2004年03月16日
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僕の知人には自分の車を持つ人が何人かいる。
そして僕は少しうらやましい、と思ってしまった。

僕は車は麻雀でいうドラだと考える。


ドラはあがり役(やく)にはならない。
しかし、ドラをあがり役に付け加えると点数が跳ね上がる。


これを人間に置き換えてみよう。

人間のあがり役は次のようなものだ。
「話が面白い。」「仕事が出来る。」「スポーツが出来る。」

ドラは「金がある。」「容姿がいい。」。



しかし、「話が面白い」という役に「金がある」というドラを付け加わると、点数は跳ね上がる。


車はドラである。

「車を持っている」だけではなんら魅力を発しない。


父はその辺を勘違いしている。車という役であがれると思っている。

「ロン。ドラのみ。」「役は車」

父は車を持っていることにより、一流の男になったつもりでいるが、それは違う。

車という役だけではあがれないのさ。


役に関するこんな話もある。

女性の評価にもいろいろな役があるのだ。
役が多いほど、点数が高い。

「性格がいい。」「明るい。」「面白い。」「容姿がいい。」「勉強が出来る。」などという役がある。


「ロン。女子高生のみ。」

こんな女とは付き合うな、と言いたかった。


ところで、僕の家にも車がある。

乗っている時間が少ないので、いつも車庫の中にある。

車があるなら乗ればいいと思うが、そうもいかない。



「夜は10時までに戻って来い」「傷はつけるな」「乗車する前に親に報告しろ」「車の優先権は親にある」


などという制約が多すぎて非常に乗りにくいのである。
僕の同級生には社会人になっている人も多いため、仕事が終わってからドライブに。ということもある。
「夜10時まで。」という制約は「乗るな」と言っているのと同じである。

それほど大切な車だったら、誰にも触られないようにして、神棚にでも飾っておけばいいと思うのだ。


車とは中高級車のCROWNという奴で、結構値の張るものだ。

この車は、我が家の経済状況が厳しかった時代の少しあとの時期に買った。

車を買う前、堅実な母は「車を買うのは反対。買うにしても、もっと、安い車でいい。いまの経済状況からいって、将来的になにが起こるかもわからない。ストックとして遊び金を持っておくのが必要だ。」

娘、息子たちは皆母の意見を支持した。


家族全員が反対する中、父は強引に車を買った。
父に取っては、男のロマンみたいなものなのであろう。


それ以来、他の家族に父は責められ続ける。

新車を購入したあと、姉だけは「私は別に反対してない。」などと、手のひらを返したことを抜けぬけと言ったことに、僕と母は唖然とさせられた。

父は、母と喧嘩し、兄と喧嘩し、僕とも喧嘩する。


僕は、一度、車の問題を巡って父と大喧嘩をしたことがあった。


僕は新車で地元の友達たちとドライブに行こうと思っていた。
車を極度に大切にする父にはそのことを言わなかった。

たかが、ドライブに行くのにいちいち報告する必要はない、と思うからだ。

父が知らないうちに、ドライブに行き、元通りに戻しておけば万事オッケーだった。

なにもあえて父の感情を逆撫ですることもあるまい。


しかし、僕がドライブに行く2日前に、姉がちょっとした事故を起こした。

電柱に擦っただけなんだけど、我が家では大問題になった。


車は修繕することになり、自動車整備工場に持って行かれてしまった。

友達とのドライブまでに車が戻ってこないのではないかと心配した。

そこで、やむなく、母と姉にだけはドライブの計画を話した。

車はドライブの日までには戻ってきた。

ところで、ドライブの前日、
事故のことで父から責められていた姉は、少しでも自分への攻撃を減らそうと思ったのか、僕がドライブに行くという計画を父に聞こえるように言った。

