料理研究家・宮成なみの【 夢叶 】~胸に希望を 台所から愛を~

料理研究家・宮成なみの【 夢叶 】~胸に希望を 台所から愛を~

2007年06月13日
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カテゴリ: なみちん入院記





困りました。


ノートと糊とペンを買ってきて、
私は固まってしまいました。


夢がね、
出てこないの。


ずっと
高価な服もかばんも要らないから、
だた大好きなひとと結婚して、
ごはんが食べれて


普通の幸せが欲しい、

って思いました。


結婚して、
大好きなひとの待つおうちもできた。

骨になって帰るのではなくて、
もうすぐ、元気になっておうちに帰れる。

ごはんも食べれるし、
自分の足であるけるし。

息もできるし、
家族に迷惑をかけないで済む。

ってそう思ってほっとしてました。



せっかく売店で、ギャル系のきれいなモデルさんがたくさん載った雑誌や
色とりどりの料理が並ぶ温泉宿や
海外のリゾート地の載った雑誌などを買ってきたけれど、
欲しいと思うものがなにもなくて、

絶対成功するぞ!とか、


そういう気持ちさえなくなってしまいました。


あれだけ、
透析する前に
今まで築いてきたものを失うことを恐れていたけれど、


これから先もあたしは、
ずっと大好きな家族や友達に料理を作っていくだろうし、

それこそ、命尽きる最後のときまで、フライパンを持っていたいと思うし、

自分の命がかかっているから、
死ぬまで食事療法のことも勉強し続けるんだろうなって思いました。


だとしたら

お料理研究家としていろんなひとの笑顔を見る仕事を続けていくことも
旦那の夕ご飯を作って、掃除をして洗濯をして、普通の主婦になることも

どちらでも
どちらにしても幸せだなって思いました。


あたしにとっての幸せは
大好きなひとたちと笑い合って時を過ごすことで、

その方法のひとつとして、
お料理研究家という道を選んだんだよなぁって

改めて思いました。


最初は、
身体が弱くても、
体力がなくてもできることで、
身体が少しでも元気になれることで、

小さいとき、
お母さんとお父さんはいつも共働きでおうちにいなかったから、

家族に『お帰り』って言ってあげられる仕事で、
私にできる仕事ってないかな?

おうちでできる仕事だったら、
お帰りって言えるし、
身体に負担もかからないし、

家族もあたしも
寂しい思いをしないで済む。

そう思って。


思いついた仕事がお料理研究家だったの。


お料理研究家になって、
食事療法の研究をして、
自分で実践して、
試して元気になれて、
それがレシピになったら、どんなにいいだろう。


私や、お母さんが悲しんだみたいに、
お父さんが苦しんだみたいに、
だぁれも悪くないのに、

『家族の誰かが発病』という大事件で
温かった団欒が失われることがないようなレシピを作れたら、
どんなに素敵なことだろう。


そんな風に思って
なりたいと願ったお料理研究家という仕事が、
いつの間にか、私のなかで

手段が目標に変わり、

いつの間にか、
最初の気持ちを忘れていた気がする。



病棟の奥にはベランダがあって、
夕方に吹く風は、もうすっかり秋の匂いがしてました。

ベランダから見える病棟の壁はあちらこちらはがれ落ち、
夜中に見るとお化け屋敷かと間違えそうなほどに古く錆びれていました。

13年前に初めてここにきたときも、
この病棟の古さにびっくりして、
こんなところで大丈夫なのかな?って不安に思ったりしたんだよね。

13年経っても、ここはあのときと変わらない。



お見舞いに来た妹が、


『ねぇちゃんの腎臓も粋なことしてくれるねぇ。

本当だったら、たった3個の細胞じゃ動くはずないのに、
夢叶えて結婚するまで頑張って動いてくれたんやろ?

13年前に透析してたら、
ねぇちゃん、確実に結婚できてなかったし、
お料理研究家にもなれてなかったよ。

役目果し終わったから寿命がきて、止まったんじゃないの?』

と言って
母に怒られていましたが、



なんだか、
今回の入院も、
この大学病院に入院したことも、

あたしの腎臓が

『なみちーん、初心を思い出せよ』

って、最後に言ってくれたような気がしました。



ノートの表紙には、
『なみちんの夢ノート』と記する代わりに、
『なみちんのありがとうノート』と書きました。


あたしは
ずっとずっと、
成功は、山登りで、
山の頂上にいけばパラダイスがあると思ってた。

成功は
歯を食いしばり、
頑張って、
頂上を目指して
勝ち取るものだと思ってた。

頂上まで上り詰めれば、幸せになれるんだと思ってた。

だから、頑張れば幸せになれるんだ、と。



でも
違うみたい。



今生きていて、
今日という日を過ごしていて、

生きていて
悲しいこと、
辛いこと、
苦しいこと
あるけれど、

一緒に過ごす友達がいること、
家族がいること、
笑い会えること。

共に乗越えてくれる仲間がいること。
どんな状況になっても、
信じてくれる友達がいること。
心の底から、相手を信じられること。


それが幸せなのかなって思いました。


幸せは、頂上にあるんじゃなくて、
こうやって夢を目指して向かう旅の途中で
得る仲間たちが、宝なんだ。


幸せは、
歩いてこないのでもなく、
歩いて掴みとりに行くものでもなく、
今、この瞬間にそばにあるものなのかなって思いました。


だから、
ありがとうノートは、
過去でもなく、未来にでもなく、

今、この瞬間生きていて、
嬉しかったことを記すノート。
共に分かち合う仲間に感謝を記すノート。

ありがとうって感謝を込めて。


きっと奇跡って
特別なひとだけに起こるミラクルなことなんじゃなくて、
カッコいいものでも決してなくて

悩んだり、もがいたりしながら、
泣いたり笑ったりしながら
積み重ねてきた足跡のことなんだなって思いました。



生きていて、
辛いこと、
悲しいこと、
嬉しいこと、
楽しいこと。

泣いて笑って
積み重ねてた足跡が。
軌跡はいつしかきっと奇跡になる。

ミラクルはきっと誰にでも起こる。


そんな風に思いました。





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最終更新日  2007年07月26日 18時43分41秒
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