『姿を消したクロ』
昨日、去年の秋に家を新築し転
居していった元町内のKさんが、
ひょいと顔を見せた。
クロがいなくなって3日経つという。
以前住んだこの近辺をうろついて
いやしないかと、今日もこのあたり 去年より10日ほど遅い 庭の鈴蘭
を探してみてるんだが、ということだった。
クロは、雑種和犬の捨て犬だった。
飼い始めたときはもう成犬で、それから15年以上は経つということ
で、もう16歳は超えてるだろうと。
全体が黒く、精悍に見えるわりには人見知りの子だった。
それも、年とともに白い毛がかなり目立つようになり、奥さんは、「シ
ロ」って名前に変えようかなと、散歩中笑っていたものだ。
それが3日前に、リードのついた首輪が、玄関のまん前に、まるで
「これここに置いて行きますから」とでも云うように落ちていた、と。
この「姿を消す」、という行動。
これは元来、野生の動物は体調が悪くなったとき、他の動物に襲わ
れないように身を隠すのだ、とか。(?)
特に死期の迫った動物にみられる行動ということだが、同じ屋根の
下であれだけ可愛がって育てられながら、それでもさらに安全な場
所を求めるその不可解。
環境 (慣れない新宅)
なのだろうか個性なのだろうか、やはり消し難い本
能からのことだったのだろうか…。
今では室内飼いも多く、家族にみとられてというパターンがも多くな
っているのだが、それでもとなると…。
もしそれがもん太だったら、と思うと…。多分半狂乱に、少し大袈裟
かもしれないが。
辛く切なく、今頃どこでどうしているのと…、そのいたたまれない思
い、
結論を断じ得ない思い…。
以前これを、「たかが犬」、と言ったヤツがいた。
「自分の子供と置き換えてみろ!」と そヤツに言ったが、犬を飼った
ことのないものには、蛙の面になんとやら、意味さえ解せない風だっ
た。
クロ一家には、慰めの言葉の出しようもない昨日でした。