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よみ人知らずきのふこそ早苗とりしか いつのまに稲葉そよぎて秋風の吹く古今和歌集 172ついきのう早苗を取って植えたのだったが稲葉をそよがせて秋風が吹いているのはいつからだろう。註「こそ・・・しか」は強調の係り結び。「しか」は過去の助動詞「き」の已然形(すでに終った動作を示す活用形)で、疑問形ではない。逆に下(しも)の句は「か」や「や」が省略されているが、「いつ」があるので疑問の意味。 田ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン *画像クリックで拡大。
2014.09.07
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よみ人知らず秋の田の穂の上を照らす稲妻の 光の間まにも我や忘るる古今和歌集 548秋の田の稲穂の上を照らす稲妻の光の間の一瞬にもわたしはあなたを忘れるだろうか(・・・いや、忘れはしない)。註稲妻:主に雷鳴を伴わない遠雷を言った。宵闇の雲の中で明滅する様子は、実に神秘的で美しい。語源は「稲の偶(つま、配偶)」、この場合は「夫」。古くは、稲光が稲を実らせ、それが多い年は豊作であると信じられていた。これはあながち全く非科学的ではなく、落雷によって大気中の窒素が田畑に固着されるため稲の実りがよくなるという説もあるが、やや眉唾な牽強付会か。栃木の夏から初秋の風物詩でもあり、県都である当地・宇都宮を別名「雷都(らいと)」と称する。・・・カッコいいでしょ? 雷 Lightning in Tokyo cityウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。
2014.09.04
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凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)夏と秋とゆきかふ空のかよひぢは かたへすずしき風や吹くらむ古今和歌集 168行く夏と来る秋が行き交う空の通い路には片側に秋の涼しい風が吹いているだろうか。註かたへ:片辺。片方、片側。 秋 鰯雲(煙樹ヶ浜)ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。
2014.09.04
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よみ人知らずわが背子せこが衣ころものすそを吹き返し うらめづらしき秋のはつかぜ古今和歌集 171マイ・ダーリンの衣の裾に吹いて裏返しはっとするようにすてきな秋の初風。註背子せこ:古代の女性が、夫・恋人・父親・親戚など、主に年上の親しい男性に言った語。妹子(いもこ)の対語。が:格助詞。現代語の「の」に当たる。うら:心。心の中。ここでは「裏」と掛けている。ザブトン3枚。めづらし:動詞「愛(め)づ」から派生した形容詞。目新しく新鮮で、愛すべきものに言う。現代語「珍しい」とは、ニュアンスがやや異なる。 聖徳太子立像ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。
2014.09.02
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藤原敏行(ふじわらのとしゆき)秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる古今和歌集 169秋が来たと目にははっきり見えないけれども風の音にはっと気づかされたなあ。註古今調特有の理屈っぽさもやや感じられるが、繊細な感覚と端正な言い回しで秋の訪れを詠った秀歌。さやか:亮(さや)か。分明。はっきり、くっきりしていること。「爽やか」とは語源的に無関係。ね:打ち消し・否定の助動詞「ず」の已然形。おどろく:気づく。目が覚める。はっとする。現代語「驚く」の語源だが、ニュアンスは異なる。れ:自発の助動詞「る」の連用形。自然とそうなる意味。「ぞ・・・ぬる」は強意・整調の係り結び。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。「音」と「おどろく」が掛けてあるのかも知れない(当時、濁点表記はなかった)。 秋 リトアニア 月見饂飩ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。
2014.09.01
