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全4件 (4件中 1-4件目)
1
薄暗い倉庫の中、椅子に座り佇んでいる姿がある。つややかな銀髪と白い肌、それと対象に黒い目と服装。魔導甲冑ウォードである。只今彼は勤務中である、何もしていないように見えるが勤務中である。倉庫の中の本は綺麗に整頓され、埃一つ貯まっていない。空気はひんやりとしていて、乾燥している。この環境をウォードが作っている、表面温度と空気の対流を制御してこのひんやりかつ乾燥した空気を作っている。いつもならば、ただ黙々とエアコンの代わりをしているウォードだったが、今日は気になることがあった。(昨日のでーとのとき、何者かが自分たちの後ろをつけている事には気づいていた。一人はエレナでもう一人がわからない。可視光線のレーダーには全く反応が無く、それで居て魔力感知におぼろげに反応しているこの不思議な気配は、出現と消滅を繰り返しながら塚津離れずの距離を保っていた。敵意は感じなかったのでほおって置いたが……)「おーい、ウォード?」(それに、最近この店の近くで同じような反応を感じたような気がする……)「ウォ-ド?昼休みだよ?ってつめたぁ!」その声にはたと我に返り。「エレナか、どうした。」彼女は霜のついた手を息で温めながら。「どうした、じゃないって。お昼休み。ご飯いらないの?」「わかった、行こう。少し考え事をしていた。」「考え事?」「あぁ、後で話すから、ここを出るぞ寒いのが好きならここでも良いが。」「そんなわけないでしょう……。」いそいそと部屋を出る二人。その姿をじぃーっと窓からのぞく一つの人影があった。(居ない居ないとおもったらこんな所にぃぃぃぃ!うふふふふ静かに椅子に座って目を閉じる彼の姿……きゃぁぁぁぁぁぁ!!)心の中で黄色い声を上げる。彼女の名はセイラ。『穴』を通じていろいろなところを渡り歩く能力を持った女の子だ。いそいそとケータイを取り出しウォードをを撮る。(あぁ~♪生ロボ~♪)おもわず、画面にほおずり。(っと、こんな事してる場合じゃなかった。今日はウォードたんに突撃インタビューするために来たんだから。というわけで~ニンニン)出てきた穴からすっと消える。もとより普通の人には姿は見えないのではあるが。エレナは倉庫の方をじっと見つめているウォードに気づいた。「?どうしたの、ウォード。」「いや……なんでもない。」「そう?なら良いけど。」そういって、前を見ると、目の前に少女が居た。「きゃあ!ど、どこから入ってきたの!?」彼女はエレナには目もくれずウォードにずずいっと詰め寄った。「む…。」エレナは目をつり上げるが何も言わない。「な、なんだ?」さすがのウォードもとまどいの表情を浮かべると、セイラは突然ウォードに抱きついた。「あぁ~、生ウォードだー♪」「生ウォード?」ぽかんとするエレナとウォード。「っは!つ、ついだきついちゃった!」慌てて離れるセイラ。「ごめんなさいごめんなさい!ロボの匂いがしたからつい!」ぺこぺこと謝るセイラ。(ロボの匂いって、気づいた!?ウォードの正体に!どうやって……)(ふむ、この気配……昨日の。)それぞれ違った反応を示すエレナとウォード。「それはいいが、昨日つけていたのはお前か?」「えぇ!!気づいてたんですか!!うそっ!!」「え?なに、昨日って。」「うむ、昨日エレナの他に跡をつけているらしい気配があったのだが、残留魔力から目の前の人物と特定した。」淡々と述べるウォード。「すごい!!私のカクレルーンリングZ・改を見破るなんて!!ねえねえ!武装は!?稼働時間は!?あなたのスペックを全部教え……。」そのとき、エレナの方から何か白い物がうなりをあげてセイラの頭に直撃した。紙が破裂するような音があたりに響く。「……。」声もなく耳を押さえてうずくまるセイラ。「今のはなんだ?エレナ。」痛そうなセイラを全く無視して話しかけるウォード。「ん?これ?ハリセンっていうのよ。紙を折り曲げて持ち手を作った、こういうときに使う道具。」「なるほど、効果は絶大だな。」「でしょ?」