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その夜近所のスナックに・・・初めは、男5人で行くつもりだったらしいが、「最初ですから、両方の奥さんを連れて行ったらどうですか。心配するだろうし、今後を考えると、お互い知っていたほうがいいと思いますが・・・・。」釘宮の一言で夫婦2組と、支配人、釘宮、大塚tとかなり大所帯になってしまった。 何はともあれ、スナックに着いて、支配人からの一言、「みんな、すまんかったのう。わしの早とちりでみんなに嫌な思いをさせてしまった。特に、福井君と川合君にはやる気になっているところを腰を折ってしまって、本当に悪いと思ってるき。」どこの方言か知らないが、どこかの方言交じりの話。 まさか、ここまで素直に頭を下げるとは釘宮も予想してなかった。みんな黙っている。場がなんとなく白けた雰囲気。このままでは・・・・・・不味い。仕方なく、「福井さん、川合さん、支配人がああ言って下さってるから、この辺で機嫌を直してくれませんか。縁があって一緒に仕事をするようになったのですから。」釘宮もなんと言っていいか判らなかったが、何か言わなければ場が白けたままになってしまう。そうなれば何のために一緒に飲む機会を作ったのかわからない。まだ、みんな黙っている。堪らず、「川合さん、あんたが一番古いんですからここは一番大きなところを見せてやってよ。」仕方なく、川合が、「支配人、すみませんでした。自分で勝手に思い込んでいた自分が悪かったです。」その一言で、場が自然と和んだ。福井も、「いや、私も悪かった。主任なんて言われて、先輩達がいることも考えずに勝手に引き受け、また、今日は河合さんたちに、頭ごなしに言葉を使ってしまいました。川合さん、支配人、本当にすみませんでした。」それからは、みんななんとなく話ができるようになり、スナックを出る頃はみんな、和気合い合い・・・・特に二人の奥さんは、10年来の親友みたいに話が弾んでいるようだった。福井はというと、やはり、支配人が主任に押すだけあって、話をしてみれば、割りと頭の低い感じのいい男だった。 釘宮はというと、やっと肩の荷を降ろしたような気分。只、今夜だけは世話役に徹しよう・・・・・。そんな考えでみんなの世話を焼いていた。それがまた後で釘宮にとってはいい方向に導いてくれたのであるが、まだそんなことは誰も知らない。人生万事塞翁が馬・・・・糾える縄の如し・・・・・・とはよく言ったものである。 さて、スナックでの手打ちがすんで、上のほうが仲良くなると、下のほうもなんとなく仲良くなるものである。 翌日からの仕事も順調にこなせる様になって行ったし、川合にしても、福井にしても、釘宮に一目置くようになっていった。 だが、またまたその翌日、驚くことが起こった。釘宮がホールの清掃をしていると、本店で仲のよかった同僚が車でやってきた。気軽に声を掛けた。「新山君、今日は何?何で来たの。本店はいいの?」新山は釘宮とは入社が数日しか違わなかったし、まだ年が若かったしで、釘宮とはかなり仲がよかった。彼にはどうしようもないと言うか、度胸があると言うか・・・・変な前科の持ち主だった・・・・。それは、入社して1月程たった頃だったろうか。閉店後1人で飲みに行ったことが発端だった。 その頃寮は閉店後の門限が決まっていて、門限を過ぎるとシャッターを下ろし外からは入られないようになっていた。 飲みに行って、帰ってみるとシャッターは閉まっている。寮には入られない・・・・彼は、店の横の電柱をよじ登り、2階へ、2階から非常階段で4階へ、4階のベランダからガラスをノックし中から開けてもらって・・・・・・後で下から2階を見上げて、本当に電柱を登ったのだろうか・・・・と酔って4~5メートル登るなんて、・・・考えられなかった。 それでよくすぐに名前を覚え、気安く話すようになったのだが・・・・新山は、「釘宮さん、どうですか?忙しいでしょ。ちょっと事務所に行きますから後で・・・」本店から何かの用事で来たものと思い込んでいると、支配人から、「おーい釘宮君。皆をカウンター前に集めてくれ。」なんだろうと思いながら、カウンターの中で忙しそうにしている川合の奥さんに声を掛けた。「川合さん。みんな集合のマイクをお願いします。」従業員が三々五々カウンターの前に集まってきた。その頃ではもう本店と同じく、入社が古い順に並ぶようになっていたが・・・・集まったのを確認し、事務所へ。「支配人、全員揃いました。お願いします。」「わかった。すぐ行く。」カウンターの前で待っていると、支配人が出てきた。後ろに新山が・・・・・・川合も怪訝そうにしている。