フォーカスチェンジ・フラッシュ

フォーカスチェンジ・フラッシュ

2012.06.01
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神さまのプレゼント


あるところに、
お金持ちのおばあさんが
いました。

若いころにさんざん
苦労して、お金をいっぱい
ためましたが、いまでは
すっかり年をとって、
寝たきりになりました。


おばあさんのおうちには、
おおきな蔵がありました。

その蔵には、ぎっしりと
あるものが詰まっていました。

それは、砂糖でした。

真っ白な砂糖でした。


若くて貧しかったころ、
おばあさんは、
甘くて白い砂糖が、
食べたくて食べたくて
たまらなかったのです。

だから、お金持ちになって、
砂糖を、いっぱいいっぱい、
買いだめしたのです。

砂糖だけは、いつでも
絶対に食べられるように。


何年も何十年もたちましたが、
砂糖は、使われるどころか、
蔵が開けられることさえ
ありませんでした。

おばあさんの家の
コックさんは、そんな
安物の砂糖なんか、
使いませんでした。

何より、おばあさん自身が、
年をとって、ほとんど、
ものを食べられなくなって
いたのです。


やがて、おばあさんは
亡くなりました。

蔵は、そのまま、
手をつけられることは
ありませんでした。

なんだか、おばあさんの
思いが残っているようで、
手をつけるのが、
怖かったのかもしれません。


そのまま、また何十年か
たちました。

そして、あるとき。
蔵のなかで、砂糖たちが、
目を覚ましました。


この国では、
捨てられたモノたちや、
百年を経たモノたちは、
いのちを得るのです。

そうです。百年経って、
忘れられた砂糖たちは、
モノノケになったのです。


「ああ、なんて
 暗くてきゅうくつなんだ」

砂糖たちは、おしあい
へしあいしながら、
ためいきをつきました。

「ここを抜け出して、どこか
 広いところに行こうよ」

誰かが、言いました。

「そうしよう、そうしよう」

みんなは、賛成しました。


その夜遅く、もしも、
空を見上げたひとがいたなら、
四角い袋に入った砂糖たちが、
雁の群れのように、
並んで空を飛んでいくのを
見たことでしょう。

でも、それが砂糖だなんて、
きっと、気がつきは
しなかったでしょうけど!


砂糖たちは、飛びました。

自由になった身で、
のびやかにかろやかに
飛びました。

広くて明るい空を、
どこまでもどこまでも
飛びました。


気がつくと、いつのまにか、
南の国まで来ていました。

その国のひとびとは、
毎日の暮らしがやっとの
ような、貧しい暮らしを
していました。


ちょうど、
クリスマスの日でした。

けれども、ひとびとには、
甘いケーキを買うお金など、
なかったのです。


「いまだね」

「ここだね」

「そう、いま、ここだよ」

砂糖たちは、
うなずきあいました。

目と目をみかわして、
にこっと笑いました。


そして、いっせいに、
袋を破って、散りました。

みずからのからだを、
こなごなに散らしました…。


その日、はじめて、
南の国に、雪が降りました。

雲ひとつない空から、
雪は、突然降ってきて、
たえまなく、ひとびとの
上に、降り注ぎました。

あたり一面を
真っ白に染めました。


不思議なことに、その雪は、
ちっとも冷たくありません。

地面に落ちても溶けません。

それだけでなく、なめると、
甘い味がしたのです。


「甘いね」

「とっても甘いよ」


ひとびとは、夢中になって、
木や建物についた雪を、
すくっては、なめました。

子どもたちは、
はしゃぎまわりながら、
空に向かって、
おおきく口を開けました。


甘くてとけない雪が、
その国に降ったのは、
あとにも先にも、
そのときかぎりでした。

ひとびとは、これは、
きっと、神さまの
プレゼントにちがいない
と、考えました。

どんなに苦しくても、
神さまが見ていてくださる
なら、希望をもって
生きていこうと、
思えるようになりました。


このお話は、のちのち、
伝説として、ひとびとの
あいだで語り継がれました。

やがて、国をおとずれた
外国のひとが、それを
物語に書きました。

物語は、翻訳されて、
世界じゅうに、
伝えられました。


そんな国をひとめ見たいと、
観光客がおとずれるように
なりました。

ひとびとの暮らしは、
前よりちょっとだけ
ゆたかになりました。


からっぽになった、
おばあさんの蔵は、
いつのまにか、朽ちて、
くずれて消えました。

だれも、そのなかにあった
砂糖のゆくえを
知りませんでした。

いいえ、砂糖のことも、
おばあさんのことも、
もはや、知るひとは、
いないのでした。


南の国の伝説だけが、
絵本になって、
この国にも届きました。

あなたも、図書館で
探してみてごらんなさい。

きっと、見つかりますよ。


うそのような、本当の話です。


●追記

すみません。
本当は、全部、うそです。(爆)


--かめおかゆみこ発行
   「今日のフォーカスチェンジ」
   第1800号(2008年10月2日発行)より


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Last updated  2012.06.02 05:01:21
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ぱんちゃん@ Re:達人の出番です!(12/07) 心配り。心痛い!なかなかできない。心配…
ぱんちゃん@ Re:こころが動かないときは(12/07) 三秒でもよい。二日坊主の私はいつも片身…
黒澤まちこ@ Re:「あなたが採用決定者です」(10/04) そうなんです。みんなが幸せなら私は幸せ…
くろさわまちこ@ Re:からだの問題だけではありません。(10/04) 上手く言えませんが、そんな感じ。私のな…
みゆ@ Re:「今にして思えば…」 本当にそうですよね 過去をふりかえるより…

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