「ひろ。明日、ドライブ行くんだよね。事故を起こさないように気をつけた方がいいよ。」

『ひろ』とは家の中における僕の呼称である。

父と僕を対立させる狡猾な姉の発言には心底憎らしいと思った。


先日の自動車事故でショックを受けたのは姉と父であり、車に対して気が立っている父は敏感に反応した、
「友達とドライブいくんか。」

やむを得ず、僕は答えた。
「行くよ。」

父は言う。
「何時に帰ってくるんだ。また事故を起こす。」

僕は当然夜10時までに戻ってくる気はなかった。


僕は主張した、
「また事故を起こすって、それは姉に対して言う話でしょうが。僕は一年以上乗ってるけど、車に傷一つつけたことはない。」

父は「ダメだ」一点張り。


僕はそこで、車を買ったいきさつについて持ち出した。

「うちに新車は必要なかった。一つ前の車だったら、傷が付くなどと至らない心配はしないですんだ。車体も小さかったから都内の小道を走るのに適していた。父が個人的な道楽のために、家族の全員の意見を無視して勝手に買ったのが悪い。」

父はぶち切れる。
「親に向かって、なんだその言い方は。」

僕はそれでも続ける。

「大体、父の稼ぎが無いのに、事務所の経費ばかりがかさんで、今後何があるかわからないから、お金はためておくべきであった。」

父は稼ぎもないのに、事務所の経費ばかり毎月かかるので、お金の「吸い取り紙」のような存在である。
さらに、欲しいと思ったら、我慢が出来ないので、浪費する癖もある。


まあ、もともと親の金なので、それに対して口を挟むのは息子として出すぎだとは思う。しかし、経済的に厳しいときは僕も協力的に倹約もした。家族の協力があってこそ、今があるから、関係ないとは言えない。

浪人中も全額免除してくれる予備校に通った。
国立大に入ったのだって、家庭を思ってのことである。


そのとき父は酒を飲んでいた。

ブチ切れた父は、グラスの中に入った酒を僕に浴びせた。

僕は怯まない。

喧嘩なら勝てる。

なおも口の減らない僕に対して、父は酒の入っていたグラスを投げようとした。それには、さすがの父も理性が働いたらしく、思いとどまり、そこにあったミカンを掴み、そして僕に向かって投げた。

そのときの父の必死の様たるや。父のお子様振りには毎度のことながら唖然とさせられる。


ミカンは僕の肩に命中する。

父を殴ってもいいのだが、もう57歳である。
殴った反動で死なれても困る。


僕は父に『死んでもらいたい』のではなく、『意見を変えてもらいたい』のだ。


僕は父に向かった「ガキだね。」と言い残し、部屋を出て行った。

このまま、父と同じ部屋にいたら本当に殺してしまいかねなかった。

熱も覚めやらないときに、僕は原動機付き自転車、いわゆる「原付」を買うことを決めた。



我が家はバイク禁止であった。原付においてもしかりであろう。

今までの我が家ではこう言われてきた。
「バイクは危ないから辞めなさい。乗るなら車にしなさい。」

しかし、今、車にも乗れない。だったら、バイクに乗るしかない。

というのが僕の理屈である。


実は原付は以前から欲しいと思っていた。
今がチャンスである。

喧嘩とは悪いことばかりではない、と思った。


そういうわけで、自分が自由に乗り回せる高速移動手段を手に入れた。

その後も小さいトラブルはあった。

任意保険の手続きを父の許可なしにやったことである。
ある日、父宛に保険会社から手紙が送られてきてバレた。

まあ、でも、手紙を僕に送るように保険会社に言ったりと小細工をしながら乗り越えた。

父は原付に乗ること自体は特に何も言わなかった。

おそらく、父の愛車に乗られるくらいなら、僕が原付に乗ってくれたほうが都合がいいと考えているのかもしれない。

まあ、父がどう考えていようがどうでもよい。
今では、父もハッピー、僕もハッピーというだけだ。

最近、僕は原付に留まらず、自動二輪免許まで取ろうと教習所に通っている。





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最終更新日  2004年03月16日 14時02分45秒
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