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2022.12.20
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1925年12月20日、29歳の宮沢賢治は、岩波書店店主の岩波茂雄に手紙を出しました。

「春と修羅」の売れ残りと、岩波書店の本の交換を申し出ました。

残念ながら岩波からの返事はありませんでした。
岩波書店は春と修羅の貴重な初版本を大量に入手するチャンスを逸しました。

(本文開始)

とつぜん手紙などさしあげてまことに失礼ではございますがどうかご一読をねがひます。

わたくしは岩手県の農学校の教師をして居りますが六七年前から歴史やその論料、われわれの感ずるそのほかの空間といふやうなことについてどうもおかしな感じやうがしてたまりませんでした。

わたくしはさう云ふ方の勉強もせずまた風だの稲だのにとかくまぎれ勝ちでしたから、わたくしはあとで勉強するときの仕度にとそれぞれの心もちをそのとほり科学的に記載して置きました。

その一部分をわたくしは柄にもなく昨年の春本にしたのです。

友人の先生尾山といふ人が詩集と銘をうちました。詩といふことはわたくしも知らないわけではありませんでしたが厳密に事実のとほりに記録したものを何だかいままでのつぎはぎしたものと混ぜられたのは不満でした。

辻潤氏佐藤惣之助氏は全く未知の人たちでしたが新聞や雑誌でほめてくれました。そして本は四百ばかり売れたのかどうなったのかよくわかりません。二百ばかりはたのんで返してもらひました。それは手許に全部あリます。

わたくしは渇いたやうに勉強したいのです。貧るやうに読みたいのです。
もしもあの田舎くさい売れないわたくしの本とあなたがお出しになる哲学や心理学の立派な著述とを幾冊でもお取り換へ下さいますならわたくしの感謝は申しあげられません。

わたくしの方は二・四円の定価ですが一冊八十銭で沢山です。あなたの方のは勿論定価でかまひません。

粗雑なこのわたくしの手紙で気持ちを悪くなさいましたらご返事は下さらなくてもようございます。

こんどは別紙のやうな騰写刷で自分で一冊こさえます。いゝ紙をつかってじぶんですきなやうに綴ぢたらそれでもやっぱり読んでくれる人もあるかと考へます。

    ご清福を祈ります。

(本文終了)





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最終更新日  2022.12.20 07:54:52
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