「みんなお疲れさん。新しい常務を紹介します。今日からみんなの世話をする新山常務です。」とたんに本店から来た従業員は一様に驚いた顔を・・・・それはそうである。釘宮より古い連中は、新山に仕事の内容、手順・・・いろんなことを先輩風を吹かせながら教えていたのだから。中には「こんなことも解らんのか!」等と罵声を浴びせた従業員もいた。それが常務で来たのだから、驚くのも無理は無い。嫌な思いをしている従業員もいるはずだった。「今日から常務としてお世話になる新山です。半分の方はよく知っていると思いますがこちらで採用された方は初めてですね。よろしくお願いします。」こんなことがあるのだろうか。つい先日まで一緒に表廻りをしていたし、二人で馬鹿言い合ったりしてもいた。川合などは釘宮と同じく、手取り足取りよく面倒を見ていた。それが今日からは支配人を通り越して常務・・・・・・・雲の上の人間である。しかし釘宮にとってはあまり心配することは無かった。影では本店にいた頃となんら変わることなく友達付き合いをしてくれた。
2009年06月10日
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二人とも納得したのだろうか。・・・・・しかしながら店としては、「そんなのカンケーない。そんなの関係ない。」どこかのコメディアンの言葉ではないが・・・・しかしながら釘宮にとっては大変迷惑なことであった。支配人はというと、釘宮を主任同然に使ってくれるし、河合に相談に行きたいが、(顔を立てに)行ったら、今度は主任さん(?)に気兼ねしなくてはならない。 新店舗の状況はなんと言っても主任さん(?)が一番把握している。こちらにもいろいろ聞きたいことがあっても河合の手前なかなか聞けない。「どうにでもなれ!。」そんな自棄な気持ちである。結局、その日は、新店舗から来た人間はそのまま待機。釘宮だけは支配人から残された。何かと思ったら、明日からの打ち合わせ。「2~3日内に玉が入ってくるから、明日からどぶ掃除を徹底したやってくれ。」と、支配人・・・・・・が、釘宮に権限があるわけでは無し。新店舗採用の人間は後輩といっても名前もまだ知らない。本店から来た人間は半分が大先輩。・・・・・・・そんな中で、段取りがうまくいく筈がない。思い余って、「支配人、簡単に言いますが、私はまだ下から数えたほうが早いし、こちらにいた従業員は名前も気性もよく知りません。現実に何人いるかもわからないのにそんなに簡単に段取りなんか組めません。」「そうか、だったら、どうしたらいい。」「そうですね、せめて河合さんと、名前は知りませんが今までの主任さんと十分話ができるようにしてもらえませんか。決して河合さんも悪い人間ではありませんし、支配人が腹を割って話をしたら判ってくれると思いますが・・・」「そうか、なら、今晩飲みにでも行こうか。」「そうですね。主任さんを紹介してくれたら大分やり易いとおもいますし・・・」「よし、じゃ、今晩、お前ともう1人、連絡係りの福井と、河合、主任の4人と行こう。声を掛けておいてくれ。」 そんなこんなで夜飲みに行くことに・・・・「じゃ、作業の段取りは、4人で話し合って決めますから、それでいいですか?」「よかろう。皆仲良くやってくれ。」本当に他人任せであるし、釘宮にとってはいい面の皮である。すぐに、ホールに出て主任さんに声を掛ける。「すみません。支配人が今晩一緒に飲もうといってますので、今晩都合はいいですか。」一瞬いやな顔が表面によぎったが、「はい判りました。都合つけます。」そのほかになんとなく話がしづらかったし、そそくさと、「じゃ、寮に行ってきます。」とホールを後に・・・寮に上がり河合を探す。さぞくさくさしていると思って会うのが気が重い。「川合さ~ん。どこですか?」しばらく返事が無かったが、奥さんが出てきた。「すんません。奥さん今晩川合さんを貸してください。支配人が飲みに行こうといってますんで。」「どこに行くんですか。」「いや、よく知らないんです。7時頃支配人が迎えに来るようになってます。」「何か話があるの?」「いや、単に親睦じゃないですか。支配人もかなり気にしてましたし。」それを聞いてやっと川合が顔を出した。支配人が気にしてたなんて、釘宮には感じられなかったが、川合の手前、そのように言わざるを得なかった。川合は根が単純。支配人が気にしてた。 ・・・・・ その一言で若干機嫌を直したらしい。釘宮もある程度ホッとしたが・・・・・・。
2009年06月02日
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