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凡河内躬恒(おおしこうしのみつね)かれはてむ後のちをば知らで 夏草の深くも人の思ほゆるかな古今和歌集 686枯れ果ててしまうのちのことは知るよしもなく夏草の生い茂るように深く深くもあの人への思いが募るばかりだなあ。註「かれ」は、「枯る」と「離(か)る」(離れる)を掛けている。 ススキ 箱根仙石原ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン
2014.08.24
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紀貫之(きのつらゆき)秋立つ日、うへのをのこども、賀茂の河原に川逍遙しける供にまかりてよめる川風の涼しくもあるか うち寄する波とともにや秋は立つらむ古今和歌集 170立秋の日、殿上人の方々が京・鴨川の河原に散策した折、お供を仰せつかって詠んだ歌。川風が涼しくもあるなあ。その風で打ち寄せる波が立つのと一緒に秋は立つのだろうか。註川逍遙:「かは(かわ)あそび」または「そぞろありき」と読むか。 京都・鴨川ウィキペディア・コモンズ パブリック・ドメイン *画像クリックで拡大。
2014.08.16
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よみ人知らずわが君は千代に八千代に さざれ石の巌いはほとなりて苔の生むすまで古今和歌集 343わが君は千代に八千代に悠久に細かい石が大岩となって緑の苔が生えるまで。君が代は千代に八千代に さざれ石の巌いはほとなりて苔の生むすまで和漢朗詠集 775 京都・西芳寺(苔寺) ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。
2014.08.15
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在原業平(ありわらのなりひら)起きもせず寝もせで夜を明かしては 春のものとてながめくらしつ古今和歌集 616起きるでもなく寝るでもなく夜を明かしては春の風物である長雨のように春の気分であなたを思って過ごしたのです。註ながめ:「眺め」と春の「長雨」(当時は音便で「ながめ」と読んだ)の掛詞(かけことば)。「眺め」は、ぼんやりと物思いに耽ること(和歌ではほとんど恋愛感情をいう)。
2014.05.09
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在原業平(ありわらのなりひら)月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして古今和歌集 747月は昔の月ではないのか。春は昔の春ではないのか。この身ひとつは元のままの身で。(・・・親しかったあなたはシンデレラになって風と共に雲の上に去ってしまった。)註調べ(言葉の音楽性)が美しい春の名歌。上三句の圧縮された言い回しがやや難しいが、「や」が入っているので疑問形。25歳で入内(じゅだい)し、清和天皇の女御(二条の后)に出世した昔なじみの貴婦人・藤原高子(ふじわらのたかいこ、後に陽成天皇の母、皇太后)を思って、春の月を見ながらしみじみ・うるうるしている。日本史を飾るモテモテ・レジェンド男の作者面目躍如の一首。
2014.05.05
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小野小町(おののこまち)花の色はうつりにけりな いたづらにわが身世にふるながめせし間に古今和歌集 113 / 小倉百人一首 9麗しかった桜の花の色は衰えてしまったのだなあ。虚しく徒(いたず)らにわが身が世の中に古びてゆく。世に降る長雨を眺めてもの思いに沈んでいた間に。註うつる:うつろう。衰える。ふる:古語動詞「古(ふ)る」(経る、古びる、老いる)と(長雨が)「降る」が掛けてある。ながめ:「ながむ(眺める、物思いをする)」と、名詞「長雨(当時は『ながめ』と読んだ)」の掛詞(かけことば)。* 栃木・宇都宮、八幡山公園にて筆者撮影。 画像クリックで拡大ポップアップ。
2014.04.04
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紀貫之(きのつらゆき)やどりして春の山べに寝たる夜は 夢のうちにも花ぞ散りける古今和歌集 117(寺院に)泊って春の山べに寝た夜は夢の中にも桜吹雪が散っていたなあ。
2014.04.03
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紀貫之(きのつらゆき)春霞なに隠すらむ桜花さくらばな 散る間をだにも見るべきものを古今和歌集 79春霞は何を隠しているのだろう。桜の花は散っている間さえも見るべきものなのに。
