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終わらない歌『よろこびの歌』の続編(だそうです…)。毎度毎度のことですが、図書館で借りてくるのでこのように順番無視状態になってしまうのですね…でも、この本、とっても良かったです。『よろこびの歌』を読んでいたら感動3割増しなのかもしれませんが、読んでいなくても感動しました。感動というか、共感というか…“うん、そうそう、そうなんだよ”という気持ちがあふれ、決して哀しいわけではないのに、気づいたら涙が出そうになっている。そして、読み終わった時には、“もうちょっとがんばってみようかな…”と背中を押してもらっている。冷え切った身体に温かいものが染み透っていくような、そんな心地良さがありました。夢や希望に向かってがむしゃらに突き進んでいる間はいいけど、ふとした時、現実とのギャップに気付いて愕然とする。今までの熱意がどこかへ吹き飛んでしまって、自分のすべき事がわからなくなってしまう。そうやって身を屈めて悶々とする。でもそれは、より高く飛ぶためのパワーを蓄えている期間なんだろうと思います。登場人物の心の機微が丁寧に鮮やかに描かれていて、最近読んだ本の中で、文句なしのBESTです。【内容紹介】「覚えてる? 今、あのときの未来だよ」高校二年の春、卒業生を送る会の合唱で、未来への願いを託した調べに心を通わせあったクラスメイト。御木元玲、原千夏、中溝早希、佐々木ひかり、里中佳子、東条あや。三年の月日が流れ、少女たちは二十歳になった。玲は音大の声楽科に進んだが、自分の歌に価値を見いだせなくて、もがいている。劇団でミュージカル女優をめざす千夏が舞台の真ん中に立てる日は、もう少し先みたいだ……。ぐるぐる、ぐるぐる。道に迷っている彼女たちを待つのは、どんな明日なんだろう――。小説誌「紡」で発表された四編(「シオンの娘」「スライダーズ・ミックス」「バームクーヘン、ふたたび」「Joy to the world」)に、福井のタウン誌連載「コスモス」、そして、書き下ろし「終わらない歌」の全六編を収録。傑作『よろこびの歌』待望の続編! 【著者情報】(「BOOK」データベースより)宮下奈都(ミヤシタナツ)1967年福井県生まれ。2004年「静かな雨」で文學界新人賞佳作に入選、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
2013年02月25日
ぶたぶたと秘密のアップルパイ【内容情報】(「BOOK」データベースより)イラストレーター森泉風子は、不思議な会員制喫茶店への特別招待券を手に入れた。そこでは、誰にも話せない秘密をひとつ、店員に話さなくてはいけないというのだ。その店員というのが…見た目は可愛いぶたのぬいぐるみだが、中身は心優しき中年男・山崎ぶたぶただった。客たちはみな、ここで心の荷物を下ろし、新しい人生へと踏み出す勇気をもらってゆくー。例の如く、タイトルと可愛いぶたさんがいる表紙につられてしまいました。何も知らずに借りてきちゃいましたが、このぶたぶたさん、どうもシリーズものらしい。。。そして、この『ぶたぶたと秘密のアップルパイ』はシリーズ9作目らしいのです。読み終わった感想ですが、もう羨ましいの一言に尽きます。私もこんな隠れ家的な喫茶店、開拓したいです。ぶたぶたさんが淹れてくれるコーヒーと、今まで食べたことのないアップルパイが食べたいっ。そして、優しいぶたぶたさんとお話したいっ。ぶたぶたさんがぬいぐるみっていうのも楽しい。(ぶたぶたさんが「化け物の自覚はある」って言ってましたが、 「化け物」じゃありませんよ。 ぶたぶたさんはぶたぶたさんです。 それでいいんです。)今回ぶたぶたさんは喫茶店の店員として登場していますが、他の作品では様々な職業に就いているらしく、それが刑事だったり、コックだったり、タクシードライバーだったり、(まだまだ続く・・・)というから驚きです。美味しそうなアップルパイを想像しつつ、ほこほこ和みながら読書タイムを満喫できました。このシリーズの他の作品もぜひ読みたいですね。そしてこのアップルパイ、市販されているようなんです!矢崎存美さんのブログに紹介されていました。もう食べるしかないっ!!
2013年02月16日
ノ-フォ-ルト2007年4月発行。著者は、昭和大学病院にお勤めの産婦人科医(教授)の方です。ご多忙の中、数百ページにもなる小説をお書きになるのは、想像を絶するほど大変だったろうと思います。正直なところ、読みにくい個所もありましたし、こんなに都合よく終結しないだろうと感じたラストでしたが、産婦人科医をとりまく現状の過酷さと、それを改善したいという著者の強い想いは充分伝わってきます。この小説の主人公、産婦人科医の柊奈智は、容態が急変した妊婦の緊急帝王切開手術をしますが、数日後、原因不明の出血で妊婦は死亡してしまいます。遺族(正確には妊婦の夫の弟)に、医療訴訟を起こされ、弁護士に「あなたが“殺した”」と糾弾されて深く傷つきます。本のタイトル『ノーフォールト』は無過失。著者はこのタイトルをつけることで、「無過失補償制度」を強く提案しているのだと感じました。(「無過失補償制度」とは、病院側に過失がなくても、 患者や遺族に補償をする制度。 長期の訴訟を避け、医師・患者双方の救済を図るのが目的。)※ちょっと調べてみたのですが、「産科医療補償制度」は2009年1月に創設されています。 関心のある方はこちらをご覧下さい。 【内容説明】城南大学病院に勤める女性産科医・柊奈智は、深夜の当直で容態が急変した妊婦の緊急帝王切開手術を行なう。ギリギリの判断が幸いし、子供は無事に生まれた。だが数日後、原因不明の出血が母親を襲った……患者を救えなかったことでショックを受ける奈智に、さらに遺族が起こした訴訟が追い討ちをかける! 緊急手術、医療事故、裁判、そして苛酷な勤務……現役の医師が、医療の危機の実態を描く、感動のヒューマン・ドラマ!
2013年02月15日
「The GOLD 2013年2月号」の中にとても興味深い特集がありました。それは・・・「本があれば、週末はもっと楽しい」食事をしながら、お酒を飲みながら、本が読めるお店、とっておきの一冊と出合える、とっておきのセレクト書店、旅にまつわる本が集められていたり、現代美術に関する本を揃える専門書店。いろいろな形で本を扱うお店が紹介されています。お店だけでなく、ちょっと変わった図書館も。その図書館とは、まず、東京渋谷区にある“ビブリオテック”。古いファッション誌やデザインの本が集められたライブラリーです。蔵書は約6,000冊。60年代のアメリカの雑誌や、80年代のファッション誌、なつかしの映画パンフレットなどがあるそうです。(残念ながら、私の管轄外です… あっ、映画のパンフレットは見たいなぁ。)そして、“京都国際マンガミュージアム”!!!昭和初期に建てられた小学校を改修、2006年に開館。所蔵約30万点のうち、閲覧自由なのは約5万点。『ベルサイユのばら』の連載が開始された1972年の『週刊マーガレット』、あの『のらくろ』も読むことができます!もう~~~!!マンガ好きにはたまらない図書館です。ウン十年も前になりますが、小学生の時(もしかしたら幼稚園かもしれない・・・)に読んだマンガが未だに忘れられません。(連載ものではなく、読み切りでした。)内容はしっかり覚えているのですが、タイトルや作者名はわからずじまい。掲載されていた雑誌もはっきりしません。もう一度読みたい!と思い、時々調べてはみるのですが、記憶にあるのが内容だけではどうにもなりません。もしかして、この図書館だったらわかるかも!そうだ、京都へ行こう!!・・・春になったらね。
2013年02月12日
小さいおうち【内容】昭和初期、女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。だが平穏な日々にやがて密かに“恋愛事件”の気配が漂いだす一方、戦争の影もまた刻々と迫りきて――。晩年のタキが記憶を綴ったノートが意外な形で現代へと継がれてゆく最終章が深い余韻を残す傑作。第143回・直木賞受賞作品。昭和初期から戦後にかけての人々の生活が、タキの目を通して鮮明に、丁寧に描かれています。銀座のレストランや時子奥様の服装、おせち料理など、当時のちょっと裕福な家庭の様子が垣間見えて興味深いです。モダンな赤い屋根の家、そこには狭いながらもタキの部屋があり、真面目で穏やかな旦那様、若くて美しく、優しい奥さま、可愛い坊ちゃんがいて・・・お仕えする平井家の人たちに対する忠誠と愛情。奥さまに対する憧れ。(それ以上の気持ちもあったような。)模範的な女中さんだったタキが、昔を綴って終わるものだとばかり思っていたのです。それが、非常に中途半端な終わり方をしたかと思うと、最終章になって突然、健史(タキの甥の息子)の視点に変わります。その最終章の中で、「奥様のために」タキが何をしたのか明らかになるのですが、回想ノートに書かれたこととは微妙に違っているんですね。本当のところはどうだったのか、それまで読んできた読者にはとても気になるところですが、最後、健史のつぶやきで物語は幕を閉じます。「僕はけっして正しい答えをみつけられない。僕はいつも、聞かなかった問いの答えばかりを探している」
