半次は新三から預かった刀を新貝家に届ける途中、花山部屋の四ツ車に捕まり悔しかったら辰五郎と一緒に出直して来いと言われ、半次は持っていた刀を抜いてしまいます。かかっていった半次は四ッ車に大きく投げ飛ばされ血を吐いて気を失ってしまいます。大江山から四ッ車の言伝を聞き、品川の一件の仕返しかと新三もめ組の鳶仲間もいきり立っています。そこへ辰五郎が、「話は分かった、向こうの言う通り半次は引き取って来よう」と言いますが、みんなの気持ちは治まりません。辰五郎「俺一人で行きゃ、かたのつくことだ」新三 「そいつはいけねえ。もともとおいらの用で出かけた半次。そんなことなら 俺が一人で」辰五郎「馬鹿言え。向うじゃ俺に来いと言っているんだい」新三 「しかし、みすみす喧嘩を売るつもりの奴なんだから」 辰五郎は、半殺し状態になった半次を見て、四ッ車に腹も立ちましたが引き取って帰ろうとします。ひどいことを言っても、それに乗らない辰五郎に四ッ車が体当たりをして、悔しかったらかかって来いと辰五郎をけしかけます。ついてきた若い衆に、俺たちが奮い立つのは火事場の他にはねえんだ、と言って辰五郎は我慢するのです。 みんなが揃っている辰五郎宅に運ばれた半次ですが、首を横に振る医者を見て、新三 「半次、半次・・・」半次が目を開け、新三の方に視線を向けます。新三 「気を確かに持つんだぞ」 半次「兄貴、刀を・・・」め組がみんな揃っているのを見て、まるで死ぬみたいだと半次、辰五郎が火消が死ぬのは火事場だけだといいます。半次「かしらか・・、死ぬもんけい。この半次兄さん、心残りがあって、そうは 簡単に死なねえよ」敵はきっととってやるぜ、の声に「頼むよ」と半次。半次 「だけど、もう一つ心残りがあるんだ」辰五郎「何だ。何でも聞いてやるぜ」半次 「ほんとに、何でも聞いてくれますかい」、苦しい中にもうれしそうに言います。辰五郎「うん、聞くとも」半次 「どうやら、これが半次兄さんの最後の頼みらしいな」辰五郎「言ってみな」半次「そこにいる、新三兄貴とお嬢さんを・・早く一緒にしてやってくれ」 半次 「元は、お侍かどうか知らねえが、いまじゃ、め組の新三兄貴だ。おいら、 二人が祝言するのを見たかった。きっと、すげえだろうなぁ。・・・かしら うんと言ってくれ・・・早くうんと言わねえと、おいら、死んじゃう ぜ・・」新三 「半次・・」 お雪「半次・・」 辰五郎「半次、わかったよ。きっと、二人を一緒にさせるぜ」その言葉をうれしそうに聞いて、半次はこと切れました。新三 「半次・・・」 半次に泣きすがっていた新三が何かを決意したようです。 四ッ車の奢りで関取衆が飲んでいるところへ新三が血相を変えてやってきたと連絡がきます。部屋へ通せ、刀が欲しくて来たのだろうと四ッ車。新三がやってきました。新三 「刀を返してもらいに来た。渡してくれ」(ここの言い方、声のトーンがいいのです。町人ではないのです。武士の言い方、声の出し方なのです) 素直に返すと思うのか、と言われ新三 「俺のものを、俺が受け取りにきたんだ。出してもらおう」 四ッ車は、その前にこれでも食らえといい、盃を新三めがけて投げつけます。新三 「何をしやがる」ここから無事に生きて帰れるとは思って来まい、さあ、野郎ども、の声に、力士たちに囲まれます。 辰五郎の家では、半次の敵を討ちたいとみんなが言いますが、辰五郎は動きません。新三の顔が見えず置手紙がありました。それを読んだ辰五郎が「しまった」と一言。その言葉を聞いてお雪の表情が変わり、飛び出して行きました。急いでいるところに、新貝主膳と出会います。主膳はめ組へ行くところだと。お妙は守之進と祝言をあげた、お雪が急いでいるので行こうとすると、「今日は新三郎と和解しようと思ってなぁ」と言った時、お雪 「遅かった。新さんは今頃相撲たちと、命を的に斬り合いをしているん です」主膳 「何?」お雪は、一刻も早くめ目組へ行って、兄さんたちに助っ人を頼んでくれと言って、駆けだそうとしたとき、お雪は火の見櫓に目がいきます。お雪 「そうだ、あたしゃ」といって、火の見櫓を上って行き、半鐘を鳴らしはじめました。それを主膳が見ていました。その頃、花山部屋の外では、新三が大勢を相手に大立ち廻り。め組では、半鐘の音に準備ができたが火の手が見えないが、半鐘からしてどう見たって近くだ、と言っている処へ、主膳が辰五郎に大変だと、飛び込んできます。主膳 「一大事じゃ、新三郎が花山部屋の相撲取りのところへ、一人で斬りこん でいったぞ」みんなが新三を・・と言いますが、辰五郎「半鐘がなっているじゃねえか。俺たちは火事場にいかなきゃならねえん だ」主膳は慌てて「あれは火事の半鐘ではない。お主の妹御は新三郎の危急を救うた めに打ちならしている鐘だ」辰五郎「なに、お雪が」 みんなの「かしら」の声に、辰五郎「・・そうか。おい、みんな、支度は十分か。誰にも遠慮はいらねえぜ。 火消が押し出すには、立派過ぎるぐらい見事な半鐘がなっているじゃ ねえか。火元は花山部屋の喧嘩場だ、新三を殺すんじゃねえぞ」・・・「かしら」と、みんなが整列します。、辰五郎「それ、押しだせ」・・・「おぉう」 お雪が半鐘を鳴らし続けています。(新三の立回りになります) 喧嘩場にめ組がやってきました。待っていたぞと四ッ車、望みどおり相手になってやると辰五郎。(新三、辰五郎、め組の鳶たちと四ッ車と花山部屋の相撲とりとの大立回りとなります)(すごい橋蔵さま立回りで一回転しているのです) 屋根から瓦を投げつけたり、荷車の米俵が投げつけられたり、空の桶たるを屋根から落としたり、梯子で挟み撃ちにしたりと、入り乱れます。そこへ町奉行根岸肥前守が、つぎに金看板の甚九郎がやってきました。「待った待った、この喧嘩、金看板の甚九郎が預かったぞ」根岸肥前守も「この喧嘩金看板の甚九郎とこの根岸肥前守が預かる。そうそう控えろ」と。喧嘩は両成敗。庶民に迷惑をかけた罪は改めて吟味する。新三が辰五郎を見て、自分のためにというような顔をします。 喧嘩の合図に半鐘を鳴らしたのは重々の不届き罪は許すことは出来ない。辰五郎に半鐘を鳴らしたものをこれに出せと言われ、辰五郎「へい、その半鐘は、確かに、このめ組の辰五郎がならしましてござんす」新三その言葉を聞き、辰五郎にそれは・・というような態度をし、新三 「とんでもねえ、半鐘は手前が鳴らしたんでござんす」そう言った新三を辰五郎が止めるようにしたとき、お雪が走り出てきます。お雪 「申し上げます。半鐘は確かに私がこの手でならしたのでございます」新三 「お雪さん」慌てたようにお雪に近づくが、備前守と甚九郎を見て、離れながら新三 「何を言う、俺だ」辰五郎「よさねえかい。引っ込んでろい」 まさか、三人でならした訳でもあるまいに、という肥前守に新貝主膳が、半鐘のなるのをこの目でしかと見た、と言います。肥前守「なに、まことか」主膳 「されば、不思議なことがあればあるものであるよな。確かに鐘はなってい たが、 見上げると鐘を打つ人影は見えなんだ」江戸の半鐘はさすがに気が早い。喧嘩を火事と間違えて一人でなり出したのだ、と主膳の言うことを聞いていて、みんな下を向いて神妙な雰囲気。肥前守だけが「なるほどのう。そう聞けば、そうかもしれんな。いやはや、そそっかしい半鐘め。ひとりでになり出したとあっては、これは、半鐘を島流しにせねばなるまい。これ、そつこく半鐘を召し取れ」肥前守、主膳、甚九郎が笑い、辰五郎、新三、お雪も笑顔になりました。 主膳の情のある計らいと、肥前守の粋な計らいで、よかったよかった。節分の日、晴れやかな気分で豆をまく姿で、幕となります。 (完) (追)ラストの豆まき部分、ほんのちょっとですがyoutubeに画像がありますので載せておきますね。(この画像が削除された時はごめんなさい)
2017年04月27日
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「熱いですかい」「うぅん」お大師様のお参りの帰り、料亭で二階の侍と関取がうるさいので、新三が亭主に話をつけに行く。新三「お前さんに詫びを言ってもらったって仕方がねえ。二階へ駆け上がって文句 を言ってもいいが、それじゃ同じ客同士、ことがあらだっちゃ、この家も迷 惑だ。おとなしく、お前さんから話を通そうっていう訳だ」 亭主「なにしろ、向こうはお武家様と関取衆なんでございまして」新三「それは承知の上だ。相手が関取とお武家なら、こっちはめ組の辰五郎一家 だ。客にかわりはあるめえ」 静かにしないのに腹を立てて二階に行った若い衆が、関取に階段から落されてしまいます。怒った新三に関取が、勝負をする気かとけしかけます。新三「そうさ・・」 関取が「こいつはおもしろい。いくぞ」と言って階段を一歩降りた時、新三が素早く階段を上がって、身をかわしたので、関取はそのまま勢いで障子を破り池に突っ込んでしまいます。 大笑いして「ちょっと触っただけなんだがな」という新三に 今度は、関取四ッ車が相手だと出てきた時、半鐘がなり響きます。 逃げるのかという四ッ車に、辰五郎は、「にげやしねえ。ジャンとなりゃ、命を的に繰り出すのが、俺たちの稼業だ。そいつを捨てて、くだらねえ喧嘩遊びはできねえんだ」と言いいます。おさまらない四ッ車です。め組では、辰五郎も小頭も留守だからといって、押し出さないわけにはいかない。お雪が纒を振るといい、火事場に出て行きます。辰五郎達も急いで戻って支度をして火事場に向います。め組の纒はお雪が屋根の上で持っています。辰五郎、新三たちが火事現場に到着しました。辰五郎「よくやってくれた」新三「纏は誰だ」「お嬢さんです」の声に、辰五郎「なに、お雪が」その時、新三が梯子を駆けあがっていきます。 (ここからは、新三とお雪が火の粉の中で、しっかりとお互いの愛を確かめ合う場面になります。新三にしがみつくお雪の表情、お雪をしっかりと抱いた新三の表情が、とってもよいです。そして、見つめ合う二人・・二人の目の動き、表情・・さすが"トミイとマミイ"のコンビです)猛火の屋根の上では、お雪が新三の来るのを今か今かと頑張っていましたが、お雪「新さん、もうだめ。新さん・・・」お雪が纒を支えるのがだめになろうといた時、 新三「お雪さん、俺だ。しっかりしろ」お雪「新さん」新三「さぁ、さぁ、俺にしっかり抱きついて、手を離しちゃならねえ」お雪「ええ」 お雪「新さん」新三「熱いですかい」 お雪「うぅん」 (辰五郎の「新三を好きになっちゃいけねえ」という言葉に反して、お雪と新三の間は深くなっていきます。新三も火消としてお雪と一緒に生きていこうと決心ができたようですね) 続きます。
2017年04月22日
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あたしにとっても大事な人なんだ(お雪は新三が手柄をたて、め組の一員になったし、恋心を抱いていますから、うきうきしているようです。)お稽古から帰ってきたお雪に話しておきたいことがあると辰五郎が言うのです。最近のお雪の様子を見ていて忠告するのでした。そのの時、新三が部屋の前を通ろうとしていましたが、自分に関する話が聞こえてきたので立止まり聞いてしまいます。新三はどんな事情で元の侍に戻らなければならないかもしれない。(新三は出て行って何か言いたいようでしたが・・) 万一、何かの事情でいなくなった時、お雪に悲しい思いをさせたくない、と辰五郎は言います。 そんなことぐらい分かっている、と泣いて言い、お雪は部屋を出て行きます。(新三はお雪に声をかけたい気持ちでしたが・・辰五郎にきずかれないように部屋に戻っていきます) お雪が入口土間の方へ出て来た時、新貝主膳とお妙がやってきました。新三郎という侍はいない、小頭の新三という者はいるが、とお雪が言いますと、主膳は新三というものが新三郎であると言います。 主膳について出て来た新三ですが、新三「どこまで行きますんで」(横顔も素敵です) 主膳「わしの屋敷までじゃ」新三「そいつはいけねえ」戻ろうとしたとき、堀川十兵衛が「久しぶりじゃな」とやってきたのです。新三深くお辞儀をします。十兵衛は、山岡が命拾いをした事も、殿からお許しが出たことも知ってはいまいと、言います。新三は、主膳の顔を見ると、主膳はそれを知らせようと探しまわっていたのだと言います。新三は、それを聞き安堵した様子をします。 が、堀川十兵衛が畳み掛けるようにこういうのです。一日も早く新三を連れ帰ってお妙の婿にしたい、と。新三はそれを聞いて大笑いして「そうですか、山岡は生きていたのですか」と言います。 呼び出された新三のことが気になったお雪が様子を窺っています。主膳「十兵衛殿の御厚志、新三郎早く礼を言わぬか」新三「ちょっと待っておくんなさい・・その話、ちょっとばかり変ですぜ」主膳「何を言う」新三「確かおいら、国を飛び出すとき、ご家老さまとは何の縁もねえ人間になった はず。・・それに町人暮らしがすっかり板についた・・今日この頃のおいら でござんす」 主膳は馬鹿な事をと。新三「馬鹿かもしれねえ。だが、今の俺にゃ、都合の悪い時にゃ知らねえ人間、 都合が良くなりゃ帰ってこいなどと、そんな勝手な侍暮らしが、本当に馬鹿 馬鹿しくなってきやした」千五百石次席家老の家柄を馬鹿馬鹿しいというのか、という堀川に新三「そうですね。身分だ、家柄だ、家名だと、そいつを守りてえばっかりに、 ああだこうだ・・・いやだなぁ・・おいらもっとてめえっというものを大事 にして生きていきてえ」 そして、新三はお妙に言うのです。新三「おめえさん、何だってこんなところまでおとっつぁんの言いなりに付いてき たんだ。もう少し、自分てえいうものを大事にしなくっちゃいけねえなあ」(この表情もよいです) 新三「好きな男がいるんなら、少々ぐれえ無理は通しても一緒になることだ。 (^-^)そう言うおいらも、どうやらこの女と思う人に、近ごろで会い ましてね」(この横顔いいと思いませんか、私こういうちょっとした瞬間の横顔好きですねぇ) そのような戯言無礼な、格別のお眼鏡に叶いゆくゆくはお国家老の要職を継ぐ身であることをわすれたのか、と主膳が言います。新三「ふん、あいにくそれが、そうはいかなくなっちまったんで。・・・まあ、 見てやっておくんなせい」 片腕抜いて見せた刺青にそれぞれがハッとします。武士たるものがいやしい鳶人足なり下がったうえ、刺青まで彫って、新貝家の恥、斬って捨てると主膳、それを止める堀川。そこへ様子を見守っていたお雪が飛び出してきます。お雪「お待ち」 その声の方に新三は慌てて刺青を隠します。(お雪に見られては・・と急いで袖を通すところです。橋蔵さまならではの表情です。可愛さが出ているのです) お雪「新三が人殺しでないと決まった以上、新三を斬ったら、あたしが承知しな いよ。あたしばかりじゃないんだ、鳶人足の江戸いろは四十八組の火消し 九千五百人が承知するもんかね」お雪「新さんはね、め組にとっちゃ 大事な人なんだ、渡すもんかい。いえ、あたし にとっても大事な人なんだ」(新三はお雪の言葉にびっくりしたような顔をします)その言葉を聞いて、新三はお雪の方をみます。主膳はお雪の言ったことに腹を立てますが、「今日は素直に帰ってください」と新三に言われ引きさがります。 さあ、どうなるのでしょう。叔父の新貝主膳は立腹し、気の強いお雪は引くことをしません。お雪ははっきりと新三に惚れていることを言いました。新三も好きだという事をもらしました。でも、辰五郎は、元は侍である新三と妹のお雪の間を許してはいません。(この作品モノクロですが、橋蔵さまは本当に美しいです) 続きます。
2017年04月19日