「で、この子誰だろ。」「さあな。昨日後ろをつけてきた人物としか言いようがない。」「スパイとかそういう風には見えないしねえ?」「そうだな、さすがにここまで間抜けな…。」と、そのときセイラがむくっと起き上がって。「い、痛いじゃないですか!!何するんで……いえ、あの。済みません。もう騒ぎませんから。はい、そう、おろして、おろして……」「で?あなたは何なの?」「わたしはセレナっ、ただのロボ好きな女の子だよっ!」「はぁ、それで?ここに何のようなの?」「ロボのウォードたんに会いに来たのー♪」心底うれしそうに答える。「どうする?」と、目線で問うエレナ。「ふむ、どうして私がロボットであると?」「あのねあのね!ウォードたんからはロボの匂いがするのっ」エレナがウォードの方を見ると、「対応不能」と、顔に書いてる。「はぁ、ウォード。お昼ご飯は後回しね。」「そのようだ…」場所をリビングに変えて。「とりあえず、ウォードをロボロボ言うのは止めてもえらえる?」「えーっ、どうしてー。」「我らが追われる身だからだ。」「えー?何でロボだと追われるの?」「人の事情にはいろいろあるんだから、そう言うのを詮索しないの。出来れば名前で呼んで?」「わ、わかった。これからはちゃんとウォーどたんってよぶねっ!」「ま、まあいいけど……それで、ウォードがロボ……魔導甲冑だって事は隠しておきたいから。交換条件。」ぴっと人差し指を立てる。「ウォードのことを人前でロボロボ呼んだり、彼の性能のことを人前で聞かないで居てくれたら、ここでならウォードのことを話してあげる。」どう?とセイラに尋ねる。「うんっそれで良いよ!やったー、やったー、じゃあウォーどたんとわたしは友達ね?」「と、友達?いや、私は……。」「良いじゃない。よかったわねー友達が増えて。」「うむ……」そして、昼休みの間中ウォードからいろいろと聞き出したセイラはうれしそうに帰っていったのでした。「エレナ。」「なに?」「友達とのつきあいというのは……大変だな。」「多分彼女は特殊な例だと思う。」「そうか…」「そうよ…」半日でなぜか疲れ切ってしまった二人なのであった。
2004.12.30
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そしてついにデートの日。ウォードはデートの約束をした日から何事もなかったかのように毎日を過ごしていた。もとより、何考えているかいまいちわからない人だけれども。エレナが朝起きて店の前を見てみるとウォードが一人立っていた。朝霧の立ちこめる早朝に彼が立っているのは、もちろん待ち合わせのためでは無い。"日課"をするためだ。一時的にヒトをやめ、本来の甲冑になる。左腕を前に突き出すと、腕の一部がぱかっと開き、立体映像が現れる。何が書いてあるのかは知らないのだが、本人曰く「私の体の調子をチェックしている」らしい。しばらく、その映像を眺めた後、ふたを閉じた。そのあと、しばらく軽快な機械音が聞こえた後、彼は再びヒトに戻った。そこで声をかける。「ウォードー。」「なんだ?」「朝ご飯食べる?」「いただこう。」そう言ってウォードは中にはいってきた。私も1階に下りる。おじいさんはすでに起きていて、朝ご飯の準備をしていた。見た目には、結構お年を召している感じなのだが、しっかりした優しい好々爺というのが私の感想。「あ、手伝います。」「うむ、じゃあこちらはそろそろ終わるから、食器を並べておいてくれるかな?」「わかりました。」と、私が手伝っているとウォードが入ってきた。「申し訳ない、私も手伝おう。」「ん~、でももう終わってるからおとなしく座ってて。」「……わかった。」何だか寂しそうに席に着くウォード。程なくして朝食の支度が調った。「そう言えばウォード、今日はデートだったっけ?」「あぁ、そうだったな。」「ほう、そうなのですか。ウォードさんも隅に置けませんねぇ。」「まったくです。」「な、何のことだ?」「まぁまぁ、気にしないで。」「う、うむ。」何だか釈然としない顔をしているウォード、ま、無理もないけど。「ごちそうさまでした。」