2013年02月09日
2013年2月1日発売の最新号です。スペシャルインタビューはトム・クルーズ。映画『アウトロー』の撮影話も盛り込まれています。プロ並みの運転技術を持ち、激しいカーチェイスシーンもこなしたそうな。最近はプライベートでお騒がせだったけど、やっぱりトム・クルーズはスーパーなスターですね。そして、今号の特集はこちら! わかもの包摂 ― 若者就労支援の最前線 労働市場に参入できず、社会から排除される若者が増えている。 たとえば、「ニート」と呼ばれる人は約60万人、 「ひきこもり」状態の約70万人を加えると、優に100万人をこえる。 彼らを現状のまま放置するか? 就労できるよう応援するのか? で、 社会の未来は大きく変わる。 ニート人口が約5万の大阪府。 NPO法人「スマイルスタイル」は、企業10社と共同のインターンシップ プログラム「大阪レイブル(遅咲き)超就活」を実施。 若者の職場体験を通して、エスカレーター式に就業に結びつけようとしている。 また、NPO法人「青少年就労支援ネットワーク静岡」は 静岡県で300人を超える若者を「静岡方式」で支援、 その8割が「就労中・就活中・就労体験中」。 拠点を持たず、県内50人のサポーターがメールと電話で情報交換をしながら、 担当する若者をパーソナルにサポートしている。 就労は最も有効な社会的包摂の方策でもある。 若者就労支援の最前線をレポートした。ニートというと働く意志のない「怠け者」と思われがち。でも、実際は「ニート状態にあっても、働きたいという意欲をもち、就職活動に向けた行動を起こしている人が少なくない」そうです。厚労省のニート実態調査でも、「仕事を生きがいとしたい」と回答した人は68.7%に達し、「社会や人から感謝される仕事がしたい」人は80%超。多くの人が「働きたい」と思っています。ただ、人より不器用だったり、コミュニケーション・スキルが低かったり、メンタル面で弱さを抱えていたりして、働きにくいのです。働く場所があっても、その多くは派遣やアルバイトといった不安定なもので、中には労働環境劣悪な「ブラック企業」もあったりします。ニートのうち8割近くの若者には就労経験があり、職場の人間関係や酷い労働条件などで傷ついて、ニートになっているという実態があるそうなんです。(NPO法人「スマイルスタイル」代表・塩山さんのお話から)「働くことによってひび割れてしまった自尊心は、 働くことを通してでしか癒されない」青少年就労支援ネットワーク静岡理事長・津富宏さんの言葉が印象的です。誰にとっても生きにくい(働きにくい)世の中。ここで紹介された2つのNPO法人の活動が、全国に広がっていったらいいなぁ…と思います。そして、働きたいけど自信がない若者を「インターン」として受け入れてくれる企業が、もっともっと増えるといいですね。最後、いつも楽しみにしている「ホームレス人生相談」。今回のお悩みは「つき合い始めて間もない彼氏を、バレンタインサプライズで驚かせたい」・・・若者就労支援の記事を読んだ後、これかいっ!?そんなの勝手にやってくれ!!なかば呆れながらも(すんません…)読ませていただきました。私、このコーナーのファンですから。。。質問の内容は置いといて(失礼)、回答している販売者さん、優しいなぁ。愛があるなぁ。
2013年02月03日
進化する強さトシをとると・・・足腰弱くなるし、風邪をひけば長引くし、徹夜しようものならフラフラだし(というよりできないし)、歯は弱ってくるし、肌なんてボロボロになるし…いいことなんてないよなぁ…とお嘆きの方にぜひ一度読んで頂きたいです。「歳をとる=マイナス」だと思われがちですが、この本を読むと“歳をとるのも悪くないな”と感じます。成熟というか円熟というか、こういう歳のとり方ができたらいいですね。歳をとるからこそ、見えてくるものがあるんだということに気付かされます。37歳でプロ復帰、40歳を超えた現在も第一線で活躍されている伊達さん。傍から見るとさぞ大変だろうと思うのですが、ご本人は「楽しいから、頑張れる」と仰っています(30、31ページ)。そして「無理はするけど、無茶はしない」。長い間ご自分の身体と向き合ってきた結果、折り合いをつけるポイントがわかってきたそうです。「テニスも人生もなかなか簡単に勝たせてくれないからこそ、やりがいがある。」毎日を真摯に生きている伊達さんの言葉だから、すごく説得力があります。見開き2ページに一つのタイトルがつけられているので、興味のあるところから読むのもよし、ちょっと時間が空いた時にさらっと読むこともできます。【内容紹介】「挑戦することは楽しい」彼女は常にそう語る。2008年、12年ぶりにツアープレーヤーとして再びコートに立つことを表明する。37歳にしてプロ復帰した理由を「世界と戦うためではなく、若い選手へ刺激を与えるため」。2011年のウィンブルドンではセンターコートでビーナス・ウィリアムスと試合をし、その果敢なプレーは世界に感動を与えた。なぜ41歳という年齢で世界のトップ選手と渡り合うことができるのか。日々進化と続ける彼女の強さを自ら書き下ろした注目の書。本人、初の自己啓発本!同世代の女性・男性から圧倒的な支持を受けるクルム伊達公子の強さの秘密はここにあった!進化を続ける彼女が明かす、シンプルで美しく「自分らしく」勝つための法則! 【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 心はいつも進化を求めている第2章 限界は自分で決める第3章 弱さを認める第4章 準備を万全にすればどんな勝負も怖くない第5章 悪い流れはブレイクできる第6章 本当の優しさと本当の強さ第7章 ぶれない人生はここにある第8章 身体の声を聞く第9章 楽しむことで人生は開ける第10章 明日は変えることができる
2013年01月31日
督促OL修行日記トンデモ職場で働いていた人、今まさに働いている人が読んだら、「これに比べたら、自分の方がまだマシだ!」と急に元気になれること請け合いの本!!2011年9月から一年間にわたって連載された、J-CAST会社ウォッチのネットコラム『債権回収OLのトホホな日常』を書籍化したものだそうです。昨日upした『七十歳死亡法案、可決』も過激なタイトルだったけど、内容はそんなことなかった。この本はタイトルこそ大人しいけど(?)、内容はかなりかなりです。おカネを返してくれないお客様へ電話をしてみりゃ、「ぶっ殺す!」だの、「呪ってやる」だのと脅され、「こんな人を不愉快にするような仕事、しない方がいいと思いますよ!! まじめに働きなさい!!」と説教され…私だったら「偉そうなこと言う前にカネ返せっっ!!!」と叫びたい!いや、きっと叫んでる!それなのに、そんな客(おカネ払わないんだから客じゃないと思う!)でも文中ではちゃんと“お客さま”と表記されてる。う~~ん、これがプロなのね。いくらお客さまといっても、罵倒され続けたらめげもするし、激しく落ち込んだりするのが人の常というもの。実際に著者の周りの人は次々に辞めていきます。著者も「こんなに人に嫌われる仕事はイヤだ」と思うんです。でも、そんなシンドイ精神状態の中で、なんとかやっていく方法を見つけ出していきます。「怒鳴られるとどうして傷つくのか」という分析から始まって、お客さまに入金していただくノウハウまで、仕事に限らず、人間関係でも充分参考になります。これほど極端でなくても、私達は仕事で、学校で、他人に傷つけられ、嫌われる局面に出会うことがあります。理不尽なクレーム、“俺様”な客、謂れのない悪口など――。そんな時、どう対応したらいいのか。。。ヒントがいろいろ盛り込まれています。【内容説明】「一時間に60本の電話がノルマ」「電話で怒鳴られるのは日常茶飯事・・」。大学を卒業して入った会社で、著者は、いきなり借金を返さない人に督促の電話をかける部署に配属され、「督促OL」となった!客からストーカーよばわりされたり、呪いをかけると恨まれたり、今から殺しにいくぞ・・と脅されたり、仕事を熱心にすればするほど、人から嫌われる仕事に心が折れそうになる日々・・。もともと人見知りで、人に強く言えない性格の著者が、百選練磨の借金王の面々を相手に、毎日格闘し、ついには、2000億円の借金を回収する「スゴ腕 督促OL」に!”日本一ストレスフルな職場”で、自分なりの得意分野を探しだし、モチベーションを維持する方法を見つけ、仕事に誇りを見出していくまでの、新人時代をエッセイとマンガでつづる。
2013年01月12日
