じゃくの音楽日記帳

じゃくの音楽日記帳

2013.01.13
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カテゴリ: 演奏会(2012年)

しつこく、2012年コンサートを振り返るシリーズを続けます(^^;)。今度はヴァイオリン編です。2012年に聴いたヴァイオリン関係の全コンサートは、以下の8つでした。


1月13日  アン・アキコ・マイヤース ヴァイオリンリサイタル (紀尾井ホール)
2月20日  ナイジェル・ケネディ 「バッハ plus ファッツ・ウォーラー」 (東京オペラシティ コンサートホール)
 4月 9日  枝並千花 ヴァイオリンリサイタル/コルンゴルド「空騒ぎ」ほか (東京オペラシティ リサイタルホール)
 4月17日 ヘニング・クラッゲルー 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル/イザイのソナタ全曲 (武蔵野市民文化会館)
 6月18日 ララ・セント・ジョン 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル/バッハ (武蔵野市民文化会館)
11月 5日  ギドン・クレーメル ヴァイオリンリサイタル  (サントリーホール)
11月10日  ラドゥロヴィチ(指揮&Vn),東響/バッハとメンデルスゾーンのVn協奏曲 (東京オペラシティ コンサートホール)
11月13日  ラドゥロヴィチ 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル (浜離宮朝日ホール)

圧巻は、断然、クレーメルでした。

あと、ナイジェル・ケネディを聴けた(&見れた)ことが貴重でした。

僕がケネディを初めて知ったのは、彼が1984年(27歳時)に録音したエルガーのヴァイオリン・ソナタ&小品集のCD(シャンドス)でした。そのCDを僕が聴いたのは1992年のことで、その純粋なまばゆい輝きの美しさに魅せられ、たちまちケネディファンになりました。けれどその後すぐにケネディはコンサート・ドロップアウトしてしまい、驚いたものです。そのあと「KAFKA」という、なんとも変わったCDが出たりして、翌1997年にはコンサート復帰しました。 しかしその後に出たCD「クライスラー」(1998年)、「クラシック」(1999年)、「エクスペリアンス」(同)は、僕にはちっとも良さがわからなかったし、それらのジャケットの顔写真はもの悲しげな表情で、この先ケネディはどこに行ってしまうのだろうか、と心配してしまいました。その後のCDでは「EAST MEETS EAST」(2003年)で僕としては久々にケネディの波長にあった自分を感じることができましたが、あとは僕にはピンと来なくて、ケネディへの関心もうすれつつあるこのごろでした。

そんなとき、5年ぶりの来日になるという日本公演のチラシを見つけて、一度はケネディの生の姿をこの目で見ておきたくて、出かけました。いでたちは相変わらずで(パンク・ファッションというらしい)、ジャンルを超えた音楽を仲間と奏で、ストレートパンチのようにして仲 間とこぶしとこぶしをあわせて喜ぶケネディのやさしそうな笑顔を見ることができたのは、音楽を聴いて感動という体験とは違いましたが、貴重な機会でした。 今後も独自の旅を、続けて行かれることでしょう。

それから、4月の枝並千花さんという方のリサイタルがとても良かったです。僕の好きな曲、コ ルンゴルドの「空騒ぎ」を弾いてくれるので聴きにいったものです。プログラムの最初が「空騒ぎ」で、手堅い演奏でした。その次に指揮者のブルーノ・ワル ターが作曲したヴァイオリン・ソナタという珍しい曲が聴けて、これがまた、なかなかに良い曲でした。2012年はワルターの没後50年ということで、それで取り上げたのでしょうか。そしてプログラムの最後はR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタでした。

コルンゴルドの曲をいろいろと初演し、よき理解者であったワルターと、コルンゴルドの才能を早くから絶賛し、コルンゴルド一家と親交のあったR.シュトラウス。この3人の曲を並べた、なんとも素敵なプログラムだったわけです。演奏も良くて、満足でした。コルンゴルドとワルターといえばマーラーも重要人物ですから、「もしマーラーがヴァイオリンの小品を書いていたら、きっとそれも演奏してくれたのではないか」と空想をめぐらせたりもした、充実のひとときでした。

さてクレーメルとほぼ同時期に、ネマニャ・ラドゥロヴィチが来日しました。僕が彼を初めて聴いたのは2007年で、大友&東響の演奏するエルガーの交響曲2番を聴きにいったときでした。プログラム前半で、彼がチャイコフスキーの協奏曲を弾きました。それはまるで違う曲をきいているような、すごく新鮮なすばらしい体験でした。それで彼をマークするようになりました。翌2008年に武蔵野市民文化会館で聴いた、グリーグのヴァイオリン・ソナタも真摯な熱い演奏で、その実力をあらためて思い知りました。そのあと渋谷タワーレコードでたまたまミニ・リサイタルに遭遇して、サインをしてもらったりもしました。

今回は、東響とは、指揮・ヴァイオリンの弾き振りで、バッハのイ短調の協奏曲と、メンデルスゾーンの二短調、ホ短調のふたつの協奏曲というプログラムでした。それから浜離宮朝日ホールでは、バッハとイザイの無伴奏リサイタル。どちらの演奏会も、ケネディほどではないですが個性的ないでたちで、個性的な演奏を聴かせてくれました。しかし今回僕は、両方とも、彼の音楽から過剰なデフォルメ、過剰な自己主張を感じてしまい、彼の音楽世界に入り込めませんでした。

これまでにも、彼の演奏からこのような違和感を少々感じたことは、ありました。しかし今回は、かなり強い違和感でした。特にバッハはそうでした。ちょうど直前に、クレーメルの、自己主張のないすばらしいバッハを聴いていただけに、より一層それを強く感じたのかもしれませんが、それだけではないような気がし ます。ラドゥロヴィチさんが今の路線のまま進んでいけば、いずれ独りよがりの袋小路に突き当たってしまうのではないか、そんな危惧を感じました。それが見当違いになってくれればいいな、と思います。

あとヘニング・クラッゲルーさんというノルウェーの若いヴァイオリン奏者のリサイタルは、イザイの全曲を一夜で弾くという気合のはいったもので、かなり聴き応えがありました。プログラムの詳細な楽曲解説もご自分で書いていて、ためになりました。

ララ・セント・ジョンさんという愛らしい名前のカナダのヴァイオリン奏者のバッハは、我流で大きくくずしたバッハで、僕には完全にはずれでした。ただ、僕にとってひとつサプライズがありました。このときのプログラムはバッハの無伴奏曲3曲がメインで、途中にコリリアーノの小品1曲がはさまれていました。この小品が演奏され終わって拍手が始まると、奏者が客席を見回し、それにこたえて僕のすぐ近くにいた長身の外人が、すくっと立ち上がりました。なんと作曲者のコリリアーノさんがいらしていたのでした!

昔FMでたまたま途中から聴いていた曲が、やがて闇の中に深く沈みこんでいき、その音の静かな美しさとともに、その背後にある不安というか不条理というか、そのとんでもない大きさに、強いインパクトを受けました。これはすごい、なんという曲なのだろう、と思って聴き終わって曲名のアナウンスに集中していると、「コリリアーノ作曲 ハメルンの笛吹き」とアナウンスされました。それがコリリアーノさんを知ったときでした。そのコリリアーノさんのお顔をまさかここで拝見できるとは、ちょっとしたサプライズでした。

以上、2012年コンサート・ヴァイオリン編でした。






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Last updated  2013.01.15 16:48:23
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