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め組が一番にとったぞぉ半鐘がなり響いています。火事は何処だと町のみんなが騒いでいると、火事は将軍様がいる千代田のお城だと分かります。通りを町火消し一行が走ります。お城の常火消の他に町火消も城内に入れるという特別な御達し、め組の面目にかけてお城は焼いてはならないという辰五郎からの言葉、め組も火事場に出かける整列をした時、新三が辰五郎に駆け寄ります。新三「頭、お願いだ、あっしもお供させてください」 辰五郎「いけねえ、おめえさんは、まだ素人だ」新三 「素人だろうと何だろうと、みんなと同じめ組の人間じゃありませんか」辰五郎「だから留守を頼むぜ」新三 「留守番なら、姐御とお雪ちゃんが」「め組の人間なら、俺のいうことをおとなしく聞いて待っていろ」と辰五郎は新三に言って、火事場に向います。お雪 「なにも、そう気を落とすことないわ。大丈夫よ、火事は江戸の華だもの。 またそのうちにきっと何処かにあるわ」 (お雪さん、火事がそうあっては困りますよ)新三は何かを思い詰めているような顔つきをしています。お雪が新三の様子に気がつきます。お雪はハッとして「新さん・・」と、新三の足が止まります。 お雪「あんた、火事場で死ぬつもりだろ・・そうはいかないよ」 お雪の言うことを振りきって新三は・・・火事場に行ってしまうのです。 お城の火事はなかなか鎮火せず、このままでは火の見櫓に火が点いてしまいます。采配を振るっているのは江戸城内吟味役新貝主膳、そこへ、め組がやって来ました。主膳 「め組の組頭か」辰五郎「へい、辰五郎ともうしやす」主膳 「噂には聞いておる。拙者は御用部屋吟味役新貝主膳じゃ、何分頼む。 ここが燃えてはわれわれの面目があいたたん」辰五郎、新貝主膳と聞いてびっくりします。(そうですよね。まさかこんな所で新三の叔父さんに会うとは思ってもみないことですから)辰五郎「なあぁに、見てておくんなさい」め組の若い衆が水を手渡しで運んでいます。そこへ新三が入ってきました。 半次 「あれ、てめえは、あっ、おめえ」頭に怒られるぞと半次は新三に言いますが、そんなことはおかまいなしの新三です。(さっき、お雪に見せていた深刻な表情はみえません。火事場のみんなの仲間にはいった新三は生き生きしています。半次の慌てた様子が・・)(私この場面好きですの。新三が何事もないようなとぼけた様子で仲間に入っている、橋蔵さまいい顔している) そこへ、松平様の火消がここから上るから、め組が掛けている梯子をよこせと相撲取りがやってきます。櫓に上りたかったら自分たちで梯子をかけろとめ組が言うと、町火消の分際で、御紋入りの纒にむかえるなら向って見ろと、め組の火消を押し倒します。新三が立ち向かい、もう一人の相撲取りに他のものが立ち向かった好きに、梯子を上り、あとが上ってこられないように梯子を屋根にあげてしまい、「ざまぁみろむと言う感じです。(新三、梯子を上るのが速いし格好いい)(右端の画像は煙でかすんでいるのでぼゃーとしていますので悪しからず) 猛火で風がおきている屋根を新三は上って行く気です。下には、辰五郎がやってきました。め組の仲間が見守っています。「馬鹿野郎、てめえが出るまくじゃねえ降りてこい」に、新三はにこっと笑うと、厳しい顔つきで屋根を上っていきます。(ちょっと歌舞伎風かな・・見得を切るような) 纒を持って先に行く仲間が足を滑らし纏が・・というところへ新三が纒をもって上り、纏が振られました。下では辰五郎も見守っています。 それを見届け、辰五郎は嬉しそうな顔で「みんな、新三を殺すんじゃねえ」と言うのでした。新三 「火の見櫓の消し口は、め組が一番にとったぞぉ」(風の勢いで火の粉が新三たちに飛び散る感じがいいですね。臨場感満天です)新貝主膳が見ていて、「あっぱれだ」その瞬間「あの男は・・」辰五郎「あれは、うちのわけい奴で、新三っていうケチな野郎でござんすよ。 とうか覚えておいてやっておくんなさい」主膳 「なに、新三。いや、あれは確かに、新三郎だ」辰五郎「なあに、新三でござんすよ。どうやら、今夜の一番手柄は、あの野郎が」猛火の中、新三はしっかりとめ組の纒を立てていました。 (新三は、一人前の火消しになったのです。これで、お雪が心配していたようなことはなくなりましたね。これで、新三はめ組の纒持ちとして、立派に町人として生きていく覚悟ができたでしょう)(橋蔵新三は流石ですねぇ、スリムで鯔背な火消もバッチリ!!お雪だけでなく誰もが惚れ惚れします) 続きます。
2017年04月16日
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うちにいておくれめ組の辰五郎のところでは、皆が集まって、新三郎から郡上での出来事を聞いていました。国表を出奔した時、故郷を捨てただけでなく、武士も捨てたのだという新三郎です。 新三郎「辰五郎殿、貴殿のめ組に拾われたのも何かの縁、如何でござろう、私を もう一度拾ってはくださるまいか」辰五郎「と、おっしゃいますと」新三郎「私は今日から町人になろうと思う。同じ町人になるなら、火事場という いさぎよい戦場を持った火消しに私もなってみたい。お願い申す」 辰五郎もお雪もみんな言葉がありません。新三郎「お願いでござる・・・辰五郎殿」 新三郎は辰五郎に聞かれ、追っていたのは江戸城内吟味役新貝主膳という伯父だと言います。根岸肥前守と新貝主膳は、碁を打ちながら話の続きをしています。新三郎が死んだと思った山岡助十郎は生きていて閉門謹慎、新三郎にはおかまいなしとのこと。そこで堀川十兵衛から再び新三郎を婿に向えたいとの話が来たというのです。吉報を知らせてやろうと思ったのに、逃げ出しやっと追い詰めたところに火消の行列で見失ってしまったと言います。そこで、根岸肥前守は、江戸いろは四十八組の総元締めを預かる金看板甚九郎に相談することにします。 こちらは、め組の辰五郎の家辰五郎「よろしゅうござんす、お引き受けいたしやしょう」新三郎「おぉ、かたじけない」みんなもほっとした様子。張り詰めていた空気がなごみます。(しかしお雪の表情は何かわだかまりがあるようで、明るくありません)事を打ち明けて頼まれた以上ことわれないという辰五郎。しかし、新三郎の手にかかって殺された身内が訪ねて来たらどうするつもりか、と聞かれます。(お雪が新三郎の方を見ます)新三郎「その時は、・・・見事に討たれ申す」 辰五郎「よろしゅうござんす。確かにそれまで引き受けやした」みんなも、新三郎の覚悟を聞いた以上引くわけにはいかないと・・皆に礼を言います。新三郎「おのおのがた、何ともお礼のもうしようもござらん」め組に入るなら、おのおのがたはいけねえ、と半次。新三郎「何ともうそう」 半次「すまねえ、頼むよみんなって」新三郎「すまねえ、頼みますよ、皆さん」(すまねえ、まではよかったのですが、やはりその後はいけねえ・・使い慣れない新三郎、丁寧な言葉になってしまいます)みんな大笑いをします。 が、お雪は何を怒っているのでしょう。立って部屋を出て行ってしまいます。 そこに金看板がやってきました。若い侍をひろったそうだが、新貝新三郎というのではないかとやってきました。町奉行根岸肥前守から頼まれて、半次が若い侍の事を言っていたので、もしやと思いやって来たのです。お雪は慌てて、新三郎を奥へ連れていきます。金看板は昼間の若い侍を渡してくれときり出します。奥の部屋では、お雪が慌てて色々と用意をしています。新三郎「一体どうしたというのです」お雪「うちの兄さんも頭が上がらないその人が、あんた連れに来たんだよ」 お雪「このうちであんたを渡したんじゃ、折角匿った兄さんの男がすたるってえ もんさ。・・さあ、向こうむいて」 いったん匿ったものをおいそれとは出すわけにも行くまい、しかし、確かにこうと睨んだからこそやって来たのだ、と金看板はいうのです。そこに、お雪が何事もないようにやってきます。お雪「小父さんが言っている人は、この人のまちがいじゃないんですか」町人髷に結い上げ火消半纏を来た新三郎が現れます。お雪が、今度、め組に入った新三というものだと紹介します。新三は金看板に頭をさげます。 (ここからは、火消の新三でいきますね) 新三が身内になるについて金看板から盃をもらいたいと思っていたという辰五郎に、金看板は下手な芝居は通用しないと言います。お雪「おじさん、この新三はいくいくはめ組をしょって立つ男なんですよ。 あたしだって、いつまでもお婿さんをもらわずにはいられませんからね」(みんな驚いたように、お雪の方を見ています)お雪「そこまで言えば、小父さんも得心がいったでしょ」 金看板甚九郎も辰五郎とお雪がそこまでして匿うとはと・・金看板はいきな計らいをするのです。甚九郎「新三さんとやら、どういう理由でここへ来なすったか知らねえが、まぁ 今後ともよろしく頼みますよ」新三 「こちらこそよろしく」(みんなも一安心、よかったですね)庭にお雪と新三の姿があります。お雪の様子がどうも・・新三のことで心にわだかまりがあるような瑶かなのです。小さく溜息をついたりしています。新三「御厚志、かたじけのうござった」お雪「あんなでたらめ言っちゃって、ごめんなさい」新三「いやぁ、こちらこそ」 お雪「じゃ、何も言わずに出て行ってください」新三「出て・・」 お雪「あたしも兄さんも、もうこれ以上ごたごたに巻きこまれるのはたくさん」 新三「迷惑かけて、すまなかった」(橋蔵さま、本当にきれいですね。きれいすぎます)新三がお雪に頭をさげて行こうとしたとき、お雪「お待ち、もう行くのかい」新三「こうして逃げ回っても、所詮は罪は罪・・いっそ潔く江戸屋敷へ」お雪「罪を受けに・・」 お雪「あたしが言い過ぎたよ。せっかく兄さんが引き受けてくれたんだ。うちにいておくれ」新三「お雪さん」お雪「何が何だか、あたしには分からなくなってきた」そう言って、お雪は足早に去っていきます。そこへ半次が来て、あれは「ずっ一とうちにいていいってことなんだ」と新三に言います。二人の宛て打に愛が芽生えたようです。 橋蔵さまの苦悩に満ちた表情と目の動きは、何とも言えない・・・郡上での助十郎を斬ってしまった時の表情と目の動きもそうでしたが・・橋蔵さまは無言でも目の動きと目の表情が物語るのです。 目に表情があるのです・・端正な顔立ちで目の表情も素晴らしい・・これからの作品にも沢山でてきますから、作品を見てもらえば、その素晴らしさ、その魅力に惹きつけられてしまうことが、お分かりいただけると思います。 続きます。
2017年04月12日
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郡上八幡の将来を嘱望された若侍新貝新三郎が婚約者のことで同僚を斬ってしまったため、江戸に出奔、町火消しの纏持ちに転身するという作品。原作・沙羅双樹、“明星”連載の同名小説の映画化です。江戸はいろは四十八組、町火消しの中で男の中の男と知られため組の頭領辰五郎、その妹お雪は男勝りの江戸小町、その一家に飛び込んで来たのは、武士が嫌になって刀を捨てた粋で美男の纒もちの新三。ジャンと一打ち早鐘合図で猛火の火事場に命と恋に意気地を立て通す。鯔背で歯切れのよい江戸っ子橋蔵さまの新三、小気味よい魅力を引出している作品です。この時、橋蔵さまは、東千代之介、中村錦之助に続く東映時代劇の第三のスターとして地盤を作り上げました。ひばりさんと共演第5作目の映画になります。ひばりさんとの作品では皆様が一番にあげる作品でしょう。内容的には大川橋蔵主演映画ですね。これだけの歯切れの良い江戸っ子弁を使える俳優は橋蔵さまだけです。ちなみに、お妙役の松原千浪さん(橋蔵さまとの「ふたり大名」から桜町弘子)がこの作品でデビューです。第20作品目 1957年1月封切 「大江戸喧嘩纒」 辰五郎 大友柳太朗お雪 美空ひばり新三 大川橋蔵新貝主膳 香川良介金看板甚九郎 薄田研二根岸肥前守 神田隆お仲 三条美喜紀堀部重兵衛 明石潮お妙 松原千浪半次 星十郎いつまでも、ずっとお正月、火消しの出初式が行われています。江戸の町中を、辰五郎を筆頭に妹のお雪が木遣り歌で音頭をとり、め組が練り歩いています。その様子を見ている観衆をかき分けて、誰かから逃れるように、旅姿の若い一人の武士が、め組の行列に紛れ込み、先頭にいる辰五郎の前に身を隠します。辰五郎「おめえさん、どうなすったんだ」新三郎「すまぬ、匿ってくれ」 といって行列の中に。追って来るものを気にしながら一行の半次の前で隠れるようにしていますと 半次 「なんで、おめえさん。木遣りの行列かき乱そうなんて、いくらお武家さんでも、黙っちゃあいられねえぜ」 新三郎「すまん、追われているのだ」 半次 「えっ、おっ、そんなこと言ったって、おめえさん」 お雪 「半次」 半次 「えっ」 お雪 「お前、その辺の横丁で半纏脱ぎな」半次 「えっ?半纏を」 横丁で、新三郎と半次は衣装を変えたようです。新三郎と着物と刀を差し、おかしな格好で歩いている半次を見かけ、金看板甚九郎が声をかけます。半次は、辰五郎が途中で侍を拾って着物を取り変えたことを話します。場面は、め組の辰五郎の家新三郎いる座敷に、お雪が正月の膳を持って入ってきます。新三郎「おどろいたなぁ。同じ人とは思えぬ」 (先ほどあった時は若衆姿でしたものね。)お雪 「だって、お正月だもん。さっ、おひとついかが」新三郎「いやぁ」新三郎はその盃を口に持っていこうとして手を止め、お雪に言うのです。新三郎「お雪殿、拙者をこの家においてはくれまいか」お雪 「うちに」新三郎「いつまでも、ずっと」 (えっ、余りにも唐突です。しかし、新三郎は決心したことがあるようです。)(ここの場面で、新三郎の口の動きとセリフがちょっとあっていません。映像を撮った時のセリフではなく、あとのアフレコの時セリフを少し変えていますね。)侍がなぜ鳶の家にと聞くお雪に、侍がつくづく嫌になったのだ、と新三郎は言います。町奉行根岸肥前守の屋敷に城内吟味役新貝主膳が火急の用事とやらでやってきました。碁を打ちながら話します・・新貝主膳は甥の新三郎を品川に現れたところを見つけて江戸まで追ってきたが、逃げられたと(新三郎を追っていたのは叔父の新貝主膳だったのですか)・・・「心配するな」そうなれば町奉行の役目だと根岸肥前守が言います。 新三郎という甥の話、何故追っているのでしょう。国表美濃の国郡上での話とまいります。これから、何故新三郎が江戸に来たのかが明かされます。郡上八幡の祭りの夜、新三郎とお妙が祭りの場所から離れて人気のないところで会っています。お妙の父堀川十兵衛はお妙の婿に新三郎を望んでいるようで、また、新三郎も江戸の叔父もそれを喜んでいるようです。しかし、新三郎は、お妙は石崎守之進と恋仲という事を知っているのでした。 お妙 「新三郎様」 新三郎「お隠しなされるな。守之進とお妙殿が恋中であることを、拙者よく存知て おります」 それを聞いて、お妙はハッとしたて少し後ずさりをします。新三郎「何故、一日も早く、そのことをお父上に申しあげんのです」お妙は、何も言えず下を向くのです。 新三郎「身より頼りの少ない自分にとって、次席家老千五百石の跡取りは悪くな い話で、藩中にはそう考えてお妙殿を・・と思っている者は多い。山岡 助十郎も」、と言うとお妙が「嫌です、あんな人・・」ときっぱりと言います。 新三郎「しかし、先方では必死です。だから、少しも早くお父上に守之進のこと を」お妙 「でも、あの一徹者の父が」新三郎「なぁに、二人で力を合わせるのです。及ばずながら、拙者も力になりま す」お妙「お願いします」新三郎「いや、こんな所にお連れしたのは、あなたが心配してると思って、この ことを申したかったのです。さぁ、あちらへ参りましょう。守之進も待っ ております、さぁ」 その様子を陰から見ていた山岡助十郎とその仲間は、新貝がお妙の亭主気取りでいるのが腹立たしく、このままでは千五百石が無駄になってしまう・・・「どうせやるなら」と山岡は何かを企みます。お妙と守之進は踊りの輪に入っています。堀川十兵衛と新三郎が一緒に踊りの輪を見ています。堀川 「妙の前にいるのは」新三郎「石崎守之進です」堀川 「守之進か」新三郎「ああしていると、お妙殿とは似合いの夫婦」 堀川 「馬鹿な、妙の婿はその方ではないか」新三郎「しかし、拙者よりも、守之進の方が・・」 堀川 「言うな」祭りからの帰り道、新三郎は殺気を感じます。 「人違いをするな」という新三郎に、新貝新三郎と知っての上でのことだと言ってきました。新三郎「その声は、山岡・・」斬りかかってくるので新三郎も刀を抜きます。背後からかかってきた山岡を斬ってしまいます。 そこに、守之進や堀川十兵衛、お妙がやってきます。堀川 「新三郎、その方が」新三郎「斬ってかかられましたので」 (橋蔵さまのこのせりふの言いかたよいのです)堀川 「馬鹿な、妙との祝言を間近に控えた身で、偉いことをしてくれた。 このようなことになった以上、もはや、この堀川の跡目に向えることは できん」理由も聞かずにそんなことを言うとは・・という守之進に堀川は言うなと遮ります。堀川 「武士の情け、この場は見逃す。何処へなりとも逃げるがよい」 (それを言われた時の新三郎です・・・この時の新三郎の気持ちとても分かります。口惜しいです。そして、橋蔵さまのこの表情・・むなしさが出ているので、見ている方は新三郎に惹きつけられてしまいます) 堀川は新三郎とは何のかかわりもなかったのだ、と言います。新三郎がお妙の方を見ますと、お妙は何も言えず横を向いてしまうのです。それを見た新三郎は・・自分自身が・・・(うすわらいを浮かべた表情・・・悔しさ分かる、わかりすぎるくらい分かります) 守之進に「お妙殿のことを頼むぞ・・・御免」といって新三郎は郡上を離れたのでした。 新三郎を見ることが出来なかったお妙は、その言葉を聞いてハッとするのです。 このようなことがあって、新三郎は江戸へ逃げて来たのです。でも、何故叔父の新貝主膳が見つけ出しているのでしょう。それはそうとして、新三郎が、お雪に言った言葉が気になります。次回は、江戸に戻って、め組での様子を見ることにいたしましょう。 続きます。
2017年04月08日