2014.04.03
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紀貫之(きのつらゆき)一目見し君もや来ると桜花 けふは待ちみて散らば散らなむ古今和歌集 78花をひと目見て帰ったあなたがまた来てくれるかなと桜の花は今日は待ってみて(もし来てくれないと)散るなら散ってしまうよ。(・・・だから、散らないうちにまた来てくださいね。)註やや屁理屈じみているような生真面目な諧謔・ユーモアが、いかにも作者らしいと思われる佳品。
2014.04.03
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伊勢(いせ)見る人もなき山里のさくら花 ほかの散りなむのちぞ咲かまし古今和歌集 68見る人もいない寂しい山里の桜の花はほかの花が散ってしまった後に咲いたらいいのになあ。(・・・そうすれば落ち着いてゆっくり見られるのにねえ。)
2014.04.02
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大伴黒主(おおとものくろぬし)春雨のふるは涙か さくら花ちるを惜しまぬ人しなければ古今和歌集 88春雨が降るのは(人々の)涙か。桜の花が散るのを惜しまない人はいないのだから。註ふるは(降るは):降るのは。活用語連体形の準体言用法。「こと」「もの」「ところ」(また、それを略した「の」)などの体言が省略されている。古典文学には頻出。この用法は、現代語でもしばしば韻文的・懐古的(レトロスペクティヴ)な効果などを狙って「貼るはサロンパス」「思い込んだら試練の道を行くが男のど根性」などと用いられる。(人)し:強調・整調の助辞(副助詞)。特定の意味はない。和歌で頻用される。
2014.04.02
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紀友則(きのとものり)ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ古今和歌集 84 / 小倉百人一首 33大空の光ものどかな春の日になぜ落ち着きもなく桜の花は散るのだろう。註ひさかたの:「天(あめ・あま)、空」にかかる枕詞(まくらことば)で、転じて「日、月、雨、雲、光、星、夜」など天象に関わる語に冠し、さらに「都、鏡」などにかかる。語源は「久堅」または「久方」とされる。下二句は、「など」(なぜ、どうして)、「などてか知らねど」(なぜかは知らないが)などの疑問語が省略された形と解され、これを補って読む。しづ心:穏やかな心。静謐な、落ち着いた心。* 画像クリックで拡大ポップアップ。
2014.04.01
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紀貫之(きのつらゆき)桜花さくらばな散りぬる風のなごりには 水なき空に波ぞ立ちける古今和歌集 89桜の花が散ってしまう風の余波には水のない空に波が立っているのだなあ。
2014.04.01
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在原業平(ありわらのなりひら)桜花さくらばな散り交かひ曇れ 老いらくの来こむといふなる道まがふがに古今和歌集 349桜花よ、空も曇るまで散り乱れよ。老いの神がやって来るという道が紛れてしまうほどに。
2014.04.01
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在原業平(ありわらのなりひら)世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし古今和歌集 53世の中にまったく桜がなかったら(今日は咲いたか、はたまた散ってしまったかとやきもきすることもなく)春の心はのどかだろうなあ。註たえて:(否定語を従えて)「まったく、全然、すっかり(ない)」を表わす副詞。語源は動詞「絶ゆ」だが、独立した別語と見なされる。この造語法は古語動詞「敢あふ」と副詞「あへて(あえて)」の関係と同様。せば・・・まし:「せば」は過去の助動詞「き」の未然形「せ」に接続助詞「ば」がついたもので、「~でなかったとすれば」の仮定条件となる。同様の文脈は、現代語でも(英文法でいえば)過去形になる。反実仮想の助動詞「まし」と合わせて、上記のような構文となる。のどけからまし:文法的には、形容詞「のどけし」(のどかな様子だ)の未然形の一つ「のどけから」に、「まし」が接続したもの。語源的には「のどけく・あら・まし」の約まったものである。
