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#宮沢賢治 #AIイラスト
三三五
つめたい風はそらで吹き
一九二五、五、一〇、
つめたい風はそらで吹き
黒黒そよぐ松の針
ここはくらかけ山の凄まじい谷の下で
雪ものぞけば
銀斜子の月も凍って
さはしぎどもがつめたい風を怒ってぶうぶう飛んでゐる
しかもこの風の底の
しづかな月夜のかれくさは
みなニッケルのあまるがむで
あちこち風致よくならぶものは
ごくうつくしいりんごの木だ
そんな木立のはるかなはてでは
ガラスの鳥も軋ってゐる
さはしぎは北のでこぼこの地平線でもなき
わたくしは寒さにがたがたふるえる
氷雨が降ってゐるのではない
かしはがかれはを鳴らすのだ
(解説)
1928年5月10日28歳の宮沢賢治は友人の盛岡中学校5年森佐一と岩手山夜間登山にでかけました。
松林で野宿しましたが寒くて眠れず岩手山神社の倉庫のソバガラに潜って寝ました。