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澤山画伯に教えられ、駆けつけた<TABIBITO>展は、卑小ないのちにたいする慈しみに満ちた生きもの曼荼羅そのもので、会場に居合わせた高田光治さんとは一目みて旧知の仲となってしまった。
ノアの方舟を摸したボートには聖書の乗客名簿に痕跡すらなかったきのこたちを満載しており、さながら秦の始皇帝を見事出し抜いてわが列島の各地に蓬着伝説を残した徐福を彷彿させるものであった。
会場に一歩足を踏み入れると、来廊者はすべて壮大なスケールのいきもの宇宙に放り出される。そして、多様ないきものに圧倒されたのち、しばし冷静になって会場の行き来を繰り返すうちに、旅人・某は、上の絵画の山の彼方より方舟を掉さしやって来て、此岸の世界をさすらい続け、ほうぼうで稀有ないのちと出会う設定であることが納得される。
この会場のすべてのいきものは、高田氏自らが野山を巡り心に触れたものを丁寧に集め、整理したもので、そのもっともふさわしい居場所を与えられ、かってなじんでいた世界以上の現実感をただよわせながら訪れる者に笑みをふりまいていた。
この作家が、単なる造形や絵画の制作者を超えた世界を観ずるまなざしの持主であることは、一粒の種子や胞子となって個々の作品をあらためて眺めればただちに理解される。
西洋の博物学が、神の意志が地球の隅々の取るに足りない生きものにまで貫徹されていることの証明でしかない(近代日本のアカデミア自然史博物学が退屈なのはそこに基因している)のに比べ、このささやかなギャラリー空間にちりばめられたしたたかないのちの営みの数々の痕跡は、熊楠曼荼羅に通じる相互扶助に満ちた世界をあり態のままに感じさせる工夫に溢れ、それが僕にとってはなによりもうれしく受け止められた。


いずれの作品も高田氏の熱っぽい想いが凝縮しており、作品そのものが尽きせぬ物語を問わずがたりに語りかけてくれるので、あっと言う間に時間が過ぎて行き、しかも居るほどに心地よさが増すのだ。
きのこ、昆虫、木の実、種子、草絮、山繭、ジオラマ風に仕立てたミクロの人物像などのところどころに貼付された手づくりのきのこ切手は、旅の手すさびにあてどない心の恋人に贈った玉章の便りを彷彿させ、たとえようのないほどの洒脱さを感じる。
上の作品はきのこをこよなく愛したジョン・ケイジへのオマージュ。もちろん高田氏自身も彼に触発されてきのこの世界にはまりこんだという。
随所にみられるきのこ切手は世界の郵政発行のものも点在するが、ほとんどが、作者の手書きの作品だ。
会期は残すところあと2日だが、いきもの好きは看過ごすとトラウマになるほどのかけがえのない個展なので、ぜひ駈けつけるべし。
2013年1月15日(火)~31日(木) 11:00~18:00
TAKADA MITSUJI <TABIBITO>展
ギャラリー 風
大阪市中央区北浜2-1-23 日本文化会館9F
地下鉄・京阪「淀屋橋」「北浜」駅下車18号階段上がる斜め向かい1Fが関西棋院・囲碁サロン のビルの9階。
TEL・FAX06-6228-0138
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