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twitter も始めました。それほど頻繁に tweet はしないと思いますが。http://twitter.com/Masaaki_HIRANO
2010.01.23
かなり長い間更新を怠っていましたが、今後は下記のブログに移行してきます。テーマは、IT投資に限らず、組織一般についてなるべく実証データに基づいた話をしていきたいと考えています。こちらは、もう少し真面目に更新するつもりですので、よろしくお願いします。http://www.hirano.net
2010.01.22
ダイヤモンド HBR 9月号に寄稿しました。「組織IQの経営」特集で、フィーチャーアーティクルの先頭です。IT投資だけでなく、人的投資のリターンも、組織IQによって大きく規定されていることを、実証データを基に主張しています。機会があったら目を通してみて下さい。
2008.08.11
本日の日経「経済教室」に、寄稿しています。内容は、人的投資のリターンが組織IQによって大きく影響されるという実証研究の紹介です。このフレームワークは、IT投資のリターンが組織IQによって大きく影響されるという、実証研究で使用しているもので、人的資源など、IT以外の経営要素についても組織IQが重要であることを明白に示しています。
2008.06.19
IT関係の学会も、(学術面だけでなく、実用面でも)社会に貢献しようという動きが少しずつ出てきている。来月2日は、ITの利活用をテーマとする学会で最大の経営情報学会と、情報技術そのものをテーマとする学会で最大の情報処理学会が共同で、「ITによるビジネス価値の向上」というシンポジウムを開催する。現在では、余りに多くの無駄なIT投資が行われていて、(ITベンダーは良いだろうが)日本経済全体としては大きな被害を受けている、正しくIT投資が行われれば日本経済はもっと成長潜在力があるはずなのである。関連分野の第一人者が講演をするが、参加は無料であるので、是非来聴されたい(因みに、私もパネル討論に参加する)。~~~~~~~~~~~~~~~~~学会連携シンポジウム『ITによるビジネス価値の向上』経営情報学会情報処理学会ソフトウェア工学研究会(SIGSE)------------今年3月に、アムステルダムでIEEE Computer Societyの主催による、Equity2007 (Exploring Quantifiable IT Yields 2007)が開催されました。この会議の開催主旨は、ITによるビジネス価値の向上について、「ソフトウェア工学」と「情報システム学」という、ITに関連した2つの学問分野の交流を図るというものでした。このような会議が開催された背景には、内部統制に関する関心の高まりがあるようです。これを受けて、わが国でも、ITに関連した学会同士の連携により学会の社会的価値・貢献の向上を目的に、経営情報学会と情報処理学会ソフトウェア工学研究会(SIGSE)との共催により、『ITによるビジネス価値向上』というテーマで、シンポジウムを開催することになりました。情報システム学からは、プロジェクトレベル、企業レベル、セミマクロレベルの3つの異なる粒度から、IT投資対効果やITの効果的な活用の仕方をテーマに3つの報告があります。一方、ソフトウェア工学からは、ファンクションポイントやソフトウェアメトリクスに関する報告が、同じく3件予定されております。報告者の方々には、各分野の概説と、研究あるいは実務の現状と最先端はどうなっているか、何がいまホットイッシューか。そして、世界の中で、誰があるいはどのグループが、その分野をリードしているか、などについてお話しいただくことになっております。最後に、これらのご報告を踏まえて、ITをどのように活用すればビジネス価値を向上させることができるのかについて、『ソフトウェア経済学』を提唱している(株)いち一の大槻繁氏、要求工学に詳しい(株)NTTデータの山本修一郎氏、IT投資対効果について組織の観点から研究している、早稲田大学の平野雅章教授をパネリストにお迎えし、ディスカッションを行う予定です。今後のIT利活用について考える上で、エポックメイキングな会議となるものと思われます。どのようなIT投資を行えばよいのか頭を痛めている実務家の皆さん、ITの効果的な活用について研究している大学人の皆さん、奮ってご参加ください。 記日時:平成19年11月2日(金) 第1部(シンポジウム) 10:00~17:00第2部(懇親会・情報交換会) 17:30~19:00会場:第1部 明治大学駿河台校舎 リバティタワー内リバティーホール 〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 駿河台キャンパスリバティタワーhttp://www.meiji.ac.jp/campus/lt/index.htm第2部 懇親会・情報交換会明治大学駿河台校舎リバティタワー23階「サロン紫紺」参加費: 第1部 無料(第1部のみの参加も可能です) 第2部 4,000円スケジュール:10:00 開会の辞 10:10 趣旨説明 10:30 報告1 プロジェクトレベル(武蔵大学 松島桂樹 教授)11:00 報告2 企業レベル(経済産業省商務情報政策局情報政策課長 鍛冶克彦 氏)11:30 報告3 セミマクロレベル(九州大学 篠崎彰彦 教授)(12:00 休憩) 13:10 報告4 IT戦略論(情報処理推進機構SEC所長 鶴保征城 氏)13:40 報告5 FP((株)エクサ 児玉公信氏)14:10 報告6 ソフトウェア工学(東京大学 玉井哲雄 教授)(14:40 休憩) 15:00 パネルディスカッション パネリスト: 大槻 繁 氏((株)一)、 山本修一郎 氏((株)NTTデータ)、 村上敬亮 氏(経済産業省) 平野雅章 教授(早稲田大学) ファシリテータ: 飯島淳一 教授(東京工業大学)16:50 閉会の辞 主催:経営情報学会、情報処理学会ソフトウェア工学研究会(SIGSE)協賛:AIS(Association for Information Systems),日本情報システムユーザ協会(JUAS),(社)情報サービス産業協会(JISA),日経コンピュータ誌,日経情報ストラテジー誌,技術評論社,日科技連出版社,翔泳社参加希望の方は,equity@is.me.titech.ac.jp宛てに、10月26日(金)までにご氏名,ご所属,メールアドレス,参加希望のセッション(第1部,第2部)をメールにてお知らせください。また,お問合せも,同じアドレス宛てにお願いいたします。
2007.10.16

タイトル名の本を日本経済新聞出版社より出しました。情報投資(IT投資)の効果は、経済全体レベル(マクロレベル)では生産性の向上として測定されていますが、企業レベル(ミクロレベル)では必ずしも測定されていません。実証研究と称するものも、その多くは効果を(担当者/アンケート回答者の)主観で測定していて、企業業績のような客観的な効果を測定している実証研究は殆どありませんでした。本書は、著者と共同研究者による日本企業のIT投資と企業業績についての客観的データによる実証研究を基に書かれています。学術論文・学会発表のレベルのデータ分析の結果を、ビジネス人の方々に分かり易く説明することを目指しました。主なポイントは、(1)IT投資と企業業績との間には緩い相関関係が見られるが、バラツキ(分散)が大きすぎて、IT投資以外の要因で企業業績を説明する必要がある。(2)組織能力が高い場合には、IT投資と企業業績との相関が高く、IT投資のリターンを期待できる。(3)組織能力が低い場合には、IT投資と企業業績との相関は見られず、回帰線を引くと右下がりになる(IT投資をすればするほど業績が落ちる)場合が多い。(4)組織能力は「組織IQ」という尺度で測る。(5)「組織IQ」の向上法などです。企業におけるERPなどのIT投資が必ずしも効果を上げていないと感じられている方々は、是非手にとって読んでみてください。IT投資のリターンが上がらない理由が分かり、リターンを向上させるための重要なヒントを得られます。
2007.08.30
3月22日に、日経BP社の「IT Trend 2007」で、4月17日に、フライシュマン・ヒラード・ジャパン社とクロール社による「クライシス・リーダーシップ・セミナー」で、それぞれ特別講演をしました。抄録の URL は、それぞれ4月1日と4月17日の記事にありますので、ご興味の向きはご覧下さい。
2007.05.02
経営情報学会15周年記念シンポジウム『新次元のインターネットビジネス』 開催のお知らせ経営情報学会 会長 飯島淳一経営情報学会では,このたび,設立15周年を迎えることになりました 。お陰様で,ここ数年は,会員数も微増傾向を維持し,「情報および情報技術の利活用を謳う学会」として,我が国の中でもある程度の位置を占め,最近では,さまざまなメディアにも取り上げられるようになりました。そこで,設立15周年を記し,別紙のようなシンポジウムを開催することになりました。このシンポジウムでは,「学会は過去のことしか話題にしない」というご批判に応え,ビジネスにおける「将来の情報および情報技術の利活用」を見据えたものにすべく,新次元のインターネットをテーマにした,基調講演とパネルディスカッションを企画しております。また,第2部の懇親会・情報交換会では,第1部を受けた活発な情報交換をしていただけるのではないかと考えております。万障お繰り合わせのうえ,ご参加ください。 記日 時:2007年5月25日(金) 13:00受付開始第1部 13:30~17:45第2部 18:00~19:30会 場:明治大学駿河台校舎 リバティタワー リバティーホール 〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 駿河台キャンパスリバティタワー http://www.meiji.ac.jp/campus/guide.html参加費:第1部無料(第1部のみの参加も可能です)プログラム:第1部 講演とパネルディスカッション 13:30~13:40 経営情報学会会長 挨拶 13:40~14:50 基調講演 グーグルジャパン代表取締役社長 村上憲郎 氏 15:00~17:30 パネルディスカッション パネリスト: 久米繊維工業株式会社代表取締役社長 久米信行 氏 株式会社ACCESS メディア事業準備室長 塚本良江 氏 グーグルジャパン代表取締役社長 村上憲郎 氏 明治学院大学准教授 森田正隆 氏 司 会: 早稲田大学教授 根来龍之 氏 17:40~17:45 終演の挨拶第2部 懇親会・情報交換会会 場:明治大学駿河台校舎リバティタワー 23F 岸本辰雄記念ホール費 用:4,000円参加希望の方は,参加される部(第1部|第2部),ご所属,お名前をお書き込みの上,下記のアドレスへ電子メイルにて,5月11日(金)までにお申し込みください (JASMIN) jasmin@kisc.meiji.ac.jp
2007.04.25
フライシュマン・ヒラード・ジャパン社とクロール社による「クライシス・リーダーシップ・セミナー」で、「内部統制・コンプライアンスの仕組みづくりと組織変革」と題して特別講演を行いました。抄録が、以下の URL にあります。http://www.fleishman.co.jp/crisis/seminar_pg3.html同時に行われた初代米国国土安全保障省長官トム・リッジ氏の講演等の抄録もあります。http://www.fleishman.co.jp/crisis/index_seminar.html
2007.04.17
3月22日に、日経BP社の「IT Trend 2007」セミナーで行った特別講演「IT投資で伸びる会社、沈む会社」の抄録が下記の URL に出ています。 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070322/266064/
2007.04.01
来る3月22日(木)、日経BP社主催の「IT Trend 2007」セミナーで講演します。詳しくは、http://itpro.nikkeibp.co.jp/ev/itex/ittr07/index.shtmlをご参照下さい。
2007.03.20
