邦題は『時間の闇の中で』となっているけれど、始まるとまず黒い画面に白抜きの文字でDANS LE NOIRと出て、次にDU TEMPSと出ます。「暗闇に中で」→「時間の」です。この暗闇というのは、一つには観客が今いるはずの映画館の暗闇のことで、時間というのは(まずは)映画という含意があると思います。つまりこの作品は一つには映画について語っているということです。そのテロップと重なる形で第一の引用映画から若い女のセリフ。老年の男がそれに答えます。
これは映画のことを言っている。と言うより映画のことを言っているというコンテクストでゴダールが引用している。この作品はほんの一部を除いて自作や他作の映画の一場面、あるいはアウシュビッツ等の記録映像のコラージュで作られている。しかし単にフィルム to フィルムの引用ではなく、一度デジタル化され、多少ゴダールが画質をいじっている。結果として(DVDをテレビ画面で見ているので曖昧だがたぶん)画質的にデジタルであることがわかる。
アンナ・カリーナの引用映像は、自作『女と男のいる舗道』でカリーナがドライヤーの無声映画『裁かるるジャンヌ』を見て涙を流すシーンだけれど、ここでは映画はまだ映画は生きていたということでしょう。あとは涙は作品全体の映画を弔う気分でもあり、自らの生を生きる Vivre sa vie(女と男のいる舗道の原題)という生の哀しみにもつながる気もします。