七十歳死亡法案、可決タイトルが強烈!視界に入ったら、もう目をそらすことはできません。そしてつい手にとってしまいます。これはもうタイトルの勝利ですね。新聞紙面が表紙になってますが、目を凝らしてみると、ちゃんと「七十歳死亡法案」の記事になってます。それも写真付き!本編の前に、まずこの記事を読むことをオススメします。15年も義母の介護をしてきて、疲弊しきった55歳の主婦。「七十歳死亡法案」で、姑の介護があと2年で終わることが心の支えになっています。でも、自分はあと15年で70歳になるのに、そのうち2年も介護に費やされるのが耐えられません。夫は「自分は働いているんだから、家にいるお前が介護するのが当たり前」と、全然協力してくれないし、妻の苦労を労うこともしません。おまけに、「70歳までに好きなことをする」と言って、世界一周旅行に出かける始末。手伝ってもらおうと期待していた娘は、逃げるように家を出てしまいます。一流大学を出て、一流銀行に入った息子は、人間関係がこじれてさっさと退職。再就職先も決まらず、引きこもりのニート状態。夫の姉妹は、遺産をもらう気満々のクセして、介護する気なんてさらさらなし。義母は「どうせあと2年しか生きられないんだから」と、まったく歩こうとしない寝たきり状態。でも、口は達者だし胃は丈夫なものだから、我がまま放題、食べ放題。主婦のやるせない気持ちももっともだし、夫が仕事で疲れているのもわかるし、(この夫はちょっとボンクラで、しょうもないけど…)長女が家から解放されたいと思うのも納得、長男だって働く気がないわけじゃない。義母だって、好きで身体が不自由になったわけでなし。イライラがつのっているのもわかる。分かるけど…もうどうにも我慢できなくて、主婦は家出を決行。それがきっかけで、それぞれ勝手な方を向いていた家族が自分を省み始めます。70歳になったら死ななければならないって、現実では絶対あり得ないブラック設定ですが、どこにでもありそうな家族の再生物語です。これだけ問題を抱えた家族が、大団円を迎えるというのも小説ならでは。現実が厳しい分、せめて架空の世界ではハッピーでないと!「七十歳死亡法案」は過激すぎるけど、大ナタを振るわないと今の日本はダメなのかもしれないですね。本編に出てくるような総理大臣が現れないものでしょうか。【内容情報】(「BOOK」データベースより)2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。すぐそこに迫る現実を生々しく描く。注目作家、渾身の書き下ろし小説。
2013年01月11日
ソロモンの偽証(第3部)昨年末ぎりぎりに読み終え、感想を書こう書こうと思いながら、ずるずる今日まで来てしまいました。頭の中にいろいろなことが湧き出てきて、それをどうまとめていいか分からなかったんです。感じたことのほんの一部ですが、ここに書きとめておきたいと思います。「真実」を知るため、学校内裁判を開こうと藤野涼子たち中学生が立ち上がった第2部。第3部では、法廷の様子が事細かに描写されます。どんな裁判になるかとても興味深かったのですが、それと同時に疑問がありました。5日間という短い日数。物証がなく、証言のみに頼った裁判。皆が本当のことを言っているとは限らないし、本当だと自分が信じているだけで、実際は違うのかもしれない。偽証してもそこに責任は発生しないし、もちろん法的裁きもない。そんな証言からたどり着いた結論が果たして「真実」と言えるのか。---という疑問です。告発状を送った三宅樹理が、本当のことを言ってくれるのか、というのも気がかりでした。(結局三宅樹理は最後まで本当のことは言いませんでした。 それどころか、松子のせいにしちゃったりして…)で、読了後の感想(の一部)です。第2部で神原くんが登場し、被告人・大出俊次の弁護人をやることになった時点で大体の予想がついてしまい、それが裏切られることはありませんでした。(これは良い意味でです。 著者も“どんでん返し”が狙いではなかったと思うので。)この裁判で被告人・大出俊次は無罪になります。これは分かりきっていた事なのでいいとして、「これ(柏木卓也の転落死)は殺人事件です。」と陪審員長が言うんですね。“柏木卓也くんが、柏木卓也くんを殺した殺人事件だ”と。言われてみれば当たり前のことなんですが、私、目からうろこが落ちました。 そうか、そうなんだと。そして、前からの疑問がすぅっと消えていったんです。この裁判で導き出されたことが、彼らにとっての「真実」。自分たちの心の中で、すとんと落ち着けばそれでいいのだと。誰かを裁くための裁判ではないんです。三宅樹理にも、神原和彦にも、そして大出俊次にも、救いの手が差し伸べられた学校内裁判。それでもう充分ではないかと思います。神原くんが証人として法廷に立った時、野田くんが反対尋問をします。これが本当に印象的でした。一度暗い底へ落ちかけた野田くんだからこそできるのだと思いました。“誰かを殺すことも、そして自殺することも、どちらもいけないことなんだよ”と宮部さんが優しく語りかけているような気がします。【内容情報】(「BOOK」データベースより)事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていたー?一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。
2013年01月10日
片桐酒店の副業片桐酒店の二代目店主・片桐章が、(なぜか)スーツ姿でワケありなモノを配達します。「アイドルに手作りケーキを手渡して欲しい」(第一章 短期バイトの憂鬱)、「会えないママに工作物を届けてほしい」(第二章 電車のような宇宙船のような何か)、「意地悪な上司に悪意を」(第三章 悪意)など、通常ならお断りするようなモノも、片桐章は引き受けます。 特に「悪意」って・・・ 何を届けるつもり?酒店を継ぐ前、片桐は会社員でした。ある日の夕方、「自分の代わりに書類を届けてほしい」と同僚に頼みます。そこにはちょっとした悪意がありました。届け物の最中、同僚が事故で亡くなってしまったことで、“ちょっとした悪意”がとても大きな悔恨になってしまうのです。まるで贖罪のように、今度は自分が届け物をする側に…先代が始めた「困ったときのまごころ便」。どんなモノでも引き受ける(法に触れない限り)のがモットー。クールに、完璧に依頼をこなしながらも、片桐は心に重い荷物を抱えているのです。プロローグに出てくる少女の依頼が、第五章 朝の訪問者、そしてエピローグへと繋がっていき、それとともに片桐の心にも光が射していきます。各章のページ数が少ないせいか、掘り下げ方が足りないような・・・あっさりし過ぎている感じがしました。(「第三章 悪意」は、もっともっと怖くなるんじゃないかなぁ。)「法に触れない限り」とあるので、どんなモノか興味津々だったんですが、意表を突かれたのは「悪意」くらい。もっと「これはっ!!」というものを配達して欲しかったです。でも、読後感は爽やかです(今さら言っても遅い?)。続編を期待してます。【内容情報】(「BOOK」データベースより)法に触れない限り、何でもお届けします。冴えない酒店の片手間仕事のはずが、最近、ワケあり注文が多い。「アイドルに贈り物を手渡して欲しい」「上司に悪意を」などの難題に直面する無愛想な若き二代目店主、片桐章。彼もまた胸の奥に大きな遺失物を抱えていた…。ボイルドエッグズ新人賞作家が放つ、可笑しく、ほろ苦く、心温まる感動長篇。【目次】プロローグ第一章 短期バイトの憂鬱第二章 電車のような宇宙船のような何か第三章 悪意第四章 海と傷跡第五章 朝の訪問者エピローグ
2013年01月04日
ソロモンの偽証(第2部)第1部を読み始めてからというもの、ず~~っと寝不足です…でも止められないんです…お休みで良かったです… 第2部ですが・・・学校内裁判を開くため、藤野涼子が立ち上がります。判事、検事、弁護人、陪審員のすべてを中学生が務めるのです。そして被告人は大出俊次。大出の弁護人は、他校の生徒で柏木卓也の友人・神原和彦。この神原くんというのがすごい中学生でして、頭がきれること、きれること。そしてどこか「ワケあり」なんですね。「責任があるんです」ってどういうこと? 第1部の重苦しい雰囲気から一転。証人を探し、証拠を固め、誰もが中学生とは思えない活躍です。 (中学生だからできるのかも)一人一人の描写が丁寧過ぎるくらい丁寧、“ここ、前にも読んだ”という記述も何回か出てきますが、それを全然感じさせない筆力はさすが宮部さんと言うしかありません。もともと法廷モノが大好きなので、一気に引きこまれてしまいました。もちろん通常の裁判とは違いますが、どんな法廷が展開されるのか、第3部がとても楽しみです。神原くんもすごいけど、廷吏のヤマシンこと山崎くん、君もすごいよ!【内容情報】(「BOOK」データベースより)騒動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。けど、彼女は起ちあがった。校舎を覆う悪意を拭い去ろう。裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた…気がつけば、走り出していた。不安と圧力の中、教師を敵に回してー他校から名乗りを上げた弁護人。その手捌きに僕たちは戦慄した。彼は史上最強の中学生か、それともダビデの使徒かー。開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても犠牲者が…僕たちはこの裁判を守れるのか!?
