ツエルターが推していたライヒャルトの楽譜を見ると、流石に速度指示は Sehr lebhat und schauerlich 非常に生き生きと寒気がするように(筆者訳)という、多分筆者の勘違い翻訳なのではないかと思うのだが、実際の演奏録音を聞いてみると、速度はシューベルトの「魔王」並であるが、正直に感想を申し上げると、両方の作曲家の魔王の部分の扱いが酷似しているのはなぜなのか?なぜ魔王の台詞が同じ音の連続だったり、半音づつ上げて行って、第1線にかからないのか?知人の歌手がバス・バリトンだったのか?当時の人々の解釈では、魔王とは低い声で唸るように話すということだったのか?
シューベルトの「魔王」に先立つ30年前に、ゲーテと親交のあった歌手のコロナ・シュレーター(1751-1802)の「魔王」は、手元の楽譜はライヒャルトの「魔王」の前座のように、ページ上部に8小節(!)の有節形式で、歌詞は三分の一くらいで、ライヒャルトの方を参考にね、みたいな指示が!まあ同じゲーテの歌詞だからね。速度指示は Etwas langsam und abentheuerlich 少しゆっくりそして冒険するように で、子守唄みたいな優しさの歌である。