メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Oct 20, 2005
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今日は仕事の合間にネットを見ていました。

 某yahoo!のトップページに、
【リクナビNEXT】ビジネスパーソン生活実態調査2005 今日のランキング「ストレスを感じる業種ランキング」がありました。
 眼を引いたので、ポチッと。

 想像していたのは、サービス業は随分とストレス度が高いであろうと言うこと。飲食店は労働時間も長いし、一日中立ちっぱなしの重労働だし、いろんな人と関わらないといけない、おまけに給料も安い、、、さぞかし上位にランクされているでしょう。

 ところが、、、1位マスコミ系、2位金融保険系、専門コンサル系、、、と続き、サービス業は12位。最下位です。

 そういわれてみれば、もしかしたら私自身も他業種の人が感じるような「ストレス」は無かったのかも知れません。この業種を十何年と続けてこれましたが、これもひとえに「楽しかったから」
 自らが専門職であることは、自分が提供する技術なり商品なりの価値をお客様から感じられたことにあります。自らの給料は安くても「プロフェッショナル」と感じて頂けることこそ「誇り」という価値であったのです。

 サーヴィス業において専門職として、専門知識、技術を貯えていくことは不利なことなのでしょうか?

と考えられる方もいらっしゃいます。

「ツブシが利かない」といっても、ある専門の職業において努力、達成できる人ならば少なくとも他の事をやらざるをえなくなった時もそれなりにできるのでは無いでしょうか?
 私は学歴偏重主義ではありませんが、例えば東大を卒業した人は、やっぱりメチャメチャ頭がいいか、メチャメチャ努力家かどちらかだと思います。何も無い人と、頭がいいか、努力家の可能性のある人ならば、やっぱり後者を選びます。要は使う方の問題。

 実際に、そういったプロフェッショナル受難の時代もありました。バブル経済が崩壊した後の日本がまさにそうでした。

 当時、私の職種でもあるホテル・レストランサービスでも、多くのシェフ、メートル・ドテル、ソムリエがホテル・レストランを辞めました。幾らかはリストラという噂もありましたし、高級店であったところは不景気のあおりを受けて業態の転換も図られました。

 経営者側の目でみれば、止むに止まれぬ事情もあったはずです。正直、多くの部課長職の方がリストラを推進することに気を病み、自ら命を断つと言った事件が新聞にも多く載りました。

「年齢がいけばいくほど、給与もその分高くなるし、高級な技術、知識が必要なのか。無いよりはあったほうがいいが、あって給与が高くなるなら、資格がなくても、ある程度詳しいぐらいの人ではないのか?」
 そういった雰囲気が蔓延していました。まさにそうかも知れません。「収支」だけを基準に考えれば、、、

 しかし、そこには実際にご来店される「顧客への目線」は無かったのです。

 お客様にワインを提供するにあたって、プロとして修練を経た人間と、雇用する側にとって都合のいい「ある程度詳しいぐらいの人」が提供するワインとは同じ値段でよかったのでしょうか?
 「ある程度詳しいぐらいの人」が努力してソムリエ資格を取ったとき、給料が高くなるからもういいよ。とまた使い捨てるのでしょうか。


「ハイ、こんなもんでどうでしょう?この値段ですからね、、、」
と言って退ける感性は「お客様」をナメているとしか感じられませんでした。

 今にして思えば、当時流行った「価格破壊」も「激安」も一過性のブームであったことに気付きます。
 バブル崩壊後の騒動が残したものは何だったのでしょうか?

 ハンバーガーを半額にして販売したマクドナルドは、商品の適性価格を露呈してしまい、値段を元に戻せなくなってしまいました。


 何よりも大きな弊害は、若い人たちに目標や憧れを抱かせる人物が不在になってしまったことです。

「資格をとっても給料が上がらないのであれば何も意味が無い」
「専門的な努力をして給料が上がるどころかクビになってはたまらない」
「長く勤めたからっていって将来が保証されるとは限らない」
…そんな言葉をよく聞くようになってしまいました。

 資格とは「資格=給料のアップ」ではありません。プロフェッショナルであるならば当然もっているべき範囲の技術であると言えます。業務に携わる者の中から産まれてきたものなのです。プロとして研鑽を積んだ者が、研鑽を積んでいない「偽者」と区別してもらうために第三者的な目で判断するための材料です。
 それがお客様に対する安心と信頼に繋がるために、専門的な知識を蓄えようと努力もするのです。

多くの業種において、ストレスとなりうる要因は「プレゼンテーション」と「コミュニケーション」にあると言えます。
「プレゼンテーション」とは、現代の日本においてほとんどすべての「製品・商品」の品質が上がってくると、差別化が難しくなり、いかに自社商品が上位であるように勧められるかの外向きな要因です。
「コミュニケーション」とは主に内向きの要因であり、上司・部下など他者との人間関係が上手く行かない、といったことに起因します。

考えてみれば、「プレゼンテーション」と「コミュニケーション」はサービス業、接客業の最も得意とする分野です。

お客様に料理、飲料をお勧めする「プレゼンテーション」専門技術
様々なお客様に対応する「コミュニケーション」専門技術

 先の「ストレスを感じる業種ランキング」のフリーコメントの中に「ありがとうと言われることが喜び」といった意見があったそうです。「ありがとう」と言われたところで、ポケットの中の現金は別に増えてはいきません。「収支・金銭」を基準に考えるのならサーヴィス業は非常に生産性が悪いとも言えます。

 しかし、これこそが目に見えませんが「価値・財産」なのです。サービス業は「ストレスが少ない」とは、言い変えれば、自らの手によって「満足度の高い」職種にすることができることなのでは無いでしょうか。

 時代はいつも振り子のように振れてきました。
 次の時代は「仕事の価値観」そのものが変わっていくかも知れません。

 サービスのプロフェッショナルの技術、「お客様の喜びが自分の満足」となる術を他業種へフィードバックする時代が近付きつつあります。





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Last updated  Oct 21, 2005 03:54:09 AM
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背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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