Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2006.03.05
XML
カテゴリ: アート

東京都美術館へ「ニューヨーク・バーク・コレクション」を見に行った。

“日本の美 三千年の輝き"とサブタイトルにあるように
素晴らしい作品がいっぱい!
でもあまりの混雑で、残念ながらじっくり見る環境ではなかったな・・


鳥文斎栄之「雪・月・花図」、
右に雪の風景、左に月の風景、中央に横向きに立つ女と桜の図の
3幅の掛け軸からなっていて、派手ではないがとても心ひかれた。

女は、桜の木の下にいるのに花を愛でているのではなく、
どこか遠く視線をなげ、想いをはせていている。
どことなく風格がある女。ゆったりした着物が風になびいている。

ごった返す人がひけてから改めて近くで見た。
キャプションを読むとまた新たに興味がわく。
女は花魁(おいらん)で、右の雪の風景は男が遊郭へ向かう舟の乗り場、
左の月の風景は男が花魁に気に入られるかどうか占う松の木、で
それを3幅の掛け軸で表現した洒脱な絵だという。
客と花魁の会う前と会ったあとの流れが伺える。

花魁かあ・・確かに花魁特有の大きなかんざしをしているし、
腹部がふくよか、と思ってたけど帯が前でしめてあるからだった。
なるほど~。

でも中央の花魁の遠い視線、花の下で花を見ていない視線は、
心に秘めた男のことを想っているように感じられ、
それでも日々浮世の流れに身を任せている自分を
卑下も憐みもせず淡々と生きているように見える。
味わい深い作品だ。


酒井鶯蒲「六玉川絵巻」は、小品ながら好ましく印象深い。
(この画家はそんなに有名ではないけれど、酒井抱一のお弟子さんらしい)
横長の小さな巻物で、“玉川”と名のつく6つの川の
それぞれの風景を瑞々しく描いた6枚一組の作品。

川の澄んだ濃い水色が、あまりにもさやかで豊かで美しい。
遠く雲はたなびき、山はかすみ、花はちらちらと愛らしく咲き、
そんな風景の中で人々は
ゆったりと憩ったり、洗濯をしたり、馬で進んだりしている。

それぞれの発色がとても鮮やかで、目に新鮮な感じ。
山や土手の部分のにじみやぼかしもやわらかく効果的で、
日本の水彩画の原点かと思った。絵本のような優しさ。

この絵を見ていると、日本は“水の国”なんだなあ、と思い至る。
日本の山水の美しさにあらためて喜ばしい気持ちがわいてきたが、
欧米の人たちの目には、どんなふうに映るんだろう。


酒井抱一「桜花図屏風」には、驚嘆!
金箔のバックに咲き誇る桜の木を描いた大きな屏風だが、
特筆すべきは幹の表現、これがすごいと思った。
黒と緑のにじみ、目をみはるばかりだった。
苔の表現なのか点線で囲われた物体が面白い造形をかもし出している。

そして桜の花よりも目立つのが赤く彩色された葉々、
なんだか通常主役のはずの桜の淡い色は、葉と幹の迫力に押されてる印象。
全体には装飾的でいかにも琳派、といった感じだが、
花びらや葉の表現は近くで見るときれいな写実がなされ、
繊細で目においしい。


伊藤若冲「月下白梅図」は、淡い青鼠の品のいい背景に、
節操のないほど画面を覆う白梅のつぶが
すさまじい執着を感じさせる。
抑えてあるけれど、その執拗さ、狂おしい燃焼・・
彼の心のありかを想い描く。

「双鶴図」のほうは、すっきりシャープな鶴の図。
まるっこい胴体に、唐突に突き出したあまりに直線的な脚の表現。
脚は非常に微細に描き込まれているのに、
胴体は大事なものをなるべく触れないように壊さないように
まるく両手でそっと包んでいるかのように白くほとんど塗り残し、
最小限しか描き込まれていない。

しかしその先端の黒い羽先からすーっと水がしたたるかのような
繊細な羽の描き方をしていて、たおやか。


今回のちらしになっていた曾我蕭白の「橋渡図」は
数百もの獅子たちが険しい滝や岩をのぼっていく図で、
生き生きしていて非常に面白いのだが、
あまりの人気のために、まったく前が開かなくて
ほとんど近くでは見ることができなくて残念。


その他、興味深い作品がたくさんあったな~。
日本の美術はほんとに奥深くて楽しい。
まだまだ知らないことがいっぱい、これからゆっくり見ていこう。

帰りに上野の公園を歩きながら、ソメイヨシノの幹をじーっと見た。
「桜花図屏風」の幹の表現があまりに強烈だったので、実感してみたかったのだ。
確かに桜の木の幹には緑色が混じってる。
桜の木はいつも、花しか見ていない。
でも幹の中にも、生命と本源的な美しさが宿っているのだ。
そのことを改めて教えられた。

すみません、この展覧会はもう終わってますね。
東京都美術館「ニューヨーク・バーク・コレクション展」
2006年1月24日~3月5日まで。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.03.24 00:36:28
コメント(2) | コメントを書く
[アート] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:東京都美術館「ニューヨーク・バーク・コレクション」(03/05)  
一村雨  さん
「雪・月・花図」って、二階に上がる階段前のひっこみにあった絵でしたっけ。
酒井抱一の絵は、新橋と上野がごっちゃになって、記憶があいまいになっています~
曾我蕭白の石橋図、残念でしたね。
私は、若冲の月下白梅図の虜になっています。
背中が痒くなってきそうですが(笑)
(2006.03.24 19:06:07)

Re[1]:東京都美術館「ニューヨーク・バーク・コレクション」(03/05)  
mashenka  さん
一村雨さん、こんにちは。

>「雪・月・花図」って、二階に上がる階段前のひっこみにあった絵でしたっけ。

2階の、広重の風景画の隣にあった作品です。
たくさんあったから、わかんなくなりますよね。

>私は、若冲の月下白梅図の虜になっています。
>背中が痒くなってきそうですが(笑)

若冲、1月の国立博物館に続いてお目にかかるのは2回目でした。
あの執拗さはやはり独特だな~と思いました。
今度は彩色の鮮やかな作品群を見たいです。
(2006.03.25 11:54:04)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

mashenka

mashenka

Favorite Blog

4月の読書 一村雨さん

ブログは移動しまし… コヨーテ3377さん
happy-happy happy-tamachanさん
take it easy!! 【masashi】さん
松峰な世界 松峰さん
ロルファーサイトウ… M Saitoさん
reichel!の美味しい… reichel!さん
地方暮らしが変える1… かじけいこさん
お気楽! 幸せの種… れおなるど21さん
クサノタヨリ すもも5970さん

Comments

mashenka @ Re[1]:生誕120年 棟方志功展(11/12) 一村雨さんへ お久しぶりです! 私もうな…
一村雨 @ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
mashenka @ Re[1]:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 一村雨さんへ 素晴らしい障壁画でしたね…
一村雨 @ Re:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 安部龍太郎の「等伯」を読んで、この親子…
mashenka @ Re[1]:横山操「ウォール街」(10/31) 一村雨さんへ 横山操の手にかかるとNYの…

Freepage List

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: