【1月11日(金曜日) 旧癸巳十一月三十日 丁丑 先負 月齢28.8】
「うすはり」という種類のガラス器があります。
ガラスをごく薄く、様々な器に焼き上げたものです。私は写真のものを、安曇野のアートヒルズミュージアムで見つけ、気に入って買って来ました。
「うすはり」は別に信州に特産というわけではなく、電球や蛍光管を作る技術を、器作りに応用したもののようで、割合に広く手に入れることが出来るようです。
このグラス、小ぶりで(ショットグラス?)で手に取ると如何にも軽く、何の飾りも柄も施されていません。ただひたすら儚げに透明です。これを唇に当てて、よく冷えた吟醸酒を戴くと如何にも美味しそうです。手に持つあたりのくびれも心地よさそうです。(洗う時が心配で未だ使用できません。)
同じうすはりのビアグラスもあって、これもビールの飲み心地を引き立ててくれそうですが、それはこの次の機会ために。こういうものは一度に沢山買い込むものではありません。
うすはりを眺めていると、この時期に咲く「ロウバイ」の花を思い出します。
漢字で書けば「蝋梅」、または「蠟梅」。
「梅」と書いても、梅や桜の仲間(バラ科)ではなく、「ロウバイ科」という独立した科を主張する植物で、名前から想像できる通り、この花も中国伝来です。
中国の長江下流付近が原産で、北宋の時代(10~12世紀)には王朝の庭園などに植えられ、当時の詩にもよく詠まれました。
日本には江戸時代の初めに、型どおり朝鮮半島を経由してやってきました。
ロウバイは、旧暦十二月(別名を「蠟月」といいます)の花の乏しい頃に、鮮やかな黄色の花を咲かせて、良い香りを漂わせるので、粋人たちの人気となり、方々の庭や、寺社の境内に植えられるようになりました。
写真は、私の棲家から程遠からぬ曹洞宗のお寺の境内に咲くロウバイです。
この花は、花弁が蝋を引いたように半透明で薄く、厳冬の空を背景に、華やかではあるけれど儚げな様子は、やはり「うすはり」に通じるところがある、と私には思えます。
ロウバイは北宋時代にはもとより、日本にやってきてからも文人、詩人の詩心を動かしたようで、多くの詩が詠まれています。その内で私が気に入っているものを幾つか。
臘梅のあわてふためき咲きにけり 丸山 章治
臘梅のつやを映しぬ薄氷 増田 龍雨
臘梅の露地かぐはしや日のこぼれ 米村 合歡花
蠟梅の香の一歩づつありそめし 稲畑 汀子
臘梅や雪うち透かす枝のたけ 芥川 龍之介
しらじらと障子を透す冬の日や室に人なく蝋梅の花 窪田空穂
さて、明日は新月。旧十二月(蝋月)の朔日です。
これを機に厳寒の中、家の中で縮こまってばかり居ないで、ご近所にロウバイの花を探しながら散策してみるのも良いかもしれません。近くに行けば甘やかな香りで、すぐにそれと気付くはずです。ロウバイの英語名は「Winter Sweet」、まさにその通りの名前です。
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