経営情報学会誌では、年に1回特集号を組んでいますが、今年は以下の CFP のような特集を組みます。テーマ:IT投資リターンの測定と向上ゲストエディター:平野雅章(早稲田大学経営専門職大学院)論文投稿締め切り:2007年6月30日採録通知:2007年10月末(予定)刊行予定;2007年12月現在社会はITなしには成り立たないことは言を待たず、本論文誌においても1996年の「情報化社会」特集以来10年余り、ITのインパクトやあり方についての特集が組まれてきました。現実にe-Japanには5兆円が投じられ、昨今は「内部統制」対策で多くのIT投資が計画・実施され、また一説によると日本全体のIT投資は年額24兆円に達するといわれます。ところが、マクロ(経済全体)レベルにおけるIT投資のインパクトについては実証研究が進んでいるものの、ミクロ(各組織体)レベルでこれらのIT投資が実際にどの程度のリターンを生んでいるかは、必ずしも陽表的に捉えられてきていません。これは、一つには、事前評価による投資の正当化は行われるものの、官民問わず、一旦投資されたITプロジェクトに対する事後評価が余り行われないという社会的な風潮が大きな原因と考えられますが、他方、事後評価の技法や経験が足りないことにも起因しているといえます。したがって、IT投資を巡る資源配分の効率化のためには、ミクロレベルにおいてIT投資の事後評価の理論や技法を開発するとともに、事例を蓄積していくことにより、「IT投資に際しては、必ず投資リターンの事後評価を行い、その結果を活用して投資リターンの向上を図る」というように社会的慣習を変えていかねばなりません。本特集では、営利・非営利を問わず組織レベルにおける「IT投資の事後的なリターンの測定」および「測定結果に基づいたリターンの向上」に関する独創的な論文を広く募集いたします。本特集に関連するトピックには以下のようなものが含まれますが、以下はあくまでも例示であり、これら以外の多様な関連テーマの投稿を歓迎します。会員の皆様・関連領域研究者実務家の皆様の積極的な投稿をお願い申し上げます。なお、投稿規定・査読規定は通常号と同一です。投稿本数や内容構成の都合で、特集号ではなく通常号に掲載される場合もあります。●営利企業におけるIT投資リターンの事後測定、測定結果に基づいたIT投資リターンの向上●非営利組織・社会事業・NPO等におけるIT投資リターンの事後測定、測定結果に基づいたIT投資リターンの向上●政府・自治体におけるIT投資リターンの事後測定、測定結果に基づいたIT投資リターンの向上●上記に関連した理論、技法または事例勿論、通常と同じ審査プロセスを通過しますので、必ず採択になりますとの保証はありませんが、意欲のある方は投稿してください(現在平均採択率は約3分の1です)。なお、経営情報学会誌は、恐らく国内の学会では唯一、学会員でなくても投稿できます。投稿規定は、http://www.jasmin.jp/activity/books/kitei.html執筆要項は、http://www.jasmin.jp/activity/books/youkou.html申込用紙は、http://www.jasmin.jp/activity/books/moushikomi.htmlをご参照下さい。
2007.02.13
昨日と本日、神戸商科大学(現在兵庫県立大学との統合が進行中で、間もなくこの伝統ある名前は無くなります)で、経営情報学会秋季全国研究発表大会が開催されました。この場で、図らずも「2006年度経営情報学会論文賞」を頂戴しました。受賞論文は、須藤秀一氏(川越胃腸病院事務長)・内田達君(早稲田大学大学院博士課程学生)と共著の「医療機関へのBSCの導入と情報マネジメント」で、経営情報学会誌第14巻,第4号(本年3月)に掲載されました。10年近く前、本賞の創設に私も関与し、理事と監査人が手分けして前年度に公表された論文を全部読み(一人当たり4-6本程度読み、1本の論文は4-6人程度が読むことになる)、各人が持ち点(年によって異なるようだが、3-5点程度)を良いと思う論文に配分して、総得点で決定するという審査方式を設計しました。民主的で良い方法だと自負していたら、運の巡りか、自らが受賞することになり、感慨ひときわです。
2006.11.12
経営情報学を専門とする4つの学会の共同事業として、経営者・幹部向けに「内部統制におけるITの役割」についてQ&A形式で書いた本が、明日発売されます。http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822245454/ref=pd_rvi_gw_1/250-1691921-5917828?ie=UTF8これは、先週日経ビジネス・日経情報ストラテジー主催、学会の共同事業タスクフォース共催で開催された経営者・幹部向けのセミナー(http://business.nikkeibp.co.jp/j-sox/index.shtml)に連動しています。世の中に山のようにある内部統制に関する本とは、狙い・内容・スタイルが全く異なり、特に(J-SOXの対象となる大企業との取引がある)中堅企業の経営者にとっても、内部統制の意義が分かり易く、ガイドラインが付属している実用的な内容となっています。是非本屋さんで手に取ってみてください。
2006.10.18
日経情報ストラテジー7月号(pp.53-55)に、情報投資と経営成果について寄稿しています。http://bpstore.nikkeibp.co.jp/mokuji/nis171.htmlIT(情報技術)投資の成果が出ないのはなぜか。機能が足りない、利用者の能力が低い、といったところに目が行きがちだが、真の理由はそこにはない。情報システムを導入する以前に、組織として情報を集約し、解釈し、素早く行動に移せるような能力を持っていなければならない。IT投資で成果を出すための「賢い組織」像を解き明かす。今回は、経産省の「情報処理実態調査」回答企業の分析にも触れています。ただ、何故か図が間違っていました。正しい図は、http://itpro.nikkeibp.co.jp/NIS/0607.htmlにありますから、参照してください。
2006.06.17
6月3-4日に、東京八王子市の中央大学で、経営情報学会・オフィスオートメーション学会の合同研究大会が開催されました。その中で、経営情報学関連学会「内部統制」タスクフォースの特設セッションが開かれ、日経IT Pro に紹介記事がでました。http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060608/240424/なお、タスクフォースの参加学会は、設立順に以下の4学会です。・オフィスオートメーション学会・経営情報学会・Japan Association for Information Systems・情報システム学会
2006.06.08
経営情報学会では、「ファイル交換ソフトウェアの利用に伴う情報流出に対する見解」を公表しました。http://www.jasmin.jp/news/20060602.html多少遅かったとはいえ、IT系の学会としては最初の対応と思われます。
2006.06.06
「内部統制」について、日経ビジネスオンラインにインタビュー記事が掲載されています。http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060526/102975/
2006.06.05
『日経ビジネス(4月17日号)』に寄稿しています。テーマは最近の定番である「組織IQとIT支出の経営成果」ですが、今回は、日経ビジネス誌の中野目記者と一緒に「IT経営百選」で表彰された中小企業5社に取材して共同で作っていますので、従来のものよりも拡がりが出ていると思っています。コメントなど戴ければ幸いです。
2006.04.16
ダイヤモンド HBR 5月号(5月10日発売)に「IT は内部統制を保証するか」という巻頭言を寄稿した。現在、主として上場企業を中心に(実は、上場企業と取引のある企業は皆関係あるのだが)内部統制対策が検討されている。「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方」では「IT への対応」が特に言及されているが、本 blog でもしばしば述べているように、実証研究によると IT 投資/支出の効果は、組織能力に依存するところが大きい。したがって、IT によって有効な内部統制を実行できるかどうかも、情報システムのあり方だけでなく、組織能力如何によるところが大きいのである。ベンダーやコンサルタントに踊らされる前に、まずは、組織プロセスの見直しや改善を通じた自社の組織能力の充実が望まれる。
2006.04.09
この度、経営情報学会(http://www.jasmin.jp)では、昨年来の東証のシステム障害問題に関して、コメントを公開しました。「日経コンピュータ」誌1月23日号に指摘されているように、今まで、経営情報学会を含む情報系の学会では社会の時事問題に対して適切に発言してきたとは言えません。特に、e-Japan に関して何の発言・警告もせず、結局あのような事態になったことに関して、とても残念に思っていました。今回一連の東証事件に際し、学会内のシステム問題を扱うグループに依頼し、短期間で「経営情報学の立場から」コメントをまとめるよう依頼しました。その結果は、http://www.jasmin.jp/jp/pr/social/event/20060206/index.htmに公表されています。特に、「システム障害は必ず起きる」というポイントが重要だと考えています。これは、担当者の心がけや根性でなくなるものではありません。必ず障害が起きることを前提に、リスクの低減法や起きたときの対応を考えていくことが、健全で生産的だと信じます。このコメントが、社会の中でシステム障害に関する議論を引き起こす一つのきっかけとなることを願っています。また、ご意見等を頂戴できれば幸いです。
2006.02.08
経営情報学分野(英語では、単に「Information Systems」と呼ばれます。日本語で「情報システム」というともっと技術的な感じがしますが、英語の「Information Systems」は、情報システムの運用だけでなく、組織や戦略のマネジメント全般も含む、「経営情報学」に相当する概念です)で、世界で最も重要な国際会議である International Conference on Information Systems (ICIS) は、毎年12月中旬に開催されます。26回目の今年は、11日から14日まで、米国の Las Vegas で開かれ、1300人以上の参加者がありました。 http://icis2005.unlv.edu/過半は米国からの参加ですが、日本からの参加は私を含めて5人に止まり、中国・台湾・韓国・香港・シンガポール等アジア各国からの参加者数に遠く及ばないのは、とても残念です。現在 ICIS を開催しているのは Association for Information Systems (AIS) という学会で、ICIS の開催中には AIS 関係の事務的会議が持たれます。私も、Pacific-Asia Conference on Information Systems (PACIS) の理事会と AIS の Chapter Representatives Meeting に出席しました。いずれも AIS の日本支部(JPAIS)役員としての出席です。 http://www.aisnet.org http://www.jpais.orgAIS/ICIS は世界を、米州・欧州とアフリカ・アジアとオセアニアの3つの地域に分けていて、AIS の会長もこの3つの地域から順番に選ばれるようになっています(前会長はアメリカ出身、現会長はドイツ出身、次期会長はニュージーランド出身)。ところが ICIS がアジアとオセアニアで開催されたのは、2000年にオーストラリアの Brisbane 大会の1回だけ。昨年は、2008年に韓国が開催したいと名乗り上げ、JPAIS も応援したのですが、フランスに負けてしまいました。韓国は、今年2009年大会にもう一度立候補するかと思われていたのですが、結局降りてしまったのは残念でした。しかし、日本は未だ出席者数も発表数も少なすぎて、開催する力がないもの歯がゆい限りです。
2005.12.15
経済産業省「IT経営応援隊」事業の一環として2005年4月に公表された『IT経営百選』のデータを分析してみると、IT 支出と経営成果との関係について驚くべき事実が明らかになりました。*『IT経営百選』は、http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html で見られます。------------------2.方法(つづき)2.5.経営成果 『IT 経営百選』には、直近3年分の「売上高」と「経常利益」が含まれているので、経営成果の指標として、3年分の「売上高経常利益率」の平均値を計算する。2.6.サンプルのプーリングとカテゴリ化 『IT 経営百選』には、製造業・商業・サーヴィス業のサンプルが含まれているが、三カテゴリーに分けて IT 支出と経常利益率を比較したところ、有意な差はなかったので、一つのサンプルとして扱うことにした。 さらに、「IT 支出/売上高」「IT 支出/従業員数」「EIA スコア」「IKD スコア」「CI スコア」については、それぞれメディアンより大きければ「1」、以下ならば「0」のスコアを与え、二つの IT スコアの和を、各社の IT スコアとする。したがって、「IT 支出」スコアは、「0」「1」「2」のいずれかとなる。また、3つの組織 IQ 次元スコアの和を、各社の 組織 IQ スコアとする。したがって、「組織 IQ」スコアは、「0」「1」「2」「3」のいずれかとなる。
2005.10.17
