ユビキタスモバイルの夢

October 28, 2015
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カテゴリ: ユビキタス
昨今、農薬散布や荷物の運搬などビジネス活用への期待が高まっている小型無人機「ドローン」。本格普及のカギを握っているのが飛行の安全性だ。そんななか、コントローラーで操作することなく自律的に安定飛行するドローンが登場した。開発したのは、東京大学大学院に通う此村領氏。「GPSを使わずに自律飛行し、飛行プログラムをユーザーが自由に改変できる市販ドローンはない」と胸を張る。
「ピーーー!」。笛の音を合図に、手のひらからドローンがふわりと飛び立った。床から約1.5メートルの高さに浮上すると、ドローンは上下左右に大きくぶれることなく高度を維持している。飛行中のドローン本体を手で横方向に押すと、元いた位置にスーッと戻って飛び続けた。このドローン、誰かが巧みに操作しているのではない。ドローン自ら飛行位置をリアルタイムに把握し、微調整しているのだ。

■各種センサー群で安定した自律飛行を実現

 「同じ場所にとどまって飛び続ける。簡単そうにみえて、これが意外と難しいんですよ」。自律飛行するドローン「フェノクス2」を開発した此村領(このむらりょう)氏は、和やかにそう説明する。此村氏は、東京大学博士後期課程に所属する現役の学生である。

 フェノクス2は、計4つのプロペラを備える手のひらサイズのクアッドコプターだ。最大の特徴は、リモートコントローラー(リモコン)を必要としないこと。各種センサー群で安定した自律飛行を実現した。下向きの超音波距離計でドローンの高度を計測。同じく下向きに設置したカメラで床面を撮影し、その画像から自分の飛行位置を把握する。エアコンの風などで本体位置が上下左右にぶれると、自動的に元いた位置に戻ってくる。

緻密な自律飛行を裏で支えているのは、此村氏が頭をひねって考えた画像処理技術である。仕組みはこうだ。まず、下向きのカメラで撮影した画像から、床やカーペットの模様や汚れといった複数の「特徴点」を抽出する。カメラは1秒間に30枚の頻度で床面を撮影し続けており、ドローン本体が横方向にぶれると、先に抽出した特徴点との差分(ズレ)から、「どの方向にどれくらいズレたのかが分かる。この情報を基に、プロペラの回転数を制御して逆方向に動かすことで、元いた位置にドローンが戻ってくる」(此村氏)。

 撮影画像から特徴点を抽出し自分の位置を補正する考え方自体は「特に目新しくはない」(此村氏)という。だが、本機能をドローン上に実装するのは困難を極めた。リアルタイムに特徴点を抽出する画像処理は負荷がとても高く、撮影データを一時的に保存しておく大量の記憶領域(メモリー)を必要とするのだ。大量のメモリーを実装すると、ドローンが重く、大きくなってしまう。

 小型化するには、一般的なパソコン用パーツをそのまま実装するわけにはいかない。手のひらサイズのパソコン用基板「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」の利用も検討したという。しかし、「画像から特徴点をリアルタイムに検出できない」「(特徴点から判明した位置情報

壁にぶつかった此村氏が目を付けたのが「FPGA(Field Programmable Gate Array)」である。FPGAとは、ユーザーの好みで任意の論理機能を実装できる小型チップの一種。米半導体メーカーであるザイリンクスのFPGAチップ「Zynq XC7Z010」を採用。特徴点を抽出するアルゴリズムも見直すことで、画像データをメモリーに保存することなく、リアルタイム処理することに成功した。この技術は、東大を通じて特許を申請済みだ。

 こうまでして此村氏がドローン本体に「頭脳」を搭載したのは、リモコンなどドローンを制御する無線通信処理を排除したかったからだ。ドローンの制御に無線通信処理を使うと、なんらかの影響で無線が途絶えたとたんに制御不能になる。全地球測位システム(GPS)機能を搭載し、ユーザーが指定したルートに沿って自律飛行する市販ドローンはある。一方、フェノクス2はカメラでとらえた映像を基に自分で考えて飛行する。GPSの電波が届かない部屋の中や地下でも自律的に飛行可能だ。此村氏は、ロボットのあるべき姿を明確にイメージしている。「自分で状況を判断して自律的に動けてこそロボット。人が操作したり飛行ルートをあらかじめ入力したりしたら、それはラジコンでしょう」

■飛行パターンをユーザーが変更可能

 フェノクス2は、同じ高度、同じ場所にホバリングする単機能ドローンではない。プログラムを書き換えることで、飛行パターンを変更できる。例えば、床にある特定のマークをカメラが捉えるとその方向に進み、別のマークを捉えるとその場でホバリングする、といった飛行も可能だ。複数のマークを使い分ければ、オフィスの廊下を巡回飛行できる。フェノクス2は横方向にもカメラを搭載しており動画を撮影できる。マイク機能も搭載済みで音も判別可能。不審者や不審物をとらえたら通報する、といった活用法も想定している。

 飛行プログラムは、ユーザー自身が自由に追加したり変更したりできる。フェノクス2は、オペレーションシステム(OS)として広く普及しているリナックス(Linux)の「Ubuntu」を搭載している。無線LAN機能も搭載済みで、パソコンと無線接続してSSH(セキュアシェル)でログインすれば、無線経由でプログラムを書き換えられる。ホバリングや画像の取得、上昇・下降などを制御するプログラムはネット上で公開しており、購入者は自由にダウンロード可能だ。

 ドローンを大型化すれば、機能の実装は容易になる。だが、此村氏は本体の小型化にこだわった。狭い室内や通路などでの利用を想定しているためだ。本体が大きくなるにつれ、利用シーンは限られてしまう。フェノクス2は手のひらサイズで重さはたった75グラム。此村氏は「このサイズで自律飛行し、プログラムを自由に改変できるドローンはみたことがない。世界初だと思います」と胸を張る。
出典: http://www.nikkei.com/article/DGXMZO93069910R21C15A0000000/






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最終更新日  October 28, 2015 10:02:25 AM
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