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2017.08.26
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カテゴリ: ロコメート
多田製作所のロコメートは,後述するとおり,かなり古い時代のNゲージ製品であるものの,
トミーOOOゲージ(注1)やソニーマイクロトレーン(注2)と異なり,Nゲージの歴史を綴った書籍等において,あまり取り上げられてこなかったように思います。


(ロコメートC58レールセットの説明書。裏面には「スケールモデル9mmゲージです。」
と明記されている)

ロコメートについて言及しているのは,私の知る限り,大田治彦氏がRMMに連載されていた
「紀元前N世紀」のみです(追記1も参照)。

RMM134号(2006年10月号)では,英国ロンスター社の製品史に関連する形で,
「ここで一つ大変興味ある事実を紹介したい。(注:ロンスター製品の)第3期の手押しモデルを牽引する機関車が日本で製作されていたのである。それはTADA(おそらく1960年代の玩具メーカーである多田製作所と考えられる)のC58電動モデルで…(中略)…玩具と見なすのに十分な形状であった。…(中略)…この奇怪な“C58”はロンスターの線路幅9mmの手押しモデルの貨車、線路や鉄橋、パワーパックと一緒に詰め合わされて、“Locomate”という名称の下に米国で販売された。…(中略)…このC58のモデルは後に“電装解除”されてすっかり子どもの手押し玩具となり、日本国内で広く販売されたので、御存知の方も多くおられるものと思われる。…(後略)…」
とあります。

(RMモデルズ134号より。ロコメートのC58が詳しく紹介されている)

また,RMM136号(2006年12月号)では,
「多田製作所が少なくとも1968年時点で貨車単品も含めて、国内向けにも販売していたことが判明した。この他にも0系新幹線セットがあり、上まわりはプラ製の短縮ボディで玩具的であるが、動力ユニットは大きな車輪を使用している点以外は非常に精巧で、かなり重量のあるモデルであった。この新幹線もロンスターと同じカプラーを備えていた。」
との記述があります。

トミーOOOゲージやソニーマイクロトレーンは,いずれも関水金属によるC50・オハ31発売以前に製作されており「幻の」Nゲージ製品としての価値が認められるのに対し,ロコメートはC50・オハ31以降に発売された製品であること,ソニーマイクロトレーンは本格的なスケールモデルを目指した内容であったのに対し,ロコメートはあくまで玩具としての位置付けでしかなかったこと,トミーやソニーと異なって多田製作所に関する資料が乏しいことなどが,これまで書籍等であまり取り上げられてこなかった原因ではないかと思います。

しかし,ロコメートが発売された 1968年 1967年(追記:その後の調査で,ロコメートは1967年中に発売されていたことが判明)当時は,CABの10系客車すら発売されておらず,日本型Nゲージを製造しているのは関水金属だけという状況でした。その関水製品も,C50・オハ31のほかは,103系,EF70,20系客車2種,貨車,米国型PA-1など,まだまだ限られたラインナップでした。このような時代に,トイガンなどを主力としていた多田製作所(注3)が,何故Nゲージを玩具として製造しようと考えたのか…。この「謎」は,わが国のNゲージの歴史を振り返る上で,大きなテーマではないかと思います。

その「謎」を解く手がかりとして,「株式会社TOY・PRセンター」から発行されていた雑誌「よいこの太陽」に,ロコメートについての記事・広告がありました。

40号(1968年1月5日発行)には「科学の目を養うよいおもちゃ」として,「C58レールセット」(3000円)と,「夢の超特急ひかり号」(3300円)が紹介されています。

(よいこの太陽40号より。左上にC58が,右下にひかり号が紹介されている)

「C58レールセット」は, 「美しいデザインの機関車が、レールとセットになっています。組みたてと操作はお子さまの科学する力を養うに最適の商品といえましょう。」
「夢の超特急ひかり号」は, 「おとなもいっしょにたのしめる格調高い模型玩具です。直線、曲線を組み合わせながら、線路をつくってひかり号を走らせます。」
とそれぞれ説明されています。
なお,写真を見ますと,C58の方は,明らかに製品と違う機関車(おそらくARNOLDのBR66を加工したもの)が写っており,レールも製品の道床付きレールではなく,道床なしのレールのように見えます。

47号(1968年4月20日発行)には多田製作所の見開き広告が掲載されました。 「ロコメートシリーズ 模型の味がおもちゃの値段で楽しめます。」 と大きくPRされ,セットに加えて,単品が一覧になっています。

(よいこの太陽47号より。ロコメートシリーズとトイガンの広告が掲載されている)

以下,価格を書き出しておきます。

<セット>
シリーズ1 C-58セット  2850円
シリーズ2 ひかり号セット 3300円

<車両(オリジナル)>
せんとうしゃ   1400円(※0系先頭車Mあり)
ちゅうかんしゃ  350円(※0系中間車)
こうびしゃ    380円(※0系先頭車Mなし)
C-58きかんしゃ 1050円

<車両(ロンスター製)>
かちくうんぱんしゃ  350円
せきゅうんぱんしゃ  350円
ゆうびんしゃ     350円
クレーンしゃ     350円
コンテナかしゃ    350円
しゃりんうんぱんしゃ 350円