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こちらから見せて使わそう長崎屋別宅で大宴会が開かれる夜、お七は外国に売られるくらいなら言う通りにするから、ここで働かせてくれと言います。お七はドレスで歌を披露しながら、異人に愛想を振りまきながら、忍び込んで窓の外にいる五郎八から短筒を受け取り、みんなをホールドアップさせ、異人たちを外に出したところまではよかったのですが、短筒を取られてしまいます。お七と五郎八が取り囲まれ危うし・・そこへ「待て」窓から入ってきたのは白頭巾でした。真鍋は今日こそ頭巾を取って貴様の正体をとっくりと拝見させてもらうと。源次郎「はっはっは、拙者の正体がそれほど見たいか」真鍋 「うぅーん」源次郎「悪行重ねし汝らの命も、今日が最後とあらば、もはや拙者の白頭巾も用は ないのだ・・こちらから見せて使わそう」といって頭巾をはずします。 お七 「まあ、川島先生」源次郎はお七達の方に歩み寄り源次郎「お七ちゃん、心配しなくてもいい、もう大丈夫だ」源次郎の手配により、屋敷の周囲は町奉行所の手で固められている、と真鍋と金八に言います。 源次郎「かくなる上は、神妙にしたほうが身のためだぞ」という言葉に、「斬れ」の言葉が飛びます。(さあ、立回りです) 源次郎のスカッとする切れのある太刀さばきとお七のフェンシングを使う立回りとなります。真鍋と金八が外へ逃げようとしたとき、町奉行所の撮り方達が入ってきます。お七は牢にいる人達を助けに行きます。源次郎「もはや、手向かいは叶わぬぞ。神妙に縄につけ」真鍋 「黙れ、外国奉行山田周防守様のお傍用人を務める真鍋新八郎、汝らごと き意のままになるものではないぞ」そこへ、「見苦しいぞ、新八郎。いさぎよく縄につけ」と、真鍋が「どなたかは存じませぬが、外国奉行山田周防守」と言った時、源次郎「言うな、その方、この御方を何と心得る。阿部伊勢守様なるぞ」周防守にはすでに謹慎申し付けたので、いさぎよくお縄を頂戴いたせ、・・ということで一件落着。伊勢守から、このたびの働きを褒められ、妙姫は、五郎八と川島先生の助けがあったればこそと言うと「はっ」と膝待づく源次郎を見て、「まあ、先生」といい源次郎の方へ歩く妙姫に伊勢守が明かします。伊勢守「これは、十内の息子じゃ」妙姫 「えっ、十内の」寺尾十内の次男坊で、小さい時から御玉が池の道場に内弟子にやってあったので、妙姫が顔を見知らないのを幸いと思い、監視役を申しつけた、というのです。妙姫 「まあ、爺やの子」源次郎「寺尾源次郎と申します。只今までのぶしつけの数々、何卒お許しくださ いませ」 妙姫 「いや、いやだわ。わたしには、やっぱり川島先生の方がいいわ」伊勢守「そのような無理を申すでない。だが、このたびの手地の働きにめでて、 何かそちの望みをかなえてやりたいが」妙姫 「今しばらく町にいたい」と。伊勢守「うん、うん。(にやりとします)ならば思いのままにするのがよかろう。 だが、そちの手紙のほどもよ~く分かった。もはや、源次郎をかえ添え につける必要もなかろうな」妙姫「えっ」そんな・・という表情で源次郎の顔を見ます。源次郎はその妙姫の表情に何というか・・・。(源次郎の目の表情から二人の間の心境察してくださいね) 伊勢守、二人の様子を見ていて、ニコッとしたかと思うと、声高々と笑うのでした。町はお祭り、山車の上にテコマイ姿のお七が、お七を優しく見守る源次郎がいます。顔を見合わせにっこりする仲の良い二人です。(お七は出しの上、源次郎は下にいます。やさしいな)そこへ、「親分殺しだ」と五郎八が向かえに来ます。現場へかけていく後を、源次郎がお七を見守り歩いていきます。 (お七ちゃんは、いつの間にか親分に、五郎八は子分になったのですね)幸せになれてよかった。お七ちゃんと川島先生いい感じですね。 (完)
2017年02月23日
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危ない仕事じゃないのかお七と五郎八は根津権現境内の女の死骸から水商売をしていたと見当をつけ、根津の遊郭を洗うために薬売りに変装をして潜入します。遊女たちの話から、死んだのは御舟楼のお倉という女と分かりました。御舟楼は海産物問屋の長崎屋金八が妾にやらせていて、庭奥には長崎屋の別宅がありました。その夜、お七と五郎八は長崎屋の別宅に忍び込みます。奥庭にある洋館からは音楽の演奏が流れ、洋装の男女がダンスをしています。(流れている曲はブルース見たい。この時代・・こんな音楽?とは思うけれども、そしてこんなダンスホールがあったの?と思います。昭和の初めの頃のダンスホールのような感じだな、と思いますが。でも、ストーリー的には、こういう風景が分かりますので、難しいことは考えずにいきましょう)長崎屋は遊女を使って偉人達を接待するために、町から生娘をさらってきては異人にあてがっていたのです。そしてここから逃げた女が殺されたのです。その中に幕府の外国奉行山田周防守の姿がありました。秘密の洞窟へ潜入することができたお七と五郎八でしたが見つかってしまいます。五郎八は気を失ってしまい、お七は洞窟にやってきた侍達に一人で立ち向かっていましたが、相手は大勢のため、追い詰められてしまいます。そこへ、またもや白頭巾が現れ、舟をつけてあるから五郎八を連れ早く乗るように言い援護します。 (危なくなると助けに来てくれる正義の見方・・橋蔵さまは目鼻立ちがいいので、覆面もいいですね) 白頭巾は二人が舟に乗ったのを確認すると、素早く舟に飛び乗り、艪を漕ぎます。川面を静かに漕いでいく舟の上、五郎八はまだ気を失っています。艪を黙って漕いでいる白頭巾をじっと見ていたお七が話を斬り出します。お七 「あの・・」声をかけた時、ふと夢で見た白頭巾の恐ろしい顔が、お七の頭に浮かびました。源次郎「どうかいたされたか」との問いに、「いいえ」と返事をして、白頭巾と何にも喋らずじまいのお七でした。お師匠さんもひょっとしたら長崎屋に・・と言うお七に、間違いなく長崎屋金八のしわざだと五郎八。しかし、御奉行さまが後ろ盾では、町方は手出しができないのです。お七 「そうね、御奉行さまを調べるのは・・・」(お七は何かを考えているようすです)老中阿部伊勢守が城から帰宅すると、妹の妙姫が待っていました。三つ指を付いてしおらしいお七がそこにいました。 (妙姫は半年前わがままを言って江戸市中で生活をしていたのでした)伊勢守は爺の寺尾十内を呼び、「妙がしおらしくしている時は、必ずひと魂胆ある」、妙姫を見張るように言います。寺尾十内が「姫の姿が見当たらない」と誤っています。家紋入りの空の文箱と短筒を持ちだしていなくなったのです。伊勢守の名前で偽の推薦状を作成し家紋付の文箱に入れて、お七は外国奉行山田周防守の下に潜入し、若侍山川七之助と名乗って奉行所に勤めることとなりますが、真鍋新八郎という者が、お七の顔を覚えていたような・・疑問をもったようです。(真部新八郎は根津の境内の殺人現場からずっと、お七の動向を監視していた男です)奉行所の外で、お七に呼び出された五郎八がいます。その様子を真鍋新八郎が見ています。お七は、真鍋新八郎という者が曲者、それから、別宅で宴会があるので、その時五郎八に忍び込んでほしいといいます。川島先生は元気にしているか気になり五郎八に聞きますが、お七ちゃんがいなくなったら、先生も突然雲隠れをしてしまったと聞かされ、心配になるお七です。その全貌を見ている・・真鍋の様子とお七の様子をみている、源次郎の姿がありました。(真部の方を見ていて、次にお七達の方を見て、真鍋の方にまた目をやり、ニタリとします。・・何か、これから??) その夜、お七は真鍋に麻酔をかがされ、長崎屋の別宅のお師匠さん達がいる牢へ連れて行かれてしまいます。金八の言うことを聞かない女たちは、異人の人買い船に売りつけているらしいのです。外国奉行山田周防守のところに源次郎らしき姿があります。山川七之助の件で源次郎(おや、裃姿です・・源次郎ですよね)が訪ねて来ていたのです。七之助がいなくなったこと、はっきりしたら推挙してくれた伊勢守に報告しようと思っていた、と周防守が言います。源次郎「さすれば、山川七之助は、逐電いたしたともうされるのでござりまするな」 真鍋が源次郎に、阿部伊勢守の気持ちを理解していらしたのでしょうな、と念を押します。源次郎「いかにも、何分、山川七之助は気に入りの家臣にて、殿もその後の様子を いたくお気にかけられ、一度様子を見届けてくるようにと拙者をさし使わ れた次第でござるが、さような事情なれば、拙者の一存に手良しなにご報 告申し上げるでござる。これにて御免」源次郎さっさと立ち去ります。慌てる周防守です。 周防守の屋敷外を通りかかっていた五郎八は、周防守のところから出て来た侍を見て・・おやっ、と思い声をかけます。五郎八「川島先生、側・・・」声をかけても振り向きもしなければ、返事もありません。おかしいな・・と思って後ろ姿を見つめていると 源次郎は足を止め、「五郎八親分」と声をかけふり向きます。 五郎八「あっ、な~んだ、やっぱり川島先生、脅かしちゃいけませんぜ。・・ でも、その格好どうしたんです」源次郎「いや、実は先ごろから士官していたんだが、いやはや宮遣いというも のは窮屈なものだよ。今更ながら、親分と一緒に踊りを習っていた 頃がなつかしいよ」 五郎八「でも、なかなか立派だ。お七ちゃんに一度この姿みせてやりてえなぁ・・ ところで、ねぇ先生、今度お七ちゃんと二人で、人攫いを捕まえる段取り になったんですが、・・先生も力貸しておくんなさい」源次郎「うん、うぅん、危ない仕事じゃないのか」そりゃ、危ない仕事だが、こちらがへまをやったら、お七ちゃんの命が危ない、と五郎八は言います。五郎八「お七ちゃんを助けると思って・・」源次郎「冗談じゃない、わしは危ないことと剣術の方はいたって苦手のほう、お七 ちゃんには悪いが、それだけは勘弁してくれ。・・では、失礼」 五郎八「はあ、・・あれあれ、あれでもさむれえ(侍)かな。あんな腰抜けとは思わ なかったな。誰が頼むもんかい」頼みになるのはお七ちゃんだけだと五郎八が呟きます。 続きます。
2017年02月22日
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白頭巾?何だいそりゃお七は五郎八と根津の自身番に、先日根津権現境内で見つかった女のことを調べに行きます。3日程前に、長襦袢姿の女が自身番に逃げ込んで来たのだが、すぐに片目の侍と男達に連れ返されたと聞きます。お七はあの時境内に来た忠言も片目だったと気がつきました。聞き込みの帰り道、お七たちは黒覆面の侍達に囲まれ乱闘になります。十手片手に応戦するお七でしたが、危うし!!そこへ白頭巾が颯爽と現れ、黒覆面の賊をあっという間に蹴散らしてしまいます。 (白頭巾が誰だか皆様はお分かりですね。白頭巾=源次郎ですから、台詞を書く時にややっこしいので、源次郎と書きます。でも、お七は白頭巾の正体が誰かわかっていませんから、彼女が気がつくまでお付き合いしましょう。私達は、白頭巾の源次郎と頼りにならない源次郎をどう演じるのか楽しませていただきましょう)お七 「あのぅ、本当に有難うございました。どうぞお名前を」源次郎「名乗る程でもござらん」お七 「でも、このままでは」源次郎「いや、そのようなご斟酌には及ばん。今後とも、十分気をつけられた方が よいぞ・・・御免」 と言うと、白頭巾は軽々と塀を飛び越えていなくなりました。ぼーっとしているお七です・・「素敵だわぁ」その夜お七は白頭巾の夢を見るのです。どこの人かもわからない、どのような顔の人なのかもわからない・・そのためお七の夢に出てきた白頭巾の顔は・・脅えているお七を助けに現れたのは川島先生(川島源次郎)でした。 ここからの場面はお七と源次郎の楽しい会話をお楽しみください。それにしても、この作品は、橋蔵さまとひばりさんの会話がとっても多いのですお七 「先生」源次郎「お七ちゃん、怖かったろう」そこへ、白頭巾が源次郎に斬りかかってきますが、源次郎の刃に倒れます。 (夢に出て来た川島先生は、頼りがいのある素敵な人でした)源次郎「もう、心配しなくていいんだよ」泣き出してしまうお七、「先生」とお七は源次郎に駆け寄り抱きつきます。源次郎「だから、わしが言ったろう、女だてら、つまらんまねをするんじゃない って。ほほぅ、なかなか素直になったな。さぁ、もう泣き止めて」 源次郎「女は女らしく」その言葉にかわいらしく頷くお七。源次郎「女らしいお七ちゃんを見ていると、わしは、お七ちゃんを好きになりそ うだ。好きになったらいかんかな」恥ずかしそうに下を向き、小さく首を横に振るお七、それを見て源次郎がお七を抱き寄せ、源次郎に抱かれたところで・・・ (2番目の画像・・「好きになったらいかんかな」の時のお七の表情はめ込んでみました) 目がさめて、夢であったかとガッカリしているところへ、文が投げ込まれました。「つまらぬことに手出しをするな」と書かれていました。女の死体のお灸の痕と白粉焼けから水商売の女とお七は推測、五郎八は根津の郭をあたって見ようと相談をしているところへ、源次郎がやってきます。源次郎「お仕事の邪魔をしては悪いかな」お七 「おら、先生、いらっしゃい。さあ、どうぞ」源次郎「おや、お七ちゃん、今日は馬鹿に愛想がいいじゃないか」お七「だって、少しは女らしくならなくっちゃ」源次郎「おいおい、お七ちゃん、今日は本当にどうかしてるぜ。何だか薄気味悪い みたいだな」(そりゃそうです。頼もしい先生に好きだと抱かれたのですもの)お七 「先生、夜中にこんなものを投げ入れた者がおりますの」投げ踏みを見せながら、源次郎の傍に寄り添うお七を見て、五郎八はおもしろくありません。ぶつぶつ言いながら手を打ちならします。源次郎は、どうしたのかという顔で、お七は邪魔をして、というように五郎八を見ます。 (それは五郎八はおもしろくありませんね。さっきまでは五郎八を頼ってくれていたのに、源次郎が来たら、五郎八のいることも忘れて、源次郎に頼り仲良くしているのですから)お七 「それにね、先生、夕べの帰り道、大勢の覆面に襲われたの。危なくなった 時に白頭巾が出てきて」源次郎「白頭巾?何だいそりゃ」お七 「白い覆面をしたお侍。何だか知らないけれど、あたしたちを助けてくれた の」源次郎「ふ~ん、物好きな人間もいたものだなあ。一体何者だろう」お七 「あたしも何だか薄気味わるいの」五郎八「へぇ~え、そうですかねえ。あの時は、"まあ~素敵だ~わ~"なんて言って いたくせに」源次郎「はっはっはっ、お七ちゃんの理想の人が現れたってわけだな」五郎八「そっ、そうなんですよ」お七 「そんなこと、そんなことないわ・・それより、知っている先生にでも助け ていただいた方が、どれだけ嬉しいかしれないわ」源次郎「それじゃ、わしも剣術を習っておけばよかったな。あっはっは、 そりゃぁ、わしだって、バッタバッタと斬り倒す豪傑になって観たいが、 そこまでいくには、随分道場で叩かれなければいかんからな。それに わしは、小さい時から、女の子と一緒に飯事なんかは好きだったが、 だいたい、踊りや三味線を引いてる方が性に合っているんだな」 お七 「やっぱり、夢なのね」源次郎「えっ」お七 「ううん、何でもないの」親分行きましょう。急にしょげてしまったお七を見て、五郎八が心配します。「ガッカリしちゃった」と根津の郭へ乗り込むというのに足取りが重いお七でした。 続きます。
2017年02月18日
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そう言えば、書くのがちょっとずれてしまいましたが、1956年6月に国際スタジアムで「第一回橋蔵まつり」を開催した際、大勢のファンから早く後援会をとの要望がありました。その要望に応えて、「ふり袖太平記」がクランクアップしてすぐの1956年9月に、ファンが待っていた「大川橋蔵後援会」が東京上野精養軒で発足、茶話会が開催され、橋蔵さま出席のもと千名近くのファン、福島新芸プロ社長、美空ひばりさんをはじめ、菊五郎劇団、東映、松竹歌劇団、各新聞社、各雑誌社からの人達が参加し盛大なものになったようです。本格的にみんなで応援できるところが、この後、各支部が出来、数万人の後援会員を持つ大川橋蔵後援会の基盤ができたのです。第14作品目 1956年11月封切 「ふり袖捕物帖 若衆変化」 お七 美空ひばり 妙姫 美空ひばり川島源次郎 大川橋蔵寺尾源次郎 大川橋蔵早耳の五郎八 堺 俊二 喜代文 浦里はるみ真鍋新八郎 原 健策長崎屋金八 香川良介山田周防守 堀 正夫阿部伊勢守 神田 隆 寺尾十内 水野 浩 トミイ・マミイコンビ第4弾の娯楽作品です。この作品は、ひばりさんの「ふり袖捕物帖」シリーズ第一話になります。作品の中、ひばりさんが扮する町娘お七は、実は老中阿部伊勢守の妹妙姫で、若衆姿では山川七之助と。橋蔵さま扮する頼りない浪人川島源次郎は、実は伊勢守のところにいる爺寺尾十内の次男坊の寺尾源次郎、お七が危ない時は白頭巾で出現、とややこしい・・。これぞ東映娯楽時代劇というように、橋蔵さまとひばりさんの立回りがふんだんにあり、見ている私達を飽きさせず楽しく見られる作品です。トミイ・マミイコンビ・・気の強い女の子を優しく見守るお兄様という設定は守られています。喧嘩コンビは健在です。ひばりさんの独特なお色気のある声に、橋蔵さまが優しい声音と男の色気を放つ目。お二人の表情には引きこまれてしまうくらい素晴らしいです。橋蔵さまの立回りが、またまた上手くなっています。さすがチャンバラが好きな橋蔵さま、どんどん上手くなりますね。立回りの静と動・・一瞬止まって見得を切るではありませんが、一瞬の静のポーズが出来てきています。体の線も綺麗です・・あれだけ激しい動きの中着崩れもありません。ここも見逃さないでくださいね。この作品でも、最後の立回りの時に髷が乱れるのですけれど・・私、髷が乱れた橋蔵さま好きなんです。普通あれだけ髷が乱れたら美しくは見えませんよ・・橋蔵さまは色気があり美しいのです。右側の鳶の画像も髷が乱れているでしょう。(若さま侍の時も必ず立回りの時には髷が乱れます、いいですねぇ)女は女らしく映画の始まりは可愛い漫画風絵柄を背景に配役が出てきます。祭りの御神輿、ドレス姿のお七、覆面着流しの源次郎、目明し五郎八が描かれており、流れる歌も可愛らしく、楽しそうな雰囲気を誘います。江戸市中で今評判の小町娘が14人もさらわれていました。見回りをしていた目明しの五郎八は、用たしがてら稽古の帰りにさらわれでもしたらと、内弟子の松葉屋の娘を送っていく踊りの師匠喜代文とばったり会います。五郎八は、お師匠さんが留守中の稽古は誰がしているのか気になりましたが、お七ちゃんが代稽古をしてくれているようです。三味線の音、お七の唄いに合わせ舞っているのは・・?後ろ姿では誰か分からないのですが男の人ですね。なかなか上手いですね。(後ろ姿でも踊っている方は誰か、皆様はお分かりですね・・足の運び方、扇をかえす手の動き・・そう橋蔵さまです)あっ、正面を向きましたが、扇子で顔が隠れていて・・誰なのでしょう。おぅ、扇子が取れました。(綺麗な人、踊りも上手です。髪形からして浪人のようです)・・・(橋蔵さまがスクリーンに現れると景色がなごみます。