「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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2010.04.23
走れ!走れ!
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カテゴリ未分類
ナーバスな人物像を描いてしまいますが
僕にとって彼のベスト作品は「走れメロス」です。
誰もが一度は学校の教科書で読んだであろうこの物語は
ドラマティックな展開もあって、多くの青少年を惹きつけました。
☆
羊飼いの青年、メロスは都会に来ていた。
メロスはここから40Km以上も離れた田舎で暮らしている。
そこで共に暮らしている妹が、近々に結婚式を挙げるので
都会に足を踏み入れると、いつもの華やかな雰囲気とは違い
町行く人達はみな暗い表情をしている。
その訳を老人が話してくれた。この大都市を治める主君(王様)
の振舞いが傍若無人で、次々に市民を理由も無く処刑していると
のことだった。
メロスは激怒した。こんな暴君は生かしておけない。
メロスは正義感が強く、そして単純な男だった。
後先も考えず、王の住む城へと忍び込んだ。
もちろんあっという間に警備の者たちに捕らえられ
メロスは王様の前に引き出された。
王様は「お前は私を殺しにきたのだな」
「王様はなぜ人々を虐げるのか?」
それに王様はこたえて
「人は私欲の塊だ。人の気持ちなどまったく信用ならぬ」
「私は孤独ゆえ、信用ならぬ者どもを懲らしめるのだ」
メロスはそんな理屈が通るのかと言い、呆れた表情で
「私は殺されることなど覚悟している」
「ただ・・」
「三日だけ、待ってくれないか?」
「妹の結婚式だけはあげさせてくれ」
「私が田舎に帰る間に、人質としてこの都市に住む
親友を置いていく。」
王様はそれを聞いて笑った。
「お前は本当は命が惜しいのだな」
「籠から出た鳥が帰ってくるものか」
しかし、王様は
「待てよ・・それも面白いか」
と何やらたくらむ表情でメロスの帰郷を
許すことにした。
「三日だぞ」
「三日目の夕刻、日没までにおまえが帰って来なければ
おまえの友人は命を落とすことになる」
「どうせ・・おまえは命惜しさに少し遅れて
帰ってくるのだろうがな」
王様はメロスに冷たく言い放った。
メロスの親友、セリヌンティウスが連れてこられた。
メロスのとんでもないこの申し出にも、即答で快諾した。
そうすることが真の友人である証だと信じた。
メロスは解き放たれた。親友に「必ず帰ってくる」と
何度も念をおして。
..メロスは体力に自信があった。片道フルマラソンの
距離もものともせず、一睡もせず夜通し走り続けた。
それでも故郷の田舎へたどり着いたのは翌日の昼のことだった。
メロスは大慌てで妹とその婚約者に結婚式を挙げさせる
準備を始めた。急遽のことで二人とも呆気にとられていたが
メロスが強硬に説得してようやくのことで、宴を始めることに。
結婚式は楽しかった。メロス自身には親も無く女房もおらず
肉親はこの内気な妹だけ。妹さえ幸せになってくれればそれで
良かった。 でも二人の幸せそうな笑顔を見て、メロスはこのまま
時が止まれば良いと思った。
..しかし、メロスは自分の身に鞭を打ち出発を決意した。
約束の明日の日没までには、まだ時間があるがそろそろ
一眠りして、旅立たなければならないと思った。
宴の途中から突然雨が降り出し、豪雨となった。
もちろんそれでも村人みんながずぶ濡れになりながら
歓喜の宴は続いた。
メロスは妹と花婿に「おまえたちは、二人で
立派にやっていける! もう兄の助けなどいらない」
その言葉をどう受け止めたのか知らないが、二人は笑顔だった。
メロスは眠りについた。..起きたのは約束当日の早朝だった。
メロスは跳ね起き、走り出した。友を救うために。
雨はいくぶん小降りになっていた。
..全速力で野山を走り抜けるメロス。
ところが!
なんと目の前にはあるはずの橋がないではないか。
昨日の豪雨で川は氾濫し橋は壊れて流されたのだ。
途方にくれるメロス。
しかしこんなところでグズグズしていては
約束の時間に間に合わない。意を決してメロスは
濁流に飛び込んだ。必死に川の流れをかき分け
命からがら、向こう岸へとたどり着いた。
もう陽は西へ傾き始めている。急げメロス!