2014.03.31
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紀貫之(きのつらゆき)梅の花匂ふ春べはくらぶ山 闇に越ゆれどしるくぞありける古今和歌集 39梅の花が匂う春辺はくらぶ山を暗い闇に越えたけれどもきわだっていたなあ。註くらぶ山:未詳だが、「比ぶ」で、比叡山のことか(筆者説)。「暗し」と掛けている。しるし(著し):はっきりしている。際立っている。名詞「白」、動詞「知る」、「しるす(記、標)」、形容詞「白し」「いちじるし(著し)」などと同源といわれる。 パブリック・ドメイン重要文化財 尾形光琳 竹梅図屏風
2014.03.22
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紀貫之(きのつらゆき)暮ると明くと目離かれぬものを 梅の花いつの人まにうつろひぬらむ古今和歌集 45明けても暮れても目を離さないでいたものを梅の花はちょっと目を離した隙にいつの間に散ってしまったのだろうか。註離かる:離れる、離す。うつろふ:枯れる。萎しおれる。萎なえる。散る。
2014.03.22
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よみ人知らず梅が香を袖にうつしてとどめてば 春は過ぐとも形見ならまし古今和歌集 46梅の香りを袖に移して留められたら春は過ぎても思うよすがになるだろうなあ。註てば:(もし)~することができたなら。完了の助動詞「つ」の未然形に「ば」がついたもの。形見:現代語の「形見」よりかなり意味は広く、銘記・記憶のよすがとなるもの全般についていう。
2014.03.22
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紀友則(きのとものり)君ならでたれにか見せむ梅の花 色をも香かをも知る人ぞ知る古今和歌集 38あなたでなくていったい誰に見せようかこの梅の花の彩りも香りも知っている人は知っている。(それはもちろん、あなたです。)註結句「知る人ぞ知る」は、現代でも使われる成句となった。ならで:~ではなくて。
2014.03.21
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紀友則(きのとものり)花の香かを風のたよりにたぐへてぞ 鶯うぐひすさそふしるべには遣やる古今和歌集 13梅の花の香りを風の便りの供としてウグイスを誘う案内役には遣つかわすよ。註現代でも普通に使われる「風の便り」という言葉の典拠の一つ。たぐふ:伴わせる。供をさせる。しるべ:案内。道標(みちしるべ)。○ ちなみに、「風のたより」つながりで、当地・栃木の人気名店レストラン「風だより」はこちらです
2014.03.21
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伊勢(いせ)年をへて花の鏡となる水は 散りかかるをや曇るといふらむ古今和歌集 44歳月を経て花の鏡にふさわしくなった池の水は(水面みなもに花びらが)散りかかることを(鏡が曇るのと同じくやはり)「曇る」というのでしょうか。註前エントリーとこの歌の「花」は、古今集の前後の配列から見て梅のこと。
2014.03.21
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伊勢(いせ)春ごとに流るる川を花と見て 折られぬ水に袖やぬれなむ古今和歌集 43春が来るたびに流れる川に映る梅を本物の花と見て(手折ろうとしては)折れない水で袖が濡れてしまうでしょうか。註才女・伊勢らしい、一種の上品なコケットリー(媚態、可愛らしさ)を感じさせる綺想の歌。「水」「袖が濡れる」は「涙」「泣く」の縁語だが、この歌の場合はあまり関係ないかも知れない。
2014.03.21
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よみ人知らず折りつれば袖こそ匂へ 梅の花ありとやここに鶯の鳴く古今和歌集 32花を折ったので私の袖は移り香がしているのだが梅の花があると(勘違いして)ここにウグイスが来て鳴かないかな。(・・・鳴かないだろうなあ。)註古今和歌集の「よみ人知らず」の歌の多くは、当時のいわば流行歌・俗謡のようなものを編者・紀貫之らが採録したものという説が有力。この歌も素朴で分かりやすい戯咲(ぎしょう)を含み、その好例と思われる。歌の調べとしては、意外にも(?)なかなか流麗典雅。下2句は「や」があるので、反語的疑問形。
2014.03.21
