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カテゴリ: 事件簿
 思わぬ事件が身近に起きる。何もかも不況に起因すると思いたくないが、心中と思われる事件は不況へと結びつく事が多い。しかし、この心中事件は不況とは関係あるとは思えないが、かといって他の原因は、謎が多いような気がする。謎の多い心中事件は三重県熊野市の山間部の、今は閉鎖され、進入禁止の旧道で起きた。

 三重県熊野市から県道34号線で七色ダム峡谷、七色ダム、那智黒の里神川町方面に向かう。川縁を遡り製材会社を過ぎると大峪トンネルだ。大峪トンネルの手前に旧道への入り口がある。現在は進入禁止の看板が立ち、この旧道に入るのは管理関係者だけだ。その旧道を登っていくと旧大峪トンネルがあり、トンネルを越えて下っていくと、現在の新しいトンネル口の先で合流する。

 進入禁止の旧道の旧トンネル付近での無理心中事件だった。去年の暮には伐採が行なわれ、作業関係車両が頻繁に出入りしていた。しかし、今年になってからは関係者以外の車両の出入りはなかった。旧道のトンネル口に、幾つもの山への登山道の入り口がある。そのため、登山さ者は、車両進入禁止の旧道を1時間近い時間をかけて歩いて行く。

 そのトンネルの近くで、2台の軽自動車が転落した。二台の軽自動車の一台に76歳の母と息子が、もう一台には弟が乗っていた。母と息子は死んで、弟が這い上がり助かった。助かった弟は、何時間もかけて、山を下りて、街まで歩き、スーパーの公衆電話から助けを求めた。スーパーの前には警察がある。

 県道を走っていても、進入禁止の旧道には気付かない。入り口は目に付きにくい。旧道があることを知って入る人でなければ、入ることはない。そんな旧道での心中事件であった。事件は地元紙で報じられ、全国紙の地方版で報じられた。事件を知らないで、次の日旧道のトンネル口の近くの登山道へ向かった登山者が二人いたが、警察関係車両で事件を知り、登山を諦めて降りてきた。

 人知れぬ旧道で、地図にさえ載ってない進入禁止の旧道に、愛知県から来た母と息子、そして弟の二台の車が崖に飛び込んだのだ。謎の心中事件を、二ヶ月に一度はその旧道を上がり旧トンネルを抜けたり、登山道を上がったりしている登山者二人は、不況が原因の事件とは思わなかった。自動車で山の崖に飛び込む事が納得できないと言う。しかも、閉ざされた旧道である。不況に起因する心中事件なら、愛知県から、わざわざ、現在進入禁止の旧道に来る事はないと言う。

 偶然に入ったとは思えない旧道と、心中した親子の関係は知らないが、二人の登山愛好家にとって、山は神聖な場所であり、死ぬ場所ではない。この旧道のトンネル口近くの登山道を登らなくても、登山道は幾つもあるが、二人の登山者はわざわざ心中事件の現場に花束を捧げに行った。二人は何度も「山は死ぬところではない」と呟き、死者の霊に帰るべき場所に、「お帰りください」と祈った。

 山は死ぬ場所ではないし、人間は自ら死ぬことは許されないと、
 二人の登山者は心で呟くながら、山を登ることなく旧トンネルを越えた。







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最終更新日  2009.03.02 08:37:34
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