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ーお母さんが会いに来てくれたー60歳、女性、卵巣がん。 衰弱が進行し入院していた。 腹水で腹部は膨らみ、顔はやつれ、手足がやせ細っていて、自力では動くこともままならない。 夫とは死別しており、子供がいないため独居である。 母親は彼女が学生だった時に病死している。 ある朝の回診での出来事である。「先生、昨日の夜、お母さんが会いに来てくれたんです」「お母さんはそこの椅子(ベッド脇のソファ)に座って、窓の方を見ていて、全然私の方を見てくれないの。寂しかった。もっと近くに来てって言ったけど聞こえないみたいで」「手を伸ばせば届くような気がするのに、手を差し伸べてくれない。私、お母さんに何か悪いことしたかな」 翌日の回診でも彼女は暗い顔をしながら、「お母さんはまだ私の方を見てくれない」「背中を向けたままずっとそこにいる」と話し、「早くこっちを向いてほしい」と訴えた。 翌々日の朝、彼女は非常にすがすがしい顔をして、私たちを待っていた。「先生、お母さんがやっと私の方を見てくれたの。とてもうれしい。お母さんが私の手をつかんでしっかり握ってくれたの。私、これできっとお母さんのもとに行けるのね。うれしい。 先生、みなさん、いろいろお世話になりました。ありがとうございました。私は大丈夫です」 その日の午後、突然血圧が低下して意識がなくなり、夜になくなった。
2017年06月28日
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