早々に朝食を食べ終わって、席を立つ。「おや、何か用があるのですか?」不思議そうに声をかけるおじいさんに「えぇ、ちょっと。」とだけ、答えて。2階に上がる。ふふふ、こんな面白い……ごほん危険なこと放っておけますか。「エレナは一体どうしたのだろうか……何やらうれしそうに上がっていったが。」「気になりますか?」「はい、数日前からちらちらとこちらを見ていましたし。気になっておりまして。」「ほうほう、それはそれは。なるほど。」何やら一人で納得しているおじいさん。「何か心当たりでも?」「いやいや、気にするほどのことでもないよ、気にせずデートに行ってきなさい。」「はぁ…。」ウォードは待ち合わせ場所である噴水のそばでぽつんと立っていた。……動体反応。近くに住む子供達に、動物たちに……エレナか。一体何を考えているのか、路地裏からこちらを伺っている。変装しているようだが、私相手にそのような物は意味はないし、何か考えがあるのかもしれない。そんなことを思っていると、こちらに近づいてくる人が居る。この間の少女だ。彼女は息を切らせて、私に駆け寄り、「済みません、お待たせしてしまいましたか?」「いや、まだ約束の時間には早い、気にするな。」「あ、はい。そう言えばそうですね。」何だか照れたように笑う。「それで、でーと、をするのはよいのだがお互い自己紹介が必要なのではと思うのだが。」「あ、はい!済みません。私ったらうっかりしてて。」慌てたようにぺこぺこと謝る。緊張しているようだ。「そこまで気にすることはない。私はウォードだ、古本屋でお世話になっている。」「は、はい。すぅーはぁ…私はミリスって言います。」「よろしく、ミリス。で、本日の予定だが。私はでーとと言う物をしたことが無く、全くわからないのだ。なので、すべて君に任せてしまっていいだろうか?」「は、はい!任せてください!ちゃんと今日のために計画は立ててきたんです!」元気に答えるミリス。その姿に少し居まぶしい物を感じるウォード。私には無い物だな、こういった特徴は。「頼もしいな。では行くか。」「はい!」二人は仲良く歩いていく。「あ、あれがウォード?」最近妙に言葉使いがよくなったような気はしていたが、あそこまでとは。最初の頃とは大違いだ。それよりも、ミリスって、いい子だな~。一生懸命で素直だし。私なんかとは違うなぁ。あ、移動する。尾行しなきゃ。二人はまず、商店街にきた。「そう言えば、このあたりにはきたことがないな。」「え?そうなんですか?」「うむ、エレナに「あなたに任せたら力仕事する人がなくなるじゃない」といわれてな。買い物基本的にエレナか店長がしている。」「でも、何か買いに来たりはしないんですか?」「あいにくと趣味と言った物が無くてな、休みの日はずっと寝ている。」「えぇ!ずっとですか!?」「あぁ。「半日以上寝ている人なんて初めて見た」と、店長とエレナに驚かれた。」「た、確かにそれは驚きますよ。」「そんな物か、ちなみにミリスは休みの日は何をしているのだ?」「私ですか?そうですね・・・本を読んだり、あとは……・」そう言って、装飾品店の前まで行き、「こういったお店で宝石を眺めたりしてます。」「眺めているのか?」「はい、買うお金はありませんし。眺めているだけでも結構楽しんですよ?」「ふむ、私も何か趣味を探してみるか。」「ほんとですか?」「あぁ、ミリスの顔を見ていたら実に楽しそうだったからな。」すると、彼女は顔を真っ赤にして。「え?や、やだ。じっと見ないでください。え、えと。じゃあ歩きながらお店を眺めてみて何か趣味になりそうな物を探してみましょうか!」そう言って慌てながら、走り出す。「前方に注意しないと転……。」ウォードが言い終える前に、ミリスは全方を歩く人にぶつかって転んでしまった。「きゃっ。」すっと駆け寄って地面にぶつかる前に抱き上げる。「あ、ありがとうございます。」「気にするな、だが今度からはちゃんと前を見て歩いた方がいい。」「は、はい。そうですね。」と、答えた後。「すみません、大丈夫でしたか?」と、ぶつかった人に声をかける。「い、いたたた。ほ、骨がおれた。」「だ、大丈夫ですか!兄貴!」