2012年12月30日
ソロモンの偽証(第1部)1990年代の東京下町の公立中学校が舞台です。クリスマスの朝、2年生の柏木卓也が死体で発見されます。一か月前、同じ2年生の大出たち不良グループともめてから、不登校だった柏木卓也。自殺ということで落ち着くかにみえた時、犯人を目撃したという「告発状」が届きます。翻弄される学校関係者。そして「告発状」がマスコミに漏れ、新たな犠牲者が・・・第1部だけで700ページを超える長さ。枕になりそうなくらい分厚い・・・これが第2部、第3部と続くんですか・・・でも、読み始めたらそんな気持ちもどこかへ消えていきました。登場人物の心情描写が上手い!柏木卓也の死の波紋が静かに広がっていくにつれて、それぞれの家族が抱える闇が浮き彫りになり、誰もが(中学生でも)持っているドス黒い感情がどんどん大きくなって、やがて表出していく様が見事に表現されています。大人たちはそれぞれの思惑で、柏木卓也の死を終結させようとします。何も知らされない生徒達の間には、憶測と悪意に満ちた噂が充満していきます。そんな中、柏木卓也のクラスメート・藤野涼子は「真実を知りたい」と立ち上がるのですが、いったい何をするつもりなのでしょう。気になる第2部へ続きます。余談ですが…不良グループの陰険で凄惨ないじめ、“あの親にしてこの子あり”のモンスターペアレンツ、保身に走る学校側、荒れまくる保護者集会などなど。読んでいて「大津いじめ事件」を思い出しました。この小説は「大津いじめ事件」のはるか前、2002年から連載が始まっています。まるで時代を先読みしているようです。余談ですが、その2・・・クリスマスなのに、決して明るいとは言えない本を読んでいる私・・・奇しくも事件が起こったのはクリスマス。これも何かのご縁ですね(←いやいや、そんなことはないと思うよ・・・)【内容情報】(「BOOK」データベースより)クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落としたー。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。
2012年12月25日
山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた山中先生の篤実な人柄、研究に対する真摯な姿勢が随所に滲み出ています。二部構成になっていて、四分の三をしめる第一部は自伝と、「iPS細胞ができるまで」と「iPS細胞にできること」。iPS細胞に関しての専門的な内容がわかりやすく説明されています。この部分を読むと山中先生の偉業がわかります(なんとなく…)。第二部は緑慎也さんによるインタビュー。iPS細胞研究についてはもちろん、「アメリカ後うつ病」だった辛い時期のことや、京都大学iPS細胞研究所(CiRA サイラ)の所長として研究支援者たちの雇用問題も語っています。最後の数行はとても感動的です。 iPS細胞の最初の文字を小文字にしたのは、 当時流行していた“iPod”にあやかったからだそうです。【内容紹介】■祝・ノーベル賞受賞! 唯一の自伝。 はじめて明かした、研究人生とiPS細胞のすべて決して、エリートではなかった。「ジャマナカ」と馬鹿にされ、臨床医をあきらめた挫折からはじまった、僕の研究――。■「iPS細胞ができるまで」と「iPS細胞にできること」ぼくは医師であるということにいまでも強い誇りを持っています。臨床医としてはほとんど役に立たなかったけれど、医師になったからには、最期は人の役に立って死にたいと思っています。父にもう一度会う前に、是非、iPS細胞の医学応用を実現させたいのです(本文より)■読みやすい語り口で、中学生から読める父は町工場の経営者/高校柔道部から受験勉強に邁進/「ジャマナカ」と蔑まれた研修医時代/臨床医としての限界/はじめての実験/求人広告に手当たり次第応募/オスマウスが妊娠?/帰国/「アメリカ後うつ病」にかかる/新入生争奪戦/遺伝子を二四個まで絞り込んだ!/論文捏造スキャンダルの陰で/再生医療の可能性/病気の原因解明と創薬 (本書の内容より) 【著者情報】(「BOOK」データベースより)山中伸弥(ヤマナカシンヤ)1962年大阪市生まれ。神戸大学医学部卒業、大阪市立大学大学院医学研究科修了(博士)。米国グラッドストーン研究所博士研究員を経て、96年大阪市立大学医学部助手、99年奈良先端科学技術大学院大学遺伝子教育研究センター助教授、2003年同教授、04年京都大学再生医科学研究所教授、08年京都大学物質ー細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長、10年4月から京都大学iPS細胞研究所所長。胚性幹細胞(ES細胞)と異なり、受精卵を用いずにさまざまな組織に分化する可能性を持つ人工多能性幹(iPS)細胞をマウスの皮膚細胞から作り出すことに成功、新たな研究領域の開拓者となる。同じ方法で07年ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作り出すことにも成功した緑慎也(ミドリシンヤ)1976年大阪市生まれ。出版社勤務、月刊誌記者を経てフリーに。科学技術を中心に取材・執筆活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
2012年12月19日
卒業東野圭吾さんのデビュー2作目にして、加賀恭一郎シリーズの第1作です。1986年講談社から刊行された単行本は『卒業―雪月花殺人ゲーム』という題でした(私が読んだのはこちら)。その後改題されて、『卒業』となりました。加賀が大学4年生の時に事件は起こります。仲間の一人牧村祥子が、入居している女性専用アパートの自室で、死体となって発見されます。現場の状況から自殺ではないかと思われるのですが、その後の捜査で他殺の可能性も出てきます。ただ、アパートの部屋は窓にもドアにも鍵がかかっており、またアパートの入口には厳しい管理人がいて、人の出入りを監視していました。他殺だとしたら、犯人はどこから侵入したのか?それからまもなく、加賀達の恩師・南沢雅子の誕生日を祝う茶会の席で金井波香が毒殺されます。仲間が何人もいるなかで、どうやって毒を飲ませることができたのか?初めの事件は密室、2番目は雪月花之式のトリック。本格的なミステリィです。(雪月花之式とは、裏千家茶道の修練のためのひとつ 。 文中に図付きで詳しい説明がありますが、これがなかなか複雑で… 読んでいるうちに頭が痛くなります・・・)事件は解明されるものの、ちょっとした疑問が残ります。(これを書いてしまうと犯人がばれてしまうので自粛します。)事件より、大学生の加賀の言動に注目しながら読みました。冒頭でいきなりプロポーズしてるし・・・(高校からの友人・相原沙都子にプロポーズ。 それでいて、“返事はいらない、ただ気持ちを伝えたかっただけ”。 ん~~、加賀さん!)どうして教師を目指したのか、(大学卒業後教師になったものの辞めて、その後警察官になる。)、父親との関係など、新鮮な(?)加賀恭一郎を堪能できます。【内容紹介】7人の大学4年生が秋を迎え、就職、恋愛に忙しい季節。ある日、祥子が自室で死んだ。部屋は密室、自殺か、他殺か?心やさしき大学生名探偵・加賀恭一郎は、祥子が残した日記を手掛りに死の謎を追求する。しかし、第2の事件はさらに異常なものだった。茶道の作法の中に秘められた殺人ゲームの真相は!?【内容(「BOOK」データベースより)】大学4年の秋。就職、恋愛に楽しく忙しい仲よし7人組・その中の一人、祥子がアパートの自室で死んだ。部屋は密室。自殺か、他殺か!?残された赤い日記帳を手掛りに、死の謎を追及する友人たち。だが、第二の全く異常な事件が起って…。錯綜する謎に挑戦する、心やさしき大学生・加賀恭一郎。卓抜な着想と緊密な構成で、現代学生のフィーリングを見事に描いた、長篇ミステリーの傑作。
2012年12月13日
爆笑! 英語コミックエッセイ 日本人のちょっとヘンな英語拙いながらも頑張って話している人の間違いを笑う(それも爆笑する)という感覚が、私には全く理解できません。語学に限らず、今勉強中の人が間違えるのは当たり前。間違いや勘違いを明るく笑い飛ばして、“さぁ、前に進もう!”という意味でタイトルに「爆笑」という言葉を入れたのかもしれませんが、どこからもそんな明るさは伝わってきませんでした。ここに出てくるネイティブの人(著者含む)からは、他人(この場合はノンネイティブの人)への思いやりや優しさといったものが微塵も感じられません。コミュニケーションは言葉だけに頼ったものではなく、仕草や表情、その場の雰囲気等々も含まれると思います。「Could you call me taxi? 」と「Could you call me a taxi? 」では全然意味が違ってきますが、話の流れで相手が何を言いたいかわかると思うんですよね。間違いを訂正することなく、ただ大笑いっていうのは甚だ失礼です。この本に書かれていることが実際にあったら、英語を話すことが怖くなってしまうのではないでしょうか?その反対に「なにくそっ!!」と奮起する人もいるかもしれません。それを狙ってあえて「爆笑」しているのであれば、そういう指導方法もあるんだなぁと思いますが・・・(すみません、ここら辺かなり嫌味っぽいですね…)
2012年12月12日
桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活表紙とタイトルに偽りあり!!表紙に燦然と輝く(?)文学青年+“スタイリッシュ”というタイトルにまんまと騙されてしまいました・・・ 不覚・・・読み始めてびっくり。文学青年とは程遠い・・・ 遠過ぎる・・・スタイリッシュって、どこが・・・?下流大学に勤務する桑潟幸一准教授(クワコー)のダメっぷりが半端ないです。そこまで自分を虐めなくても・・・と思うくらいの自虐っぷり。あまりのとほほ加減に可哀そうをはるかに通り越し、清々しささえ感じます。そのクワコーに文芸部の女子大生たちが絡み、事件を解決するというのが本書です。ミステリィ仕立てですが、事件はな~んてことないものばかりです。クワコーと女子大生たちのドタバタが面白いので、さらっと楽しむのにはうってつけの一冊だと思います。でも、私はこの1冊でもういいかな…(クワコーの自虐の歌と、女子大生の脈絡のない会話に疲れました。)【内容情報】(「BOOK」データベースより)日本一下流の大学教師は今日もまた自虐の詩をうたう。【目次】(「BOOK」データベースより)呪われた研究室/盗まれた手紙/森娘の秘密
2012年12月10日
下山の思想敗戦後、経済大国となった日本。この小さな国が、半世紀の間に奇跡的ともいえる成長を遂げたのですが、登りつめた後に待っているのは「下る」ということ。「下る」という言葉にはマイナスイメージがつきまといます。・・・が、“「下山」とは諦めの行動でなく、新たな山頂に登る前のプロセス”で、“敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き「下山」を思い描くべきではないか”と述べられています。ただ、その“実り多き「下山」”とはどんなものか、新たに登ろうとする山頂とは何なのか、具体的なことは何も書かれていません。読み進めていっても内容が深まるどころか、同じ話の繰り返しが続き、『ノスタルジーのすすめ』にいたっては、下山と何の関係があるのでしょうか。タイトルに魅かれてこの本を手にとったのですが、「思想」とあるからにはもっと深い言及があるのだろうと期待していました。正直、“どこかに掲載されたエッセイをとりあえずまとめて一冊の本にしました”という感じがしました。(日刊ゲンダイの連載コラム『流されゆく日々』に掲載されたエッセイを まとめたエッセイ集らしいです。)大事なことは、自分で考えなさいということですね。【内容情報】(「BOOK」データベースより)どんなに深い絶望からも人は起ちあがらざるを得ない。すでに半世紀も前に、海も空も大地も農薬と核に汚染され、それでも草木は根づき私たちは生きてきた。しかし、と著者はここで問う。再生の目標はどこにあるのか。再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き「下山」を思い描くべきではないか、と。「下山」とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ、という鮮烈な世界観が展望なき現在に光を当てる。成長神話の呪縛を捨て、人間と国の新たな姿を示す画期的思想。【目次】(「BOOK」データベースより)いま下山の時代に(下るという大事なプロセス/下山しながら見えるもの ほか)/下山する人々(法然とフランチェスコ/平安末期に流行した今様 ほか)/いま死と病いを考える(この世で絶対的な真実/病人大国日本の憂鬱 ほか)/大震災のあとで(言葉もなく、おろおろと/下山途中の生き地獄 ほか)/ノスタルジーのすすめ(「時には昔の話を」のとき/古い記憶の再生装置 ほか)
2012年12月04日
のはなしにぶんのいち(キジの巻)『のはなしにぶんのいち(イヌの巻)』の続きです。ですが、この本から先に読んでも別に支障はないと思われます。キジの巻は「ディスカウント」の話から「ん?」の話まで全40話を収録。(イヌの巻、キジの巻を通して、エッセイのタイトルが 「あ」から「ん」までになっています。 ついでに“謎の写真コレクション”もあいうえお順です。)イヌの巻もそうでしたがこの本も読み終えるのが惜しい、でもどんどん読んじゃう~~という“やめられない、とまらない”状況に陥ってしまいました。ちょっと考えさせられる話や、わんこ好きはとって、涙なくしては読めない話などがあり、このまま真剣に終わるのかと思いきや、最後の最後で変な歌をかましてくれたり…期待を裏切らない人です。“謎の写真コレクション”の最後を飾っているお花畑の中の伊集院さん(なぜか上半身裸・・・)、伊集院ファンの人はぜひご覧ください。ほのぼのしますよ。【内容情報】(「BOOK」データベースより)こんなエッセイ集を、今まで誰も、読んだことも見たこともないはず。伊集院光がメールマガジン用に書いた、たくさんのエッセイの中から爆笑!感動!鳥肌!話を厳選ピックアップ。さらに今回、文庫化にあたって伊集院光撮影の“謎の写真コレクション”を特別に大公開。【目次】(「BOOK」データベースより)「ディスカウント」の話/「独立」の話/「取り越し苦労」の話/「縄跳び」の話/「生卵」の話/「ニート」の話/「ぬるぬる」の話/「寝言」の話/「ネタ作りの苦労」の話/「乗り越したっ」の話〔ほか〕
2012年11月28日
ミステリイ・カクテル1985年発行。現在は絶版のようです。推理小説のトリックを分類、解説した一冊です。密室崩しの古典的名作 ガストン・ルルー 『黄色い部屋の謎』から始まって(見取り図も付いているという親切さ)、チャールズ・ディケンズの『エドウィン・ドルードの謎』など未完に終わったものまで、多くの作品、作家が取り上げられています。江戸川乱歩が『悪霊』(残念なことに未完)で、記述者即犯人トリックを使うつもりだったという話(都筑道夫との対談の際、横溝正史が発言)はとても興味深く読みました。数々の名作の他に、実際に起こった事件の記述もあります。密室状態のホテルの一室で女性歯科医が殺された事件(昭和47年)、大学院生が助教授に殺害されたが遺体が見つからなかった事件(昭和49年)、そして昭和43年に起きた三億円事件などなど、まさに「事実は小説より奇なり」でした。名作といわれる作品でも読んでいないもの、読んだけどキレイさっぱり忘れ去っているものがたくさんあると実感。今年の冬は推理小説三昧といきますか。【内容紹介】推理小説のすべてを興味深く解説した名著。密室、脱獄、一人二役、死体隠匿、アリバイ崩し、凶器、暗号、時刻表など、ミステリイの多彩なテーマについて、内外の名作を引例しながら解析する本格的ガイドブック。各種のベストテン選定及び詳細な索引つき。この一冊でミステリイ・トリックのすべてがわかる!
2012年11月25日
のはなしにぶんのいち(イヌの巻)これは電車、バス、飛行機などの中で読んだらダメですね。顔がゆるむくらいならまだしも、ぶはっ!ときてしまうかもしれないからです。今回初めて伊集院光さんの本を読んだのですが、文章も上手いし、目のつけどころが常人離れしています。普段見過ごしていたようなことが、伊集院さんにかかるとすっごく面白い話になるから驚きです。その中に、しみじみする話もあって、読み終えてしまうのが惜しい一冊です。前々からトークが上手い人だなぁと思っていたのですが、三遊亭楽太郎(六代目圓楽)さんのお弟子さんだったことをこれを読むまで知りませんでした。(これってかなり恥ずかしいかも…)“なるほど、上手いわけだ”と納得した次第です。エッセイが面白いだけでなく、伊集院さんが撮影した“謎の写真コレクション”、これは必見ですよ!!さぁ、次は『のはなしにぶんのいち(キジの巻)』を読もうっと!【内容情報】(「BOOK」データベースより)こんなエッセイ集を、今まで誰も、読んだことも見たこともないはず。伊集院光がメールマガジン用に書いた、たくさんのエッセイの中から爆笑!感動!鳥肌!話を厳選ピックアップ。さらに今回、文庫化にあたって伊集院光撮影の“謎の写真コレクション”を特別に大公開。【目次】(「BOOK」データベースより)「あそこが痒い」の話/「アメ横」の話/「アウェイ」の話/「命懸け」の話/「うなぎの蒲焼」の話/「運命の出会い」の話/「エロ本隠し場所」の話/「塩分」の話/「お金持ち」の話/「お小遣い」の話〔ほか〕
2012年11月22日
札幌刑務所4泊5日刑務所の中(俗にいう塀の中)に深~~い関心があって、何冊も関連本を読んだ私・・・この関心の持ちようといい、熱の入れようといい、前世というものがあるなら絶対に犯罪者だったに違いないと、確信に近い思いを持っておりました。ところがこの本を読んで、私が抱いていた関心はな~んも異常ではなく、まして前世は犯罪者でもなんでもないんだと納得しました。いくら興味があるからって、実際に刑務所に入ってみようなんてさすがに思いませんもん。。。(前世、犯罪者だったら既に入ってますもんね。。。)それなのに、実行に移してしまうなんて作家根性って本当にスゴイものです。スピード違反の反則金7,000円をひたすら払わず、刑務所に入ろうとする東さん。「刑務所に入りたい」、「はい、どうぞ!」というわけにはいかないんですね~。刑務所という所はなかなか入所困難なんですね。(↑時と場合によりけりです、念のため。)すったもんだの挙句、「検討の結果、貴意に沿う形で処理することになりました」という地検からのお手紙によって、作者の刑務所生活が実現するわけですが、18キロオーバーのスピード違反、4泊5日の短期滞在です。“海外旅行より短い”というこの期間が、悲壮感を払しょくしているようです。作者も読者もさほど暗くならずに、「まぁ、4泊5日だし…」ということで「へ~~」、「ほ~~」、「お~~~」と言っているうちに無事終わり。 (ホント社会科見学みたいです。)禁酒・禁煙はもちろん、規則正しい生活、決して臭くないメシ、適度な運動、充分な睡眠のおかげで、出所時には健康になっていたというオマケ付き。「刑務所生活」のさわりを軽~~く(あくまでも軽~~く)読みたい人にはオススメです。ただ、刑務所側の人にとって、こんな受刑者は迷惑なんだろうなぁ…スピード違反くらいで入ってくるなよというのが本音なんでしょう、きっと…私は2泊3日でも遠慮しときます。【内容情報】(「BOOK」データベースより)ハードボイルド作家は考えた。「一度は刑務所というものに入ってみたいものだ…」かくして、ちょっとした交通違反の反則金をテッテイ的に踏み倒し続けた著者は、念願の押しかけ入所を果たしたのであったー。入ってみてわかった、塀の中の不可思議なオドロキに満ちた実態とは?読めば読むほどしみじみと可笑しい、傑作ドキュメンタリー。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 入所までのすったもんだのいきさつ(違反事項ー速度超過(時速30キロのところ48キロ)/ 前回の挫折 ほか)/第2章 受刑者の道ーどうせなるなら模範囚( 地方検察局徴収係の冷えた麦茶/鍵の群れ ほか)/第3章 受刑者の日々(爽やかな目覚め/ 一日の始まりはオードリー・ヘプバーン ほか)/第4章 社会復帰へ向けて(出所準備/健康診断 ほか)