経済産業省「IT経営応援隊」事業の一環として2005年4月に公表された『IT経営百選』のデータを分析してみると、IT 支出と経営成果との関係について驚くべき事実が明らかになりました。*『IT経営百選』は、http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html で見られます。------------------2.方法2.3.IT 支出 『IT 経営百選』には、直接人件費を含む IT 支出3年分の数字が含まれている。IT 支出は当然に企業規模と関連していると考えられるので、各社について「IT 支出/売上高」「IT 支出/従業員数」を計算する。2.4.組織 IQ 『IT 経営百選』には、組織特性に関する定量デイタは殆どないが、自社の強み・ビジネスモデル・こだわり・IT の活用等に関して自由記述欄があるので相当量の定性デイタがある。このデイタは非構造的なので、「組織 IQ」のフレイムワークを用いて、サンプル企業の組織特性を定量化することにした。 「組織 IQ」のフレイムワークは、H. Mendelson と J. Ziegler によって 1990年代後半に開発され(Mendelson and Ziegler (1999))、「外部情報感度(EIA)」「内部知識共有(IKD)」「効果的な意思決定機構(EDA)」「組織フォウカス(OF)」「継続的改善(CI)」の5次元を持つ。Mendelson と Ziegler によれば、組織 IQ スコアと経営成果は正の相関があり、産業クロック(例えば、ビジネスサイクル)が速くなればこの相関はより強くなるという。幾つかのヴァージョンが存在して、いずれのヴァージョンも最初の4次元は同じで、5次元目が入れ替わっている。しかし、このフレイムワークがもたらす結果は強力であり、多くの研究やプロジェクトで用いられている。例えば、経済産業研究所の「国際競争力研究会」でも採用され、日本企業の国際競争力の計測に効果を上げた(経済産業研究所(2001))。 『IT 経営百選』のサンプル企業は、優良中小企業であることから、重要な意思決定は社長が直接行っていて、また戦略や事業領域等についてもフォウカスされていると考えられる。したがって、EDA や OF については皆高スコアとなり、企業間の差別化は難しいと思われる。そこで、本稿では、EIA、IKD、CI の3次元について計測する。 組織特性に関するデイタは非構造的な記述(テキスト)であるので、上記3次元について「テキスト分析」を行うこととした。すなわち、テキスト中に現れる以下の表現をマニュアルで数えて、素スコアとする。*外部情報感度(EIA):顧客、得意先、ユーザー、お客様、会員、組合員、取引先、苦情、クレイム*内部知識共有(IKD):共有、公開、開示、統合、リアル(タイム)*継続的改善(CI):業界一(初)、日本一(初)、世界一(初)、チーム、資格
2005.10.09
経済産業省「IT経営応援隊」事業の一環として2005年4月に公表された『IT経営百選』のデータを分析してみると、IT 支出と経営成果との関係について驚くべき事実が明らかになりました。*『IT経営百選』は、http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html で見られます。------------------2.方法2.1.既存研究 ミクロ経済(企業・事業)レヴェルでは、過去10年間に、IT 支出・投資の企業業績に対するインパクトは、組織特性によって大きく影響されるというデイタの蓄積が為されてきている。米国上場企業の大サンプルに基づいて、Brynjolfsson and Hitt (2000), Bresnahan, Brynjolfsson and Hitt (2002), Brynjolfsson, Hitt and Yang (2003) 等は、以下の事実を明らかにした。(1)IT 投資に関連して、IT の直接使用に関する教育・訓練だけでなく、業務プロセス・組織構造・サプライチェインの再設計など、多くの組織投資が必要となる。不可視な組織投資の規模は、情報投資総額の90%(ハードウェアに対する投資は総額の10%)にもなることがある。組織投資の結果である不可視(組織)資産は、現行の会計原則の下では適切に計測されていない。(2)分権化の程度や熟練労働の使用などの組織特性は、IT 投資と相関している。(3)IT 投資は、不可視資産と組み合わさると、大きな経営成果を生みだす。不可視資産が小さいときには、IT 投資は経営成果に負の影響を及ぼすこともある。 同様の結果が米国外でも見られるかどうかは、これからの研究課題である。2.2.モデル 本稿では、 経営成果 = F(IT 支出, 組織特性)という基本モデルを採用する。ここでは、分析の興味は企業レヴェル、すなわち企業がその IT 支出または IT 資産全体から経営成果を得る能力を探ることにあり、個別の IT/IS プロジェクトの費用効果分析にはない。IT 支出と組織特性との間には相互作用があり、この相互作用が経営成果に影響を与えると仮定する。
2005.09.22
経済産業省「IT経営応援隊」事業の一環として2005年4月に公表された『IT経営百選』のデータを分析してみると、IT 支出と経営成果との関係について驚くべき事実が明らかになりました。*『IT経営百選』は、http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html で見られます。------------------1.はじめに 過去10年間に、先進国のマクロ経済における IT の貢献についてはデイタが蓄積されてきている(例えば、OECD (2003))が、企業・事業レヴェルのデイタ蓄積は未だこれからの状態である。米国は例外的に実証研究が進んでいる(例えば、Brynjolfsson and Hitt (2000), Bresnahan, Brynjolfsson and Hitt (2002), Brynjolfsson, Hitt and Yang (2003))ものの、我が国においてはこのような実証デイタは存在しない。これには、以下のような理由が考えられる。 まず、日本企業は一般に事業の詳細についてオウプンにしたがらない。例えば、ケイスを書くための協力を得ることは、一部の進歩的な企業の場合を除いて、非常に困難である。政府機関による調査であれば、かなり高い回答率を期待できるが、大学の研究者にとっては、IT 支出などの操業の詳細デイタを含む大規模サンプルを作ることは、事実上非常に困難である。 第2に、政府機関は IT のマクロ経済に及ぼすインパクトに関する調査はするものの、ミクロ(企業)レヴェルの調査は行っていない。経済産業省は数千社が回答する「情報処理実態調査」を行っているものの、IT 支出や IT 投資のパターンを経営成果と関連づけようとする試みは行われていない。 さらに、IT が仕事や事業に及ぼす影響について、広く理解されているとは言えないことが挙げられる。e-Japan や u-Japan 計画にしても、IT 支出/投資の効果を高めるための組織投資について、配慮が見られない。一般的には、適切な情報システムを導入さえすれば、生産性や社会厚生は自動的に向上すると想定されているようで、組織投資のために巨額の予算が必要となる可能性は全く考慮されていず、IT 支出/投資の効果を高めるための組織条件に関する研究も欠けている。 2005年4月に、経産省は、「IT 経営応援隊」事業のアウトプットの一つとして『IT 経営百選』を公表した。これには、112の中小企業について、直近3年分の売上高・経常利益高・従業員数・IT 支出高の定量的デイタおよび戦略や IT 活用についての記述の定性的デイタが含まれている。本来、この報告書は統計解析を目的とするものではないが、限定的とはいえ通常は入手困難なデイタ集であるので、分析の俎上に載せないのは勿体ないといえる。そこで、本稿は、我が国中小企業を対象として、IT 支出・組織特性・経営成果の関係の観点から、『IT 経営百選』のデイタを分析することを目的とする。
2005.09.18
要旨:情報技術の生産性向上に関する影響ついては、諸国においてマクロ経済レヴェルの実証研究が積み重ねられているものの、ミクロ(個別企業)レヴェルの実証研究は、我が国においては緒についたばかりといえる。経済産業省「IT経営応援隊」事業の一環として2005年4月に公表された『IT経営百選』には、変数が限られてはいるものの、先進的中小企業の IT 支出や売上高・経常利益高など、通常は入手困難なデイタが含まれている。組織特性については各社による記述以外のデイタがないので、テキスト分析により簡易的な組織 IQ の測定を行って分析した結果、IT支出と経営成果との関係は、組織 IQによって強く規定されることが示された。『IT経営百選』は、http://www.itouentai.jp/hyakusen/index.html で見られます。
2005.09.14
[参考文献]青木昌彦・安藤晴彦(2002)『モジュール化』東洋経済新報社Brynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000), "Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business Performance", Journal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48エリック・ブリニョルフソン(2004)『インタンジブル・アセット』ダイヤモンド社Carr, N. (2003), "IT Doesn't Matter", Harvard Business Review, May 2003Economist, The (2004), Software developmet, The Economist, November 27th 2004Edwards, B. (2004), A world of work, The Economist, November 13th 2004平野雅章(1997)『システム知の探求1』(共著)日科技連出版社、 第9章「情報化社会」pp.254-280角埜恭央(2004)『ビジネス価値を創造するIT経営の進化』日科技連Lessig, L. (2004), Free Culture, Reed Elsevier西村清彦・峰滝和典(2004)『情報技術革新と日本経済』有斐閣US Department of Commerce (2000), Digital Economy 2000US Department of Commerce (2002), Digital Economy 2002US Department of Commerce (2003), Digital Economy 2003淀川高喜(2004)『IT活用勝ち残りの法則』野村総合研究所
2005.08.27
3.日本の取るべきアクションセキュリティー・ネットワーク・デイタベース等の、情報技術に関する常識的に考えられる領域の研究をする他に、以下のアクションを採ることが望ましい。(1)測定と実証デイタの整備前節に、情報投資と効率向上に関して、測度の改善が難しいと指摘したが、実情を把握し適切な政策を立案・実施するためにも、測定と実証デイタの整備が不可欠である。特に、情報技術資産のフロー化の傾向に関して、どのように効率を測定すべきかは、これからの検討事項である。このために、産業界・学界と連携して、理論的研究と実証研究を積み重ねていく必要がある。また、公共セクターにおける情報投資効果の測度の開発は急務である。(2)教育投資既存の実証デイタは、情報技術投資の効果を得るためには、組織投資・人材投資が必要であること、情報技術と低学歴労働は代替的であるが、情報技術と高学歴労働は補完的であることを示していて、これらについてはほぼ一般的な合意が得られているといえる。我が国は、(もし移民受け入れ政策に変化がないのであれば)これから若年労働者の不足に直面するので、低学歴労働で可能な課業は情報技術で代替し、高学歴労働者を増やすことにより、情報技術投資の効果を上げていく必要がある。このためには、適切な教育訓練カリキュラムの開発などの研究が望まれる。(3)マネジメントへの応用の研究と実践前節(3)項でみたように、情報技術のマネジメントへの応用はまだまだ改善の余地が大きいし、社会的インパクトも大きいと期待できるので、この分野において集中的な研究(理論と実証)と実践が望まれる。特に、運輸・通信・サービス業・卸売業等では、米国に比べて生産性向上が低いので、改善の余地が大きいと考えられる。(4)社会的な合意形成前節(5)項でみたように、情報投資による社会的な変化が予想され、現在の価値観ではこれらの変化は必ずしも受け入れられないので、幾つかの論点について社会的な合意形成を意図的に行う必要がある。(a) 競争敗者の救済情報投資の結果、社会の透明度が高まり、競争が効率的になると、勝敗が著しくはっきりとつくようになる。しかし、勝者の報酬が著しく高まったときには、社会的に不公正と感じられる事態が発生する可能性がある。そこで、敗者の救済ルールを確立していく必要がある。(b) プライヴァシーの消失社会の透明度が高まる直接的な結果として、プライヴァシーが消失または著しく制約される可能性が大きい。情報投資を行って社会の透明度を高めることによって得られる社会の公平性・安全性とプライヴァシーとのトレイドオフを明らかにして、合意を形成していく必要がある。(c) 知財の新しい取り扱いディジタル財に適した、新しい知財の取り扱い方について、社会的合意を形成していく必要がある。
2005.08.22