オーラがあるのです) ここまで上手く踊ってきたのですが、次の振りを忘れてしまったようです。思い出せず、代稽古をつけているお七ちゃんの方を見ます。こんな感じでね。(画面はお七ちゃんと川島先生の表情はこんな風です) ⇒ ⇒ お七 「だめね、川島先生は」と言って、ちょっとうれしそうな顔をして立ち上がり、教えにいきます。お七 「しっかりしてください、こうですよ。いいですか」"ちり ちん とん とん ちり ちん とん とん" お七が川島先生に稽古をつけているところへ、五郎八が稽古をとやって来ました。(川島先生・・川島源次郎という浪人なのですね・・品のある二枚目で、お七ちゃんが稽古をつけるのを楽しそうにする訳がわかります)その時、師匠と松葉屋の娘がさらわれたという知らせがきて、五郎八と一緒にお七も松葉屋に行くといいます。玄関を出ようとした時、お七が「先生」と呼びます。お七 「先生も一緒に来て」 (画像したお七がかわいらしくいうのですが・・)源次郎「うん、他ならぬ師匠のこと、何とか力になってあげたいと思うが・・・ 何分、わしは、これが出来んでな。あまり危ないところへは近寄りたく ないのだ」(扇子を刀のように構えて、剣術ができないというのです)お七 「まぁ、あきれた。先生ってそんなお方。あたし、見損なったわ」源次郎「こんなことは五郎八親分に任せておいて、お七ちゃんはやっぱりお師匠 さんの留守を・・・」お七 「余計なお世話です。お師匠さんの安否も分からないのに、のうのうと お稽古なんか、あたしにはとってもできない相談。誰も助けてくれなく たって、あたし一人でちゃーんとお師匠さんを助け出して見せますから ね。なにさ、臆病者、腰抜けの、へっぽこ侍。ふふーんだ」お七はぷいとして出て行きました。呆気にとらわれる源次郎です。松葉屋に聞きこみに行っている時、根津権現の境内に女の死体が・・との知らせがきます。女の死骸を見てお七は殺しとみます。その様子を不審な編み笠の侍がみていました。お七が鏡に向って男髷を結っています。歌をうたい、この歌のような素晴らしい人はいないかなぁ。五郎八さんは気がよくて親切だけれども、少しいかれているし全然頼りにならない。頼もしそうに見える先生は、見掛け倒しの腰抜け侍だなんて・・・(お七も年頃、素敵な人に巡り合えるのを夢に見ているのですね)そう考えていて鏡に目をやると源次郎の姿がありました。源次郎「お七ちゃん、どうしたんだ。男髷に結ったりしてさ」 源次郎「あっはっは、まあだ怒ってんのか。ところで、何かいい手掛かりでもつか めましたかな」お七 「つかめましたよ」源次郎「ほぅ、女でも偉いもんだなぁ」お七 「ええ、その辺にいる形ばかりの日本差しよりはねぇ」源次郎「これは手厳しい。なぁ、お七ちゃん、そう怒らずに機嫌をなおして、 ひとつご教授に」お七 「おあいにく様、こちらは当分休業させていただきます」源次郎「休業?いつまで」お七 「お師匠さんが、お帰りになるまで」源次郎「それじゃ、いつになるか」お七 「うるさいわねぇ。今日から五郎八さんの子分になったんだから」源次郎「うぅん、お七ちゃんが五郎八さんの子分に」お七 「そうよ、今日これから二人で出かけるの」源次郎「お七ちゃん、もう一度考え直してみたらどうかなぁ。女だてらつまらぬ ことに首を突っ込んだって、誰も褒めてくれはしないよ。女は女らしく してるにかぎるんだがなぁ。お七ちゃんがもう少し女らしかったら」 お七 「余計なお世話よ。なによ、あなたこそもう少し男らしくなったらどう。 踊りなんか習ってやに下がっている暇に、剣術を習うとか、槍を習うと かさぁ。あたしだって好き好んで岡っ引きの三下になったわけじゃない のよ。だって誰も本気になって、お師匠さんのこと探してくれないじゃ ない・・さぁ、あたしゃこれから 出かけますからね」源次郎「なぁ、でも、お七ちゃん、えっ」お七 「先生、そっちむいてて~」源次郎「もう一度考え直してみないかぁ。お師匠さんを助けることは無論大切な ことだが、返ってお七ちゃんがさらわれるようなことになったら、 その時・・・??」その時、お七が脱いだ着物が源次郎の顔に降りかかってきたのです。 ふり向いて、お七ちゃんの岡っ引きの姿を見て・・源次郎の顔です。お七 「その時は、先生が助けてくださるぅ。でも、踊りでは役に立ちませんわよ」そう言って出かけていくお七です。お二人の得意の喧嘩シーンこの作品でも凄いでしょう。ひばりさんのポンポンと意地悪いそれでいて甘えている口調が浮かんでくるでしょう。それをうまくかわし、ソフトな口調でちょっと年上のお兄様という感じの橋蔵さま。橋蔵さまのことばってすごくやわらかいのです。語尾も強くないですしね。橋蔵さまがひばりさんに言う「女は女らしく」・・この台詞「おしどり囃子」「ふり袖太鼓」にもあります。橋蔵さまの言い方とひばりさんの言い方がお分かりになる方は、台詞を真似て見てください。私はいつも台詞を書くときは、その人になったつもりで書いていきます。(橋蔵さまのようなニュアンスで話せたらすばらしいなぁと思いますので・・今からでも遅くはない!) 続きます。
2017年02月15日
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新太郎様と一緒にいられるだけで幸せ新太郎と保品で会おうと約束した小浪が保品に着くと、駒木飛騨が先回りをしていました。田沼意次の失脚で陰謀が全て崩れたため、十万両を奪い取ることしかないという訳です。新太郎が今に来ると言う小浪に、飛騨はこの短筒で死んだと言います。その頃、保品に向う新太郎の母かねと源八郎を、次郎吉が待ち伏せをしていました。鏡を源八郎に持たせ走らせ、次郎吉に追い詰められたかねを小市郎が助けます。途中源八郎はおえんに鏡を取られてしまいます。そのおえんから鏡を奪い取ろうとする飛騨の前に小市郎が立ちはだかりますが、乱闘に紛れて鏡は次郎吉が持って逃げます。保品の代官所の入口に戻ってきた次郎吉は、早速、鏡に書かれた文字をたどりながら宝の場所を探し始めます。周りを見渡し塀の瓦屋根をみると、仁と書いてあるのを見つけます。鏡を字に合わせながら白壁をたどって行きます。仁、義、禮、智、忠、信まできた時、沼の岸にある石碑に孝と書いてありました。宝の場所が推測できた次郎吉の前に、駒木飛騨が立ちふさがります。ここは里見家の隠棲地で宝の隠し場所はここしかないはずと、飛騨は邪魔な次郎吉を撃とうとしたので、次郎吉は鏡を底なし沼に投げると脅します。十万両は山分けにしようということで、二人は舟で沼の奥地に入っていきます。次郎吉が石灯篭に刻まれた悌という字に鏡を合わせて、その下のところに鍵を入れて回すと、なななんと、沼の水が沸き上がり、底から小判が入った箱が現れたのです。喜ぶ次郎吉に短筒を突き付ける飛騨、抵抗する次郎吉。もみ合って地に落とした短筒を取りあっているところに、死んだはずの新太郎が現れます。飛騨 「新太郎、貴様どうして」新太郎「うっはっはっは、地獄の底から汝らを迎いに参ったのだ」 飛騨 「なあに・・」新太郎「駒木飛騨、不忠不義、天神共に許さざる汝の所業も、遂に最後の時が来た のだ。この新太郎が、天になり変わって成敗してくれようぞ」 新太郎、襷をかける。 (袖の襷がけ3秒・・・綺麗です、格好いい) 逃げようとする小吉を見て、新太郎「小吉、汝も本来ならばお裁きを受けて、打ち首になっているところ、飛騨の助けで籐丸籠を破り、生きながらえた命で悪の片棒を担ごうとしたが、もはや汝の命も尽き果てたぞ」飛騨と小吉が新太郎に斬りかかってきました。そこへ、黒覆面の飛騨の手下どもがやってきました。(ここから立回りになります。)そこへ、小浪もやってきます。「新太郎様」「あっ、お嬢様」 次郎吉は新太郎に斬られ残るは飛騨一人、追い詰め新太郎と小浪が太刀をあびせます。新太郎「お嬢様」 小浪 「新太郎様」 二人は抱き合います。 そこへ、小浪の父、かね、源八郎が舟でやってきます。小浪の父は田沼の失脚で無実の罪がはれたこと、継母とは離別したことを告げる。小浪の父は、新太郎に頼みがあると言います。「わしのたった一人娘を、そちの手でどうか幸せにしてやってほしいのだ」はにかむようにお互いを見る二人です。鏡を小浪に二人のものだ、と渡すと、小浪は何を思ったのか、沼に捨ててしまいます。小浪 「お父様、あのようなものがあればこそ、人がいがみ合い殺し合うような 争い の もとになるのです。小浪は、あのようなものがなくとも、新太郎 様と一緒にいられるだけで幸せです」故郷へ戻る一行の姿がありました。(ここで主題歌「ふり袖太平記」の歌が流れます。)手をつないで幸せそうに微笑みあう新太郎と小浪の姿があります。 (右側の画像は雑誌からのものです。)清々しく気持ちのよいコンビのハッピーエンドで締めくくる作品でした。ハッピーエンドはよいですね。 ( 完 )ひばりさんとの作品としては、「ふり袖太平記」と「ふり袖太鼓」が橋蔵さまの凛々しさの中に色気が出てき始め、よいところが自然な感じで出て来たときで心に打つもの、魅かれるものがあります。初々しく、橋蔵さまの魅力である、子供が人を恥ずかしそうに見つめるような"はにかみ"がよい感じで出て来た頃のです。今回の作品もそうですが、お二人が芝居をすれば、思う以上のお色気がでるということを分かってのものなのですね。息の合った楽しくかわいらしい台詞での会話が多いのも頷けます。橋蔵さまの魅力に圧倒され、お二人のこれでもかと見せつけてくれる作品。時代劇で、こんな風に甘い雰囲気を出して、爽やかでかわいらしく思え、自然に受け入れられるのは、橋蔵さまとひばりさんのコンビならでしょう。そのコンビが冒頭から見せつけてくるのですから、たまったものではありませんね。
2017年02月09日
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落ち合う先は保品で、きっと行きます峠で新太郎と会えた小浪ですが、前途多難。宿場町には小浪の人相書きが立てられ、捕り方は町の中を見廻っていました。新太郎と小浪が人目を避けるように宿場町に入ってきました。あとをつけた次郎吉と小市郎とおえんも宿場町にやってきました。少し路地に入った所にある客引きをしている旅籠に入ります。いよいよ明日は保品に着くところまでやって来ていたのです。新太郎は母かねが、鏡の謎を保品の代官に聞いてみるように言っていたことを小浪にいいます。小浪は「どんな謎でしょう」と言い、新太郎に鏡をと言います。新太郎「拙者は持っておりません」新太郎「)^o^( ご心配には及びません」母と源八郎があとから保品へ持ってくることになっている、敵の意表を突いたのだといいます。二人の様子を覗いている次郎吉の姿がありました。宿の婆さんがお風呂にどうぞと部屋にやってきます。 (見るからに一癖ある意地悪そうな婆さんです。ここらあたりで何かが起こりそうな気配がうかがえます)新太郎「お嬢様、気をつけください。あなたは男であるということを、片時もお忘 れにならぬよう」 小浪 「分かってます。新太郎・・いや、兄上こそ、拙者のことをお嬢様など」新太郎「はぁっ?」新太郎「あっ、そうか」 ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿、と笑う二人です。 旅籠の風呂場です。新太郎は脱衣所に、風呂に入ってる小浪が歌を歌い出したので慌てる新太郎(小声で)新太郎「これ、お嬢・・浪之介、聞こえたら女と分かるじゃありませんか」 宿の婆さんと息子がひそひそ話している様子を見て、新太郎が大きな声で漢詩をうたいだします。(漢詩楓橋(ふうきょう)夜泊(やはく)の一小節を歌うのです。私、漢詩を勉強してしまいましたわ。橋蔵さまがうたっています) 月~落ち~烏~啼いて、霜~天に~満つそこへ婆さんが様子を見にきて、新太郎が風呂に入っていないのを見ると「ご一緒ではないので」と。息子はさっき歌っていたのは女だ、もしやと人相書きを見ます。新太郎は部屋に帰ると、湯からあがった小浪に、感ずかれたことを耳打ちし、旅籠を発つ支度をして部屋を出ようとしたとき、婆さんが酒を持ってきて、息子が町方を連れてくるまで引き留めようとします。新太郎「わしは下戸じゃが、弟は酒好きでなぁ」小浪は婆さんから酒を勧められる。どうしたらよいか、新太郎の顔を見る小浪です。(ねえねえ、新太郎どうするのよ。わたし飲めませんよ、どうすればいいの。何とかして・・こんな感じの小浪の顔つきですね。新太郎は、さぁーて、どうしたものかと思案中ですね)(新太郎、何か思いついたようです)新太郎「うん、猪口など面倒だろう。これで飲むがいい」といって、湯呑を差し出します。小浪 「これで・・」 (ますます困惑する小浪)目で合図をする新太郎です。湯呑に注がれた酒を飲めずにいる小浪を見て、新太郎は婆さんに歌をきかせてやりなさい。というのです。新太郎「なあ、婆さん、弟は女子に負けぬぐらい上手いぞ」と新太郎が言いながら体で遮っている間に、小浪は湯呑を取り変えます。黒田節を歌い終わった時、新太郎が外の気配を感じ廊下へ出た時には、捕り方が二階までやってきていました。 ⇒ ⇒ 小浪に手が回った、早く逃げるように言い、捕り方と立回りになります。屋根伝いに逃げますが、四方八方囲まれてしまい、落ち合う先は保品でと・・新太郎「きっと行きます」と・・二人は別々に逃げることにします。新太郎は、捕り方を蹴散らしながら川沿いに出たところで、飛騨の短筒で撃たれ、川に落ちてしまいます。小浪は飛び込んだ芝居小屋の大夫に助けられ、逃れることができました。飛騨の短筒で撃たれた新太郎は、大丈夫でしょうか。ここで死んでは、新太郎と小浪の人生が余りにも可哀想です。新太郎の保品へ「きっと行きます」・・の言葉を信じて、次回に期待してまいりましょう。 続きます。
2017年02月08日
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主命? もしや貴殿・・風がひどい夜のことでした。次郎吉が菅谷家に再度押し入りますが鏡が見つからず、薬殺を考え抹茶に仕込みます。小浪は祖母に眠れそうもないのでお茶を点てるようにいわれます。その点てたお茶で祖母がなくなります。藩医から小浪が祖母を殺害したという報告があり、取調べをしたいので小浪を引き渡してほしいと・・・新太郎が応対しています。江戸表からのお達しで菅谷家の領地は近々召し上げられる。沙汰あるまで藩にお預けになるというのです。小浪をここに呼んでほしいと言われ、新太郎「しかし・・」その時、誰かが部屋の方に来るのを察し、新太郎がそちらの方を見ます。(この時のアップの橋蔵さまの横顔美しいでしょう。橋蔵さまの目の動きがすばらしいから横顔がより生きてきます。私この横顔好きなんです) やって来たのは母のかねでした。新太郎に、小浪がいなくなったことを耳打ちします。「えっ」慌てて新太郎は小浪の部屋に行きます。そこには、新太郎に宛てた手紙がありました。今捕まっては駒木飛騨の思う壺、公平なお裁きも受けられないと思うので、しばらく父が信頼していた保品の代官大村陣内のところに身を隠す。菅谷家の大切な鍵形の鏡を新太郎に預けるという手紙でした。「この世の中で、私の一番信頼できるお方は、やっぱり新太郎様ですもの」・・小浪、と書かれていました。(この場面も、橋蔵さまの目の動きに注目!本当に目がものを言うのです) その新太郎の様子を見ている小市郎の姿がありました。(ここから、新太郎と小市郎の二人の場面を書きますね。小市郎の目的を明かすところですので)男装した小浪の姿が山道にありました。土煙を上げ馬を飛ばして行く侍達が、その後から同じ方向に馬を走らせる新太郎が、そのまた後ろから小市郎が、皆、小浪とは気づかずに脇を通り過ぎていきます。小市郎が新太郎に追いつきます。新太郎「おぉ、幾井氏、貴公、確か江戸へかえられるとか」小市郎「実は、江戸に帰るにつき、是非貴殿にお願いしたい義がある」新太郎「どのようなことか存ぜぬが、何ゆえいままで」小太郎「それが、貴殿と二人きりで、しかも人里離れたところで、お話いたしたき ことなれば」新太郎「なっ、なんと」小市郎「露木氏、拙者が館山まで赴いたのは、さるお方の依頼により、貴殿が懐に 所持される鍵形の鏡」新太郎「えっ、貴殿も鍵形の鏡を」とうてい尋常には渡してもらえないことは覚悟の上という小市郎に、新太郎「待て、貴殿が鍵形の鏡を狙う一味とはどうしても拙者にはげせぬ。詳しく 事情を話されい」 理由は言えない、助けられた恩と友情は忘れないが、主命とあれば、と小市郎が言います。新太郎「主命? もしや貴殿」武士の情け、それ以上は聞かないでくれと小市郎。新太郎「では、どうあっても」(橋蔵さまが、笠の紐を取るところから右側の画像のように笠を取るところまで、ずっと映しています。橋蔵さまの所作は一つ一つ見ていて綺麗です。一瞬、笠を頭から外すとき、「笛吹若武者」で平家が船で逃げていく浜まできた時に、兜をかぶりますね。その時に一瞬見せたあの表情と同じ表情をするのです。あの一瞬の表情は素の橋蔵さまの表情ですね・・あっ、可愛い) 腕ずくでも、鍵形の鏡を江戸へ持ち帰らなければならないという小市郎に、新太郎「だが、それだけは拙者も渡すことは出来ぬ」小市郎「露木氏、溶射はいたしませぬぞ」新太郎「やもおえん、お相手いたそう」馬から降りた二人は・・・「参るぞ」「いざ」刀を抜きます。新太郎の太刀に足を取られ、山道から下に落ちそうになった小市郎に刀を振りあげた時、男装の小浪が止めに入ります。 新太郎が何者だという顔をして見た時、小浪が笠を取ります。新太郎「あっ、お嬢さん」 (どういう訳か?・・ここだけ「お嬢様」ではなく「お嬢さん」と私には聞こえるんですが。うぅ~ん??)小浪 「新太郎、どのようなことがあろうと、幾井様は命の恩人、斬ってはな りません」新太郎「お嬢様、だがこの男もやはり、下記形の鏡を奪いに参った一味ですぞ」小浪 「えっ、幾井様が」「斬ってくれ」という小市郎、刀を鞘におさめる新太郎、それを優しい眼差しで見つめる小浪がいました。 宿場町に小浪の手配がまわります。新太郎と一緒に、保品まで行きつけるのでしょうか。 続きます。