2012年11月15日
ひそやかな花園毎夏とある別荘地に集まる7組の親子。子どもの年齢もまちまちで何の接点もないようだけれど、一体なぜ??ある夏を最後にキャンプは二度と行われなくなり、親に理由を尋ねてもはぐらかされるばかり。「あの集まりはいったい何だったのか?」子どもたちばかりでなく、読み手も非常に気になる序盤。子どもたちも各々が成長し、疑問が徐々に解けていくのですが・・・7組の親子がそれぞれ印象深く、その対比が絶妙です。子どもに恵まれないとわかった時、その運命を受け入れるべきか、それともそれに抗ってあらゆる手段を講じるべきか。血の繋がりがなければ親子といえないのか。自分だったらどうするか、いろいろと深く考えさせられる一冊です。どんな経緯で生まれてきたにせよ、生を受けた以上は生きていかなければならないということでしょうか。【内容紹介】幼い頃、毎年サマーキャンプで一緒に過ごしていた7人。輝く夏の思い出は誰にとっても大切な記憶だった。しかし、いつしか彼らは疑問を抱くようになる。「あの集まりはいったい何だったのか?」別々の人生を歩んでいた彼らに、突如突きつけられた衝撃の事実。大人たちの〈秘密〉を知った彼らは、自分という森を彷徨い始める――。親と子、夫婦、家族でいることの意味を根源から問いかける、角田光代の新たな代表作誕生。
2012年10月26日
悩むが花随分と回答がつっけんどんだなぁと感じたのですが、それも仕方ないことですねぇ…なぜなら、質問があまりにもくだらなさ過ぎだからです。(そうでないものもありますよ、念のため。)“バッカじゃないの?こんなこと聞いてくるな!”と心の中で呆れかえってしまうようなお悩み(?)にも、答えなきゃならない伊集院さんが気の毒に思えてきました。でも、そこが伊集院さん!くだらないことにはくだらないと、バカらしい質問には「バカだ!」とバッサリと言い捨て、真剣なお悩みにはどこまでも真剣に回答されていました。これを読んでふと思ったのですが、おバカな質問をしてくる人って、誰かにガツンと怒ってもらいたいのかも…?自論に過ぎませんが、人に聞いて解決できるような悩みは、悩みのうちに入りませんね。まさに「悩んでるうちがハナ」です。【内容情報】(「BOOK」データベースより)「一目惚れで夜も眠れません」「年寄りのわがままに困ってます。一発ギャフンと…」「最愛の人を亡くしました」「息子が主人に似てバカなんです」―人生、こんなはずじゃなかったシュク女・ダメ男へ送る、驚きの名・迷回答。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 悩んでるうちがハナなんだよ/憤の章 年寄りは昔からワガママな生き物なの/嘆の章 面白いってのは仕事じゃないって/悶の章 人生は残酷という瓦礫の上を歩くもんだ/迷の章 少しは苦い酒も覚えたらどうかね/終章 揺さぶられた時にこそ人間の真価は問われるぞ
2012年10月09日
ダーティ・ママ!初めにおことわりしておきます。今回は辛口です。1歳の息子を育てるシングルマザーで、検挙率一位を誇る女刑事・丸岡(マルコー)と、交通課から異動させられた新人刑事・葵の凸凹コンビが面白いっちゃー面白いんですが、“ちょっとダーティすぎなんでない?”というのが正直な感想です。職場に子どもを連れてくるなんてハタ迷惑もいいところだし、同僚に面倒みさせるなんて公私混同も甚だしい。おカネを稼ぐため検挙率を上げようと、違法捜査や情報の横流しなんて当たり前。ここまでくるとあり得なさ過ぎて、完全にウケを狙っているとしか思えません。新人刑事・葵もぐじぐじしていて好感が持てませんでした。ブランドのバッグがいくらだとか、有名ハウスメーカーの家に住みたいだとか、もっと他に考えることないんでしょうか?刑事モノなのに事件にヒネリも深みもないし、不愉快なまでに強烈なダーティ・ママのキャラで読ませているだけのような気がします。養育費の問題や保育所の待機児童のことなども織り込まれていて、シングルマザーの大変さを伝えたかったのかもしれませんが、これでは逆効果ですね。。。【内容情報】(「BOOK」データベースより)丸岡高子―43歳。麻布南署刑事。1歳の息子・橋蔵を育てるシングルマザー。長嶋葵―24歳。橋蔵のベビーシッター役として交通課から異動させられた新人刑事。育児のグチをブチまけながら、ハイパーレッドのベビーカーをぶっ飛ばし、ルール無用の凸凹コンビ(+1人)が事件解決にひた走る。 ベストセラー《刑事 雪平夏見》シリーズに続く待望の新シリーズ! 爽快感120%の全3話。 FX会社で働く女性が襲われた。単純な強盗未遂事件かと思いきや、自首してきたのは被害者の証言とは似ても似つかぬ二人組。ところが被害者は証言を一転、その上、殺人事件まで起きて…丸岡高子と長嶋葵、最初の事件(『はじめてのダーティ・ママ』)。葵がやっと取り付けた恋人・卓也とのデート。ところが、その直前に高子に拉致(?)された葵は、殺人現場へ。事件の裏に見えてくる複雑な人間関係。刻々と過ぎる卓也との待ち合わせ時間。果たして葵は卓也と会えるか?(『ダーティ・ママは三度吐く』)。土曜日の郵便局で強盗事件が発生!大慌てで対応する葵だが、今度は刑事課に父親参観日の幼稚園を爆破する、という予告電話が。愛息・橋蔵の認知調停が一時間後に迫る中、人質となった高子がとった行動とは…(『父親参観日のダーティ・ママ』)。
2012年10月02日
心のナイフ(下)話の行方が気になって仕方がなかった『心のナイフ』、下巻へ突入したもののかなり残酷シーンが多いです。アーロンに捕まったヴァイオラを助けるために、主人公・トッドは、結果としてマンチーを見捨ててしまいます。そして、「今度こそ殺してやる!」と言うほど憎んでいる(恐れている?)アーロンをどうしても殺すことができません。 その反面、戦意がまったくなかった先住生物・スパクルは何の躊躇もなく殺してしまえるという矛盾。トッドは、自分のしたことを受け入れられず、罪悪感に苦しみます。(マンチーを見捨てたところでは 思わず“××ったれ!”と心の中で叫びましたよ。)トッドが追われている理由が明らかになり、プレンティスタウンの邪悪さが浮き彫りにされていきます。てっきり殺されたと思われたベンと再会し、よかったよかったと思ったのも束の間、またまた離れ離れに…(今度こそ、ベンは絶体絶命?…)トッドとヴァイオラはこれからどうなるのか、めちゃくちゃ気になるところで終わるなんて!!続きはいつ読めるの~~?【内容情報】(「BOOK」データベースより)町で最後の子どもトッドが出会ったのは、ひとりの少女だった。初めて見る女の子。ノイズを持たず心が読めないその存在に、とまどい苛立つトッド。女はすべてノイズの病気で死んでしまったはず。彼女は何者なのか?理由も知らされずいきなり家を追い出され、町じゅうの男たちから追われる身となったトッドは、黙したままの少女を連れ、ひたすら逃げる。自分たちがなぜ追われるのかもわからぬままに。そしてトッドの前には想像もしなかった新しい世界が…。ガーディアン賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、ブックトラスト・ティーンエイジ賞受賞作。
2012年09月23日
心のナイフ(上)SFテイストYA小説の三部作第一弾。相手の思っていることがダダ漏れな世界(もちろん自分の思考も相手にバレバレ)という、あり得ないけど面白い設定、ワケがわからないままでの逃避行、奇怪な登場人物。読み始めたら気になって気になって、どんどん読み進んでしまいました。“YA小説だと侮ってはいけないなぁ”と思った次第です、ハイ。ここから先ネタバレ炸裂ですので、未読の方はご注意下さい。入植したある星で、先住生物・スパクルと戦争になった際に細菌(ノイズ菌)がまき散らされてしまいます。それに感染した入植者たちは、女性は死に絶え(といわれている)、男性はお互いの思考が“ノイズ”として聞こえるようになります。新世界でたったひとつの町(といわれている)プレンティスタウンでは13歳になると成人とみなされます。主人公・トッドはあとちょっとで13歳、町で最後の子どもです。そのトッドですが、理由もわからないまま、プレンティスタウンから逃れなければならなくなります。逃亡の途中で知り合ったのは、墜落した偵察機から一人だけ助かったヴァイオラという少女。彼女と愛犬マンチーとともに、細菌(ノイズ菌)の治療ができる(といわれている)ヘイヴンという町を目指すことになります。プレンティスタウンに一番近い町・ファーブランチに着いたトッドたちは、ヒルディとタム夫婦に助けられますが、プレンティスタウンの首長・プレンティス率いる軍隊(!)が侵攻してくるのです。隙を見て逃げ出した一行は、ブロックリー・フォールズという町まであと一歩というところで軍隊に追いつかれてしまい…???ここから先は下巻に続きます。物語が終始トッドの視点から語られているので、わからないことだらけなんです。新世界にはプレンティスタウン以外にも町はあったし、もういないはずの女性も生きていたし、今まで信じていたことが嘘だったことを知ったトッド。なぜ嘘をつく必要があったのか。プレンティスタウンから逃げなければならない理由は何か。気になって仕方ないので下巻へ突入します!【内容情報】(「BOOK」データベースより)ぼくはトッド・ヒューイット。あとひと月で十三歳、つまり正式な大人になる。ぼくが住んでるプレンティスタウンは新世界のたったひとつの町。この星に入植したぼくらは、土着の生き物と戦争になった。やつらが撒いた細菌のせいで女は死に絶え、男は互いの考えがすべて“ノイズ”として聞こえるようになってしまったのだ。ある日、町はずれの沼地で、ぼくはノイズのないまったき静寂に出会った。これは何?それとも誰?異様な迫力、胸が締めつけられるような感動、尽きせぬ謎。ビッグタイトルを独占した“混沌の叫び”三部作、第一弾。ガーディアン賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞、ブックトラスト・ティーンエイジ賞受賞作。