「IT 生産性の格差」Brynjolfsson, W. (2003), "The IT Productiveity Gap", Optimize, July 2003, Issue 21『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第3章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★---------------------------------【コメント】米国企業のデイタを使った議論であるが、基本的に日本でも同様の現象が起こっていると考えられる。特に、「より高度のコンピュータの使用は、必然的により高いスキルの組織成員を要求すると共に、意思決定の分散化・分権化を引き起こす」という論理の展開が面白い。通常想定されているように、「意思決定が分散化・分権化した組織で、コンピュータがうまく使える」のではなく、高度のコンピュータ使用がドライヴァーとなって組織変革を起こすというのである。この議論の背景には、組織を「情報処理システム」と考える H.A. Simon 以来の組織観があり、特に、J. Galbraith による「情報処理パラダイム」がある。すなわち、「組織の意思決定における不確実性は、環境から要請される情報処理負荷が、組織の情報処理能力を上回るときに発生する」と考える(Brynjolfsson は、コンピュータの使用の高度化によって、従来より、情報処理負荷が増加することによって不確実性が増加すると見る)。したがって、不確実性に対処するためには、(1)情報処理能力を向上させる(例えば、組織成員のスキルを向上させる)(2)情報処理負荷を減少させる(例えば、意思決定の分散化を図る)(3)上の両者を同時に行うをすればよいことになる。しかし、Brynjolfsson によれば、この対応は容易でなく、調整コストも掛かるので、一部の優れた組織のみが実現できているという。しかし、ディジタル組織を目指す以外の、現実的なオプションはあるだろうか?なお、翻訳版では省略されているが、オリジナル版にはこの後に「(ディジタル組織となるための)90日計画」が付属している。
2005.08.12

「IT 生産性の格差」Brynjolfsson, W. (2003), "The IT Productiveity Gap", Optimize, July 2003, Issue 21『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第3章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★---------------------------------【根拠・論拠・証拠】生産性は、企業や経済が心配すべき変数の一つに過ぎないが、究極的には生産性向上こそが、生活水準・競争優位性・国富などの全てを規定することになるので、われわれは IT と生産性向上との関係に関心を持つ。アメリカの2002年の労働生産性向上は4.8%で、これはそれ以前5年間のほぼ2倍であり、この5年間も1980年代から90年代初頭の1.3%と比較すると約2倍であった。米国大企業1167社を使った著者の実証研究では、IT 資本装備率(労働者一人当たりの IT 資本)と企業の生産性との間には、統計的に有意な相関があるが、分散も大きい([図1]p.117)。「IT 資本」は、労働者一人当たりの IT ハードウェア置き換え価格で、「生産性」は、IT 資本を除く全要素生産性である。この大きな分散は何に起因するか? 実は、IT 投資は、生産性向上を決定するより大きな補完的投資クラスターのほんの一部にしかすぎない([図2]p.123)。著者等の研究によると、1ドルの IT 投資に対して、企業は9ドルにも達する人的資産(訓練)や組織資産(新しい業務プロセス等)の IT 関連不可視資産への投資を行っている。これは、Cisco・UPS・Dell・Merrill Lynch・British Telecom 等での聞き取り調査で明らかになってきた。さらに300社を超える聞き取り調査により、ディジタル組織化と呼ばれる特定の補完的な投資と組み合わされたときに、IT 投資の効果が大きくなることが分かった。高度のコンピュータの使用は、業務プロセスからより多くの情報を生みだす。しばしば業務フロウのボトルネックは、人間が情報処理をする能力であり、この能力を超えると情報の洪水となって業務に障害が発生する。この問題の解決法は、より高度の情報処理能力を持つ組織成員を増やすと共に、意思決定の分散化・分権化を図ることにより、組織上層部の情報処理負荷を減少することである。1970年代・80年代の組織は、情報処理コストが高いことを前提に作られていたが、現在はハードウェアコストが著しく低下したため、コンピュータの使用量が圧倒的に増え、過去の組織では対応できなくなっているのである。すなわち、高度のコンピュータの使用は、従来と異なった組織慣行を要求することになるのである。著者等がディジタル組織と呼ぶ組織慣行は、以下の通りである。●ルーティン課業の自動化●高度の熟練労働者●分散化した意思決定●垂直・水平の情報流通●業績リンクの報酬●訓練と採用への関心ディジタル組織の導入は困難で、調整コストもしばしば多額のものであるが、それ故にディジタル組織は競争優位性の源泉ともなる。
2005.08.10

「IT 生産性の格差」Brynjolfsson, W. (2003), "The IT Productiveity Gap", Optimize, July 2003, Issue 21『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第3章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★---------------------------------【基本メッセイジ】(1)IT 投資の程度と生産性向上との間には統計的有意な相関関係があることは確かだが、分散が非常に大きい。(2)ディジタル組織化と呼ばれる特定の補完的投資と組み合わされたときに、IT 投資の効果が大きくなる。
2005.08.07
2.今後10-30年程度の発展シナリオ(5)社会変動社会全体として情報投資が進む結果、(いままでみてきたように、全要素生産性が向上するためには、組織投資・人材投資が必要であるから)その効果の程について保証はないものの、従来と比較すると、情報流通の速度は増加し、情報流通のコストは低下することに間違いはない。これによって、今後数十年の間に多くの社会変動があると考えられる。情報投資によって情報流通が促進されることにより、社会の透明性が増す。社会の透明度が増すことは、公正な社会を作るための必要条件ではあるが、かならずしも十分条件ではない。まず、情報の透明度が増すことにより、市場は効率化するが、効率的な市場では誰もが財の価値に関する情報を入手できるために、競争状況においては勝敗がはっきりする。たとえば、現状においても、プロスポーツの世界では選手の能力に関する情報は誰もが入手できるため、有能な選手は誰もが欲しがって、その結果有能な選手の報酬は極端に高くなる。他方、凡庸な選手については特に誰も欲しがらないため、報酬水準はかなり低くなる。芸能界やアートの世界でも、似たような傾向がみられる。他方、一般ビジネスの世界では、社員の能力を明確に比較・判断できる情報が少ないため、(少なくとも今までの日本では)ごく一部のビジネス人の報酬が極端に高くなるという現象が起きにくい。しかし、今後は、多くの分野で個人や会社の能力に関する情報が容易に流通するようになる(すなわち、市場の効率が増す)ので、能力のある人や組織の報酬が極端に高くなる可能性が大きい。これは、公平ではあるものの、社会的には必ずしも公正といえない、帰結を招くので、何らかの補償制度を作る必要がある。また、社会の透明度が増す直接的な結果として、プライヴァシーを保持することは難しくなる。電子メイルのコピーはサーバーに残るのでシステム管理者は読むことができるし、携帯電話を携帯していれば、所有者のいる場所は、数百メートルの範囲で特定できる。クレジットカードや小売店のロイヤルティーカードの情報を集計すれば、個人の生活・買い物パターンが相当程度推定できる。欧州では、駅や飛行場など多くの人が通る場所にはカメラが設置されていて、顔の画像をパターン認識ソフトを使って分析して、特定の個人の移動を監視している(これは、現在までのところ、主としてフーリガン対策である)。振り返ってみると、近世まで殆どの人にとってはプライヴァシーの概念は存在しなかったし、国民がプライヴァシーの存在を無条件に仮定できるようになったのは、たかだかこの100年以内のことである。しかし、情報社会の利便性・安全性等とプライヴァシーの消失とのトレイドオフは、広く認識され議論されることになる可能性が大きい。さらに、社会の透明度が増すことと情報流通が容易になることの結果として、単純労働や国内に優位性のない課業について、海外へのアウトソースが多くなる。既に、米国・英国などの英語国では、インドへのアウトソースが増えて社会問題になっているが、この傾向はますます高まり、いずれ日本でも、幾つかの課業が海外にアウトソースされるようになろう。一方、ディジタル財の増加に連れ、コンテンツに関する権利の管理が変化すると考えられる。よく知られているように、現在の特許や著作権の制度は、ディジタル財を予定していないために、各種の不都合が発生している。Lessig (2004) のように、そもそも知的産物は公共的なもので、企業の私的な権利を過剰に保護することは社会の進歩を阻害するだけでなく、社会的正義に反するとする立場もあり、現在、ディジタル財の権利の管理は過渡的状態にあるといえる。今の段階で変化の方向を予測することは困難であるが、今後10-20年の間には、社会的にディジタル財の取り扱い経験量が十分となって、安定的な制度が生まれている可能性が大きい。最後に、歴史的にみると、情報流通が増すと、権力関係に変化が起こる。過去の最も重要な事例は、ルネサンス期の欧州における印刷術の普及とそのインパクトである。印刷術の普及と聖書のラテン語から日常言語への翻訳により、聖書が普及し、これが宗教改革を引き起こして、結局、カトリック教会の権力の弱体化を促進させることになった。教会は、カノッサの屈辱(1077年)で世俗権力に対する優位性を誇示したものの、宗教改革後は、世俗権力に従うこととなった。また、最大の帝国スペインは、宗教改革に併行して属領の独立に直面することとなった。情報技術の普及により、国民国家(徴兵制や知的所有権の保護も国民国家のシンボル的な制度である)の相対的な意義が揺るがされ、帝国ソ連は衛星国の独立で崩壊した。ただ、国民国家に取って代わる新しいヘゲモニーが何であるか、われわれにはまだ分からない。今後30年の間には、徐々に明らかになるであろう。
2005.08.03

計算機能を超えてBrynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000)Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business PerformanceJournal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★ ---------------------------------【コメント】前3分の2は良くできたレヴュー論文で、情報投資と経営成果との関係に関する研究の流れと、方法論的な問題点を押さえている。著者等のグループの最近の研究の紹介が巧みに取り入れられているのが特徴である。後3分の1は、レヴューもあるが、主として論説である。引用されている殆どの文献は、米国の大企業が対象の調査である。1980年代にあれほど流行った日本的経営というものがあるとすると(私はあると思っているが)、日本的な意思決定の仕方がその基礎となっているはずで、情報システムのあり方は、意思決定プロセスと密接に関係している。したがって、IT と組織特性・経営成果の三者の関係は、日本においては、米国での関係と異なるところがあるに違いない。しかし、現状では、日本での実証デイタが少なすぎて、残念ながらきちんとした比較の議論ができない。本論文の結果を鵜呑みにしないで、しかし日本でも IT・組織特性・経営成果の三者の間に密接な関係があるに違いない、と考えるべきであろう。「IT を活かすにはそれに見合う組織能力が必要で、IT 投資と同時に組織投資をしなければならない」という基本メッセイジは正しい。なお、「Beyond Computation」の日本語訳は「計算機能を超えて」となっているが、これでは何のことか分からない。間違いとは言い切れないが、「計算不能」とでも訳すべきところ。本文の最後に「計算不可能ではなくなる(計算可能となる)」という下りがある。
2005.07.30