「うぅ、いててててて。」妙な痛がり方をする男に、それよりも格下と思われる男が声をかける。「え?そんな!?」ミリスが見るからに動揺している。「なぁ、ねぇちゃん。治療費。払ってくれるよな?兄貴が骨が折れたって言ってるんだ。それなりに出す物出してもらうぜ?」そう言って脅しを書ける男。「必要ない。」ミリスと男の間に割り込む。「あぁ?なんだ兄ちゃん。喧嘩売ってんのか?兄貴が折れたって言ってるんだ。折れてるに決まっているだろうが!」ウォードは倒れた男をすっと見て。「その男に外傷は認められない。骨が折れているならば、少なくとも痣が出来るほどの衝撃があるはずだ。」「なんだぁ!?けちつけようってのか!?」「正論を述べただけだ。」「てめぇ!!」殴りかかる男の顔に平手を加え転倒させる。「自分の言い分が通らなければ、暴力に訴えるか。まるで子供だな。」それを聞いて、先ほどまで痛がっていた男が立ち上がり。「へっ、兄ちゃん。おとなしく金を出していたら痛い思いをしなくても済んだのに……よぉ!」不意打ちのつもりで殴りかかったきた男を、半身をずらして避け、首筋に衝撃を加えて昏倒させる。そのまま後ろも向かず。「ミリス、行くぞ。不愉快だ。」「え?は、はい!」ミリスは振り返ると慌ててついてくる。二人の後ろで、何かを叫んでいたようだが、その声もすぐ収まった。「このっ、待ちやがれ!」立ち上がり、追いかけようとした男の首筋をがしっとつかむ。「な、何だ……ひっ!?」振り返った男が見た物は、鬼のような形相をしたエレナの顔だった。「……いま、何をしていたのかな?」静かにエレナは男に問う。「ひぃ!?、す、済みません!?」おびえきった表情で後ずさろうとするが、しっかりと捕まれているため、逃げられない。「もう二度と、悪いことはしませんって言ってたのは嘘だったのかな?」「……それはその。」「問答無用♪」鈍い音と共に。崩れ落ちる男。「やれやれ。懲りてないんだから。」埃を払い立ち上がる。二人は楽しそうにデートをしているようだ。もっとも、何もしなくてもウォードの実力があればたいていのことなら何とか出来るだろうけど。でも、何だか気に入らない。何だか変だ。今までウォードがさっきみたいに話してくれたことはない。絶対に何かある。「一体何を隠してるの?ウォード……。」エレナの独り言は、ウォードは聞き取れていた。なかなか鋭い。だてに長生きしてないな。感心する。目の前の人物は、楽しそうに前を歩いている、何かに気づいた様子はない。普段は使わないのだが、人の姿になれる軍用兵器である彼にとって、人の真似をするのは機能の内だ。完全な人の姿がとれるのならば、敵の土地にこっそり侵入して破壊活動をする事も、容易と見られたからである。実際にその機能をでーとの為に活用するとは思わなかったが。ただ、楽しそうなミリスの顔を見て、この機能も捨てた物ではないと思うのだった。楽し時間はあっという間に終わり、デートも終わりを向かえようとしていた。「今日は楽しかったか?」「はい。楽しかったです。ウォードさんは?」「私も、楽しかった。こう言う休日も悪くはない。」「よかったです。」そう言うと、くるりとミリスは後ろを向く。「どうした?」「私、ウォードさんのことが好きです。つきあってもらえますか?」ウォードはしばらく沈黙した後。「済まないが、君の彼女にはなれない。」「そうですよね、私なんか……。」「勘違いするな。君に魅力がない訳じゃない。ただ、私たちは、いつかこの町を出て行く。今日か、明日か、その後か。二度とこの町に戻ってくるかもわからないし、だから。」「だから?」「私の友人になってくれないか?こう見えても私の友人はエレナだけだ。だから……。」「いいですよ、私、ウォードさんのお友達になってあげます。」「ありがとう。では、帰ろうか。我が友ミリス。」そう言って手を差し出すウォード。「はい、そうしましょうか。」くるりと振り返り、笑顔でその手を取る。そして、ウォードの初めてのデートは終わった。その様子をうかがっていたエレナ。あらあら。女の子泣かせな性格してるなぁウォードって。ミリスは泣いていなかったが、きっと心の底では泣いているだろう。まぁ、しょうがないことではある。世界を見て回る、と言うことは、いつかはここを旅立たないといけない。危険がないとは言えないし、この後どうなるのかもわからない。そんな状況で、軽はずみな事は出来ない。かわいそうだけど、しょうがないことではある。そんな風に思っていたエレナだが、内心ほっとしていたことには気づかないのであった。