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凡河内躬恒(おおしこうしのみつね)春の夜の闇はあやなし梅の花 色こそ見えね香かやは隠るる古今和歌集 41春の夜の闇のすることは筋道が通っていない。梅の花の色こそ見えないが、香りは隠れているのか(・・・いや、全然隠れていないね)。註妙な理屈を捏ねている感じが面白い一首。あやなし:文無し。(整然とした文様がないという原義から)筋道立っていない。一貫性がない。わけが分からない。
2014.03.20
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凡河内躬恒(おおしこうしのみつね)月夜にはそれとも見えず梅の花 香かをたづねてぞ知るべかりける古今和歌集 40月夜の淡い光ではそれであるともよく見えない梅の花は香りを探して知るべきなんだろうなあ。
2014.03.20
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王仁(わに)難波津なにはづに咲くや木この花 ふゆごもり今は春べと咲くや木の花古今和歌集 仮名序難波の港に咲くよ 梅の木の花が。長かった冬籠りが終わって今は春だと咲いているよ 梅の木の花が。註難波津なにはづ:大阪湾に面した古代の港。現・大阪市中央区付近。木こ:上代では名詞も活用(変化)した例。「木(き)、くだもの(木のもの)、木(こ)の葉」など。ふゆごもり:「春」に掛かる枕詞(まくらことば)。普通は枕詞を訳さないことが多いが、ケース・バイ・ケースと思う。○ この歌の歌碑(大阪市生野区) けん家持さんのブログより
2014.03.20
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よみ人知らず散りぬとも香かをだに残せ梅の花 恋しきときの思ひ出にせむ古今和歌集 48散ってしまっても香りだけは残していってくれ梅の花よ恋しくてたまらない時のよすがにするから。
2014.03.19
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紀貫之(きのつらゆき)人はいさ心も知らず ふるさとは花ぞ昔の香かににほひける古今和歌集 42 / 小倉百人一首 35人は、さあ、心も分からないがあなたが住んでいるこの里は梅の花が昔のままの香りで照り映えているのだなあ。註いさ:否定のニュアンスを持つ古語感動詞または副詞。さあ。さてどうだろうか。「いざさらば」「いざ鎌倉」などの「いざ」とは別語だが、混同されて「いざ知らず」という語になって残った。ふるさと:この場合は、現代語でいう「故郷(古里、郷里)」ではなく、昔なじみの(女性が住んでいる)里。「(花)ぞ・・・(にほひ)ける」は強調の係り結び。『古今和歌集』編者による名歌。この「花」が梅であることは、作者自らが古今集の詞(ことば)書きで明示している。 パブリック・ドメイン国宝 尾形光琳 紅白梅図屏風 (画像クリックで拡大ポップアップ)
2014.03.18
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紀貫之(きのつらゆき)雪降れば冬ごもりせる草も木も 春に知られぬ花ぞ咲きける古今和歌集 323雪が降ると冬籠りしている草にも木にも春には見たこともない真っ白の花が咲くのだなあ。
2014.02.04
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歌川広重 月に雁 こんな夜が又も有あらうか月に雁凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)初雁はつかりのはつかに声をききしより なかぞらにのみものを思ふかな古今和歌集 481玉梓たまずさの恋文を運んでくるという初雁のように初めて貴女のお声を聞いてからというもの私はぼうっとして中空にものを思うばかりだなあ。註初雁はつかりのはつかに:「初雁」(その年初めて渡ってきた雁)が「はつかに」(初めて、かすかに、ちらりと)を導く序詞(じょことば)になっており、さらに「なかぞら(中空)」のイメージに掛かっている。
2013.11.30
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文屋康秀(ふんやのやすひで)吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ古今和歌集 249 / 小倉百人一首 22吹けばたちまち秋の草木が萎しおれてゆくのでなるほど山風を「荒し」というのだろう。註吹くからに:吹けばすなわち。吹くやいなや。吹くそばから。むべ:なるほど。動詞「うべなう(肯う、諾う)」(肯定する)の語幹と同語源。嵐:今でいう台風の可能性が高いと思われる。「嵐」と「荒し」の掛詞(かけことば)や、「山風」と「嵐」の文字の遊びになっており、ちょっととぼけた味のある歌。天下の美女・小野小町とも親交が深かった才人の軽妙洒脱にして人口に膾炙した佳品。