計算機能を超えてBrynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000)Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business PerformanceJournal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★ ---------------------------------【根拠・論拠・証拠】(その3)企業レヴェルの証拠に着目して、幾つかの事例・多数の先行実証研究に自らのグループの実証研究を加えて整理し上記のメッセイジを導出している。(3)IT と生産性に関する研究の組織レベルとマクロレベルの乖離伝統的な成長会計手法は、コンピュータハードウェアの価格と量など可視的な投資に注目して、より大きな不可視投資(補完的な新製品・サーヴィス・市場・ビジネスプロセス・業務スキル等の開発)を無視してきた。また、産出についても同様に、価格や量などの可視的な面に注目し、サーヴィスの多様性とスピードなどの不可視的な便益を無視してきた。このため、IT 投資の貢献を適切に測定することができなかった。1970-80年代のデイタを使うと、コンピュータ投資は産出に約0.3%/年貢献(Jorgenson and Stiroh:1995, Oliner and Sichel:1994)していて、これはコンピュータの消費者余剰への貢献値(Brynjolfsson:1996)とほぼ等しい。推定された成長の大部分は、コンピュータ製造業における性能価格比の大幅な下落の直接的寄与による。米国における IT ハードウェアの名目購買額は GDP の1.4%で、性能価格比は年に25%減少するので、GDP に対する名目購買比率が一定であれば、実質0.35%生産性が向上する。GDP デフレイターを見ると、コンピュータハードウェアは、米国のインフレ率を0.5%程押し下げている(Gordon:1998)。最近の研究では、IT 投資の急増を生産性とリンクさせて、1990年代後半のコンピュータの産出への寄与は1.0-1.1%と推定されている(Oliner and Sichel:2000, Jorgenson and stiroh:2000, Gordon:2000)。伝統的成長会計の手法による測定では、大きな生産性向上はコンピュータ製造業において計測されているが、その他の産業においてもコンピュータによる生産性向上が計測されるかどうかは、情報機器の移転価格による。すなわち、移転価格が低ければ、計測されるコンピュータ製造業の生産性向上は減少し、その分だけその他産業の生産性向上が計測される。いずれにしても、推定される経済全体の生産性向上は一定である。1.コンピュータ化に伴う不可視資産への投資大企業800社の調査では、不可視資産対 IT 資産の比率は10対1(Brynjolfsson and Yang:2000)であるが、プロジェクトによってはこれでも過小評価といえる。ERP 調査では、典型的な導入費用の2050万ドルのうち、ハードウェアが4%、ソフトウェア(ライセンスと開発費)が16%で、残り80%は、新しいビジネスプロセスの開発・設計と従業員の訓練費であった(Gormely et al:1998)が、導入のために費やされた経営者の時間コストは入っていない。変動する経済では、これらの不可視投資を費用として計上すると、産出を過小評価することになる。例えば、米国では最近ソフトウェアを資産計上することになったが、この変更によりソフトウェア投資は1979年の100億ドルから1998年の1590億ドルまで増加した(Parket and Grimm:2000)。これは、1990年代の実質 GDP 成長率に0.15-0.20%の寄与をすることになった。不可視資産への支出を、費用でなく資産への投資として見直すと、米国の GDP 成長率や生産性向上率は、年に1%以上過小評価されていることになる(Yang:2000)。不可視資産の規模を正確に推定することは困難であるが、IT の経済への寄与を考える際に、無視することはできない。企業レヴェルのデイタの使用により、不可視的投入について、マクロレヴェルの場合より適切な測定ができる(Siegel:1997)。2.消費的産出の質的変化IT 投資による質的改善の大きな部分(例えば、適時性・カストマイゼイション・顧客サーヴィス等)は、必ずしも売上の増加に反映せず、統計に現れない。コンピュータの質的貢献についての計測漏れは、以前の技術の場合より大きいと考えられ、生産性向上と経済成長を過小評価している(Boskin et al:1997, Baily and Gordon:1998)。IT サーヴィスマネジャーの調査によると、IT サーヴィス投資の動機として、顧客サーヴィス・製品品質・便宜性・適時性等の不可視的側面は、費用の節約より重要である(Brynjolfsson and Hitt:1997)。また、IT は製品多様性と関連している(Brooke:1992)。生産性変化に関する公的統計では、産出の適正な測定が困難で質が重要な産業(例えば、銀行業・保健・法務等)で生産性の低下が測定されている[表2(p.102)]。これらの統計は明らかにサーヴィスレヴェルの最近の変遷に関する我々の実感に反しているが、これらの異常な産業を除くと、米国の生産性向上の推定値は0.5%以上上昇する(Griliches:1994, Corredo and Slifman:1999, Osterberg and Sterk:1997)。測定されない便益のもっとも重要なものは、新製品の価値である。新製品の売上は計測されるが、それがもたらす消費者余剰は測定できない。さらに、新製品が物価指数を計算するバスケットに入れられるのは時間が経ってからであるので、物価上昇を過剰評価し、産出の増加は過小評価されることになる(Boskin et al:1997)。また、IT によって製品多様性が大きく増している(Nakamura:1997)。不可視的な価値の相対的な大きさは、コンピュータの普及に伴って増大しているが、まだ適切な評価尺度が開発されていない。不可視的な便益については、企業レヴェルのデイタも確実な助けとはならない。
2005.07.29

計算機能を超えてBrynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000)Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business PerformanceJournal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★ ---------------------------------【根拠・論拠・証拠】(その2)企業レヴェルの証拠に着目して、幾つかの事例・多数の先行実証研究に自らのグループの実証研究を加えて整理し上記のメッセイジを導出している。(2)大標本による実証研究1.情報技術投資と生産性・企業の市場価値1980年代までのマクロ経済レヴェルの実証研究では、情報投資が生産性向上をもたらしているという証拠はなく(Roach:1987, Berndt and Morrison:1995, Morrison:1996)、「生産性パラドックス」と呼ばれた(Solow: 1987)。1990年代になると、企業レヴェルの実証研究で、情報投資が生産性に影響を与えているという報告が出始めた(Brynjolfsson and Hitt:1995/96, Lichtenberg:1995)。[図1(p.80)]は、IT 資本と生産性との関係を示す。実証研究によると、コンピュータ資本の一般的産出への貢献は1ドル当たり60セント/年と推定され(Brynjolfsson and Hitt:1995/96, Lichtenberg:1995, Dewan and Min:1997)、これは想定される正常収益率の42セント/年より大きい(Brynjolfsson and Hitt:2000)。これは、異常に大きな投資収益か、測定されていないコストか投資への障壁があることを示している。同様に情報システム労働の産出への貢献は1ドルにつき1ドルを超え、6ドルにもなることもある。実証研究を総括すると IT は産出のかなりの増加と関連しているといえるが、そのメカニズムや因果性については確かなことは言えない。しかし、双方向の因果性がありそうである。測定されたコンピュータ投資の産出弾力性は、一貫して大きすぎて、計測されていないインプットの存在が示唆されている。また、組織特性を導入すると、コンピュータ投資の産出弾力性が半減することから、組織要因が IT 投資の収益性に大きく影響していることが分かる(Brynjolfsson and Hitt:1995)。さらに、IT の効果は、長期の測定の際に著しく大きくなる。1年間の IT 投資と1年間の生産性向上を比較すると大体等しいが、長期の効果は2から8倍になる。短期の効果は直接的効果だが、長期的には組織投資の効果が現れていると考えられる。1ドルの通常資産は株式市場でほぼ1ドルに評価されるが、1ドルの IT 資産は Fortune 1000 の1987-94年についてみると、5ドルから20ドルの市場価値に相当している(Brynjolfsson and Yang:1997)。IT 資産は相対的に多額の不可視資産と関連していて、企業は1ドルの IT 資産に対して4ドルから19ドルの不可視資産を取得していると考えることができる。あるいは、IT が効果的に機能する前に、多額の調整費用が必要だと見ることもできる。2.組織特性と情報技術の活用一般的に、分権的で組織成員にかんする要求能力が高い組織ほど、IT 投資は大きい。大企業400社の調査によると、IT 利用は、分権化・高いスキルと訓練・採用前のスクリーニングと関連しているだけでなく、変数同士も相関しているので、補完的なワークシステムの一部であると考えられる(Breshahan, Brynjolfsson and Hitt: 2000)。自動車修理業では、コンピュータは定型的業務を代替し、非定型的な認知を必要とする業務と補完的である(Levy, Beamish, Murnane and Autot: 2000)。銀行業では、コンピュータの組織的効果の大きさは、組織の再設計等の経営意思決定に依存する(Hunter, Bernhardt, Hughs and Skuratowitz: 2000, Murnane, Levy and Autor: 1999)。企業レベルでは、既存の技術基盤と業務慣行の補完性が新技術採用の主要決定要因である(Breshahan and Greenstein: 1997)。産業レベルの研究によると、ハイテク機器への投資と高学歴労働者の需要とは強い関連がある(Berndt, Morrison and Rosenblum:1992, Berman, Bound and Griliches:1994, Autor, Katz and Krueger:1998)。産業組織的には、IT 投資は、企業規模および垂直統合の減少と関連している(Brynjolfsson, Malone, Gurbaxani and Kambil:1994, Hitt:1999, Malone, Yates and Benjamin:1987, Gurbaxani and Whang:1991, Clemons and Row:1992)。3.組織特性・情報技術の活用・生産性分権的な組織は、平均的な組織に比較して、IT 投資の生産性弾力性が13%、IT 投資の絶対額が10%高い。また、IT 投資と分権化の程度の両者がともに高い方の半分に属する企業は、どちらか一方が高い方の半分に属する企業より、生産性が5%高い(Bresnahan, Brynjolfsson and Hitt:2000)。分権化で上位三分位に属する企業は、他の資産をコントロール後に、6%市場総額が高くなる。また1ドルの IT 資産の市場価値は、IT 使用度にかかわらず、集権的な企業に比較して2-5ドル高くなる[図2(p.91)](Brynjolfsson, Hitt and Yang:2000)。技術への投資と、これによって可能になった組織と業務慣行の変化が、生産性向上と市場総額に貢献していることは明らかだが、尺度を含めて一層の研究が必要である。
2005.07.28

