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2008年06月22日
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カテゴリ: エッセイ集
読者の皆様の多くは、狭山茶(さやまちゃ)をご存知のことと思います。

狭山茶は、東京の西の近郊、埼玉県入間市をはじめ、所沢市、狭山市、飯能市、そして東京都北多摩地域を産地とするお茶です。古くは鎌倉時代から、栽培の歴史があり、日本中に広く知られるようになったのは江戸時代。「色の静岡、香りの宇治、味の狭山」といわれるように、厚みのある茶葉と、甘くて濃厚な味を特徴としています。

狭山茶(Wikipedia)


狭山茶の主産地は、東京の新宿から、西武電車わずか1時間ほどの通勤圏に位置しますので、東京に通勤するサラリーマンの住宅地と、茶畑が混在する風景が見られます。とはいえ、埼玉県入間市にある「狭山台」という台地には、広々とした緑の茶畑が広がり、人の目を和ませます。10年ほど前、埼玉県が発行した、「21世紀に残したい埼玉の風景」という写真集で、見事ナンバーワンに輝いたのもここです。

私がこうやって、狭山茶を宣伝するのは、美味しいからです。昨年の夏、狭山路を歩いて、茶畑の広がる「狭山台」の最寄り駅、JR八高線の金子駅前にある、閑古鳥が鳴くような売店で、ヨボヨボのおばあさんから600円の狭山茶パックを買い、家で淹れてみたら驚くほど美味しい!実家に持っていったら、私の母が、「こんな美味しいお茶、何年ぶりだろう!」と、感動していました。600円じゃなくて、1200円くらい出しても買いたいくらいの、クオリティでした。

狭山茶のふるさとは、日本の茶産地のなかで、最も都市化が進んでいます。要は、東京のベッドタウンとなっています。ですが、最近の日本は人口減少時代に入り、この一帯は「斜陽のベッドタウン」化の危機に瀕しています。

1970年代頃に、この地域に移住した層が高齢化し、その子供たちは地元に残らないために、少子高齢化が、猛スピードで進んでいます。この辺は東京通勤圏としては、遠い部類に入るうえに、西武鉄道も当地域の交通アクセス改善に力を入れてこなかったために、長い通勤時間が、若い世代から敬遠されているのです。狭山市や入間市では、一部の例外を除き、魅力的な市街地が形成されておらず、都市インフラも、周辺市に比べて未整備が目立ち、このまま放置すれば、近い将来、「高齢化率50%、スーパーはおろか、コンビニや病院さえない、カラスも通わぬ新"山村"」になるかもしれません。

狭山市はすでに、同県春日部市や茨城県取手市などと並び、東京郊外としては最速の人口減少を記録しています。衰退を防ぐべく、地元では総工費280億円をかけた、中心駅「狭山市駅」周辺の大規模再開発を打ち出しています。

狭山市駅西口地区整備事業


この計画は、既存市街地の再開発と、新市街地の整備が打ち出されていますが、280億円もかけて、衰退からの起死回生を図りたいのなら、東京郊外のどこにでもあるような街になってしまっては意味がない。斬新な発想で、いかにして、価値ある市街地のコンテンツ(中身)を創りだせるかが、問われていると思います。

そのコンテンツは、もちろん、言わずとも分かるでしょう。「 狭山茶を軸とする、飲食文化の中心地

お茶は、世界中で最も愛されている飲料の一つです。古今東西、いろいろな文化、民族に受け入れられ、その地域風土にあった、飲み方、食べ方、使い方が開発されてきました。「お茶」という素材は、それ自体、日本を超えて、世界と直結しうるパワーを持つために、狭山から、世界に通じるビジネスモデルを造ることだって可能です。