2013.10.15
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大江千里(おおえのちさと)月見れば千々ちぢにものこそかなしけれ わが身ひとつの秋にはあらねど古今和歌集 193 / 小倉百人一首 23あの名月を見ていると限りないもの思いが溢れてきて切ないなあ。私ひとりのために来た秋ではないけれども。註「こそ・・・けれ」は、強調・整調の係り結び。
2013.09.19
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小野小町(おののこまち)わびぬれば身をうき草の根をたえて さそふ水あればいなむとぞ思ふ古今和歌集 938私はもう落魄してしまったので憂き浮草のように根が絶えたこの身を誘う水があれば流れ去ってしまおうと思うのです。註ひたすら侘しい、寂しい、哀しい歌であるが、作者らしく言い回しは技巧的で優婉である。わびぬれば:恋愛の喜び、哀しみ、苦しみを嘗め尽くし、気落ちしてしまったので。うき草:「憂き」(憂いがある)と「浮草」を掛けている。いなむと(往なむと):消え去ろうと。流れて行ってしまおうと。動詞「いぬ」は、現在も関西弁では命令形「いね」(消え去れ、立ち去れ)の形で用いるようだ。
2013.09.01
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紀貫之(きのつらゆき)秋立つ日、うへのをのこども、賀茂の河原に川逍遙しける供にまかりてよめる 川風の涼しくもあるか うち寄する波とともにや秋は立つらむ古今和歌集 170立秋の日、殿上人の方々が京・鴨川の河原に散策した折、お供を仰せつかって詠んだ歌。川風が涼しくもあるなあ。その風で打ち寄せる波が立つのと一緒に秋は立つのだろうか。註川逍遙:「かは(かわ)あそび」または「そぞろありき」と読むか。 ウィキペディア・コモンズ パブリック・ドメイン京都・鴨川 *画像クリックで拡大ポップアップ。
2013.08.19
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よみ人知らずほととぎす鳴くや五月さつきのあやめ草 あやめも知らぬ恋もするかな古今和歌集 469ほととぎすが鳴くさつきの菖蒲(あやめ)草。分別のない恋だってしてしまうよ。註草花の菖蒲と文目(あやめ、筋道)を掛けている。軽い調子から見て、おそらく当時の俗謡の類いであろう。あやめ:古語では、今いうアヤメではなく、ショウブをいった。あやめも知らぬ:五里霧中で見分けがつかない。むちゃくちゃな。「五月闇(さつきやみ)」と縁語。照明が少なかった時代、月のない梅雨どきの夜などは、まさに真っ暗闇だったと思われる。五月さつき:陰暦(旧暦)の五月で、現在の6月中旬~7月上旬に当たる。
2013.06.20
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よみ人知らずさつき待つ花橘はなたちばなの香かをかげば 昔の人の袖の香ぞする 古今和歌集 139さつきを待って咲く花橘の香りをかいでみれば昔馴染んだ人の袖に香っていた柑橘シトラスの匂いがするのだなあ。 註さつき(五月・皐月、旧暦):現行太陽暦のおおよそ6月中旬~7月上旬に当たる。語源は「早苗月」が約まったものとする説が有力。稲の苗を田植えする頃の意。橘:タチバナ(学名 Citrus tachibana)、ミカン科の常緑樹。袖の香:衣服に香こうを焚きしめたこと。今も「香道こうどう」として残る。
2013.06.18
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紀友則(きのとものり)五月雨さみだれにもの思ひをれば 時鳥ほととぎす夜深く鳴きていづちゆくらむ古今和歌集 153五月雨のそぼ降る夜物思いに耽っているとホトトギスがこんな夜更けに鳴いていったいどこへ行くのだろうか。註五月雨さみだれ:梅雨。
2013.06.16
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よみ人知らず わが君は千代に八千代に さざれ石の巌いはほとなりて苔の生むすまで古今和歌集 343わが君は千代に八千代に悠久に細かい石が大岩となって緑の苔が生えるまで。君が代は千代に八千代に さざれ石の巌いはほとなりて苔の生むすまで和漢朗詠集 775秋篠宮家 佳子内親王殿下の学習院大学ご入学と悠仁親王殿下のお茶の水女子大学附属小学校ご入学を心よりお慶び申し上げます。
