ミクロ経済(企業・事業)レヴェルでは、過去10年間に、IT 支出・投資の企業業績に対するインパクトは、組織特性によって大きく影響されるというデイタの蓄積が為されてきている。米国上場企業の大サンプルに基づいて、Brynjolfsson and Hitt (2000), Bresnahan, Brynjolfsson and Hitt (2002), Brynjolfsson, Hitt and Yang (2003) 等は、以下の事実を明らかにした。 (1)IT 投資に関連して、IT の直接使用に関する教育・訓練だけでなく、業務プロセス・組織構造・サプライチェインの再設計など、多くの組織投資が必要となる。不可視な組織投資の規模は、情報投資総額の90%(ハードウェアに対する投資は総額の10%)にもなることがある。組織投資の結果である不可視(組織)資産は、現行の会計原則の下では適切に計測されていない。 (2)分権化の程度や熟練労働の使用などの組織特性は、IT 投資と相関している。 (3)IT 投資は、不可視資産と組み合わさると、大きな経営成果を生みだす。不可視資産が小さいときには、IT 投資は経営成果に負の影響を及ぼすこともある。
2.2.モデル
本稿では、
経営成果 = F(IT 支出, 組織特性)
という基本モデルを採用する。ここでは、分析の興味は企業レヴェル、すなわち企業がその IT 支出または IT 資産全体から経営成果を得る能力を探ることにあり、個別の IT/IS プロジェクトの費用効果分析にはない。IT 支出と組織特性との間には相互作用があり、この相互作用が経営成果に影響を与えると仮定する。