2004.12.27
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二人はまず名無しの甲冑の名前を考えることにした。と言っても、エレナが考えた名前を甲冑がそれでいいかだめか言うだけだが。結局ウォードに決まった。「ウォード、それで、二人の関係はどうしよっか」「関係?ただの旅の仲間ではないのか?」「……まぁいいけど。」二人はたわいもないやりとりをしながらカイレイスの町に歩いていった。「お、大きい……。」町の外壁を見上げてつぶやくエレナ。「そうなのか?この程度の壁なら一撃で・・(もごもご)。」「いきなり何言い出すの!!」慌てて口をふさぎ辺りを見回すエレナ。周りに聞かれていないことを確認すると手を離す。「いきなり何をする。」「何をする。じゃないよ、誰かに聞こえたらどうするの。正体隠す気あるの?」「むぅ……。」小さく呻いて沈黙するウォード。「もういいけど、次からは気をつけてよ?」「わかった。」二人は、門衛に事情を説明し中に入れてもらった。「さて、無事入れてもらった訳だけど。問題が一つ。」「何だ?」「路銀が全くありません。」「どうすればいい?」「お金を稼ぐには働くしかないでしょ?さて、どこか住み込みで働かせてくれるところはないかな。」「任せる。私はそう言うことは全くわからない。」「任されました、恩人だしね。」二人で、当てもなく仕事先を探す。日暮れまでには何とか仕事を探すことが出来た。「や、やっと見つかったね……。」この、得体も知れない二人を受け入れてくれたのは老人が一人でやっている古本屋だった。二人は早速仕事を始めエレナは受付、ウォードは本の整理をしていた。「そうだな……、大丈夫か?」「うん、疲れた……。」「今日は休め。どうやら力仕事しか残ってないようだし。」「ありがとう。」閉店間際の古本屋の店内には誰もおらず、ウォードは黙々と作業をこなしていた。と、こちらを伺っている人影があるのに気づいた。(店外に動体反応。敵対意識は感じられず。しかし、一般的な客の反応とは異なると感じる。原因不明。)対象は、店内に入ってくるでもなくこちらを伺っているが、それ以上の行動を起こさない。結局、店を閉めている間にどこかへ行ってしまった。次の日、昨日あったことをウォードはエレナに聞いてみた。「……と言うことがあったのだが。」「店内をじーっと伺う人影かぁ……もしかしてあなたのこと見てたんじゃないの?」「どうしてだ?」「そんなこと私にわかるわけ無いじゃない、その人じゃないんだから。」「それもそうだな。」「わかったら仕事仕事。次の町に行く旅費にはまだほど遠いんだから。」そう言って二人は今日も無事に仕事をしていた。昼休みのことだった。エレナが買い物から帰ってくると、ウォードが誰かと話していた。思わず隠れて様子をうかがう。「……と、言う訳なんですけど。お願いできますか?」相手は女の子のようだ。結構かわいい。「わかった、こちらの仕事と重なっていないので引き受けよう。」何の話か知らないがウォードに仕事を頼んだようだ。「ウォード。」「エレナか、今の話聞いていたか?」「聞いてなかったけど?」「ちょうどよかったので聞いておこう、でーと、と言う物は何だか知っているか?」「……もしかして今の。」「察しがいいな、なにやらでーとのお誘いと言う物を受けてしまったのだが。ちょうどその日は休みであったし引き受けたのだが。」「何かも知らずに引き受けた訳ね……はぁ……、デートって言うのは、男女が待ち合わせをして、どこかに行くこと。」「なるほど、そう言うことだったのか。ふむ、ならば問題はなかったか。」何度もうなずき納得するウォード。そんなウォードを呆れ顔で見ながら、「どうでもいいけど、正体ばれないようにね?」「わかっているとも。」「ほんとかなぁ?」そこはかとなく不安がよぎったが気にしないことにしておく。この程度で躓くようならこの先やっていられない。ちょうどいい機会だ。いろいろと勉強してもらおう。昼休みの後は特に騒動もなく。平和に一日が終了した。