2017年02月07日
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新太郎様!江戸へ行くのに一人では危ないから、と新太郎がついて行くというのを、意地を張って断った小浪は、源八郎をお伴に連れ江戸へ向かっていました。父を訪ねて行った屋敷の帰り道、二人のやくざに襲われます。源八郎は簡単にやられ小浪に二人がかかっていった時、編み笠をかぶった着流しのお侍が小浪を助けます。 お侍が小浪の腕を掴んだまま離さないので振りきろうとしますが、離してもらえません・・源八郎が向っていきますがムリです。小浪が観念した様子でおとなしくなったところで、編み笠のお侍は笠を取りました。 「どうです、だから一人ではいけないと言ったでしょう」・・新太郎でした。小浪 「恩にきせるきなの、あんな弱虫の二人ぐらい・・」新太郎「その弱虫に捕まえられて、青くなっていたのはどなたでしたっけ」小浪 「知らない。早く国へお帰り」 新太郎「帰りません。危なっかしくて見ておれないじゃありませんか」小浪 「そなたの助けなどいりません」ヒステリーを起こして行こうとする小浪を見ていて苦笑いをする新太郎です。源八郎をと歩く小浪の後を見守るようについて行く新太郎。 二度ほど振り返り、新太郎がついてきてくれるのを見てにこりとする小浪です。 新太郎がついてきてくれるとばかり思っていたが、次に振り返ると、新太郎が帰って行くのを見て、新太郎を追って駆けだします。それを察した新太郎が振返ると、また先へと歩き出す意地っ張りの小浪です。真剣に小浪をガードしていく新太郎です。 新太郎と小浪の可愛い喧嘩シーンもこのあたりで・・・いよいよ本筋に入っていきます。旋風の次郎吉が盗んだ里見家改易次第書には、財宝十万両の隠し場所の謎を解く鍵形の鏡の所在が記されていました。一足先にひとり占めをと考え、安房(あわ)の館山へ向かう次郎吉でした。駒木飛騨は濡髪おえんを安房に向わせ、田沼意次は飛騨を差し置いて十万両を・・と考え、鍵形の鍵を手に入れるため隠密の幾江小市郎を安房に向わせることにします。小浪は、途中いなくなった新太郎を見つけ出し、今後のことを相談しようと江戸の町を探し歩いています。隠密幾江小市郎が阿波へ向かおうとしていた夜、飛騨のまわした刺客に襲われます。そこに通りかかった新太郎が助太刀に入ります。新太郎「事情は存ぜぬが、理不尽な曲者と見た。助勢つかまつる」小市郎「かたじけない」(立回りです。橋蔵さまの殺陣と表情決まってきました。舞踊でつちかった体のしなりが素晴らしい。このような体の動きをできるチャンバラスターは他にはいません。でも、橋蔵さまは、こんなくらいで満足する方ではありません)小市郎「いや、何とお礼の申しようもござらん。急ぎの旅ゆえ、せめてご姓名を」新太郎「いや、当方も旅の者でござる。いささか、人を訪ねますので御免」不思議な人だというような小市郎です。 小浪は新太郎を見つけ会うことが出来なかったので、菅谷家に戻ってきていました。祖母のさよから新太郎はどうしたのだと聞かれ、小浪は、心配して追ってきてくれたのに意地悪をして・・と泣きじゃくります。新太郎の母かねは、心配しなくて大丈夫、江戸でお嬢様を探しだせなかったら、一旦帰ってくるに決まっている、と小浪に言います。祖母から菅谷家の先祖里見家の時から受け継がれてきたという鍵形の鏡を、小浪の幸せのため、菅谷家のために、大切にしまって置くようにと渡されます。その話を縁の下に忍びこみ聞いていた次郎吉は、その夜部屋に押し入りました。同じ頃、新太郎が菅谷家に戻ってきました。新太郎を迎えに出た母かねに「母上、お嬢様は」と聞き、辺りを見回し雨戸が開いているのを見つけ、「曲者」と叫びます。小浪の部屋にちょうど入っていた次郎吉は、鏡を盗みましたが、新太郎に阻まれ逃げる時落してしまいます。次郎吉「野郎、覚えてやがれ」追おうとする新太郎に小浪 「新太郎」と。新太郎「お嬢様、ご無事でしたか」小浪 「新太郎様」 (小浪の新太郎に対しての本当の思いがわかりましたね)新太郎に抱きついた小浪でしたが、ふと気づき、新太郎が何か言おうとしたとき離れていきました。(この時、新太郎も小浪に何かを伝えたかったのです・・よね) 神社のお参りに来ていた小浪を、次郎吉一味が鏡ほしさに拉致しょうとするところを幾江小市郎が助けます。小浪が落したかんざしを見て、菅谷家の小浪とわかりびっくりしているところへ、源八郎から知らせを受けた新太郎がやってきます。新太郎「お嬢様、ご無事でしたか」小浪 「この方に助けていただいたんです」小市郎と新太郎は、お互いにびっくり。小市郎「貴殿はあの時の」新太郎「いゃぁ、奇遇でしたなぁ」新太郎と小浪が乳兄妹と聞き、小市郎の顔色が変わりました。小市郎は田沼意次から、菅谷家から鏡を探すように言われている隠密です。その彼が菅谷家に滞在することになります。新太郎と小浪とどのように関わってくるのでしょう。次郎吉はどこまで執拗に狙ってくるのでしょう。 続きます。
2017年02月05日
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「残るのです」 「やだ」今回は、菅谷家の庭先での、新太郎と小浪の場面から始めるのですが、ちょっとその前に寄り道いたします。雑誌「ふり袖太平記」の特集でこの場面・・菅谷家の庭先・・の撮影現場を取材した「セット訪問」というきじがあります。抜粋になりますが、そこからいきたいと思います。~仲良しコンビはにっこり笑ってはい・スタート!刀遊びとにらめっこ?橋蔵さんの余興にファンもどっと大喜び~皆様もスタジオ見学をしている気分で、撮影合間の雰囲気と本番の雰囲気を味わいながら、作品を追って見てください。まずは・・・✶セットでにらめっこは、ひばりちゃん今日は御両人が顔を合わせるセットを訪問しました。セットは武家屋敷の座敷から庭にかけて組まれています。ちょうどライティングの最中です。塀を越えて屋根の上にカメラが据えてあります。俯瞰撮影(高い位置から見下ろして撮影)になるようです。ずーっと中へ入っていくと、廊下に橋蔵さんが座っています。グリーンの地に白い鱗模様を浮かせたシックな着物、袴もワインカラーに白の縦縞という(当時の)流行色。髷の型は大変かわっています。ムシリという月代が伸びた浪人の型と前髪の合いの子のような髷で、前髪がちょっと乱れて、江戸時代の慎太郎刈という感じです。(当時石原新太郎さんの髪型が流行っていたのですよ)ひばりさんは庭先の椅子に座って、台本片手に熱心に台詞の練習中です。とき色と橙色の中間色に鳥の柄が散らしてあるふり袖、娘島田の髪がよく似合っています。(この撮影が終了したのは9月ですから、京都はまだ暑さ厳しい時期、そこにスタジオはライトなどでよけいに暑いですね)記者は半袖で汗をかくほどではなかったようですが、橋蔵さまとひばりさんは、さぞかし暑かった途思います。記者の方がセットに入ってから20分近くも経っていますが、セッティングに時間がかかっているようです。なかなか始まらないため、堅い板の廊下にずっときちんと座りっきりの橋蔵さんは、さすがに退屈したようです。腰に差した小刀を、「エイッ」とばかりにサッと抜いて、鞘に収めたり、国定忠治みたいにライトの光にかざして見得を切ってみたり、お茶目ぶりを発揮して、スタッフや見学のファン達を笑わせています。(当時は撮影スタジオの中でも近くで見学ができたのですから、京都方面のファンの人はよかったですね、羨ましかったです)そのうち、それも飽きたようで、今度は庭の方へ向いて、顔をしかめたり、舌を出したり、あかんべえをしたりし百面相をしはじめました。誰を相手に?と思ってその方を見ると、なんと庭で台詞の稽古中だったひばりちゃんです。ひばりちゃんも負けずに顎を突き出したり、すました顔をしたり・・奮闘中ですが・・このにらめっこは橋蔵さんが優勢。ひばりちゃんは何度も堪えきれず笑い転げています。(お二人とも無邪気で可愛い。見学していたファンは見ていて面白く長い準備時間も飽きなかったでしょう)✶男女七歳にして席を同じくせずの巻監督の声が響きます。「さあ、テスト行きましょう」場面は菅谷家の庭先。「ま、こんなに暗くなったのに、新太郎少しは気をつけなさい。・・・二人きりで」橋蔵さんの新太郎くんは、一発お袋さんからお叱りを受け、そこへひばりちゃんの小浪の「新太郎といったら、わたしの言うことを聞かないのよ」と言われ、俄然攻撃の鉾先が橋蔵さんに向けられます。「新太郎、何故お嬢様の言いつけを聞かないのです」お袋さんから叱られて、新太郎くんは、くさってしまい返事もせずに目を伏せたっきり。ここで、「カット」の声が入りました。「叱られ通しで、折角の剣豪も台無しだよ」・・橋蔵さんが、ひばりちゃんを見て、怨めし気な顔をします。「だってぇ、新太郎さんが強情なんだから、仕方ない」「いや、強情なのは、あんたの方だょ」どうも、お仕事を離れても、この仲良しコンビは喧嘩友達です。次は、十八番のひばりちゃん、橋蔵さんの喧嘩シーンになります。全く真に迫るということはこのことでしょう。傍で見ていると、今にも掴みかからんばかりの凄まじさ・・ピッタリと息の合ったお二人の喧嘩ぶりに、見学のファンなど手に汗握ってハラハラしていました・・「全く上手いものですねぇ」ひと汗かいたお二人に、ここでちょっとご挨拶をしました。(ひばりちゃん)「あたしこまっちゃうんですょ。いつも勝ち気でおきゃんな役 ばっかしでしょう。だからみんな、あたしの地だと思ってんじゃ ないかと心配なのよ。ほんとはねぇ、とっても内気で、言いたい こともいえないくらい気が弱いのに」(橋蔵さん) 「そうだよ、普通のひばりちゃんは、とってもおとなしい、いい娘 さんだよ。でもね、時々江戸っ子らしい負けん気を出すこともあ るしね。まあ、多少の地はあるんじゃない」(ひばりちゃん)「まあ、ひどいっ、覚えてらっしゃい。映画では、私の家来みたい なもんだから、ブツとこでもあったら本当にブッてやるから」(橋蔵さん) 「ほら、ほら、地が出た」(ひばりちゃん)「キライよ」ちょっと仲良く話していたかと思ったら、あっと思う間に、たちまち口争いです。そのくせご当人たちは、至極楽しそうに、そうです、まるで喧嘩を楽しんでいるといった感じが、お二人には多分にあります。(橋蔵さん) 「僕はね、立回りが大好きなんですよ。ところが、この作品の前に は、二本とも立回りがなかったんで、大いに腕を撫していたんで すが、今度はちょいとした青年剣豪なんですから張り切っていま す。大いに、斬り倒すところをご覧にいれますよ」やさしい顔に似合わぬ物騒なことを言う橋蔵さんです。「さあ、本番行きましょう」 喧嘩場の再開です。「じゃ、ひばりちゃん、張り切ってやりましょう」と冗談を飛ばしながら、橋蔵さんが定位置につきます。橋蔵さまが廊下にお座りになったので、私達も、菅谷家の庭先に目を向けましょう。 夕暮れた中、菅谷家の庭先です。小浪は庭に出ていて、新太郎は廊下に座って、灯りもつけず何となく様子がおかしいのです。新太郎の母かねが部屋にやってきます。かね 「ま、こんなに暗くなったのに」かねは、灯りをつけて、廊下にいる新太郎に気づきます。かね 「ま、新太郎、少しは気をつけなさい。灯りも点けずにお嬢様と二人きり で・・」そんな、かねの言葉に小浪 「誰に見られたってかまわないわ。私達は小さい時から一緒にばあやお乳 で育った乳兄妹ですもの。・・てもねぇ、ばあや、新太郎ったら私の言 うこと聞かないの」かね 「新太郎、何故、お嬢様のおっしゃることを聞かないのです」新太郎は、かねの言うことでも、それはできないと返事もせずにあきれ顔です。 (ここからは、トミイとマミイにはなくてはならないお得意?の言い合いシーンになります・・ここは絶対に見逃せないところです。お二人の息はピッタリですし、楽しんでやっているようです・・そこが見ている私たちにはたまらなく良いのです)小浪 「ばあや、私は江戸へ行って、老中田沼様へお父様のことを嘆願に参ろうと 決心したんです」かね 「お江戸へ?」新太郎「いま言い争っていたのはこのことです。ここは絶対私がお伴しようという のに、一人で行くなんておっしゃるから・・」 小浪 「独りじゃありません。源八郎を連れて行きます」新太郎「この際、あんな老人を連れて行っても役にたちません」小浪 「いいえ、かまいません。私はもう子供じゃないんですから」新太郎「いいえ、子供も同然です。ことに、こんな大事な場合の一人歩きは まだ無理です」小浪 「まぁ、悔しい、ひとを子供扱いにして。いいえ、どうしても一人で 行きます。新太郎は、残ってください」新太郎「いいえ、残れと言われても、お嬢様を一人でやるわけにはまいりません」小浪 「残りなさい」新太郎「残りません」小浪 「残るのです」新太郎「やだ」(二人の表情を合成しました)新太郎がふくれて立ち上がると、かね 「これ、何です新太郎、。心安立に、そんな口を聞く人がありますか」新太郎「だって、母上・・」かね 「新太郎」新太郎は、母に言われ拗ねた様子をしています。 新太郎の母かねは、新太郎はお伴をさせないからと・・小浪に初めての道中だすから気をつけるように言います。新太郎が何も言わずさっさと言ってしまうので、寂しく思う小浪です。(あれだけ心配していた新太郎ですが、このまま知らんふりをして、小浪一人を江戸に行かせるのでしょうか。小浪も、本当は新太郎に付いてきてほしいのに、意地を張って・・「女は女らしく」しましょう) 続きます。
2017年01月31日
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いや、参らぬ、参らぬは橋蔵さまは「江戸三国志」のころは武士の役柄でも、まだ立回りも演技も見ていてちょっと・・ポーズはちゃんと決まるかな、・・とか心配がありましたが、「ふり袖太平記」では安心して見ることができるまでになっています。後の橋蔵さまからすれば、まだ完璧ではありませんが、スッとかまえる立姿が決まってきましたし、橋蔵さまらしい表情や話し方の片鱗が見え出した作品です。いつも思いますが、ひばりさんとの共演の時の橋蔵さまは、とても可愛いうぶな表情の中に色気を見せるのです。ひばりさんも相手を頼り切った甘えを見せてくださいます。可愛い妹のようなひばりさんをお兄様のような橋蔵さまが見守っている、そしてそこに恋心が生まれハッピーエンドという設定での作品が多くなるのも頷けます。1956年までの橋蔵さまの目のお化粧は、ちょっと歌舞伎的な切れ長にしていましたが、1957年以降目の切れ長の目が変わりました。アイラインも綺麗に入って、勿論つけまつげも変わり切れ長の目がこれまで以上に素敵になりました。その目が左から右に、右から左へと、動いて流し目になりますから、スクリーンを観ていた女性客はたまったものではありません。カメラワークもそこを分かっていての撮り方をしていきますから、橋蔵さまの作品はアップが多い。映画の最初の頃、映画でのメークをよく分からなかったのでひばりさんが教えてくれたと、言っていたことがあったと思います。そのように仲の良い兄妹のようなお二人ですから、息もぴったり。でも、ひばりさんとの共演映画を橋蔵さまファンの中には嫌う人が多い、ひばりさんのファンは橋蔵さまとの映画は好きで、今でもひばりさんの映画で好きなのはというと橋蔵さまとの共演ものがあがってきています。私はお二人の作品は好きです。お二人はプライベートでも良い仲であったから、ラブシーンもちょっとした仕草も自然体で、お互いに良いところを引出していますもの。さあ、それではトミイ・マミイコンビ第三作「ふり袖太平記」に入りましょう。斉藤豊吉さん原作もので、平凡に連載され、ニッポン放送で半年以上連続放送劇として放送、単行本も出たものの映画化です。制作はお二人が所属していた新芸術プロの社長福島通人さんです。ひばりさんのことも橋蔵さまのこともよく知っている方ですから、良いところが凝縮されている作品だと思います。第12作品目 1956年10月封切 「ふり袖太平記」 小浪 美空ひばり露木新太郎 大川橋蔵旋風の次郎吉 星十郎濡髪おえん 浦里はるみ幾江小市郎 片岡栄次郎菅谷織部正 有馬宏治源八郎 堺駿二駒木飛騨 吉田義夫 かね 松浦築 安房館山にある名家里見家の血筋を引く菅谷織部正は、六千石の禄高の旗本で江戸常勤。織部正は一人娘小浪の母とは家老駒木飛騨の策略で離別し、飛騨の妹繁野を正室にしていました。小浪は乳兄妹で育った露木新太郎と大の仲良しです。(今回の作品紹介は少し長くなります。私の好きな作品ということもありますが、橋蔵さまとひばりさんがといも良いので。お二人の台詞が・・・)(雑誌からの画像です。このような柄と色の着物なのですね)今日も二人は浜辺で棒切れを持って剣術で楽しく遊んでいます。映画の出だしは、笑みを浮かべた小浪が、「お面」・・入れ替わり新太郎が振り向きざまに、「参ったか」と優しい声で笑みを浮かべていいます。 小浪「参らぬ。お胴、お付」と立て続けにやってくる小浪をよけた瞬間、新太郎「あっ」小浪が転んでしまいます。新太郎、大丈夫だろうかと心配そうに近づいていきます。(映画では交互に映していますので、小浪の転んだ姿を右下に入れました) (新太郎の髪型いいでしょう。