峠を越えようとしたときに、今度は山賊が現れた。
メロスが「見ての通り、私は何も持っていない」
「命以外に持ち合わせはないぞ」
と言うと、山賊の一人が
「その命がほしいんだよ!」
山賊は王様が差し向けた刺客だったのだ。
しかしメロスは強かった。山賊の持っていた棍棒を
奪い取ると逆に滅多打ちにして急場を凌いだ。
一難さってまた一難。灼熱の太陽は照りつけ
容赦なくメロスの体力を奪う。
メロスは気弱になった。もうだめだ。もう間に合わない。
友には気の毒だがこれも運命。本当にすまない。
そう思うが早いか、メロスは疲労困憊で眠り込んでしまう。
..どれだけの間眠っていただろうか。陽はほとんど
沈みかけもうあまり時間が無いことを悟った。
僅かに眠ったことが幸いしたのか、メロスは走る気力を取り戻す。
もう何がなんでも友を救う気持ちになっていた。
メロスは走った、口からは血をほとばしらせ
服はボロボロに擦り切れ、ほぼ全裸に近い状態だった。
都市へ入ると、気が狂ったように周りの人間を跳ね飛ばした。
そして刑場へ間一髪でたどり着いた。
喉が渇き、口の中はすっかり乾いていたが
声をしぼりだすように
「私だ! 約束どおり帰ってきた。殺されるのは私だ」
それを観た市民たちが口々に「よくやった! 許してやれ!」
と叫んだ。
そして、メロスの親友であるセリヌンティウスの縄は
とかれたのである。
メロスは眼に涙を浮べて友に言った。
「私を殴れ。私は、ここへ来る途中で君を裏切ることを
考えた。 もし君が殴ってくれなかったら君と抱擁する資格は無い」
セリヌンティウスは、刑場一ぱいに鳴り響くほどメロスの右頬を
殴った。
殴ってから彼は優しく微笑み、
「メロス、私を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ
ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。
君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
メロスも思い切り、セリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い
、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆の中からも、すすり泣きの声が聞こえた。
暴君も、群衆の背後から二人の様子を、まじまじと見つめていたが
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。」
「おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な
妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、王様万歳。」
..ひとりの少女が、マントをメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。良き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを
着るがいい。」
「この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが
たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、ひどく赤面した。
(完)
☆
..後半は息切れで、原文を抜粋してしまいました。( ̄□ ̄;)
☆
子供のころ、初めて「走れメロス」を読んだときには
すごく興奮して、面白いと思いました。
友を救うまでのメロスの葛藤。誰だって自分が大事だし
十分にその苦悩を理解できました。
そして果たして友の命は救えるのか?間に合うのか?
手に汗を握って読んだものです。
最後に親友同士が抱き合う場面ではもう号泣でした。
..今読み返してみると、さすがに感動は薄いです。
そして、この作品の決定的な違和感は最後に
人殺しの王様を群集が容易く許し、「万歳」と称える
シーンですね。そりゃ甘いってんですよ。
☆
この「走れメロス」という作品を忘れ得ないのは
その面白さだけからではありません。
中学生の頃、この作品の読書感想文を書きました。
クラス全員が書いたのですが、先生から指名されたものから
発表していきます。
みんなは美しい友情だの、メロスのがんばりは
素晴らしいだのと書いていました。
しかし当時の国語の先生はとても厳しい人で
そんな通り一遍の、ありきたりの感想など
聞きたくも無いとぴしゃり。
最初はクサい言葉にはしゃいでいたクラスメートは
水を打ったように静まり返ってしまいました。
なぜか最後に僕が指名され感想文を披露しました。
僕は「走れメロスを最初に読んだのはもっと
昔で、そのときにはメロスの悩みが痛いように
感じ取られ、その苦悩を乗り越えて、自らに
死が待っていると分かっているその場所へ
たどり着いたことに、とても感銘を受けました。」
「しかし、何度もこの作品を読み返すうちに
その感動は薄れてきたようにも思います。」
「けれども、太宰治が描こうとした
人間の本来持つ卑小さと、善良さに偽りなど
なく、その弱さゆえに人間は間違いも犯すけれど
それを覆す強さも身につけることも可能なのだと」
「そういつだって、教えてくれます」
「だから僕は信じています」
「いまもきっと、メロスは僕の心の中を」
「走り続けているのだと」
先生はそれをじっと聞いていて、クラスメートに向かって
「もし拍手をするなら、こんな文章だろうな」
そう言いました。
ほんの暫くの時間をおいて、教室には拍手が
鳴り響きました。
☆
子供なんて こんなつまらないことを
忘れないんですよね。
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最終更新日 2010.04.23 19:35:26
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