2004.12.25
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如何に人類が空を支配しようとも”それ”を見た者はいない。 過去に置いて人類は大規模な天災にあい、その文明をかなり失っていた。 その、失われる前に作られた”それ”は、空をただぼんやりと浮いていた。 それは、表面を黒く光らせ、一目見ただけならばごつごつした固まりに見える。 しかしよく見ると、その固まりは人型が体をうずくまったようにしているためにそう見えていることがわかる。 可変式内燃機関併用型軍用魔導甲冑というのが”それ”の名前である。 制作された当時、その魔導甲冑は世界を制するとまで言われた強力な兵器であったが、突如命令を無視して空の彼方に飛び去った。 ”それ”が持つ遮蔽機構は最高の物で目視においても見つけることは出来ないほどの物だった。 結局、捜索にかかる費用と命令無視の原因から探索は打ち切られ、名も無き魔導甲冑は空に浮かぶ衛星の一つとなった。 そして、今日もそれは、いや彼はただぼんやりと誰もいない空に浮かんでいた。「暇だ・・・」 ぼそりとつぶやいた。「この空に浮かび始めて何年にもなるが、いい加減浮かんでいるのにも飽きたな。とはいえ、何時軍に見つかるともわからない状態で下手に動いて見つかるわけにも行かない」 誰もいないのにもかかわらず、いや誰もいないからこそぼそぼそと独り言をつぶやいた。(たすけて・・・)「ん?」何か声が聞こえたような気がしてあたりを探査するが何もない。当然と言えば当然だが。「ただのノイズか?」そう思って、再び待機状態、つまり眠ろうかと思ったわけだが。(ここからだして!!)「な!?だ、だれだ!?」今度こそ間違いない。こんなに大きなノイズが発生するわけがない。今度は念入りに探査をする。(・・・・念話の類か?一体どこから・・・)仮にも魔法と科学の融合体、魔法による探査も可能である。擬似的にも意志を与えられた影響か、勘に似たものも持っている。思考波をたどっていくと、雪に埋もれ既に廃墟と化しているある村にたどり着いた。村にある教会の地下。そこには、一人の男と。そして、十字架に縛られた少女が居た。男は、少女の首筋にかぶりついている。「う・・・あ・・・あぁ・・・」苦しそうに少女が呻く。しかし男はそれを意に介すことなくかぶりついている。しばらくすると男は少女から離れ一階に歩いていった。男が見えなくなると少女のすすり泣く声が響く。その首筋からは血が流れていた。(・・・何だ?これは・・・)一度として、地上をのぞき見たことがなかった彼にとって今の映像は衝撃的だった。少女がつるされている事ではなく、見る影もなくなった今の世界が、である。(まぁ、それはいい。別に地上がどうなろうと私には関係のないことだ。それよりも)そう言って、少女を見る。と言っても彼の特殊な知覚で遠隔の地をのぞき見ているのだが。先ほど聞こえた声は、だんだん大きくなっていた、おそらく意識が向いたためより受信しやすくなっているのだろう。(うるさい・・・・)さすがに、何時までも女の子の泣き声を聞いているとあるはずのない胃がキリキリしそうだ。そんなわけで、少女を黙らせるべく。彼は起動してから2度目に自分の意志で動くことにした。人型から戦闘機へ静かに変形を始める。その緩やかな変形はモーフィングのようだ。程なくして変形が完了すると、白煙と魔導光を曳いて飛び去った。「はぁ・・・」古びた教会の椅子に横になりため息をつく男。ひげは生え放題で、服も体も何日も洗っていない。食料も底をついた彼を生きながらえさせているのは先ほどの少女の生き血だった。口の中が鉄分の味でいっぱいになっていて気持ち悪いが我慢するしかない。