Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2005.10.08
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カテゴリ: アート
ユトリロ展だけではちょっと物足りなく感じ、急遽、

「巨匠 デ・キリコ展~異次元の森へ迷い込む時」
も見に行ってみた。

私は残念ながらオーソドックスな人間で
ユトリロもキリコも初期の評価の高い時期の作品が好きで
独自に良さを見出す目がないのかな~とちょっぴり悲しく思ったりして。

キリコも初期の広場のシリーズが好きなので
今回、行ってみたら中期から後期の作品が中心だということで
しかも最初からパネルには難しげな解説が長々と書いてあり


もう少しわかりやすく説明してくれればいいのに~、
あのパネルを読んでどれほどの人が理解できただろうか?
疑問である。
ドイツ哲学から彼の絵は始まったというから、仕方ないのだろうか・・・


初期の形而上絵画に立ち返った、晩年の新形而上絵画に
興味深い作品がいくつかあった。
「夏の夢~アリアドネとイタリア広場」や「噴水のあるイタリア広場
」など
やはりイタリア広場のシリーズ。

強烈な日差し、キリコ独特のマスタード・イエローの地面に、長い黒い影、
ライムのような深い緑から黄色へとグラデーションがかる空、

風のそよとも吹いている気配もないのに、たなびいている小さな旗。

不気味とも言える静けさと、
不条理な雰囲気をかもしだすアイテムの組み合わせが
居心地悪そうな情景を形作っているにもかかわらず、
見る人はなぜかその空間に郷愁を感じ、


その静けさと強烈な日差しを全身に感じてみたい。
緑の空を振り仰いでみたい。
そんな不可解な欲求を起こさせる。


彼の目指した哲学や形而上絵画というのはよく理解できていないが、
形而上というと私は
観念的なもの、人間の頭の中で形成されるもの、と大まかにとらえている。

つまりそれまで西洋の美術が追いかけてきた、
自然や身の回りの物を正確に写し取ること、
人の姿やその内面を写し取ること、ではなく、
頭の中にある情景や思念を、思う通りの(思い入れのある)物や色に託して
表現すること、なんだろうなあと感じた。

だから決してありえない情景、どこでもない風景、だったりするけれど
ありえない風景に、人々が共感するのは、
多くの人の頭脳に、直接訴えかける力を持っている情景なんだろうな・・
具体的な思い出の場所、ではなく憧れる観念的情景。

私もその情景に魅了されてしまっているひとりだ。
人は案外、何もない空間に憧れるものだと実感したりする。



ジョルジョ・デ・キリコ「不安を与えるミューズたち」1974年版

同じような広場でも、ミューズシリーズになると
空間よりも、ミューズたちの不条理な姿のほうが主題になる。

ミューズといえば古代から、
芸術的霊感を与える若く美しい女性の姿に決まっているのに、
彼の描くミューズはまったくもって不可解な姿だ。

ではミューズとは何か、ミューズから霊感を得ようとする我々とは何か、と
考えさせられる。
美の概念さえ、わからなくなる。
どこかの星に住む宇宙人だったら、このミューズこそ
美の化身に見えるかもしれないし。

それとも彼の傾倒したニーチェの「神は死んだ」という言葉にも共通して、
これまで美の霊感を与えてきたミューズ、
西洋の美の基準、美の観念もが「死んだ」と暗に示しているのかもしれない。
何かが暴かれている絵のような感じがしてならない。

しかしそれは過去の世界や価値観の崩壊、不安であるとともに
新しい価値の創生、自由の創生につながっていくのであろう。


卵型の頭をもち、三角定規や金属の組み合わせで体をつくられている
人物像などの絵も数多くあったが、
あれらはやはりちょっと苦手。
でもキリコの活躍した20世紀は「個」の自由がどんどん進められたのに
あえて無個性な人物像を打ちたてたのは、理由があるんだろうな・・・

物質と精神の二元論、とかなんとかキャプションもあったが、
肉体の物質的な面を強調したかったのだろうか?


また、室内やものが主題の作品も多かった。
「ニューヨークの形而上的光景」や
「ふさぎこんでいる太陽と形而上的室内」などが興味深かった。

室内の絵は、たいていがまるで芝居の書割のような雰囲気だ。
ちょっと滑稽でもあり、何かが演ぜられているような感じ。
部屋に池があってボートに乗っていたり、
部屋でローマ人だかギリシャ人だか闘っていたり、
なんともふざけている。不条理劇みたいだ。

実際、彼は舞台美術を多く手がけていたというから、
確信犯とも言える。


太陽の絵は図版などで見たことがあり、あまり好きではなかったが
今回「ふさぎこんでいる太陽と形而上的室内」を見て、好きになった。
外ではさんさんと輝いている太陽が、
室内では真っ黒でへた~っとしていて、ユーモアがあってかわいい。

また、鉛筆でのデッサンなどもたくさん展示されていて興味深かった。
「ケンタウロスの家族」などふざけていて、くすっと笑ってしまう。
「天使」や「不死」などのデッサンを見ると、
人が飛んでいて、ああ、彼も自由を求め続けたんだろうな・・・と感じた。


東洋と西洋、古典的手法とシュールレアリズム、身体と精神、神話と現代、
おそらくそうした2つのものの間を行ったり来たり
また融合したりして、彼独特の世界を生み出した。

パネルでは東洋の影響のことが強調されていたが、
あの強い日差しの表現はどう見てもイタリアやギリシャのものだ。
また身体と精神の二元論も西洋のもの。
東洋の影響があるとしたら、説明にもあったが、「空間」を描いた、ということ。

確かに・・日本画などは空間をどう描くか、に腐心する。
日本人だからこそ、あのイタリア広場のがらんとした空間の絵を
親しみやすく感じるのかもしれない。


最初心配していたより、ずっと楽しめ、離れがたい気持ちで
閉館ぎりぎりまでうろうろしていた。
イタリア広場の絵葉書を1枚買い求めた。
しばらくはこれを眺めて、あの不思議な空間に遊びに行こう。





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Last updated  2017.02.15 23:48:58
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mashenka @ Re[1]:生誕120年 棟方志功展(11/12) 一村雨さんへ お久しぶりです! 私もうな…
一村雨 @ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
mashenka @ Re[1]:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 一村雨さんへ 素晴らしい障壁画でしたね…
一村雨 @ Re:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 安部龍太郎の「等伯」を読んで、この親子…
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