2012年09月09日
ブータン、これでいいのだ発展の度合いを測るのにGDP(Gross Domestic Product/国民総生産)ではなく、GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)を使っているブータン。「幸せの国」というけれど、本当に幸せなの?…とひねくれ者は思ったわけで。2010年9月より1年間、ブータン政府のGNHコミッションに初代首相フェローとして勤めた著者から見たブータン。そこでは日本では考えられないことが!!ブータンの人たちのほとんどが手帳もカレンダーも使っていないので、予定は覚えられる範囲しか入れないっ!一週間後なんてとてつもなく先の話、だいたい翌日の午後ぐらいまで。これ、プライベートだけじゃなくて仕事でも同じ。会議の日時なんて決められっこない。「今日は皆集まってる。じゃ、会議しよっか~~」っていう、冗談みたいなホントの話がまかり通るのがブータンだそう。プライドが高くて、上から指図されるのは嫌い。失敗や間違いは許されるもの、仕方ないものと思っているから、まったく反省なし。何度も同じ間違いを繰り返す。それで強く怒ると、ブータンの人は逆ギレしちゃうそうな…うへ~、こんな人達と仕事したらストレスまみれになってしまう…その前にこんなにゆ~るゆるで仕事になるの?という疑問が。ブータン国内だったら通用することでも、国際社会では“困ったちゃん”扱いになるに違いない…時間の感覚が鈍いものだから、後先考えずに、収入に見合わない高級品をローンを組んで購入したり。「おおらか」なんて次元じゃなくて、ダメダメなんじゃ?紹介されているエピソードは「幸せ」でも何でもない…はて? どこが「幸せ」…?家族や友人の絆がとても強いブータンでは、自分の幸せよりもまず周囲の幸せを願うそうです。他人の幸せも自分の幸せ。幸せを感じる幅が広いことが「幸せの国」と言われる所以かもしれませんね。失敗や間違いは許されるもの、仕方ないものという考え方は、人間の本質をよく理解しているから出てくるんだと思います。(ちょっとは反省した方がいいと思うけど…)それに、相手を許せるってなかなかできることじゃない。「これでいいのだ」!バカボンパパのようにブータンの人は生きているのです。(たぶん)【内容情報】(「BOOK」データベースより)クリーニングに出したセーターの袖は千切れているし、給湯器が壊れてお湯が噴出するし、仕事は思ったようにまったく運ばない。でも、問題山積みだけど、これでいいんだよね。現地で公務員として働いた著者が語る、「幸福」の国の秘密。特別企画・夜這いインタビュー収録。王室の写真など、カラー写真満載。【目次】(「BOOK」データベースより)1章 幸せの国、なの?2章 初めてのブータン/ブータン・アルバム(番外編)3章 オフィスで働く日々4章 ブータン人気質5章 ブータンの男女関係6章 GNHと産業政策7章 激動する国8章 お金の話9章 ブータンの死生観10章 ブータン的であるということ11章 幸せに、なろう
2012年09月06日
この世でいちばん大事な「カネ」の話おカネのことを話題にすると“はしたない”とよく言われます。でも、おカネ、大事です!!おカネに余裕がないと心が荒みます。おカネがあればできることも、ないために不可能になります。貧乏から抜け出すためにはおカネが必要…完全に負の連鎖です。「貧乏は病気だ。それも、どうあがいても治らない、不治の病だ。」著者の幼少期の実体験から出た言葉、重みがあります。涙ぐましい努力で、その貧困から抜け出した西原さん。「自由を得るために頑張って働け!」ですね。自分がギャンブル等に関心がないせいか、ギャンブルで5千万すったとか、アトリエを作るための資金1千万をFXで損したとか、“あんなにおカネで苦労したはずなのに、なんでそんなことするかな。。。”と、まったく理解できない個所もありました。子ども向けに書かれた本みたいなので、「ギャンブルやFXはリスクが大きいよ!」と警告の意味なんでしょうか。(何千万単位で賭け事する人は、そうそういないと思うんですよ…)おカネの大切さ、働いて稼ぐ大切さを考えるきっかけにはなる本です。【内容紹介】西原理恵子が「カネ」を通して自らの生き様と理念を語る初の自伝的エッセイ登場!故郷での貧しさゆえの八方ふさがりの生活。東京に出てきて学校に通いながら自分の絵を出版社に持ち込み次第に認められて行く。そしてギャンブル、アジアへの旅で出会った貧しい子ども達、大切な家族の事。「お金」について考える事は人間関係・仕事関係、つまり自分と世界との関わりにつながっていくのです。漫画で描かれた西原ワールドがより深く・よりリアルに迫って来る1冊。西原ファンならずとも納得・感動の1冊です! 【内容情報】(「BOOK」データベースより)どん底だった、あのころのこと。「貧乏」は、札束ほどにリアルだった。「働く」はもっと、「しあわせ」につながっていい。だから、歩いていこう。自分の根っこを忘れないために。大切な人が、心から笑ってくれるように。切れば血が出る、読めば肉となるサイバラの物語へ、ようこそ。【目次】(「BOOK」データベースより)第1章 どん底で息をし、どん底で眠っていた。 「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。 (「カネ」はいつも、魚の匂いがした/新しい町、新しい「お父さん」ほか) 第2章 自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。 (高校を退学になった女の子/「お前は世界でいちばんいい子だ」 ほか)第3章 ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失うことで見えてくるもの。 (マンション一室、買えました。/ギャンブルの師匠、銀玉親方登場 ほか)第4章 自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。 (「カネのハナシ」って下品なの?/育った町の、それぞれの「ぼくんち」 ほか)第5章 外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。 (人ひとり殺すと、いくらですか?/スモーキーマウンテンの子どもたち ほか)
2012年09月03日
顔なし子地主と小作という立場が未だに残る群馬県の山村が舞台です。 「悪さをすりゃあ顔なし子が来るど。 ・・・ その子の顔をはがしてくんだど。」昭和55年、当時中学生だった修司は、父・和郎から再婚相手だと言って絶世の美女・セリと、セリの連れ子・桐也を紹介されます。狭い村の中での息苦しい人間関係。他から見たら無意味な上下関係が現存している社会。セリの若さと美貌をやっかみ陰湿にいじめる者、セリを力づくで手に入れようとする者。自殺に追い込まれたセリと、村を飛び出した桐也。それから二十数年がたち、修司は生まれ故郷の村へ帰ってきます。それを待っていたかのように事件が次々と起こります。村人達は桐也の復讐ではないかと疑いますが・・・表紙とタイトルからホラー小説を期待したのですが、ホラー関係なしですね。でもある意味ホラーです。人間の醜悪さがこれでもかとつき出されて、「幽霊よりも怪奇現象よりも、一番怖いのは人間か…」と思わずにはいられない小説です。自分たちに後ろめたいところがあるからこそ、桐也が犯人では・・・と疑うのでしょうが、その猜疑心がまた一つ事件をうむのはなんとも皮肉です。希望が見えるラストですが、ちょっと唐突であまりにもキレイにまとまりすぎている感じがします。【内容情報】(「BOOK」データベースより)年老いた父と同居するため、家族をつれて故郷に戻った美笹修司。その帰郷を待ちわびたように次々と発生する怪事件。恐怖のどん底に突き落とされる村。その時、修司の脳裏には、ある少年の姿が浮かんでいた…。
2012年09月02日
・・・どうも私は本物の猫キチなのかもしれません。タイトルに「猫」と入っていれば手に取り、表紙に猫が描かれていようものなら即入手・・・(表紙のcuteな猫&ネズミの絵はフィンランドを代表する絵本作家・ マウリ・クンナスさんの作品です。)フィンランドに興味があったわけでもなく、フィンランド語を勉強しようと思ったわけでもなく、タイトルと絵に魅かれて読み始めました。(ごめんなさい…)ですが、楽しく読めちゃったんですね~~。70年代にフィンランドへ留学した著者の体験記なのですが、当時は今よりもっと馴染みがない国への単身留学。持ち前の明るさと旺盛な好奇心で幾多の苦難を乗り越え、フィンランド語をモノにしてしまうのだからスゴイ!そして、フィンランドの文化を伝える出版社として、「猫の言葉社」をスタート(2008年4月)させてしまうのだからもっとスゴイ!この本を読んで私が覚えたフィンランド語は「ヘイヘイ」のみ・・・なんかとっても情けない・・・【本の内容】 舘野泉さんのピアノに憧れてフィンランドに留学した芸大生が、言葉を覚えようと悪戦苦闘。「ニーン、ニーン」という相槌が猫の言葉に聞こえるフィンランド語だが、夏至祭の頃には鶏の声に聞こえ、古文を読むと恐竜の言葉に思えるとか・・・。楽しいエピソードがいっぱいで、難しいはずの言語学も面白いことこの上なし。マイナス30度の寒さに耐え、サウナでびっくりするような経験もし、ジャガイモ攻めにあっても、くじけない! 「やっぱりフィンランドで勉強してよかった」と思うのは、いろいろな出会いがあったから・・・。フィンランドが身近に感じられる、抱腹絶倒フィンランド留学体験記。待望の復刊です。