計算機能を超えてBrynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000)Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business PerformanceJournal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★ ---------------------------------【根拠・論拠・証拠】(その1)企業レヴェルの証拠に着目して、幾つかの事例・多数の先行実証研究に自らのグループの実証研究を加えて整理し上記のメッセイジを導出している。(1)事例多くの文献から、情報技術は補完的な組織変革を伴って初めて効果がある、と言える(Milgrom and Roberts:1990, Brynjolfsson, Renshaw and Van Alstyne:1997, Hammer:1990, Kemerer and Sosa:1991)。階層組織など過去の組織形態は、情報処理コストが高いことを前提に作られていた(Malone:1987, Radner:1993)。しかし、最近の情報処理コストの著しい低下により、新しい組織形態が可能となり(Milgrom and Roberts:1990)、組織と戦略に変化が起こり、熟練労働への需要が高まる(Bresnahan:1997, Bresnahan, Brynjolfsson and Hitt:2000)。1.企業変革マクロメド社(仮称)は大規模な CIM への投資と、同時に多くの変革を行った[図1](p.70)。当初は成果が上がらなかったが、全く新しい場所で、従来からの業務慣行に慣れていない従業員グループによって実施することにより、大きな成果を得ることができた(Brynjolfsson, Renshaw and Van Alstyne:1997)。2.サプライヤー関係従来はサプライヤーとの調整コストが高価だったため、GM のような大企業はしばしば部品を内製していた。IT の発達により全く新しい企業関係が可能となり、Baxter ASAP では Baxter が病院の在庫管理に責任を持つ(Vitale and Konsynski:1988, Short and Venkatraman:1992)。コンピュータ基盤のサプライチェイン統合は日用品産業で発達しており、P&G は Efficient Consumer Response というプログラムを開発した(McKenney and Clark:1995)。サプライヤー関係のオンライン化により、受発注コストのみならず、在庫コスト・陳腐化の削減等、総合的に10-40%程度購買費用が減少したと言われる(Goldman Sachs:1999)。GM は部品を内製することが非経済的となって、部品製造部門を分社化するに至った。3.顧客関係Dell は、仕様決定・受注・テクニカルサポートを web 化しているが、同時に、JIT 在庫管理・BTO 生産システム・販売と生産計画の統合等の業務慣行も変更した(Rangan and Bell:1999)。これにより、直接コストが低減しただけでなく、顧客のへの対応がより敏速になっている。----------次回は、【根拠・論拠・証拠】(その2)です。乞ご期待。
2005.07.27

計算機能を超えてBrynjolfsson, E. and L.M. Hitt (2000)Beyond Computation: Information Technology, Organizational Transformation and Business PerformanceJournal of Economic Perspectives, Vol. 14, No. 4, pp. 23-48『インタンジブル・アセット』(ダイヤモンド社)第2章即効性:★★本質性:★★★信憑性:★★★ 即効性=直ぐに効果が期待できる 本質性=長期的に考えるべき点 信憑性=根拠と論理の確かさ 評価は、★ → ★★★ ---------------------------------【基本メッセイジ】(1)新たな業務プロセス・新たなスキル・新たな組織構造・新たな産業構造等を開発・修得するための組織投資は、IT 投資の成果に大きな影響を与える。(2)これらの組織投資は、コストを減少したり、新製品や既存製品の不可視な側面(便宜性・適時性・品質・多様性等)の改善のようなアウトプットの質の改善を可能にすることにより、生産性向上に寄与する。(3)コンピュータ投資による経済成長への寄与は、その投資額や資産の比率より遙かに大きい。----------------------次回は、【基本メッセイジ】を導くための【根拠・論拠・証拠】(その1)です。
2005.07.25
2.今後10-30年程度の発展シナリオ(4)適切な測度「情報投資による効率向上」というテーマについては、第1節にみたように、「情報投資」も「効率」も適切に測定するのは容易ではない。まず「情報投資」については、「ハードウェア」「ソフトウェア」「組織投資と人材投資」に大きく分類できる。「ハードウェア」については、価格性能比の向上が著しく、歴史的な比較が困難である。「Digital Economy 2000」では、生産性を考慮するヘドニック指数を導入しているが、この指数の決定自体が問題であり得る。さらに、ハードウェアを所有せず、レンタルで使用する傾向が強まるであろうから、資産というよりむしろ経費の効率を考えていくようになる可能性が大きい。「ソフトウェア」については、我が国では内製ソフトは中間財として統計に現れない。「組織投資と人材投資」については、そもそも我が国でも「情報投資」として把握されていないし、その範囲や取り扱いについて未だ慣行が確立していず、いずれにしろ経費扱いである。そして、これら三者が統合された「情報投資」については、全く満足な測度となっていない。たとえば、デル社オースチンの工場では、新しいソフトウェアを導入し業務プロセスを再設計した結果、効率が著しく向上し、以前の半分の床面積で以前より20%多く生産できるようになった。もし、生産効率が向上しなかったとすると、増加する注文に応えるために二つ目の工場を建設することになっていたはずで、その場合には新工場は固定資産として貸借対照表に記載されていたであろう。しかし、インタンジブルアセットへの投資は、貸借対照表に記載されないので、従来からの会計デイタは、情報投資に関する記述としては、解釈に注意を要する。他方「効率」であるが、まず、全体経済や産業レベルでの市場の効率については、産業経済学・産業組織論で研究の蓄積があるものの、「情報投資」と「市場の効率」との関係の研究は今後取り組むべきテーマの一つであろう。また、経済・産業レベルでの「生産性」測定には、出力が産出額で測定されている限り、測定されない「生産性」の向上があり得る。たとえば、情報投資によるオークションなどの社会的インフラストラクチャーの整備により中古品のリサイクルが推進されると、新品商品の需要は減るので、測定される歳出額は減少してしまう。企業レベルでの効果の測度は、「生産性」と「経営成果」が代表的なものであろう。企業が詳細な情報を開示すれば事業レベルでの効果を計ることも可能であるが、大サンプルによる事業レベルの実証研究の可能性は30年経っても小さいであろう。他方、公共部門については、「生産性」以外による効果測定は、困難であろう。すなわち、今後30年の間に、「情報投資」の測度については改善可能性があるが、「効率」「生産性」「経営成果」の測度については、改善可能性に限度があろう。
2005.07.23
2.今後10-30年程度の発展シナリオ(3)情報投資の重点テーマ今後10年以内に、情報投資による効率化に大きな効果があるような重点テーマが、社会的合意として浮かび上がってくると考えられる。以下に主なものを上げる。(a) システム統合ビジネスの世界の基本的なパラダイムが、20世紀初頭以来の「多角化・垂直統合」から1980年代以降「コアビジネス専業化」に変化したことにより、世界的に事業領域のリストラクチャリングのための M&A が増加している。このときには、合併・吸収の実効を上げるために、組織とオペレーションの統合のみならず、これらをサポートする情報システムの統合も不可欠である。システム統合は地味ではあるが、しばしば、時間・エネルギー・コストが非常に掛かるプロセスである。これに失敗すると、たとえば、2002年4月のみずほ銀行におけるシステム障害のように、基本的なビジネスプロセスが中断するだけでなく、信用の失墜を含む、直接・間接の損害が避けられない。また、社会的にも、大きな生産性の低下を招く。また、各企業がその事業領域をフォウカスしているので、しばしば自社のみで顧客までのヴァリューチェインを完結させることができず、他社との協業・アライアンスを必要とするようになってきている。ここでも、他社の情報システムとの統合が必要となる。そして、M&A やアライアンスに起因するシステム統合の必要性は、多くの場合、散発的だが恒常的に起こるため、効率的なシステム統合プロセスの理論・ツールの開発ニーズは、ますます大きくなると考えられる。この傾向は、ビジネスの世界における支配的なパラダイムが今一度変わるまで続くと考えられる。(b) マネジメントへの情報技術の応用現在の情報技術は、マネジメントの分野でまだまだ十分に活用されているとはいえない。人間の常識的な判断を必要としないような定型的な意思決定や大量のデイタに基づく意思決定には、情報技術をもっと活用すべきである。特に、行政・医療・災害対応等の分野で今後10-30年にわたって効果が大きいと考えられる。たとえば、2003年9月の東京慈恵会医科大学青戸病院における医療ミスによる患者死亡事件は、資格のない若手医師が倫理委員会など学内の必要な手続きを取らずに腹腔鏡手術を実施して起きたのだが、本来、条件を満たさない手術については、手術室・麻酔医師・助手などの必要な資源が配分されるべきではなかった。このような意思決定は情報システムによって、有資格者をチェックして資源配分するようなっていれば(勿論、緊急時等には手動で配分できるべきであるが)、医療ミスでなく、無資格者による手術そのものを防ぐことができた筈である。事務員が資源配分していると、医師に要請されたときに社会的パワー関係から、ルール違反であっても拒否することが難しいが、システム的に配分すれば、このような事態が防げるだけでなく、配分ミスも大幅に減少すると考えられる。このように、あらゆる組織の管理とマネジメントには、情報技術を活用して、生産性を上げる余地がまだまだ大きい。前節の、電力と生産性の項で述べたように、まず少数の組織が、画期的なマネジメントへの応用による生産性・経営成果の顕著な向上を実現し、これが、徐々に、周辺組織によって模倣されて、社会全体の生産性が向上するであろう。(c) 人的投資・組織投資西村・峰滝(2004)の実証研究によると、情報技術資本と低学歴労働は代替関係にある。情報技術によって労働が代替されるためには、労働者のスキルがソフトウェア上にプログラムでき、労働市場が柔軟で雇用調整にコストが掛からないことが条件である。製造業における単純労働は、ロボットや機械によって置き換えられ、高度の金型設計・製作もCADとCIMによりアルバイトでもできるようになった。銀行業務も、数次にわたるシステム化で、窓口業務や科目間処理も機械化されて、女子一般職のスキルがディジタル化された。製造業では、低学歴労働の情報技術資本による代替は、1990年代より1980年代の方が大きかった。1990年代には、生産工程以外の開発・顧客管理・物流・事務管理棟の部門で情報技術が利用されるようになったことを考えると、生産工程以外の事務部門において情報技術がコスト削減をもたらしていない可能性がある。これは、事務部門では労働者間のコミュニケーションや組織の暗黙知等、ディジタル化困難なスキルが多いことが原因と考えられる。情報技術資本は、高学歴労働に対して補完的である。たとえば、ERP (Enterprise Resource Planning:統合業務システム) やCRM (Customer Relationship Management) 等のソフトウェアを利用するには、業務知識以外の知識が必要で、情報技術資本が高学歴労働の価値を高める。しかし、産業別の差異も考慮することが必要で、電気機械産業では1990年代には情報技術資本と高学歴労働との補完関係がほぼ消滅した。これは、電気機械産業が次第に高学歴労働を必要とする「ものづくり」産業から、最新鋭の機械を購入して据え付ければほぼ同じ品質の製品ができる汎用品型の産業へと変化しつつあることを示唆している。1980年代には熟年高学歴労働と技術進歩とには弱い正の相関があり、高学歴労働者の長期にわたる勤労経験のノウハウが生産性を上昇させていたが、1990年代には、負の相関となり、技術進歩の性格が変化していると考えられる。今後数十年の日本経済を考えると、先ず日本型「ものづくり」の優位性が活きる領域が限定されている(たとえば、部品点数が数十万個であるような製品群に限られている)ことが明らかにされて行くであろう。その中で、若年労働者の減少に対処するためには、情報技術資本で若年低学歴労働を代替していくことが必要である。また、一般には情報技術投資と高学歴労働は補完関係にあるが、情報技術投資の効果を十分に得るためには、技術進歩にマッチした適切なカリキュラムによる高学歴化を図り、その十分な量を確保することが課題となる。
2005.07.17
6月12日に経営情報学会のエッセイコンテストについてご紹介しましたが、うっかりしていたら、1週間ほど前に、審査結果と優秀作品が公開されて web で読めるようになっていました。情報技術領域以外の方々からの応募も多く(実は、それがコンテストの狙いでもあったのですが)、いろいろの視点からの作品が入賞しています。幾つかのアイディアは、新しいビジネスの種にすることも可能かも知れません。同学会のウェブペイジを訪れてみて下さい。 http://www.jasmin.jp
2005.07.12