自分が生きるためには彼女に血を吸わせてもらうしかなく、だが一方で彼女は生きていくのに必要な物はない。逃げようとした彼女を捕まえ、縛り、監禁した。そうしなければ生きてゆけなかったからだ。2度目の氷河期とも呼ばれた天災の時、かれは運悪く逃げ遅れ、雪崩に飲み込まれたこの村に閉じこめられた。不老不死の少女と共に。そして、現在の関係が成立している。「はぁ・・・」彼は何度目かわからないため息をつき、眠りについた。雪を踏みしめる音で目が覚めた。(なんだ?)そう思い起きあがると、ドアが開かれておりそこには黒い人型の何かがあった。(ロボット?いや、そんな馬鹿な)一瞬よぎった物を否定する。男が困惑しているうちに、その人型の物体は男を無視して教会の地下に歩いていった。「ってぇ、何なんだ!?」慌てて追いかける。謎の物体に命綱をどうにかされてはたまらない。彼は、教会の地下にたどり着くと目的の物をみつけ歩み寄った。少女はおびえた表情でこちらを見て「唖、あなたも血を吸いにきたんですか?」と、いった。「・・・お前が泣き叫んでいる所為でわたしが安眠できない。頼むから静かにしてくれ。」とりあえず、率直に用件だけを言ってみた。「私をここから助けてくれるなら」すると、そう彼女は答えた。「わかった、まかせ・・・」と、言いかけたところで、「だめだ!それを持って行くんじゃない!」と叫ぶ声が聞こえた。振り返ると男が息を荒げて、叫んでいた。「それとはどれのことだ?」何のことだかわからず彼が聞き返すと、「そこの十字架に縛ってあるそれのことだ」そう言って少女を指さす男。彼は無言でしばらく佇んだ後。無言で少女を縛り付けている鎖を切り裂いた。突然ささえる物がなくなり倒れ込む少女を無骨な黒い手が支える。「おい!?聞いてるのか!?」男の叫びを無視して彼は少女を優しく抱き上げ出口に歩いていく。「ひ・・・」男は、彼の無言の圧力に負けるように道をあけ、腰が抜けたかのように座り込んだ、実際抜けているのかもしれない。少女を抱えたまま、教会の外に出て、彼は人型のままふわりと浮かび上がった。ふと腕の中の少女を見ると、疲れが出たのか気を失ったかのように眠っていた。そのまま最寄りの町の近くにある森の中まで飛んでいき、少女を横たえた。「・・・・」無言でたき火をするため枝を探しに行った。たき火のはぜる音で目が覚めるとそこは森の中だった。「え?あれ?・・・」「目が覚めたか。」きょろきょろと辺りを見回す少女に彼が声をかけた。「あ、はい。ありがとうございます。助けていただいて」「気にするな、安眠のために助けただけだ。」「それでも、です。」「・・・感謝するのはお前の勝手だ。」しばらく、無言でたき火を囲む二人。「あの。」「なんだ。」少女はうつむきながら、「わたし、そろそろ行こうと思います。」そう言って立ち上がろうとすると「ちょっと待て。」「え?」予想外の制止に動きを止める。「私もついて行っていいか?」「どうしてですか?」彼は、先ほどの教会でのことを思い出しながら。「なんと言ったらいいのかわからないが・・・興味本位だ、私が眠っている間に代わってしまった世界を見てみたい。だが、私は世間に対して疎い。だから・・・」「わかりました、一緒に行きましょう」迷わず少女は答える。「いいのか?」「一人では心細いと思っていたのでちょうどよかったです。では、自己紹介をしましょう私はエレナ。」「・・・名前は・・・無い。名前を付けられる前に逃げ出してしまったのだ。だから、名無しだ。」「では、名前を付けましょう。あと、変装もその格好では目立ちます。」「姿ならば問題ない」そう言うが早いか体が変形し青年の姿になる。「なら・・・後は名前ですね。何かアイデアはあります?」「・・・・いや、無い。」「そうですね、じゃあ、考えながら歩きましょうか。」そう言って立ち上がり、町に向かって歩き出し、くるりと振り返って。「ほら、早く行きましょう。世界を見て回るのは大変なんですから」
2004.12.24
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