アップで見ると複雑な髪型になっています。後でよくみてください。この当時から時代劇でもその当時はやっている髪型を何処かに入れていたのですね。慎太郎刈りを意識して作った髪型だったようです。どんな髪型でも似合う橋蔵さまですね)小浪は何でもないようですが痛そうに振舞い、新太郎の気を引きます。(右下の画像がその時の小浪の様子です)新太郎はどうしようと困ってしまっています。小浪 「痛い、痛いわ」新太郎「お嬢様、お嬢様」新太郎の駆け寄ってくるのを来るのを見ると、小浪は水際の方へかけていきます。 新太郎「お嬢様」小浪 「新太郎、舟」新太郎「舟?」小浪が乗りたいというが新太郎「船はだめです。小さい時、私がわざとお嬢様の舟をひっくり返して・・」小浪 「肌着までずぶ濡れ、随分水飲まされたわ、あたし」新太郎「それで私はお袋から大目玉。あくる日一日暗い納戸に閉じ込められて、 飯ももらえなかった」小浪 「だからそっと、おにぎりを持っててあげたのに、新太郎たら・」新太郎「そうでしたかなあ」小浪 「そうよ、それを忘れるなんて、憎らしい、うん」着物の袖で新太郎を叩く仕草をします。 (可愛い二人です。ここの様子は本当に演技?、演技以上のお二人の呼吸の良さが表れています)水際を子供のように追いかけっこをしていましたが、小浪が渡れないところに来てしまいました。新太郎が「さぁ」と言って、おぶってあげるからというようにすると「一人で渡れる」と小浪は言います。新太郎「ずぶ濡れにしては、またお袋に大目玉を」一刀流の免許皆伝を受けてもまだお母さまが怖いのか、という小浪に、新太郎「参った・・・いや、参らぬ、参らぬは」 小浪が「これでも」と言って濡れて渡ろうとするので、新太郎が抱っこをしてしまいます。小浪 「いや、いやいや、いやいや、いや」 (とっても甘えるように言うの?・・参ってしまうわ、ひばりさん)新太郎「そんなに怖いなら落しますよ」小浪は新太郎にしがみつきます。新太郎「こんなに重くなってもこわいの。怖いのなら歌うたってもらいましょう」小浪 「まっ、ずるい」新太郎「じゃ、落すぞ」小浪 「あぁ、歌う、歌うわ」橋蔵さまに監督から甘~く甘~くやってくださいという注文だったようです。橋蔵さまひばりさんが相手だからバッチリ。相手を見るあのほんのり色気のある目が生きている。見ている私たちが照れてしまうくらいの出来です。(この後からひばりさんの「かもめ白波」が1コーラス流れます。新太郎は水の中を渡り、小浪を降ろしても濡れないところまで抱っこしていきます。橋蔵さま、抱っこしてあるいた時のひばりさんは重かったそうです。そうですよね、ひばりさんの体重に衣装の重さがプラスされるわけですから・・・リハーサルは??回、二人のことだから大丈夫だったでしょう)(youtubeに「かもめ白波」が流れるところの「ふり袖太平記」の動画が投稿されていますので二人の雰囲気が分かるのではないかと思いますので載せます。以前は「ふり袖太平記」からのひばりさんが歌っているところがあったのですが、著作権で削除になっちゃいました。そこで、歌は他の人が歌っているので気にせず動画だけ気にして見てください。ここの部分は1番の歌のところになります。2番のところはラストのところです)新太郎が街道の方へ目を向けた時、早籠が菅谷家の方にやってきました。「あっ、早籠」 新太郎「江戸で何かあったのではないでしょうか」小浪 「もしや・・お父様のお身に」二人は急いで屋敷に向います。菅谷家の乗っ取りを企む駒木飛騨が田沼意次と仕組んで、里見家改易次第書を書物庫から旋風の次郎吉に盗ませ、江戸城書物庫勤番から菅谷織部正を失脚させたのです。飛騨の妹繁野の娘小百合に菅谷家の跡目を継がせることを企んでいました。江戸から知らせに来た家臣より仔細を聞いています。江戸屋敷の実権は駒木飛騨に握られていること。このたびの殿織部正の失脚の原因も駒木飛騨の(図ったこと)・・その時、矢が家臣に向け射られた。江戸屋敷の飛騨のもとへ、菅谷家に行った家臣はつまらぬことをしゃべりかけたので始末したことが伝えられます。あとは、次郎吉に盗ませた、里見家改易次第書だ・・・。もう少し先へ進もうと思ったのですが、橋蔵さまとひばりさんのお馴染みのお二人の楽しいおしゃべりの掛合いから始まりましたので、ここは省くわけにはいかなくなりました。お二人を見ていると自然と笑みがこぼれてしまいます。ひばりさんがとっても甘い声で橋蔵さまに言い寄っていっても、嫌らしくないの、可愛いんです。それを受け止める橋蔵さまも大人っぽいのだけれども可愛い。お二人の息があっているから脚本以上の良さが出てきているのですね。つぎの場面もお二人の息の合った場面から始めることになります。 続きます。
2017年01月28日
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あたしたち二度と離れないのよ菊次とおたねはいよいよ京都に入ります。志賀近江之丞を訪ねて行った二人をいつ来るかと待っていたという。菊次が姿を現すのを今日か明日かと待っていた・・早速引き合わせたい人がいる、と案内される。菊次とおたねが連れて行かれた別室には、師匠の総右衛門が待っていたのです。菊次は、師匠の顔を見てこらえきれず、「師匠・・・。面目ない・・・」師匠「苦労したなぁ」菊次「へっ・・」師匠「でも、おたねさんに会えたのはよかったよ」菊次「はい・・」(本当に、菊次は破門は覚悟してたとはいえ、神楽を舞い諸国を歩くという修行をしながら、博打を打つまでに身を崩してしまっていたのですから、辛かったですよね。いい時におたねと会え救われました。)師匠「事情は聞いただろうな」菊次「へっ・・」能見三之丞の免罪を申し立て大目付に訴えたところ取り上げてくれた、と師匠から聞きますが、菊次「えっ、しかし、大庭は健在、上洛の供に加わり、大手を振って京都に 来ています」大庭の証拠がなかなかつかめないでいるらしい。師匠が、証拠を残すような大庭ではないが、御上では内々のお調べが進んでいると言うが、菊次「そんな手ぬるい順序は待っちゃおられません。私はひとおもいに・・」 菊次の気性からそんなこともあろうかと、わざわざ京都まで来たのだ、ここで無分別をしでかしては、能見のお家再興も水の泡になってしまう、との師匠の言葉に、菊次「私は我慢できやせん、できやせん。師匠、許してください」と、立ち上がり部屋を出た時、師匠「待て、証拠を掴むんだ。大庭の悪事の証拠さえ掴めば、また思案は いくらでもある。早まってはいかん」それを聞いていたおたねが「証拠・・・」・・何か考えを思いついたようです。 夜、おたねは文を小竹に渡し呼び出します。おたねが小竹と一緒に歩いてゆくのをお巻が見ていて後をつけて行きます。料亭座敷で、おたねは、ここへ来たのは死んだ気になって来たのだから、小竹にも死んでくれと・・死んだつもりになって大庭の悪事の証拠を話して、能見様の無実をはらしてほしいと頼む。が、死んだ者を相手の色ごとをするほどもの好きではない、と小竹は首を振らない。調べたところで証拠はないと言う。おたねは、能見様切腹の日、あれは大庭の使い込みとはっきり言った事などを言い、強引に小竹に迫るがいい返事をしない。そのとき、隣の部屋で飲みながら様子をうかがっていたお巻が助けに入ってきます。お巻「おたねちゃん、悔しいけどあたしゃお前さんに一本まいりましたよ。」そして小竹にどっちに転んでも助からないのだから、思い切って正しい者の味方になっておいた方がよいのではと言う。小竹が、小鉢に酒を注ぎ飲もうとしたとき、お巻はおたねに目で合図を送り、「お酒の相手なら私が」と一息で飲みほした。それを見ていた小竹は二人の顔を見て観念したのか何やら思った様子です。大庭をもてなしての宴席。本日のご祝儀に近江之丞の獅子舞を見せることに・・都一番の神楽師で江戸の神楽とはまた違うと・・獅子舞が始まった。獅子が舞ながら、座敷を上がって大庭の前までやってくる。獅子舞が頭を取った。菊次「やい、大庭、おいらの顔をよぉーく見ろ」大庭 「下郎、何奴だ」止めに入った侍をはらい、菊次 「おぅ、俺はおめえに詰腹切らされた、能見三之丞の忘れ形見、 菊次郎というもんだ」 おたね「あたしの顔覚えておいでだろう・・」 ⇒ 能見三之丞は役目の落ち度を恥じて自決したのだと大庭。菊次「侍ってぇやつは嘘つきだ、新御番の御用度金を使い込み、その罪を 擦り付け、親父に腹を切らせたのは大庭おめえだ」根も葉もない言いがかりをつけ証拠もないのに、と大庭。菊次「証拠が見たくば見せてやろう、あれを見ろ」小竹が出てくる「人の正はこれ善なり。つい正義の味方をしたくなった」大庭にもう諦めた方がいいと言ったので、狼藉ものと小竹を斬れと大庭が言う。かかってきた侍を押さえつけ、菊次「おっとまった、お侍でも命は二つねえはずだ。粗末に扱っちゃばちが 当たりますぜ」菊次に抑えられていた侍が菊次に向って「おのれ、芸人の分際で」と言う。⇒菊次「芸人だから弱いとはかぎらねえ。さあ、目指すは大庭ただ一人。うぬら、 邪魔をして怪我をするんじゃねえぞ」抑えていた侍を離すと大庭に向ってゆきます。 この場面の橋蔵さま決まっていますねすごい、綺麗橋蔵さまがアップになると心奪われてしまいます。そして、目です・・目の使い方が・・このころから目がいきていたのです。この後の作品ごとに、だんだん橋蔵さまらしくなっていきます。ここまでの綺麗な目の動きの使い方はなかなか出来るものではありません。立回りの時の目の動きも、映画を見ている女性をつかんだのです。橋蔵さまは「目千両」といわれ、流し目がいいのは当然なのですが、目の動きでがものを言うのです・・演技が出来てしまうのです。ですから、画面をボォーと見ている訳にはいきません。目のひとつひとつの動きが演技なのですから。これからの作品一つ一つに目が生きてきています。ここから菊次とおたねの立回りになります。 ⇒ ⤵➾ ➾ 立回り・・橋蔵さま「若さま侍捕物帖」での殺陣で大分上手くなってきてはいますが、第5作品目、まだまだ序の口です。舞踊的動きの殺陣の動きですが、動きが大きくスローになり、ちょっと流れ気味のところがあります。(厳しすぎ?かな)でも、おたねが詰め寄られたところを助けに行ったところの殺陣の動きとあのキメの部分は、橋蔵さまの上手さが出ていて、惚れ惚れしてしまいます。運動神経のいい、歌舞伎で鍛えたことが身についている橋蔵さまだから、この上記画像のシーンが生きていると思うところです。ですから、まだ完全ではない立回りも、私にはこの場面で帳消しになるのです。皆様は、この場面を見てどうですか。画像では流れが分からないと思いますので、作品見て見て。なるほど、と思いますよ。橋蔵さまに惹きつけられるようになります。あまり気にしていなかった方は、再度作品をご覧になるとき、ちょっと目を凝らしてみてください。大庭が逃げようとしたところへ所司代登場。用度金の件、能見坂の情の件を調べたいということで大庭は逃げ道がなくなり、突然菊次に斬りかかるが、菊次の一刀ではてます。所司代「菊次郎とやら、追って沙汰をする。それまで合い待つように」菊次郎「はい」所司代「聞くところによれば、亡き父の無実が証明されたあかつきには、 その方の舎弟をもって能見家の家督相続さし許されるよしであるぞ」菊次郎「はっ、有難う存じます」菊次郎とおたねは手を取りあって喜びます。(菊次郎は侍にはならず、神楽師の菊次で生きて行くのですね。)茶店で一休みの師匠と菊次郎とおたねがいます。おたね「あなたを幸せにしてくれって言って、お巻さんは笑って何処かへ 行ってしまったけど、私はあの人が泣いていたのを知っています」菊次郎「許してくれ、おたねさん」 おたね「いいのよそんなこと。あたしたち、これから二度と離れないのよ」菊次郎、首を「うん」と言うように。(幸せな二人の陰で、いい男を好きになり泣く女が必ずいるのですね。お巻さん有難う、あなたがひょんなことから菊次さんを助けてくれたおかげで、彼はそれ以上、身を落とさなくて済みました。二人がお互いに好きあっていることが分かると、本懐を遂げるのを助けてくれて、さっと身を引き旅立ったあなたの姿に、ほろっと涙が出てきてしまいました。)(ひばりさんが歌うおしどり囃子の中)馬に揺られながら、江戸へ帰る三人の晴れ晴れとした姿がそこにありました。 めでたしめでたし、心がハッピーになりました。(二人の仲の良い明るい笑顔がとても良いです。)如何でしたか。「おしどり囃子」の歌でyoutubeに動画がのっていますので一応載せておきますので筋書のどこの部分になるのか見てください。(youtubeの画像が何らかの理由で削除された場合はごめんなさい🙇)娯楽時代劇はこうでなくちゃ。橋蔵さまとひばりさんは、映画は大衆のもの、楽しめるもの、ハッピーにならなければと考えていました。長いものになってしまいましたが、「おしどり囃子」にお付き合い有難うございました。 (完)トミイ・マミイのコンビは「笛吹若武者」で多くのファンを掴みましたが、本格的なブームはこの作品からでしょう。橋蔵さまも映画に馴れ、橋蔵さまの持つお色気とひばりさんの持つお色気がとてもうまく合うお二人だったのですね。このぐらい、相乗効果でお互いの色気をだしたコンビはいなかったでしょう。それがはっきり出ているのは「おしどり囃子」でピックアップした部分の画像にも表れているお二人の絡みのシーンです。(このことに関しては、後のコンビの作品あとにでも、お話出来ればと思っています。)
2016年11月02日
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あたしたちも、京都へいこう菊次は、喧嘩をしながらも世話をやくお巻との二人旅になりました。お巻は、京へ行けば師匠の友達の志賀近江之丞という人が何とかしてくれるのではというが、菊次「昔の俺ならいざ知らず、身を持ち崩した今の俺にゃ、どうして師匠のお仲間 たずねられるもんか」お巻「そんなこと言ってもったいない。あんたほどの腕を持ちながら、むざむざ 埋もれ木になって、宿場の淵に朽ち果てちゃ悔しいじゃないか」菊次「おまえにはわからねえ。この道のことはこの道のものでなくっちゃ わからねえのだ」お巻「だって、菊さん」・・菊次はお巻にうるさい、ついてくるなと言って、一人先に行くのでした。(今まで仲よさそうにして歩いていたのに、ちょっと菊次の癇に障ってしまったようですね。お巻さんは堅気でないので菊次さんをどうするつもりなのかしらと思いましたが、本当に菊次が好きになったのですね。菊次のことに親身になっている。普通だったら、菊次もお巻の心は知っているからなびくのでしょうが、師匠の気持ちを裏切ったこととおたねへの気持ちがこのようにかたくなにしてしまっているのではないかしら。お巻さん、この後も菊次を守っていてネ。)将軍家御上洛ということで泊まれる旅籠がなくどうしようかと困っていたおたねは、将軍家御上洛のお伴で来ていた小竹に偶然出会います。宿をかけやってやるから、少し付き合えと言われついて行ったところは居酒屋でした。小竹の口から大庭も来ていて京へ行くところだと聞く。小竹は、おたねが江戸を離れ菊次を追ってきていること、それからおたねの愛しい神楽師は、大庭に詰腹を切らされた能見三之丞の息子であることを知っている、とおたねに言い寄る。おたね「それがどうしたというのです。あの人に何のかかわりがあるんです」逃げようとするおたねに「では、なぜ大庭殿のことを聞いた」と小竹が言います。大庭の不正を知っているのは自分だけ、次第によっては力になってやると言われ、おたねは「それは本当ですか」と。すると小竹が、言うことを聞けと迫ってきたので、おたねは小竹を振り切って居酒屋から外へ必死で逃げた時、旅人姿の男の人にぶつかります。その男の人は、宿場に来あわせた・・菊次です。菊次は、ぶつかった女の人(おたね)を見て菊次 「あっ、おめえは」・・(びっくりしましたね、こんなところで思いもかけなかったものね・・菊次さん。) おたね「菊さん、菊次さん」(おたねも、びっくりしたでしょうね。でもやっと会えたのです・・笑みがこぼれます。)菊次はあたねに会えて一瞬うれしそうな表情を見せますが、小竹に気がつき、小竹も刀を抜いてかかって菊次に向っていきますが、追い返されます。 おたね「菊さん、うれしい、うれしい」・・菊次の胸に身をよせるのです。 菊次 「おたねちゃん、おめえ、どうしてこんな所に」おたね「菊さんに会いたくて・・あたし・・・あたし・・・」 菊次 「何だって・・・おいらのために、おめえ一人で・・」おたね「うん・・」おたねは、今までの思いを菊次にぶつけ、菊次の胸で泣きじゃくります。(菊次はお巻が一緒にいたことなどすっかり忘れているようです。おたねも菊次のことしか目に入っていないようです。)じっと成り行きを見ていたお巻が二人に近づいてきて、菊次に笠を無言で差し出します。お巻の存在に気づいた菊次は、はっとし気まずそうに・・、その様子を見たおたねはお巻を不思議そうに見て、それから菊次の顔をじっと見つめます。菊次は、お巻と一緒にいて旅をしてきたことの言い訳も出来なく、菊次に会いたいために一人で旅をしてきたおたねに申し訳なく思ったのでしょうか、お巻が差し出した笠を取って、いたたまれず逃げるようにそこを立ち去ろうとします。 (ここで画面は3人の表情を何回となく交互に映しだしていきます。菊次は、おたねにお巻と一緒にいたことのすまなさがあり、お巻は、菊次のおたねに対する思いとおたねの菊次に対する思いを見て何かを感じ、おたねは、お巻と菊次に何があるんだろうという、三人三様の思いを映しだします。)おたね「菊さん、菊さん、待って菊さん」菊次は足がまだ治っていないので途中転んでしまい、おたねが追いつきます。おたね「何故逃げるの」 菊次は下を向いて何も言えないのです。おたね「お父さんの・・お父さんの亡くなられたことも知らないで・・・」菊次 「えっ、親父が・・どうしたって」おたね「あなたのお父さんは、腹を切って亡くなられたんですよ」菊次 「それはどうして・・本当か」組頭の大庭にいじめられどうしで、御用金の使い込みの罪をきせられたことを聞き、菊次 「では、親父は詰腹を・・。知らなかった、そうとは知らず、親父は幸せに いてくれるとばかり思って、おらぁ」おたね「それを、それを知らせたいばっかりに」菊次「すまねえ」 おたね「菊さん」大庭には何のお咎めもなく、公方様のお伴をして京に上っているというので、二人も京にののぼろうと決めます。おたね「ねえ、菊さん、あたしたちも京都へ行こう。近江之丞さんにお目に かかって相談したら、きっとよい思案があると思うの。 ねえ、京都へ行きましょう」 菊次「京へ・・・」二人の様子を見ていたお巻に気づきビクッとする菊次。菊次とおたねがお巻に気がついた時、お巻は二人の様子を見ていたがその場を静かに去って行った。菊次はおたねにすまないという気持ちでいっぱいです。おたねは、何も聞きません。菊次に会って胸にすがった時といい、この場面の話ながら菊次の着物の襟をさわる仕草いいですよ。画像からは無理かもね。是非作品見てほしい。ひばりさんの自然にふるまうような動きには、本当に好きな人とはこうになるだろうな、という画面です。見ていて自然と二人の絡みに引きこまれてしまいます。橋蔵さまはひばりさんとは2作品目の共演ですが、1作品目で打ち解けたぐらいですから、映画の先輩の演技に自然に引きこまれ、橋蔵さまとひばりさんのラブシーン(?)には嫌らしさ、わざとらしさがなく、見ていてすごく粋があっていて素敵だなぁ。橋蔵さま、父の無念さを聞いての所の演技ですが、まだこの場面の感情を表現するのはちょっと芝居がかってしまっています。泣きは苦手な橋蔵さまです。どうしても泣きになると表情的に歌舞伎の仕草が出てしまいます。(やはり20年歌舞伎で育ってきて、映画に来て浅いので仕方ないですが、作品を見ていて本当なんですもの・・私は感じてしまうのでゴメンナサイ。) 続きます。