2.今後10-30年程度の発展シナリオ(2)ソフトウェア大規模化と開発プロセス情報投資の大きな部分を占めているソフトウェアは、大規模化の一途を辿り、その結果、システムの大規模化に起因するトラブルも増えている。たとえば、英国の Child Support Agancy における4億5600万ポンドプロジェクトは、開始後1年でキャンセルされてしまったし、Micorsoft の Windows XP の後継 OS、Longhorn は当初2004年発売予定であったが、2006年以降の発売と発表され、しかも当初予定された多くの機能の実装は2007年以降に延期されることになった。Standish Group の調査によると、大型情報プロジェクトの30%は途中でキャンセルされ、半分近くが予算超過で、60%はプロジェクト当事者によって失敗と見なされているという。また、現状で動いているシステムであっても、内在するバグによる障害は、システムの大規模化によってますます増加する。たとえば、2004年9月14日に航空管制システムのトラブルにより、南カリフォルニア地区の航空管制は中断され、多数の航空機が飛行を断念することになった。米国 National Institute of Standards and Technology (NIST) の2002年報告によると、システムバグによる全米の損害は、年595億ドルに達するという。以上のようなソフトウェアを巡る技術的なトラブルは、ソフトウェア開発技術の未成熟に起因し、結果として情報投資による非効率化を社会にもたらすことになっている。現状では、社会からのソフトウェアに対するニーズに対して、開発技術の水準が見合っていないのである。これは、ソフトウェア業界が、不適切かつ過剰なマーケティング活動によって、現状では実現不可能な夢を社会に売り、その結果社会の情報技術に対するニーズが短期的には非現実的なレベルまで高まってしまっているという一面も否定できない。現在、ソフトウェア開発については、業界の成立以来数十年続いてきた慣行が大きく変化しつつある。まず、開発プロセスのライフサイクルマネジメントが、従来の「ウォーターフォール」モデルから「繰り返し」モデルへと変わりつつある。従来型の「ウォーターフォール」モデルでは、要求定義・システム設計・コーディング・テスト・導入の各ステージを順番に実施していったが、環境の変化が速くなった結果、テストが終了するまでには、要求定義がすっかり変わってしまっているという事態が、日常的になってきた。そこで、開発の各ステージを重ね合わせ、多機能プロジェクトチームによって各ステージを繰り返す「繰り返し」モデルが実用化されつつある。また、ソフトウェア開発プロセス全体の短縮化のためには、各ステージの短縮化が欠かせないが、テストの自動化は、大きなインパクトがある。この分野のリーダーは Mercury であるが、当分その地位は動かないと考えられる。特に、システムテストの自動化によりテストの時間とコストが下がると、「繰り返し」モデルの採用が容易になり、開発の「繰り返し」モデルを支援することになる。3つ目の動向は、オープンソースの活用である。システム開発におけるオープンソースの有効性は、Unix を始め、歴史的に多くの事例で広く認められているが、Linux のような「純粋」オープンソースモデルだけでなく、アウトプットの商用利用を認めたり(例えば、CollabNet)、システムソースの一部に限って公開する(たとえば、Microsoft)など、いろいろのビジネスモデルが実験されている。10-15年以内には、効率的でかつ経済的にも意味のある幾つかのオープンソースモデルが生き残っていて、広く産業界によって採用されていることと思われる。以上のような革新の結果、今後10-20年でソフトウェア開発プロセス自体の信頼性は相当程度高まると考えられる。しかし、これが実際に社会の効率化に大きく寄与するかどうかは、社会がどのようなことを情報技術に期待して、どの程度大規模・複雑な情報技術プロジェクトを構想するかに、その大きな部分が依存している。非現実的な期待に基づいた大規模プロジェクトであれば、相変わらず社会に非効率をもたらすことになる。
2005.07.12
今年になってから、日本を含む先進各国において情報の漏洩事件・事故が続いているが、特に6月17日に米国で公表された4000万件のクレジットカード所有者に関する情報漏洩事件のインパクトは大きい。これを受けて、The Economist 誌6月25日号は、情報セキュリティーに関する社説と記事が載り、情報セキュリティーはもはや IT 部門の役目ではなく、トップ経営者の案件であることが主張されている。http://www.economist.com/business/displayStory.cfm?story_id=4112390この主張自体は目新しいものではなく、IT 関連文献・雑誌等で以前より展開されてきたものだが、新しいのは、この主張がメインのビジネス誌によって掲載されたことである。つまり、やっと世界のトップ経営者やシニアマネジャーに読まれる雑誌で、情報セキュリティーが彼らの関心事であるべきで、うっかりすると訴訟されることになりかねないという警告までがなされるようになってきた。このような見方がトップ経営者間に確立すれば、情報セキュリティーのみならず、情報投資一般について彼らの関心がより高まり、情報ガヴァナンスも向上しよう。長期的には、情報投資の成果も高まると期待できる。このような時代となれば、情報技術の分からない経営者は淘汰されるし、大きな時代の転換期にさしかかっているように思える。
2005.06.29
2.今後10-30年程度の発展シナリオ(1)全要素生産性向上の可能性全体経済または産業レベルでの全要素生産性向上は、ビジネスプロセスについての一般的な考え方のみならず社会システム・価値原理・関係性等の全体的な変動を経て実現される。これらが社会全体で大きく変動して大半の経済主体が新しいプロセスを採用し、経済全体の生産性が著しく向上したときに、「支配的技術(dominant technology)の交代」と見える。この変動を、情報技術投資と生産性向上との関係についての議論においてしばしば言及される、電力の普及と生産性向上の事例とのアナロジー考えよう。19世紀末から20世紀初頭にかけて米国で電力が動力源として実用化されたときに、製造業の生産性は直ちに上昇せず、生産性が飛躍的に増加するまで30-40年間掛かった。電力以前には、水力や蒸気が動力源として使用されていたが、そのときには複数の動力源を工場内に持つことはできなかった。また、歯車やベルトによる動力の伝達は距離によって効率が低下するので、結局、動力源を中心に、大きな機械を周りに配置し、小さな機械を遠方に配置するような工場の設計となった。また、動力源との距離を短くするために、工場は立体的に設計され、2階・3階にも機械が配置された。しかし、電力が普及し始めたときに蒸気機関を電力モーターに置き換えただけでは、大した生産性向上は得られなかった。飛躍的な生産性向上は、複数のモーターを平屋の工場内に自由に配置し、機械類を作業工程にしたがって配置するように工場の設計思想が変わったときに得られたが、このプロセスに約30年を要した。これは丁度経営者が世代代わりするのに要する時間であった。水力または蒸気動力源を電動モーターに入れ替えたのが「資本深化」で、電動モーターの方が取り扱いやすく、コストも安いため、この入れ替えによって生産性が向上した。さらに、工場の設計思想が変わって全く新しい配置や生産方式が生みだされ、それが経済全体に普及したのが「全要素生産性の向上」=「技術進歩」に当たり、これによってずっと大きな生産性向上が起こったとみることができる。情報技術投資の現状をこの電力による生産性向上とのアナロジーでみると、「資本深化」による生産性向上は、要素設備の置き換えによる生産性の向上、例えばそろばんから電卓、さらにはパソコンへの変化による要素作業の生産性向上(具体的には、資本による労働の置き換え)に当たる。他方、「全要素生産性(TFP)」の向上による生産性向上は、情報技術資本が充実することにより、製品仕様・仕事のプロセス・ビジネスパートナーや顧客との関係等が変化することによりもたらされる生産性向上に当たる。マクロデイタに基づく実証研究では、米国・欧州・日本の各国で資本深化による生産性向上は認められているものの、全要素生産性の向上による生産性向上について決定的なデイタがなく、必ずしも合意が得られていない。逆に考えると、情報技術資本への投資による生産性向上の余地はまだまだ大きく、これから10-20年の間に飛躍的な生産性向上を享受できる可能性が、大いにあり得るということである。企業などの個々の経済主体にとってみると、競合より早く情報技術投資による生産性向上を実現したく、実験とベストプラクティスの模倣を繰り返すことになる。しかし、経済全体について考えると、一部の企業は他の企業に先駆けてベストプラクティス(電力の場合の、生産工程にしたがう平屋の工場設計に相当)を実現して短期的な競争優位性を享受するものの、いずれこれはその他の企業によって模倣され、産業全体の標準的なプラクティスとなる。このときに、デイタからは、経済全体の生産性レベルが飛躍的に向上していると観察されることになる(支配的技術の変化)。しかし、この情報技術投資による飛躍的な生産性向上を実現するためには、前提として、組織構造と意思決定プロセス・ビジネスプロセス・パートナーとの関係等の見直しや再設計など、大規模な組織投資・人材投資によって、実験・探索とベストプラクティスの発見・普及を行う必要がある。前節の Brynjolfsson によると、これら目に見えない資産への投資額はハードウェアへの投資額の9倍になるという。このプロセスにおいては、ナレッジマネジメントなどのアプローチが活用される。
2005.06.19
6月12日に、早稲田大学で開催中の経営情報学会2005年度春季全国研究発表大会の中で、日本情報システム学会(JPAIS; Japan Association for Information Systems)の設立イベントが開催された。JPAIS は、経営情報学分野でもっとも重要な国際学会で、ICIS (International Conference on Information Systems) の主催団体でもある AIS (Association for Information Systems) の日本支部でもある。 JPAIS の web site: www.jpais.org AIS の web site: www.aisnet.org約30人の会員および経営情報学会大会参加者が出席したセッションは、まず、真鍋龍太郎(文教大学)会長から設立の背景等の説明があり、佐藤修(会計担当)・小坂武(無任所)・国領二郎(無任所)・平野雅章(総務担当)各氏の役員が参加して、活発な質疑応答が行われた。討議を通じて、「日本国内の英語 IS コミュニティーとの連携」「若手 IS 研究者が国際舞台へ進出するのを助けるインフラの整備」が当初の重点活動領域として浮かび上がってきた。その場で興味を持って AIS に入会する人も数人いたという意味でも、本イベントは成功であったと言えよう。
2005.06.13
On 12th June, JPAIS (Japan Association for Informtion Systems) held its inaugural meeting during the spring conference of JASMIN (Japan Society for Management Information) at Waseda University in Tokyo. JPAIS has been keeping a friendly relationship with JASMIN from its birth last year (the Association was in fact one of the sponsors of the JASMIN conference). The meeting was attended by some 30 members and interested audience from JASMIN. Professor Ryu Manabe of Bunkyo University, the first JPAIS President, opened the meeting and explained the background behind establishment of the Association. Then Professor Manabe was joined by four officers and directors, Professor Osamu Sato (Treasurer), Professors Takeshi Kosaka and Jiro Kokuryo (Directors at large), and Masaaki Hirano (Secretary), to answer questions from the floor. Through lively discussion and interaction, two important areas emerged as the initial foci of the association's activity . They were "forging links with English speaking IS communities in Japan" and "building infrastructure to help young researchers present/publish in the international arena". The meeting was a big success, also in that a few participants got enough interested and decided to join AIS on the spot!!
