つくる生活など

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2019年09月10日
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カテゴリ: 見たものなど
『私がオバさんになったよ』の中野さんの対談部分がよかったので、1冊まるごと中野さんだからどんな博識が繰り出されているのだろう?と思って読んでみました。しかし出版社が違うことと、女だからってそれほどモヤってないのもあって、この本自体にいろいろモヤったので、まずはそこから。

いきなり1章の頭のスーさん(P19)男性受けする女らしさの中に「おとなしい」を入れている点、いやいや、1970年代に生まれて小学校からネアカ・ネクラのネクラのほうに入れられて育ったおとなしい人が、おとなしいから人に好まれたことなんてありませんって。スーさんにはおとなしい人への誤解があるようであります。

「控えめな女」に高得点はもうつかない!(P99)どちらが言ったわけではない編集者作の小見出し。日本人は半分以上おとなしい人の集まりなので行き過ぎた自己責任やコミュ二ケーション力偏重ではなくおとなしい人の生きやすい日本を取り戻すことが大切と考える私は、おとなしい人を目の敵にするのは違う違う絶対違うと思います。本書は恐らく、「おとなしい」人と、それから、「美人」の人は、読んでモヤりそうだなと思います。美人でないので美人関係の話にはつっこみませんが。

いつか結婚も出産もレジャーになる(第5章タイトル)、本書では繰り返し「女性はモノではない」と出てくるのに、ここで生まれてくる子をモノ扱いしていませんか?生まれた子にも心があり、「あなたはママのレジャーで生まれてきたんだよ」なんて言われたら子供がモヤるじゃありませんか。章そのものは生殖とか遺伝子の話でおもしろいのに、「レジャー」とする感覚にはモヤモヤ。たとえ自分で産まなくても、生命の誕生はとうといという認識は持ち続けたいです。

中野さんの「置かれた場所で咲きなさい」の解釈(P214)、私は置かれた場所で咲くことを例えば優れたギタリストが観客のいないレコーディングスタジオでも小さなライブハウスでも大物歌手の武道館公演でもよい演奏をして人々に喜ばれることのように解していたので、「どうして移動してはいけないの?」ってそれは「かごの鳥」っていうんだよと思いました。

以上本書のモヤ。

スーさんと私のやや似ていた点は、成長が早くてかわいく育たず、スカートめくりの標的にならない子(P33~)、腹が立つ反面、キャーキャー言うのも絶対したくなかった小学生時代。それと、社会からあまり期待されないで生きてこられた(P23)ことにほっとしている点でしょうか。男性だったら自由業でも下請じゃなくて元請にならなければと向いてないのに独立して余計に苦しみ、かつ、他人に厳しい嫌なやつになっていただろうなと思います。

中野さんと私のやや似ていた点は、何か人と違うのを自覚したのが小4くらいで、中学時代はすごくしんどかった(P36~)こと。小4以降、何の打算もなくぼけっとまじめにしているだけで「先生にひいきされてる」とか言われ、褒められたいならなぜ皆同じようにまじめにしないのか?とか、中野さんの「なんで他の子たちは自分と同じように勉強ができないのか」よりはるかにハードルが低いのに、変な圧だらけでした。

高校以降は東京の人と田舎者ではかなり違ってきます。私は給料は東京から入ってきても都会の社会は直接目の当たりにしていないし、かといって田舎社会とも距離を置いている異端の人なので、大半の部分は都会の優秀な方々の話として興味深く読みました。



さて、本書購入の第一動機は初めに書いたように、中野さんの博識に触れることでありました。フランス南ブルターニュ大学の(P45)だのプリンストン大学の(P46)だのニューヨーク大学の(P148)だの「第二の性」(P158~)だのある精神科医が(P171)だの「インポスター症候群」(P173)だの魚類の繁殖(P199)だの地質年代の視点(P206)だの国際バカロレア試験(P224)だのポンポン出てくるのは、田舎暮らしでは得られない刺激で大変楽しいです。

スーさんは全体に旧来の女らしさを求める社会に対する怒気が強く出ていて、自分に自信を持つことの大切さを力説されています(P184~)。一方で中野さんから自信がないからこそのよさもある(P175~)ともあり、自信の自己コントロールについて考えさせられます。他人から「あなたは生きていていいんだよ」と言われなければ自信を持てない人がいいように利用されている例はどこかで見たような気がします。

もう一つの動機には、この先1970年代生まれの女性たちは助け合わなければいけないのではないかという思いがありました。人口も多く、多い割に「女はこのくらいでいいだろう」という古めの働き方なので所得も資産も総じて少なく、老いていったら一体どうなっちゃうんだろうと思います。本書はお二方より若い女性へのエールが主なので、そのあたりの同世代の将来に関してのヒントはそれほど得られませんでした。若い女性が読んで重苦しい心が少しでも軽くなったらと思います。という本でした。

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最終更新日  2019年09月10日 22時46分08秒
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