2016年10月30日
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あの人とは、色の恋のと言うんじゃねえさっき若い男の神楽師が踊っていたと聞いたおたねは、もしやしたら・・菊次はどうしているのだろうと思いを馳せます。近くまでおたねが来ているとは知る由もない菊次は、いつものように小遣いを稼ぐために博打場に行っていました。菊次の鋭い眼差しが臺振りの動きにいっています。臺振りが勝負と声をかけ壺を開けようとした時、菊次「待った。おう、素人だと見くびってなめなさんな」(菊さん、博打うちが見についてしまいましたね。長い旅から旅の生活がそこまで身を落とさせてしまったのでしょうか。いかさまを見抜くまでに。いや、真の心は神楽師菊次のままですよ。)菊次「ここの親分は、いかさま賽で素人衆の懐を痛めるのか」いかさまと何を証拠にと、子分達が身構える。菊次「ちょいと、そのサイコロを貸してみな」臺振りが、一転地六の賽の目に狂いはないと臺を開けようとした時、菊次がその手を掴んだ。菊次「このサイコロじゃねえ」と左手を掴み臺振りが握っていたサイコロを取り出した。菊次「そうれ御覧じろ・・一転地六の賽の目に種と仕掛けはこの通り」(かっこいい台詞ですね。聞いていて気持ちいいです。)いかさまを見破ったのですからそのままではすみません。大勢のドスをかまえるやくざ達を相手に立ち向かっていた菊次ですが、足を斬られてしまいやっとの思いで逃げ出すことができました。 (この場面には、所々に歌舞伎の癖がでてしまっている感じもありますが、いたし方ござんせん。映画に来てこのような台詞とこのような立回りの動きは初めてですから・・でもよく動いていますし流れが綺麗です。台詞も若さまのべらんめえ口調も良かったですが、やくざ口調もテンポよく端切れも良く言うことなし。これで役の幅ができましたので、これからに期待が持て、ファンもどっと増えました。)(やくざが追って来るのを交わし菊次が逃げて行った道を、ちょっとの差でおたねが反対方向に通って行きます。おたねは賭場に行くのです。・・・ここでほんとに近くに二人がいるのにすれ違いになるのです。)おたねは菊次が行っていた賭場に案内してもらったが、つむじ風みたいな風来坊ならとっくに逃げてしまったと、痛めつけられた者たちが傷の手当てをしながら言う。「逃げ足のはえい野郎だ」怪我を負った菊次はやっとの思いで逃げ切り、橋の下に身を隠し川の水で傷を癒していると、その橋を渡ってくる鳥追い姿の女が・・ あっ、おたねですよ・・橋の途中で草履の紐を締め直します。橋の上と下にいる二人はその気配も感じずに・・・。(ここでまた、すれ違いなのです。映画を見ていた人は「あっ、探しまわっていたがここで二人はやっと会えた」と思ってことでしょう、がまだまだ・・・)おたねが橋を渡り道を歩いてゆく後ろには、橋の下にいる菊次が見えています。(後ろを振り返れば。そして菊次も前方道の方に目をやれば・・と思うのですが、怪我の手当てを使用としている所へ、お巻という女が現れたものでその余裕はなかったのです。会うことが出来るという所にいたのに、神様は意地悪です。)賭場で菊次をずっーと気にしていたお巻という女に、菊次は助けられ旅籠に身を置いています。外は雨、向いの旅籠の部屋の窓際にあめ屋と書いてある箱に風車があるのが見え、あめ屋の一人が菊次に声をかけます。道の方へ目をやりますと、お巻の姿が見え、窓際で外を眺めていた菊次は部屋の方へ入ってしまいます。傷の薬を買ってきて足の怪我の手当てをしてやるというお巻に菊次「誰もそんなこと頼みはしねえよ。親切の押し売りは止めてくんな」と邪険にするのです。お巻「あーら、傷口膿んでるじゃないか、ほっとくから」その言葉に菊次起き上がり、お巻に傷の手当てをしてもらいながら、足を見て、菊次「畜生、足でせいなけりゃ」そんなにイライラしても雨では無理、ここでゆっくり落ち着いて治したほうがと菊次に言い、お巻は「私の気持ちは分かっているんだろう」と言い寄っていきます。菊次「お門違いだろうぜ。博打場のてらをさらってきていると思っているんだ ろうが、おあいにく様だ、ひゃくもまなえよ」 お巻が「あたしは、真実、兄さんが好きなんだ。分からないかね、この胸の内が」と迫るが、菊次「分かりたくもねぇや。さぁ、用が済んだらけえってくんな」しつこくするお巻を振り払って雨の降っている中に、真向いの旅籠のあめ屋の風車に目をやり、おたねを思い浮かべているようです。おたねはその頃、雨の中を探し歩いていました。(花見獅子の歌がバックに流れます。)菊次が出窓に腰を下ろし、風車に息を吹きかけ回し、その中におたねを想います。 (ここで何故、風車がちらっちらっと映し出されていたのかがわかりましたね。おたねが茶店で休んでいた時の水車、そして菊次の風車と、考えました。雨がやみ、向かいに時っていた一行は出かける様子。菊次の手元に風車が2、3個あるのです。)暫く風車を見ながら考えていたのでしょう、夕方になっています。おたねを想って、しっかり修行をしなければと思ったのでしょう。舞えるかどうか動いてみますが、足の傷はまだよくなってなく、かんしゃくを起こします。 ちょうど夕食時、お膳が2つ運ばれて来ました。仕方なしにお巻の酌を受けて1杯だけ、お巻に私にもと言われいやいやながら1杯注ぎ、その後はお巻のお酌は受けず手酌で半分自棄になっている感じで飲む菊次です。お巻「私のお酌じゃ気に入らないのね。その江戸の何とかという娘さん でなくちゃ」菊次「馬鹿」(強い口調で言います。)お巻「ふん、私にはちゃんとわかってる。あんたは日の人のことが忘れられ ないんだ」菊次「よせ、俺とあの人とのことはそんな、色の恋のと言うんじゃねえ」お巻は、それは嘘、その時は気がつかなかっただけ。今になって思い出すと胸が痛む「図星だろう」と言われ、お巻に腹が立ってしようがない菊次です。帰れと言うが、お巻にも小娘なんかに負けるものかという意地があった。ますます腹が立つ菊次と意地でも菊次の傍から離れないお巻のやりとりがここであります。が、優しい菊次です。力ずくで追い返すことは出来ず、勝手にしろというような様子です。一人旅で菊次も寂しいのです。江戸での自分のことなどわ、お巻に話していたのですね。おたねとの再会はいつ頃になるのでしょう。いやいやながらも菊次を好きなお巻との道中が始まります。 続きます。
2016年10月25日
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御番入りの能見三之丞が大庭中務から江戸一番の獅子舞が見たいと言われ、料亭こと川でも困ってしまい、菊次にお願いしようということで呼んだのでしたね。宮神楽には獅子舞はないものだから舞うわけにはいかない破門になる、というので一時は断ったが、菊次の頭を何かがよぎるものがあり聞いてみると、実の父親がいじめられているという。父親を恨んでいる菊次だが、やはり親子です、窮地を見過ごすわけにはいきません。破門になってはとみんなが止めるが、父親を救うために覚悟の獅子舞を舞い終わると、こと川から黙って去って行ったところまででした。菊次の心の中はどんなだったのでしょう。喧嘩相手のない旅は先日獅子舞を舞って窮地を救ってくれた菊次にお礼にと、師匠総右衛門の家を訪ねたおたねは、弥吉から、こと川で獅子舞を舞ったことが分かってしまい、菊次が破門になることを聞かされる。こと川の座敷で舞ったぐらいで破門になるのはひどいと、おたねは師匠の総右衛門に言う。師匠は、座敷で舞うのが悪いというのではなく、法官や芸者と同席で、宮神楽にない獅子舞を舞ったのがいけなかったのだと言う。もう、仲間中に約束をしたので菊次は家には置けないと。菊次は実の父親の危急を救うために舞ったこと、私たちが舞ってくれと頼んだからで、悪いのは菊次ではないと、おたねは師匠に訴える。師匠は「その訳は菊次から聞いた。菊次には一世一代の芝居だった。 破門は覚悟の上だったのだろう。これからの菊次は、自分を自分で 鍛えるのだ。わしは、日本一の神楽師になってくれるのなら、喜んで 鬼になるよ。鬼になると決心したよ」おたね「でも、菊さんが・・菊さんが・・・」同じ頃、おたねと入れ違いに菊次はこと川を訪ねていました。主人「娘と一緒じゃなかったのかい、まあ、お上がり」菊次、座敷の奥の方を伺い、おたねの姿を捜すようにして、菊次「おたねちゃんは」主人「娘はこの間のお礼方々様子を見てくるって、お前さんのとこへ行った んだよ」菊次「そうでしたか」すぐに帰ってくるだろうから待っているように言うが、菊次「いえ、それじゃよろしくお伝えください。これから旅に出るので、 もう会えないかと思いますが・・」 (かわいそう、菊次の表情に引きこまれてしまいました。)主人「旅へ出るって・・」 主人が、もしや破門になったのかと聞く。菊次「覚悟の舞ですから、公開はしていません」これからどうするのだと聞かれ菊次「どうって、手に職がねえんだから、宮神楽をやりながら、諸方を渡り歩く つもりです・・じゃ、お達者で」店を出て行く菊次を「待っ手遅れ、それじゃ話もなにも・・と言って引き止めるが菊次「ご免なすって」主人「娘が・・おたねが・・・」菊次「旦那、喧嘩相手のない旅は淋しかろう・・ あっはっっ、そう言っていたとお伝えくださいまし」 菊次は逃げるように行ってしまう。(菊次のおたねに対する胸のうちか、ジーンと伝わってきて、見ていて苦しくなりました。これから一人旅に出て、どうやって行くのか台詞を聞いていて心配で可哀想になってしまいます。)こと川に帰ってきたおたねは、菊次がちょっと前お別れに来て「喧嘩相手のない旅は淋しかろう」と笑って言ってな・・と聞き、慌てて菊次を探すが姿は何処にもなかった。菊次がいなくなってから、おたねは泣きじゃくる毎日である。ある日、こと川に能見の祝いの時に同席していた小竹小十郎が来て、能見三之丞が大庭に腹を切らされ、検視に立ち会ってきたところだと聞かされる。大庭は自分の使いこんだ金を誤魔化すために、能見に罪をきせたというのだ。家族は泣き寝入りするしかない。両親の反対を押し切って、一人で国々のお宮からお宮へとくまなく訪ねて回れば、菊次にきっと会える。おたねは決心し夜中にそっと旅立ちます。父親が非業の死を遂げたことを知らずにいる菊次がかわいそうと、宮神楽を舞うような所を探し歩きます。途中あった茶店で休んでいる時、目の前にあった水車が回るのを見て、菊次とのことを思い浮かべるおたねです。(途中、追いはぎにあったりしますが、へこたれません。一日でも早く菊次に会って父親の無念を知らせなければという思いなのです。)二人の思いを水車とあとに出てくる風車で表しています。祭が開かれる所で宮神楽を舞いながらの菊次の生活が続きます。 (橋蔵さまの舞踊の上手さが十分に見られる作品ですから、この場面もそうですし、この後にも見られますよ。)旅も馴れ風来坊のやくざ姿も板につくようになっていました。 (神楽師の町人姿から長脇差姿の橋蔵さま。スクリーンで初めてのスタイル。水を見つめていて、礼金を持ってきた人の方に、うしろ姿からふり向いたときの橋蔵さま「うわっ!」と声を出しそうに綺麗すぎますね。橋蔵さまの違った魅力が、また一つ増えたのですね。時代劇にこんなに素敵なスターが現れたのです、うれしくなりました。)「おおきに、有難うございます」舞の礼金をもらう。江戸のれっきとした神楽師の礼金としては少ないが、その代わり、祭りには博打がつきもの、稼がせてやると博打場に誘われ躊躇する菊次でしたが、背に腹は代えられません。 博打をやることをここで覚えて旅を続ける菊次。 (ここで場面はおたねが歌と三味線で、鳥追い姿で門付けをしながら夜も昼も歩き探し続ける映像が流れます。バックにはひばりさんの歌う「花見獅子」が流れます。)菊次は祭りがある土地にやって来て、祭りに使ってもらえるかどうか舞を舞って見せる。「おしいね」その若さでそれだけのうでを持ちながら・・結構な芸を見せてもらったと。菊次「どうでしょ、明日の祭りに舞わしてもらえるでしょうか」江戸の流派の名を出せるといいのだが、出せないとお礼の方がたいして出せないが、と言われ、菊次「分かっております。そり変わり、どうせ賽銭場がたつんでしょうから」「そうか、そんなことを覚えなすったのか」と言われ、何ともいえない菊次の心境を画像(映像)から察してください。(博打は生きて行くために覚えたことで、ばくち打ちのやくざに身を落としたわけではないのは、菊次の表情から分かりますでしょう。)菊次の行方を探しているおたねは、隣の村で宮祭りがあり神楽がたつと聞き向っていた。祭で舞っている最中の菊次。 (この舞もいいですよ。大川橋蔵が歌舞伎界にいたら歌舞伎は変わっていたのではないか、と現在でも考えてしまう時があります。多くの人が大川橋蔵を知りえたのは映画界に来てくれたからなのですが、歌舞伎界にとっては残念なことになりましたね。)おたねが祭りの最中の境内にやってきました。やっと菊次とおたねは会うことが出来るのねと思いきや、舞台を見ると、あれっ、さっきまで踊っていた菊次の姿はありません。若いいい男の神楽師がさっきまで待っていたと聞き、江戸の人だったか、何処に行ったのか・・この近くに菊次がいるのではないかと心が乱れます。菊次はそんな近くまでおたねが探して来ているとは知らず、博打場へ行っていました。この博打に行ったところから、菊次に災難がかかってきます。「おしどり囃子」は、最初に書いたように、新芸プロの福島社長が二人のコンビの2作目の映画を作りたい、大川橋蔵に相応しいものはないかと、村上元三先生にお願いして出来たもの。2枚看板になっていますが、これは当時、大川橋蔵は人気が出ているとはいえ、まだ新人なのに主役看板にはできない、というクレームがあったような・・。でも、橋蔵さまの踊りがふんだんにあり作品は完全に大川橋蔵主演の映画です。 続きます。
2016年10月21日
