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ポンボ @ Re:まもなく発刊予定です(04/01) いいなぁ ご自分のご商売ですと、実費だけ…
msk222@ Re[1]:被災地支援(01/07) みちのくはじめさんへ ぼくの場合、感情の…
みちのくはじめ @ Re:被災地支援(01/07) こんにちは。みちのくはじめです。 私たち…
aki@ Re:被災地支援(01/07) この様な書込大変失礼致します。日本も当…

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2013.01.08
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カテゴリ: 日替わり日記
湯島天神


香具師は的屋とも通じるが、若干ニュアンスがちがう。
的屋は露天商として、今でも祭の露天で焼きそばやイカ焼きなどファーストフードや玩具などを売っているが、香具師は物を売るにも大道芸人風の一芸をもって商いをしていた。
風船、飴、小間物などのおとなしいコミセ、路面にゴザを敷いてその上に商品を並べ、流暢な啖呵をきって商うコロビ、仮設小屋で見世物を扱うタカモノ、そして大きく人を集めて商う大ジメなど、香具師の世界もなかなかに多様だった。
大道商人のすべてが香具師というわけではない。何でも彼らは全国的な組織を持つ移動商人だとか。
神農を祖と仰ぎ、守神にしているとも聞いた。
神農は百草をなめて医薬を知り、路傍に市を開いて交易を教えたという。だから医薬の神とも崇められている。
香具師という言葉には人をだます響きもあったが、被害は笑って済ませられる程度だし、むしろ賑わいを盛りあげてくれる人たちとして歓迎されていた(と思う)。
香具師にもいろんなタイプがあった。
股引きに腹掛けの職人風なのは鋸売り。路上に木箱を置いて中辰式鋸というものを売っていた。
鋸を大きく曲げて離すと、キーンという音がした。
板切れや竹を自在に切ってみせては、その切れ味を自慢する。あまりの見事さに、半分はだまされていると知りつつ客はけして安くない鋸を買っていくのである。
ネタをあかせば商売用の板は、前日に釜で蒸して柔らかくしてあるのだとは、仲良くなった元香具師から聞いた。
合格祈願にきた受験生たちも驚きを隠せなかったのは計算手引書を売る香具師であった。
仲間内ではバンソロと呼ばれていたそうだが角帽に学生服のいでたち。ひどくひねた大学生であった。
路上に黒板を立て、台の上に立って観衆から勝手な数字を出してもらい、それを黒板に書く。
そして万単位の足し算、掛け算、割り算をアツというまにやってしまう。
「これにはちゃんとコツがあってな。計算方式さえ知っておれば、誰でも瞬時に正確な答えが得られるのだよ」と手引書を売りこむのだ。
ぼくもつられて買って試してみたのだが、香具師が演じてみせたとおりにはならなかった。どのようにして答えをだしたのか見破れずに、ずいぶん悔しい思いをしたものである。
学生服といえば、万年筆売りも人気者だった。
「B29が日本の空を悠然と飛んでいたとき、アメリカ兵が持っていたのがこの万年筆だよ。一万メートルの上空ではインクが漏れてしまう。だがここに毛細管を一本入れたのがインク止めになっている。逆に潜水艦の中で圧力がいくら高くなっても毛細管現象でインクは出る。これがアメリカで発明された新型万年筆だ。これをもっていなかった日本が勝てなかったわけだ、どうだ一本」
と口上を並べながら、大学ノートにすらすら横文字を書いてみせる。
「デパートできれいなパーカーが売っているが二〇〇〇円だよ。きょうはそのパーカーを縁日にちなんでのご祝儀だから半分くれとは言わない。10本限りだ、八〇〇円でどうだ」と、大音声をあげていた。ちゃんとペン先をみればニセモノとわかるが、誰かが手をあげると我先に手をあげてたちまち10本限りのはずのものが15本近くも売れてしまう。
ぼくも欲しいな、と思って眺めていたのは十徳ナイフである。
とくにガラスの切れ味は見惚れるばかりだった。
「ガラスを切るのに力はいらんよ。このローラの先端についているのは鋼の2.6倍も硬い。つるつるした方がガラスの表だ。ここに当てて軽く引けば、ほれ、こんなに切れる」と幾筋も切れ目を入れ、端を持って器用に幾つも形のガラスをつくっていく。
次は曲線切りや穴あけを披露。見事な技だった。
さらにナイフに付属の缶切り、栓抜き、錐、ドライバー、爪切り、耳かき、紐通しなどが順々に説明されると、欲しくてたまらなくなる。
野山に持っていったら便利だろうなと思っても高い、小遣いで買える代物ではなかった。
落語でお馴染みのガマの油売りは、薬事法の規制が強化されて、今では大道売りは禁じられたが、当時はいかがわしい薬を売っていた。
そのひとつがホレ薬。外出するときにこれを脇の下につけておくとモテモテだという。イモリの黒焼きやトラのペニスの粉末やらいろいろ秘薬が混じっているそうだ。そんなもの、女性がよろこぶはずがないと思ったが、ちゃんと買ってゆく人もいた。
そして、背の高くなる道具。これを首につけてぶら下がればみるみる背が伸びるのだという。ぼくも友人とふたりで、半額ずつ出し合って買って3ヶ月ほど試してみた。その後はやったぶら下がり健康器を首でやる仕掛けだが、結果はご存じのとおり。
薬にかわって薬効を喋りだしたのは七味唐辛子であろう。
「本日はめでたいご当地鎮守棟の祭礼だから、特別に秘伝の匙加減を教えよう。まずは黒胡麻を入れる。次が蜜柑の粉、つまり陳皮だな。さらに焼唐辛子の粉をそそぐ。そして粉山椒、芥子の実、麻の実を混ぜ合わせれば、ほれ、この香り」
と叫びながら、それぞれの薬効まで並べられると、妙な説得力があって買いたくなってしまうから不思議である。
なかでも人気なのは、フーセンおじさんだ。つぶれた声で歌うように口上を述べながら細長い風船を膨らませ、いろいろな形をつくっていく。とくに子供に人気だから、子供にねだられた親は買わずにいられない、という案配だ。
湯島天神ばかりでなく、神田明神や浅草寺などあちこちの寺社の縁日にはずらりと露店が並んでいた。
そこの空間を賑々しく演出してきたのが香具師たちである。
信仰とはかかわりなく、雰囲気を楽しみに人は漂い、流れるのだ。
いまでも露店商は盛んに行われている。なにを隠そうぼくのところの事業所も露天商の許可証がある。当市のまつりで店を出すには保健所の許可証や露天商の許可がいるからだ。
ぼくらのはしょせん素人の顔見せに過ぎない。祭りや縁日に欠かせないエンターティナーであった香具師たちの姿は、ずいぶん少なくなってしまったようである。
暴力団やヤクザと混同され、閉めだされることが多くなったとか。
香具師たちの稼業は商いを生業とするもので、バクチやカスリを取るのとは明らかに違うのだが、十束ひとからげにしか物事を見られないのは残念なことである。
人気映画の寅さんは親方をもたない香具師だったが、ピンとこないだろうか。
その寅さんも亡くなり、遂にあの映画は48本でおしまいになってしまった。男はつらいよ、ならぬ香具師はつらいよ、ということなんだろう。






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Last updated  2013.01.09 01:04:28
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