南風一の世界

南風一の世界

2024/05/10
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  5月の夕方の空   南風一

貰ったばかりの処方箋を持って
たった今出てきた病院の駐車場を斜めに横切って
つい4日前に歩いた同じ経路を蟻のように
もう一度歩き始めた

向こうから歩いてきた私と同じようなスーツ姿の男と
すれ違って
私も 向こうの男から見れば逆の立場で
同じようなスーツ姿の男に見えるのだろうと考えながら

64歳になった定年退職後の再雇用男が

のこのこ病院の駐車場を歩いているのか?

これは私の同級生にも
昔の職場の同僚にも想像がつかないことだろうし
(そもそも私が定年退職後も会社勤めをしていることとか
 私がこんな地方都市のこんなところにいるとかも知らないのに)
誰がGWの終わりに風邪をこじらせて
内科医院で喉の鎮痛剤や抗生剤、とんぷく薬を処方してもらって
何とか生きた心地を取り戻している極楽気分なんかに
気づくことがあろうか?

情けないことだけど
この無関心さというか全く誰にも今の私の境遇が知られていないという気づきほど


私がどこで生きようが
私がどこで病気をして苦しもうが
私がどこで野垂れ死のうが
誰も気づかないし誰も気にしない

これほど愉快で楽しいことがこの世の中に

ついそんな気分に浸ってしまった
5月の夕方の駐車場だった


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Last updated  2024/05/10 10:27:01 PM
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