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あっしが獅子舞を見せれば・・師匠の家に帰った菊次は、青山から菊次の父親が今度新御番いりになるからと内々の祝いの品を置いていったことを聞く。菊次は喜ぶふうもなく、弥吉に「おめえが食ってくれ、いやなら、そこいらの犬でも猫にでも食わせてくれ」と言う。折角、おとっつぁんが持ってきたのにという弥吉に、菊次「俺にゃ、親なんかねえ。がきの時から子供を人手に渡すような親は、 俺の親じゃねえ」弥吉「だって、お侍の家にはこっちっとらと違って、難しい格式だの世間体 というものがあるだろう。それに、おめえは・・・」菊次「おれは女中の子だ。女中の腹から生まれた子は、侍の家にはおけねえとよ。 俺は何も生んでくれとは言った覚えはねえ。頼んだ覚えもねえよ」 菊次が腹いせに父親の持ってきた饅頭を手で払った時、障子が開き師匠の総右衛門が来た。師匠「菊次、来い」と、稽古場へ。菊次「何でしょうか、師匠」師匠「修行中の身で、浮世の雑事に心を惑わしてはならん」菊次「へい」師匠「今日のお前の舞には、隙があった」よくよくは跡を継いで、宮神楽の神髄を伝えてもらわなければからないのだから・・・。もう一度舞って見せなさいと言われ、菊次は弓と矢を手に取り、師匠の扇子での拍子に合わせて舞い始めます。踊りながら幼い頃が心を過っています。(乳飲み子で能見家から師匠総右衛門に引き取られていく様子が映像で映ります。)(冒頭の神社の舞台での舞、そしてここでの稽古の舞は、歌舞伎役者であった橋蔵さまの見せ場ですね。扇子の音だけで舞うのが素晴らしい。六代目からの稽古の時はこうだったのだろうな、と思い起こさせます。)数日後の料亭こと川、芸者と男衆が呼ばれやって来た。こと川の主人から、今夜は新御番組の振舞い、能見様が御番組に入ったので、こういう時は必ず上役達がいじめるのが常なので、粗相がないようにと言われ2階の座敷に行く。座敷では、能見三之丞が難癖を付けられていた。器が粗末、芸人どもが遅いと、すべてにひどいものである。芸者が来た時、芸者の踊りなど見たくはない、と大庭中務。おたねに踊れと言う。おたねが断ると、能見の仕切り方が悪いから娘までが馬鹿にするのだと言い出す。おたねは1階に降りてしまった。それではと男衆が江戸一番の獅子舞をといって踊り出すと、大庭の盃が飛んだ。大庭は能見に大変な難題を吹っ掛けてきた・・「本当の江戸一番の獅子舞を見せていただきたい」男衆が大変なことになったと1階の主人のところに飛んでくる。さぁーて困ったことになった。能見様の折角のご招待が・・・考えあぐんでいるところへ、おたねが「菊次さんにお願いしよう、菊次さんならきっと江戸一番の獅子舞を見せてくれる」菊次のところへ使いを走らせる。大庭「江戸一番の獅子舞はどうした」 男衆が今来ると言う。大庭「なに、来る。きっと江戸一番の獅子舞でおろうの」 江戸一番どころか日本一の獅子舞でしょうと、男衆が言う。大庭「きっとだな。その者は何という男だ」 それはまあ、ご覧になりましてからと男衆。(能見三之丞は安心した様子である。)こと川からに呼ばれ菊次がやって来た。菊次「何か御用ですか」 (この時の菊次は現状を知らないので、とても明るく爽やかな感じ)主人 「実は菊さん、是非、お前に頼みたいことがあるんだよ」菊次 「と、おっしゃると」お歴々を招いての今夜の振舞いが、菊次に獅子舞を舞ってもらわないとめちゃめちゃになってしまうのだと聞かされる。(菊次の明るかった表情がなくなり、ちょっと厳しい表情になる)菊次 「折角ですが、それは御免こうむります」どうして・・というみんなの様子に菊次 「獅子舞は太神楽のもので、宮神楽の中にはありません」これで失礼すると、そっけなく立ち上がり帰ろうとする菊次に「獅子舞は出来ないの?」というおたねに、「習ったことはあるから知って入る」と答える菊次。おたね「そんなら」菊次 「あれは宮神楽師の舞うもんじゃねえ。うっかりそんなことしたら、 俺が師匠に破門される」おたね「御大層なもんだね、宮神楽師ってのは」菊次 「まぁっ、お断りしましょ」と・・・しかし、ふと何を思ったのか菊次「もし旦那、今夜の振舞いのご主人役とおっしゃるのは」・・・能見三之丞と聞いてびっくりする。 ⇒ 菊次「えっ、その能見様が、いじめなされているのか。あっしが獅子舞を見せれば 能見様・・とおっしゃる方の顔がたつわけなんですね」主人「それはそうだが、お前さんが破門を覚悟で舞ってくれとは言えないよ」菊次は獅子舞を舞う覚悟をする。おたね「菊さん、お獅子を舞う気になったんじゃないだろうね」菊次 「その組頭の御旗本が、江戸一番の獅子舞が見たいといって おいでなんだろ、俺が江戸一番の獅子舞を見せようじゃねえか」⇒菊次「さあ、仕度しよう」菊次は支度をして、獅子頭を取って2階座敷に向う。 (親なんかいねえ父親なんかじゃねえと言っていても、やはり菊次の心の中には親に対する優しい気持ちがあったのですね。)獅子舞が終わります。大庭は今宵一基板のご馳走。まこと江戸一番の獅子舞だ、とご満悦。盃を取らせたいと言うが、おたねが下に降りて行った時には、菊次はちょっと前に帰った後。おたねが外へ出て「菊さん」と呼んでいるのを、能見三之丞が聞いていた。能見「菊次郎か、やはり・・・。菊次郎が、わしのためにもうてくれたのか」それを聞いておたねが、「金さんの実のお父さん?」と。破門になることを承知で父のために獅子舞を舞って帰る菊次の心境は・・。 続きます。
2016年10月18日
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1956年5月封切 「おしどり囃子」原作村上元三の仇討ち立志物語「花見獅子」を、美空ひばりと大川橋蔵の豪華コンビによって歌と踊りとロマンあふれる情緒時代劇としての映画化です。おきゃんな町娘おたねと、旗本能見三之丞の子でありながら訳あって宮神楽の弟子になっている菊次は、人目を忍ぶ恋仲でてす。ある日、菊次は父三之丞を旗本組頭大庭中務の難儀から救うが、そのことから宮神楽を破門され、旅へ出ることになり股旅(ばくち打ち)へと身を落としてしまいます。おたねは菊次を心配して鳥追いになり、探し歩いてゆきます。二人はどのようになるのでしょう。 女は女らしく配役名が出ている時に、「おしどり囃子」の歌1番3番が流れます。 獅子が浮かれる 御神楽ばやし 客は見とれる 泣く子は黙る 花の祭りに ひふみざくら 笛と太鼓が 調子を取れば 鈴の合いの手 シャンシャラリ シャンシャラリ 娘十九の 後追い笠を 泣かす他国の お祭りばやし 君の失敗 目に浮かぶ 笛と太鼓が 調子を取れば 鈴の合いの手 シャンシャラリ シャンシャラリそして画面は・・・神楽囃子が聞こえてくる境内の舞台を人々が見つめています。(うわっ、舞っているのは橋蔵さま扮する菊次ではないですか。流石、決まっていて凛々しいです。)奉納の宮神楽を舞っている菊次。人がざわつきました、何か起こっているようです。菊次も舞台からどうも気になっているようで、舞がおろそかになり、師匠から注意が飛びます。祭のなか地回りが乱暴に喧嘩を吹っ掛けているよう、それを収めていたのは料亭琴川の娘おたねでした。おたねは地回りに、一両を渡して丸く収めたのでした。菊次が舞を終えて帰ろうとしている所へ、「菊さん」と呼び止めるおたねの声がしているが、菊次はふり向くがそのまま行こうとします。菊次はにこりともせず少し不機嫌なようすです。(二人の会話のやりとり第一弾です)おたね「菊さん、まってよ。さっきから御神楽の済むの待っていたんだよ」菊次 「そうでもなかろう。たいそう派手な一幕があったじゃねえか」おたね「あら、みてたの」にっこり笑い、 「どう、私の腕はまんざらでもないでしょ」菊次 「ふん、おめえが、あんなおちゃっぴいとは思わなかったよ」おたね「おちゃっぴい、まあ失礼。あたしゃ、みんなのためにあいつらを 裁いてやったんだよ」菊次 「それが余計な出しゃばりというものだ。女は女らしくするものさ」おたね「じゃ、あんた、何故黙って見てたのさ。男なら男らしく飛び出して、 あいつらをやっつ けてくれればよかったじゃないか」菊次 「そうよ、男が男らしいところを見せようと思っても、どっかの娘の ような出しゃばりのおちゃっぴいがいちぁーね」おたね「ふぅーんだ、なにさ、そんな男らしくないこと言う人大嫌い」菊次 「おいらも、女らしくねえ娘はきらいだよ」おたね「嫌いで結構、どうせ、あんたのお嫁さんなんかにゃなってやらないから」菊次 「ありがてぇ、それでおいらも、先の苦労がなくなって、助かったよ」おたねに言い残して行ってしまう菊次を見て、地団太を踏みます。(「⇒」のところまでがyoutubeに載っていますので見てください。お二人のやりとりは、見ていて可愛いし微笑んでしまいます。この後も、暫くお二人のやりとりが続きますので、そのイメージを頭に描きながら、暫くこの後もお付き合いください。)と、こんな具合の二人ですが、周りが心配するようなことはないようですよ。宮神楽の弟子・菊次郎と料亭こと川の娘・おたねは、はた目からみても分かるほど二人は惚れ合っているのですから、喧嘩をして言い合って結構楽しんでいるようです。(トミイとマミイの若い時の映画には、このような二人のシーンがふんだんに出てきます。これが見ていて凄くいいのです。自然ににじみ出てくる二人の魅力に惚れちゃいますよ。「女は女らしく」この台詞ふりそで太鼓でも使っていますね。ひばりさんに語り掛ける橋蔵さまのソフトな声とイントネーションで言うから嫌みがなくてよいですね。)その夜、川端に菊次とおたねの姿があります。菊次が送ってくれるというのに、おたねは昼間のことをまだ怒っている様子。菊次 「おい、まだ怒っているのかい」おたね「知らない。おちゃっぴーのでしゃばりには用はないでしょ」菊次 「あれはおいらも言い過ぎたよ。だから、誤っているじゃねえか」 おたね「口先だけでなにさ、どうせおたしは女らしくない女です」菊次 「もういい加減にしないか、折角送ってきたのに」送ってきた菊次に、頼んではいない強がりを言う。菊次 「ふ~ん、いいのかい。夜道は物騒だよ」おたね「余計なお世話、男なんて平気」 かまわないでとまだ強がりを言っているおたねです。菊次 「おやおや、そうかい。そんなら、何があっても知らないよ」立ち去る菊次を見て、「本当に行ってしまうの」というようなおたねの表情。そして菊次もおたねが気になり途中まで行くと、様子を見ているのでした。(お互い強情ですが、可愛さがいい。そこが見ている私たちにはたまらないところです。ひばりさんのファンのに誰との共演映画がいいと聞きますと大川橋蔵との共演、橋蔵さまも好きなのですが、橋蔵さまファンの中には、ひばりさんとの共演のものは嫌いという人もいるらしいです。多分、このようにひばりさんと橋蔵さまの演技が余りにも自然に出ているからなのでしょう。ファンとしての嫉妬からでしょう。私などは、このお二人、なるほど噂になったほどのことは・・・と思いますが。)そこへ、地回りの仲間がおたねから一両をもらった事を聞き、自分たちもあやかろうと二人組がやってきます。絡まれもう小遣いはないと言うおたねに、それなら・・と、おたねを捕まえようと。二人から逃げようとするおたね、影から見守っていた菊次が助けに来ます。(二人の会話やりとり第二弾になります)菊次の姿を見てすがるおたね。「菊さん、助けて」菊次 「おや、あめえ、男なんかへいちゃらだったはずだろう」おたね「そんな意地悪言わないで、こいつらやっつけてよ」菊次 「そうかい、頼むならかたずけてやってもいいが・・・頼むんだね」おたね「早く、後生だから」(二人のやりとりどうですか。どんな感じなのか作品を見ていただきたい。他の人達では出せないものがあります。おたねが菊次の腕に手をやっていますね。この手というか指先というか、動きがすばらしいの。菊次を見つめる表情と合わせて見て見て・・・)菊次 「よおーし。さあ、おめえら、俺が相手だ。ちょいとかたずけるかな」⇒⇒地回りの二人かを簡単にあしらって、菊次と御種は仲直りが出来たようです。一緒に帰ろうとしたとき、忠言の灯りが見えこちらに向って歩いてくるお侍の姿に目をやった時、菊次は「おっ」と言って、慌てて行ってしまいます。おたね「菊さん、どうしたの菊さん」 お侍は、菊次の父親である旗本能見三之丞でした。三之丞もおたねの「菊さん」と呼ぶのを聞いて何か思ったようです。今までの場面は、二人の甘い関係で楽しみました。これから大変な事態が起こるなど想像もできません。菊次の出生から、父に対する感情が描かれ、許せないその父を助けようとしたことから、宮神楽師を破門になり、修行の旅に出ることになりますが、世間は甘くない。お祭りのある所で舞いながら博打も覚えての旅になります。おたねは、菊次がいなくなったことでしょんぼり。ある日、菊次の父親能見の無念をしり、菊次に知らせようと探して旅に出ます。さあ、どうなって行くのでしょう。 続きます。
2016年10月15日
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トミイ・マミイ「笛吹若武者」でひばりさんと橋蔵さまの共演が大好評だったので、第2回の共演映画は何がよいかと考えていた新芸プロの福島社長は、村上元三先生に相談したことの記事を読みました。「先生、ひばりちゃんとの2回目の共演映画で、橋蔵君に向くものを何かお願いできませんか」村上先生は「私も橋蔵君は好きです。実は、江戸の有名な神楽師とこれを助ける娘を主題とした物語の腹案がありますから、これをまとめましょう。ちょうど橋蔵君とひばりちゃんによいと思うんですが」ということで、そのあらましを聞くと非常に面白く、早速執筆をお願いしたということです。原作名「花見獅子」を「おしどり囃子」と改題して映画化になりました。トミイ・マミイの最強のコンビが、私たちに楽しく夢とロマンを与えてくださる映画の始まりになりました。各映画会社での名コンビといわれた方達がいました。東映で、いや全国で名が響いたこのお二人トミイ・マミイコンビを外すことは出来ないでしょう。お二人は最後まで仲良かったのですもの。トミイ・マミイと二人が呼ぶようになったのは「笛吹若武者」の撮影の終り頃からだったようです。お二人は撮影が進むにつれ冗談を言い合うほどの間柄になったようです。普段、すぐには話しかけたりしないひばりさんが、橋蔵さまには違ったと言われています。ひばりさんが橋蔵さまの名前の富成からトミイと、橋蔵さまが年は若いけれどしっかりしていてお母さんのよう(ママのよう)だからマミイと。橋蔵さまとひばりさんがご一緒に出られた番組で、「この人失礼しちゃうのよ、お母さんのようだからだって」と言っていましたわ。この時期に、橋蔵さまは東映と契約をして、映画界でやっていくと決められました。「おしどり囃子」は橋蔵さまの歌舞伎界から映画界への第一弾に相応しい作品内容でした。橋蔵さま主演映画として出したかったようですが、そこは当時のいろいろな事情があったようで、ひばりさん主演映画でいったようです。神楽の舞の場面、厳しい稽古場面・・等々、見ているとどうしても歌舞伎界にいた時の橋蔵さまを想像してしまいます。六代目について厳しい修行をかさね、厳しく育ってきた橋蔵さまはこんな風だったのかなと、ファンは役柄の菊次に重ね合わせて見ていたのではないでしょうか。ひばりさんとの共演の他の作品でも思うのですが、ひばりさんと橋蔵さまの絡みはとても自然な動きなのです。仕草、口調に・・二人が阿吽の呼吸を感じます。ひばりさんの橋蔵さまに触れる時の手の仕草にも感心させられます。ラブ・シーンの時でもひばりさんが抱きつき甘える手の触れ方でも本当にいい感じなのです。橋蔵さまもひばりさんだとラブ・シーンでもひばりさんが受け止めてくださるので、安心して演技をしているようにみえるのです。この時期の他の女優さんとですと、ひばりさんを相手のような雰囲気は出せていないように感じます。それと、口喧嘩のようなことをしては仲直りと、普段でもそうでは・・と思うような、お二人の仲の良さが作品から伝わってくるのです。「おしどり囃子」でも出てきますのでお楽しみに。映画の中で流れる「花見獅子」と「おしどり囃子」という歌があります。作品の流れの中、菊次とおたねの状況に合わせて流れてくる歌です。映像はありませんが、歌がyoutubeにありますので、載せておきます。ノイズがありますが、ひばりさんの歌声を聞きながら、どのような作品になっているのか想像してください。ご存知の方は、あの歌が流れた時は、あそこの場面だったと思い起こしてみてくださいね。次回は「おしどり囃子」に入ります。
2016年10月12日
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youtubeに載っていた画像が削除されてしまったので、時間がとれたら書いていきます。それまで、「敦盛哀歌」の歌の画像で我慢してください。
2016年09月13日
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東映と新芸プロは中村錦之助さんに続く新人として前々から打診をしていた、歌舞伎役者の女形で人気上昇中だった大川橋蔵さまを、どうしても引きぬきたい気持ちが大きくなっていました。北条秀司作「青葉の笛」の映画化の話が持ち上がっり、玉織姫役の美空ひばりさん主演でいくことはきまったのですが、問題は相手役の平敦盛。橋蔵さまでいこうと話が決まり、錦之助さんを口説き落とした時に使った料亭で橋蔵さまと会うことにしました。明治座の舞台を終え駆けつけた橋蔵さまの説得にかかったそうです。橋蔵さまも映画に出るということは、歌舞伎役者という殻から抜け出るには相当の犠牲を払わなければなりませんから、大変だったと思います。 東映側は何度も橋蔵さまのところへ足を運び応諾を得て、「笛吹若武者」のあらすじが出来上がり持って行った時、橋蔵さまは期待と不安が入り混じった表情を見せたそうです。こうして橋蔵さまの映画デビューが決まったのです。でも、歌舞伎役者としてで東映との専属契約はもう少し後になります。いよいよ、「笛吹若武者」のクランク・イン・初めて顔を合わせた時の事を、美空ひばりさんは、最初様子を見ていて笑顔がいいけれど歌舞伎界で苦労してきた人だなあと思ったらしいです。でも、だんだん撮影が進んで行くうちに、人を気遣い、話していて楽しい人だということで、お二人の仲は近くなっていったようです。そして"トミイ""マミイ"と呼び合うコンビができました。作品は平敦盛と玉織姫の悲恋物語なのですが・・最後はめぐりあうことができる・・となっています。今はyou tubeに動画が投稿されていますので、見ていただければうれしいです。別枠上記に動画を載せました。私が好きなショット3画像載せました。橋蔵さまの「目千両」と言われた目とあの哀愁は、ここから磨かれていったのですね。 兜がおもかったのかなぁ。役に撤しているが、ちょっと素が出ているようなところが可愛いでしょ。
2016年09月13日
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