<線路等(オリジナル)>
せんろ(4本入) 480円(※曲線線路)
せんろ(4本入) 440円(※直線線路)
てっきょう    150円

<ストラクチャー(ロンスター製)>
しんごうじょ×しんごうき 350円
でんちゅう×さく     320円
たちき          320円
ふみきり         350円
ほどうきょう       380円
えき           600円

疑問となるのは,C-58セットの価格が,40号では3000円となっていたのに対し,47号では2850円となっていることです。C-58セットが2種あったとも考えにくいので(追記2も参照),価格改定されたと考えるのが妥当なのでしょうか?(追記3:ひかり号セットも,3300円となっている資料と,3470円となっている資料があり,この辺はよく分かりません)
いずれにせよ,「模型の味がおもちゃの値段で楽しめます」との広告,子役を起用したパッケージからすれば,関水金属のNゲージはあまり意識せず(C-58セットの説明書には「1/160」と明記されており,日本型を1/150とした関水とは異なっています。また,カプラーも関水とは互換性がありません),ロンスター製品の助けを一部借りつつも,独自のレールもの玩具として開発したとみるべきなのでしょう(注4)。

(追記1)
「日本模型新聞 鉄道模型版」2号(1978年10月20日)に掲載された,故・加藤祐治(株)関水金属社長(当時)のインタビューで,多田製作所に言及されていました。以下に当該箇所を抜粋します。
 インタビュアー「(ドイツ・ニュルンベルクの国際玩具見本市に1968年)当時、鉄道模型で出品した日本メーカーがおりましたか。」
 加藤氏「今は見られないが、Nゲージで玩具の多田製作所さんでした。Nゲージ専門メーカーでないが、おもちゃの鉄砲などを作っている会社でして、(昭和)四十三年に出品していました。結果は良くなかったようです。その後やめたという話を聞いています。」


(ロコメートのC58セット(上)とひかり号セット(下))

(追記2)
ロコメートには,上記広告掲載の品のほか,中間車を1両減らし3両編成としたひかり号セット(2700円),貨車を1両減らしたC58セット(2500円)があったことが判明しました。いずれ現物を見てみたいものです。

(「ニューデザイン」81号(昭和43年8月25日発行)より)


(日本模型新聞681号(昭和43年12月16日)より)




(注1)トミーOOOゲージは,1964年に発売。TMS192号(1964年6月号)の「ミキスト」欄で紹介されているほか,後年,ネコ・パブリッシング社の「鉄道模型考古学N」「Nゲージモデル・アーカイブス」で取り上げられており,2000年に刊行された「トミー75年史」の年表にも登場します。

(注2)ソニーマイクロトレーンは,未発売に終わったものの,TMS208号(1965年10月号),210号(同12月号)でその動向がほのめかされており,後年,403号(1981年7月号)で,試作品の内容が詳しく紹介されています。
また,日本模型新聞506号(1965年3月5日)では「あっ!と驚く鉄道模型ビッグニュース」と題して,業者向けに試作品が公開された時の模様が紹介されています。それによれば,ED75(日本模型新聞ではED92と記載されていますが,ソニーのED75がピンク色であったため,取り違えられたのでしょう)や客車のほか,Bタンク蒸気機関車の試作品もあったそうです。後に,日本模型新聞 鉄道模型版30号(1981年1月20日)でもED75が詳しく取り上げられています。2018年3月には,インターネットオークションに,ソニーED75の動力を流用したCタンク蒸気機関車が出品されていました。画像から判断すると,フランスのRAIL ROUTEという玩具(RMM139号で大田治彦氏が紹介されています。また,鉄道ファン1964年11月号65頁にも写真が掲載されています)のCタンク(1/143)にソニー製モーターを組み込んだもののようです。もしかすると,その機関車こそが日本模型新聞のいう「B」タンク蒸気機関車だったのかもしれません。
その後,ソニーマイクロトレーンは,トミーOOOゲージと同様に「鉄道模型考古学N」「Nゲージモデル・アーカイブス」で取り上げられているほか,2001年に成美堂出版から刊行された「鉄道模型Nゲージ―Enjoy N gauge railroading」には,牛久保孝一氏所蔵のセットの写真が掲載されています。さらに,2012年には,東京・銀座のソニービルで展示が行われました。

(注3)東京玩具商報1963年1月号掲載の多田製作所の広告には「弊社は昭和二十二年に玩具研究所を創立して以来、玩具によって世界を結ぶことを念願に、銃玩具製造に専念して参りました。」とあります。同社のロゴマークは飛び出す弾丸をイメージさせる形でした。また,「よいこの太陽」37号(1967年10月20日発行)でも「鉄砲で有名な多田製作所」「ちびっこガンマニアのみなさんなら、だれでも知っている会社」と紹介されています。

(注4)HOゲージでは,ロコメートのように,電池式パワーパックを用いて線路から集電し,スピードコントロールが可能なレールもの玩具は珍しくありませんでした。有名なところでは,米沢玩具の「スピコンレール」シリーズがあげられます。





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最終更新日  2019.07.17 19:36:07
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