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2002年03月08日
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「今日は死ぬのにもってこいの日」という本を本屋さんでみかけたんですよね。どういう意味なのかなあと、二十歳になったばかりのお嬢さんが聞きました。周りにいたのは中年を過ぎた方たちが多かったので、そのお嬢さんに誰がなんと答えるのかを、それぞれに考えてしまいました。だって、簡単に答えられる質問ではありませんものね。

「私の父は96歳で亡くなりましたけど、晩酌のビールを飲みながらの父の口癖は、ああ幸せだなあ。この幸せの時に、ぱっと死ねたらなあ・・・というものでした。父を見送ったあと、母を介護しているんですが、母はこういうんですよ。幸せだから死にたくないって。そうして、92歳になる母はお乳の形がおかしいから癌ではないだろうかとか、夕べはトイレに何度も起きたから、何か病気じゃないだろうかなどと、毎日「じっくりと心配」をしながら生きています。」

こう話してくださったのは、ご両親を引き続き介護していらっしゃる年配の女性でした。
みんなは、自分はどっちだろうと考えました。幸せの時に死にたい。それが一番の幸せだと思うのか、幸せだから死にたくない。死なないように病気を見過ごさないようにしようと思うのか。

自分がどう考えるかは、自分の死をある程度射程距離に置いたときでなくては、単なる言葉遊びになってしまうことでしょう。

その年配の女性は続けました。
「お嬢さん、あなたは自分にも死ぬ日がくるなんてことを考えたこともないでしょうね。それでいいんですよ。それは考えなくてもくるんですもの。そして、一人の人の死は、きっとその人にとってもってこいの日なんですよ。死ぬ日を決めることは誰にもできないんですものね。生まれてくる日が決められないように、死ぬ日も自分では決められない。その人にとって、もってこいの日に、人は死ぬんですよ。きっと・・・・」

何年も引き続いてのご両親の介護で、いつも疲れていらっしゃるその女性は、一週間に一度ほんの1時間ほど顔をお出しになって、心をほっと解きほぐして、またそそくさとお帰りになります。

幸せの瞬間に死にたいとおっしゃっていたお父上の死、幸せだから死にたくないとこの世に執着なさるお母上。人間がどのように願おうと、そのどちらにも訪れる公平な死を見届ける女性の言葉は、なにかしら悟りにも似た安心感を聞くものたちに与えました。



今日はワインを楽しむのにもってこいの日かもしれません。





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最終更新日  2012年04月11日 00時51分42秒
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