2013.04.08
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大伴黒主(おおとものくろぬし)春雨のふるは涙か さくら花ちるを惜しまぬ人しなければ古今和歌集 88春雨が降るのは(人々の)涙か。桜の花が散るのを惜しまない人はいないのだから。註ふるは(降るは):降るのは。活用語連体形の準体言用法。「こと」「もの」「ところ」(また、それを略した「の」)などの体言が省略されている。古典文学には頻出。この用法は、現代語でもしばしば韻文的・懐古的(レトロスペクティヴ)な効果などを狙って「貼るはサロンパス」「思い込んだら試練の道を行くが男のど根性」などと用いられる。(人)し:強調・整調の助辞(副助詞)。特定の意味はない。和歌で頻用される。
2013.04.02
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紀貫之(きのつらゆき)やどりして春の山べに寝たる夜は 夢のうちにも花ぞ散りける古今和歌集 117(寺院に)泊って春の山べに寝た夜は夢の中にも桜の花が散っていたなあ。
2013.03.31
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紀貫之(きのつらゆき)春霞なに隠すらむ桜花さくらばな 散る間をだにも見るべきものを古今和歌集 79春霞は何を隠しているのだろう。桜の花は散っている間さえも見るべきものなのに。
2013.03.31
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紀貫之(きのつらゆき)一目見し君もや来ると桜花 けふは待ちみて散らば散らなむ古今和歌集 78花をひと目見て帰ったあなたがまた来てくれるかなと桜の花は今日は待ってみて(もし来てくれないと)散るなら散ってしまうよ。(・・・だから、散らないうちにまた来てくださいね。)註言葉遊びと、やや屁理屈じみた生真面目なユーモアが綯い交ぜになった、何とも紀貫之らしい一首。
2013.03.31
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在原業平(ありわらのなりひら)世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし古今和歌集 53世の中にまったく桜がなかったら(今日は咲いたか、はたまた散ってしまったかとやきもきすることもなく)春の心はのどかだろうなあ。註たえて:(否定語を従えて)「全く、全然、すっかり」の意味。語源は動詞「絶ゆ」だが、独立した別語の副詞と見なす。せば・・・まし:「せば」は過去の助動詞「き」の未然形「せ」に接続助詞「ば」がついたもので、「~でなかったとすれば」の仮定条件となる。同様の文脈は、現代語でも(英文法でいえば)過去形になる。反実仮想の助動詞「まし」と合わせて、上記のような構文となる。のどけからまし:文法的には、形容詞「のどけし」(のどかだ)の未然形の一つ「のどけから」に、「まし」が接続したもの。語源的には「のどけく・あら・まし」の約まったものである。
2013.03.24
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紀貫之(きのつらゆき)桜花さくらばな散りぬる風のなごりには 水なき空に波ぞ立ちける古今和歌集 89桜の花が散ってしまう風の余波には水のない空に波が立っているのだなあ。
2013.03.24
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紀友則(きのとものり)ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ古今和歌集 84 / 小倉百人一首 33大空の光のどかな春の日になぜ落ち着きもなく桜の花は散るのだろう。註ひさかたの:もと「天(あめ、あま)、空」にかかる枕詞(まくらことば)で、転じて「日、月、雨、雲、光、星、夜」など天象に関わる語に冠し、さらに「都、鏡」などにかかる。語源は「久堅」または「久方」とされる。下二句は、「など」(なぜ、どうして)、「などてか知らねど」(なぜかは知らないが)などの疑問語が省略された形と解され、これを補って読むのが定説。しづ心:穏やかな心。静謐な、落ち着いた心。
2013.03.24
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