お茶は、製法によって緑茶にも紅茶にも、ウーロン茶にもなりますし、その飲み方、食べ方は、他の食材とあわせれば、それこそ無限のバリエーションがあります。お茶菓子、抹茶アイス、茶そばなど、緑茶をベースとした日本的な活かし方の他、韓国には柚子茶、生姜茶、朝鮮人参茶など、バラエティ豊かな飲み方がある。中国には飲茶(お茶を味わうより、食べる方が中心だけど)文化がありますし、また「擂茶」といって、お茶に胡麻と黄粉を混ぜて、すり鉢で擦って食べる方法もあります。ブロック型の磚茶を、ミルクティにするのは、アジア各地の山岳民族、遊牧民族の間に見られる習慣です。西洋に行けば、スコーンと紅茶を優雅にいただく、「デボンシアティー」という習慣がある。

お茶を主要な題材として、日本に限らず世界の茶文化を紹介する、テーマ的な飲食店が建ち並ぶ「 狭山茶ストリート 」を、狭山の地でつくれないものか?せっかく大規模再開発をやるのなら、「狭山茶ストリート」を、新市街地の目玉にできないものか?

昨年、狭山路を歩いてみて、お茶をテーマにした飲食店が非常に少ないことに気がつきました。西日本の代表的な茶産地である宇治では、宇治川の清流のほとりで、風流な甘味処が並び、抹茶、あんみつ、ぜんざいなどを出し、観光客で賑わっていました。でも狭山茶の産地には、それに相当するものが見られない。逆にいえば、現時点ではライバルが居ないという意味で、「狭山茶ストリート」を立ち上げる、またとないチャンスだと思います。

妄想はさらに続きます。狭山市駅の西側は、入間川に向かって緩やかに傾斜する地形になっています。そこに、東京下町の親水公園を参考にして、人工の清流をつくって、その両側に宴席をつくって、狭山名物のお茶菓子で涼めるようにしたらどうだろう?この傾斜地には、緑も豊富に残っているので、借景としても悪くない。いわば、京都名物「貴船の川床」の関東版を、狭山につくるという構想です。

「狭山茶ストリート」、「狭山の川床」・・・これらの構想が立ち上がったとして、その成功で最も恩恵を受けるのは、たぶん西武鉄道でしょう。いま西武新宿線では、新宿と本川越の間で「特急小江戸号」を走らせていますが、人気はいまひとつ。それもそのはず、主要観光地である川越には、西武だけでなく、東武東上線が池袋と直結していますし(しかも距離的にはずっと短い)、JRなら埼京線、りんかい線経由で、大宮、池袋、新宿、渋谷から新木場まで直通する快速も走っています。わざわざ特急料金を払って、小江戸号で川越に行きたいと思う人が、果たしてどれだけいるのか?

ですが、もし狭山が、「狭山茶ストリート」でブレークできるなら、状況が全く変わってきます。小江戸号の行き先に、狭山、川越という、二つの目玉観光地ができるのであれば、客足も全然違ってくるでしょう。そう考えると、狭山茶文化の振興には、西武鉄道が一番貢献するべきとも思います。

私の主張の根底にあるのは、こういうことです。狭山地方が、東京のベッドタウンという枠組みで、勝負しようとしても勝ち目は少ない。狭山市と入間市が力を合わせても、たとえば所沢市に勝てる見込みがあるのか?都心への距離、アクセス、商業集積・・・どれをとっても、勝負にならないでしょう。

ですが発想を変えて、狭山茶というコンテンツで勝負して、お茶文化を軸とした観光都市を目指したらどうなるか?勝率はかなり増すのではないでしょうか?東京近郊で、お茶の主産地はここしかないし、また上に述べたように、狭山茶を売り物にした観光地はまだ存在しないから、ライバルもいない。首都圏3500万人マーケットに、アピールする要素は、羨ましいくらい揃っているのです。

さらに、お茶は世界につながる飲み物ですから、全世界に向けたお茶文化を提唱するステージにもなりうる。SAYAMAという、人類の誰にも発音しやすい地名を冠したブランド茶が、将来、上海やパリのレストランで、振舞われるようになったら、この地域にはどんな未来が待っているのか?考えただけでも、楽しくなります。



狭山茶市

本邦初はもちろん、世界初(たぶん・・・)、茶を市名に冠したケースとなるでしょう。お茶観光・狭山を売り込む、最高の名前だと思います。


2007年8月「狭山路紀行」







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最終更新日  2008年06月23日 12時57分44秒
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