2005.06.13
11日(土)と12日(日)に、早稲田大学理工学部キャンパスにて、経営情報学会の2005年度春季全国研究発表大会が開催されている。初日11日(土)の午後には、学会特設セッションとして、エッセイコンテストの優秀作品に対して表彰が行われた。このエッセイコンテストの詳細は、久米さんの記事 http://smallbiz.nikkeibp.co.jp/free/RASHINBAN/20050328/105880/の通りで、応募資格を限定せず、一般にオウプンにしたコンテストだった。最優秀賞は、西尾光則氏と長谷川想氏の共同作品に贈られ、両氏によるプレゼンテイションがあった。その後、これに関連して、 篠原 健氏(追手門学院大学) 銅金祐司氏(太田花卉・東京芸術大学) 長谷川剛氏(自治医科大学付属病院) 久米信行氏(久米繊維工業)による、エキサイティングなパネル討論が繰り広げられた。優秀作品の詳細は、追って学会 web site で公開される。なお、12日(日)には、一般セッションの他、AIS (Association for Information Systems; 経営情報分野でもっとも重要な国際学会)の日本支部設立総会や、2004年度論文賞受賞者による記念講演等がある。当日申し込みも可能で、非学会員も参加できる。
2005.06.12
本日、経営情報学会の通常総会が開催され、会長として報告を行いました。以下はその内容です。なお、本日と明日、早稲田大学理工学部キャンパスで、経営情報学会2005年度春季全国研究発表大会が開かれています。--------------------任期の折り返し点に当たり、昨年度の総括と今年度の展望について、簡単に触れたいと思います。昨年度は、事務委託先であった旧日本学会事務センターの破産に伴い、本学会は約400万円超の臨時欠損を出し、学会活動の見直しや新たな委託先の選定・移行などかつてない危機に直面しましたが、昨年度理事の献身的な努力により、どうにか短期的な問題は乗り切ることが出来ました。また、11月の臨時総会では、会員の皆さんの暖かい支援で、臨時予算を承認戴き、年度を終えることが出来ました。しかし、予算をご覧戴くと、本学会が赤字体質であることがお分かりいただけると思います。抜本的な改革を打っていかないと、長期的な存続が危ぶまれる状態であり、今年度は幾つかの改革を行っていきます。昨年度の総会では、「一般にアカデミックな学会の主要な存在意義は、論文誌の発行と研究発表大会の開催で、その他の活動は全てサポート的なものと考えられます。」と述べ、「社会との連携強化」・「関連学会との連携」・「学会運営への経営情報活用」の3点をサポート活動の重点ポイントとして上げました。(1)社会との連携強化ヴィジョンワーキンググループを組織し、社会に役立つ学会のあり方について有識者にヒアリングをするとともに、学会員以外も対象としてエッセイコンテストを実施して、学会の社会的認知の向上に努めました。また、「日経情報ストラテジー誌」・「日経コンピュータ誌」と連携して、学会のメディア露出の機会を増加するよう図っています。さらに今年度は、「情報投資と経営成果」特設研究部会を設置して、産学協同で経営情報学の有効性を示すことを目指しています。(2)関連学会との連携昨年度は経営情報分野でもっとも重要な国際学会で ICIS (International Conference on Information Systems) の主催団体でもある AIS (Association for Information Systems) の日本支部(JPAIS)設立を支援し、また本学会が AIS の Affiliated Organization に認定されるように活動しました。この週末にかけて、AIS 理事会では電子投票が行われており、当学会が Affiliated Organization として認められる公算はかなり高いと担当理事より聞いています。これにより、当学会に対応する AIS 傘下の各国学会との連携が強まります。また国内では、昨年来の話し合いの結果、来年度春季研究発表大会を OA 学会と共同で開催することが、両学会の理事会で決定されています。(3)学会運営への経営情報活用ディジタル組織化ワーキンググループを組織し、学会ディジタル化のロウドマップを作成しました。総会で予算が承認されれば、会員サービス向上のための事務 web 化などが始まり、経営情報活用の事例として世に誇れるようなモデル組織となることを目指します。以上の活動をより効率的・迅速に行うために、昨年度来理事会のスリム化・集約化を進めています。まず、昨年度初めには13あった常設委員会のうち定款に定めのない表彰委員会・学会社会化委員会・広告委員会を廃止し、その機能は既存の委員会に吸収することにしました。さらに、今年度から10の常設委員会を5つのグループに集約して、意思決定の迅速化を図ります。新しいグループは、「編集委員会」・「研究・大会委員会(研究・大会・国際)」・「広報委員会」・「財務委員会」・「拡大総務委員会(総務・組織)」です。この理事会集約化に伴い、理事の数を減らしています。今年度も引き続き、理事会のスリム化を図ります。理事会は一丸となってこれらの改革を進めていますが、最初にも述べました学会の長期的存続のためには、学会の魅力を増すことがまず第一です。これには会員の皆さんの積極的な関与が不可欠ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2005.06.11
(3)企業レベル日本には、情報投資の効果に関する企業レベルの実証研究は多分未だないが、Brynjolfsson は米国企業について実証研究を行っている。その結果、以下の結果が得られた。・情報技術投資と生産性との間には正の相関関係があるものの、分散がかなり大きい。・ERP 導入などの大規模情報技術プロジェクトについてみると、ハード・ソフトのコストは全体の2割程度で、残りは業務プロセスの再構築(組織資本投資)やユーザの教育費(人的資本投資)に費やされている。しかし、これらの投資は会計上資産扱い(貸借対照表に現れる)ではなく費用扱い(損益計算書に現れる)とされているため、実態がよく把握されていない。・さまざまな情報技術プロジェクトについて調査した結果、コンピュータのハードウェア投資1に対して、インタンジブルアセットへの投資が9の割合になっていることが分かった。ここで、インタンジブルアセットとは、業務プロセス・社員教育・取引先との関係・顧客満足・社員の忠誠心・企業に対する評価などであるとされている。すなわち、コンピュータは投資総額のごく一部にすぎず、インタンジブルアセットが実質的に生産性の向上を支えている。・組織投資に関するデイタは存在しなかったので、独自に集めた結果、情報技術の活用度が高い企業は、独特の組織特性を持っていた。このような組織を「ディジタル組織」と呼ぶと、「ディジタル組織」の原則を採用した企業は、生産性だけでなく時価総額も高い傾向があり、情報技術とディジタル組織は効果に関して補完的であった。・情報技術投資・ディジタル組織の程度・時価総額の関係をみると、平均以上の情報技術投資とディジタル組織化を行っている企業においては、この2変数と時価総額との間に正の相関関係がある。また、時価総額が最も低いのは、情報技術投資とディジタル組織化の程度が共に中位の中途半端な企業であった。以上の実証研究の現状をまとめると、先進諸国の経済・産業レベルでは、情報技術投資の資本深化による生産性向上は見られるが、全要素生産性の寄与については疑わしい。一方、米国の企業レベルでは、情報技術投資と同時に十分な組織投資を行ったときに経営成果が向上する(我が国においては、企業レベルの実証研究は未だ存在しない)。
2005.06.10
(2)マクロ経済・産業レベルマクロ経済・産業レベルでは、先進各国で情報投資の効果についての実証研究の蓄積がある。情報投資と生産性向上との関係をマクロに捉えるときには、二種類の効果が考えられる。まず第1に、情報技術資本による労働の代替または古い資本の代替がもたらす生産性向上で、これは「資本深化」の寄与と呼ばれる。第二に、情報技術資本が充実することにより、製品仕様・仕事のプロセス・ビジネスパートナーや顧客との関係等が変化することによりもたらされる生産性向上で、「全要素生産性(Total Factor Productivity; TFP)」の向上による寄与と呼ばれる。後者は、分析の慣習上、しばしば「技術進歩」と同一に扱われる。米国では、1990年代には旺盛な情報技術投資にもかかわらず労働生産性の向上が公式統計において確認できなかったという、所謂「生産性パラドックス」問題があったが、これは1999年のGDP統計の改訂により解消された。このGDP統計の改訂は二つの重要な変更があり、第一に従来は中間投入としてGDPに含まれなかった企業のソフトウェア支出を、設備投資としてGDPに計上することになった。第二に情報技術財の価格性能比の向上を反映するヘドニック指数という価格指数算定方式を情報技術財、特にハードウェアに適用することになった。この新しい統計に基づき、商務省は「Digital Economy 2000」において情報技術投資の経済効果について公式見解を出したと見ることができる。すなわち、非農業部門における労働生産性の伸び率は、1972-95年は年率1.4%だったものが、1995-99年は同2.8%となったというのである。さらに「Digital Economy 2002」は、2001年の景気後退期にも労働生産性は1.9%の伸び率で、米国経済全体が情報技術投資のメリットを享受していると述べている。しかし、Bailyの計測方法が異なる3研究の比較や Jorgenson、Stirho による調査では、1990年代後半においては、情報技術投資による生産性向上は見られるものの、これは主として情報技術財価格の低下による代替効果(資本深化)によるもので、「ニューエコノミー」と喧伝されたような情報技術投資の外部性効果(全要素生産性の向上)は実証されていないするものが多数である。西村・嶺滝(2004)によると、日本の場合は、1995-2000年に情報技術生産産業の労働生産性上昇率(12.1%)は高まったが、情報技術利用産業・非情報技術産業における労働生産性上昇率(ともに0.1%)は、欧米各国の数値を大きく下回った。さらに、日本では、情報技術 ハードウェア製造業を除いて、労働生産性向上にたいする情報技術投資の貢献が見られない。1981-1998年の技術進歩率を見ると、多くの産業で1990年代に技術進歩率はゼロまたは負になっている。さらに米国と比較すると、情報技術利用産業である運輸・通信・サービス業の技術進歩率の低さが目立つ。また卸小売の情報技術資本比率の低さとその技術進歩率の低さも著しい。情報技術資本と技術進歩との相関関係は、電気機械産業のみでみられ、それ以外の製造業や情報技術利用産業においては有意ではない。
2005.06.08
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