2012年08月27日
夏への扉タイトルがいいですね! あと表紙の猫の後姿!主人公のダンは天才的な発明家なんですが、これがまた世間知らずというかなんというか…そんなに簡単にだまされるんか?と思いましたよ。どう見てもその女は怪しいでしょう~~!案の定ころっとだまされ、友人にも裏切られ、職を失い、発明までも取られてしまいます…嫌気がさしたダンは、愛猫ピートと一緒に冷凍睡眠に入ろうとします。が、気を取り直し、復讐のため友人のもとへ向かいます。でもやっぱりヘタレはヘタレ…元恋人と友人によって冷凍睡眠装置に入れられてしまうんですね。…あれっ、猫のピートは? 残されたままでどうなっちゃうの?ダンが目覚めたのは30年後の2000年。そこでダンはどうしたか?(もっとすっごく詳しいあらすじを知りたい方はWikipediaをご覧下さい。)要所要所でダンを助けてくれる人が現れ、随分と都合よくいくものだなぁと思いましたが、それを吹き飛ばしてしまうほどの勢いがあります。あんなに惚れこんでいた恋人に騙された後やっとリッキィの良さに気付くなんて、やっぱりダンはヘタレだし、そこが憎めないところなんでしょう。ダン&リッキィに飼われる方がピートにとっては絶対にいいんだし。これが書かれたのが1956年なんですね。舞台は1970年と2000年のロサンゼルス。お掃除ロボットやCAD(らしきもの)が出てきますが、それを1956年に考えていたハインラインはさすがSF界の巨匠!ピートがジンジャーエールを飲んでいるシーンがあるのですが、猫ってジンジャーエール飲むの??【内容情報】(「BOOK」データベースより)ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて…永遠の名作。
2012年08月20日
いじめ撃退マニュアル1994年7月発行。著者・小寺やす子さんの実体験をもとに書かれているので、とても実践的で即役に立ちます。親としていじめから子供を守るためにどうすべきか、学校、教育委員会等とどう交渉(対決?)すべきか、そのノウハウが冷静に綴られています。これは対象が「いじめ」ですが、いじめに限らず、何かの被害にあった場合、どう対処したらいいかの参考にもなると思います。「いじめにあったら学校にいかなければよい」と言う人もいます。確かにそういう選択もあると思いますが、必然的に勉強に遅れが出てきますよね。塾に行くなどして自分で勉強するのは想像以上に大変です。金銭的な負担もありますし…それに、いじめの被害者が学校を休んでいるのに、加害者の方がのうのうと登校し続けるなんてあまりにも理不尽です。何らかの困難にぶち当たった時、一時的にその場から逃れても、また同じようなことが必ず起こります。ですから、どんなに辛くてもその時に解決しておいた方が絶対後々自分のためになります。現在いじめに悩んでいる方々、騙されたと思ってこの本を読んでみて下さい。【内容情報】(「BOOK」データベースより)「うちの子は友達づきあいがヘタで…」と親が思っていても、実際にはその約9割が「いじめに遭っている」という現実がある。いじめ解決のために、親と教師の腹のくくり方を初めて記した本。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 まず最初に親は何をすべきか 子どもを守る「本能」が低下している!? 親も教師も開き直り腹をくくれ!第1章 いじめっ子からうちの子を守る! いじめを解決するための心構えは何か?第2章 言い分を通すには資料がモノを言う いじめの解決には日頃の準備が不可欠! 焦ってやってはいけないこともある!第3章 ステップ別<学校交渉法> 担任に会うところから校長に談判するまで、交渉法をステップ別に解説!第4章 いじめを解決するためのパワーアップ講座 連絡帳の上手な活用・教師の「発言封じ技」への「返し技」・申立書の書き方をマスター!第5章 先生のためのいじめ解決テクニック いじめに対する教師の心構えとは? 親との交渉をすすめるためには?終章 何をもって、いじめの解決と呼ぶか 雨上がりのあとの空の美しさはどしゃ降りをくぐり抜けた者だけが知る!
2012年08月15日
刑事の子1990年4月に単行本『東京 ウォーター・フロント殺人暮色』が発売され、1994年10月文庫化に当たって『東京下町殺人暮色』と改題。それを中学生向けに装丁し『刑事の子』とタイトルを改めて、2011年9月に発売されたのが本書です。作中に少年法改正を求める集会の話が出てきますが、初出当時(1990年)もやっぱり問題視されていたんですね…20年以上経つのに、相変わらずとんでもない事件が起き続けています。そんな怖ろしい子供を育ててしまったのは我々(親)の世代だと、主人公の父親(八木沢刑事)に言わせている宮部さん。良い方向へ向かっていると思えない現状を、どう思っていらっしゃるのでしょうか…このお話の中で特異な存在感を漂わせているのが、家政婦のハナさんです。主人公・順くんにいろいろな事を教え諭してくれるハナさんのような人が、昔はたくさんいたような気がします。特に「想像力」のくだりは、なるほど!!です。順くん&ハナさんが登場する続編を読みたいのですが、ハナさんは大正生まれ設定。ちょっと無理かもしれませんね、残念です…バラバラにされた遺体(の一部)が発見されたところから物語がスタートしますが、中学生向けに発行したにしては描写があまりにグロテスク…事件の終結部分は唐突感が否めません。それまでじっくり書かれていたのに、“あれっ?これで終わり?”。それと事件の凄惨さに比べ、犯人側の人間像が希薄です。…といろいろ書いてしまいましたが、最後まで一息に読ませてくれるのはさすが宮部さんですね。今回のヒットは何と言ってもハナさんで決まりですっ!ハナさんの名言を読むだけでも価値アリます。【内容情報】(「BOOK」データベースより)中学一年生の八木沢順は、刑事である父・道雄が離婚したため東京の下町に引っ越すことに。開発が進むその町で、優しい家政婦のハナとの三人の生活に慣れたころ、奇妙な噂が流れ込む。近くの家で人殺しがあった、と…。そんな噂とともに、バラバラ殺人事件が実際におきてしまう。町が騒然とする中、順のもとに事件の真犯人を知らせる手紙が届く。刑事の子・順は、友人の慎吾とともに捜査に乗り出す。
2012年08月13日
余命半年から生きてます!【内容紹介】働き盛りの47歳の年末、突然上咽頭がんを告知された。外科手術が不可能な部位のがんのため、抗がん剤と放射線で治療をするも、地獄の苦しみ。そして、闘病5年目、再再発と余命半年を宣告される。もう、治療やめちゃおうかな……、生きるの諦めちゃおうかな……。そんな矢先、単身赴任のため、離れて暮らす妻が、倒れて緊急搬送、目が覚めたら記憶喪失になっていた! 妻は統合失調症だったのだ。しかも、息子は、学習障がい児でひとりで置いておくことはできない。泣く泣く仕事を辞めて、がん患者から一変、妻の介護と子育てをする専業主夫になる。この、ありえないほど不運な人生、もう明るく笑い飛ばして生きるしかない。そう決心し、治療もやめ、日々前向きに生きるがん患者の笑えて泣ける、闘病記。余命宣告されてから、1年10ヶ月、生きてます! 【目次】(「BOOK」データベースより)はじめに 「砂時計の下のほう発想」について/告知です!/私の家族の紹介です!/大忙し!入院前です!/入院です!/治療開始です!/再発そして余命宣告です!/妻救急搬送です!/辞職です!/生活一変です!/ブログ開始です!余命半年、不運、闘病記というタイトルに似つかわしくない突き抜けた表紙を見て、思わず手にとってしまいました。ご自身の上咽頭がん、奥さんの記憶喪失と統合失調症、息子さんの学習障がい。これでもかという不運のオンパレード…それでも“「不運」だけど、決して「不幸」ではありません”と書かれているように、砂時計のような逆転の発想で日々を笑って明るく過ごされている(過ごそうとしている)その強さに頭が下がる思いです。闘病中の方だけでなく、ちょっとしんどいなぁ~と感じている方にもぜひ読んでほしい一冊です。相河ラズさんの闘病ブログは毎日更新されています。興味のある方はこちらもぜひご覧ください。
2012年08月12日
レディ・マドンナ【内容情報】(「BOOK」データベースより)齢八十を越えてもなお堀田家の大黒柱として、古書店“東京バンドワゴン”を切り盛りする勘一。そんな勘一をお目当てに通ってくる女性が現れて、一家は色めき立つ。しかし、その出会いが思わぬ家族の秘密を連れてくる…。さらに、蔵から大事な稀覯本が盗み出されて、店は大混乱。次々に新たな謎が舞い込む堀田家を救うキーワードは「母の愛」。女性のパワーで家族の絆を結び直す、待望の最新作。『東京バンドワゴン』シリーズの七作目。ほぉ~、今作のキーワードは「母の愛」なんですね。なるほど。確かに堀田家のお嫁さん達、カッコいいです。研人が倶楽部の先輩を殴った件で見せた亜美さんのカッコよさ。才色兼備なのは周知のとおりですが、あんな技をお持ちとは!!謝るところは謝る、しめるところはしめる、漢(オトコ)ですなぁ。。。すずみちゃんの同級生が貴重本を盗んだ騒動では、すずみちゃんの懐の広さと気風の良さが描かれています。忘れてはいけないのがサチさん。サチさんのあの柔らかい語りがあるからこそ(時々ツッコミ入りますが)、ほのぼのした雰囲気が醸し出されているのだと思います。それにしても…登場人物が随分と増えましたね~~。これだけ多種多才な人がいると何か問題が起きても心強いですね。かんなちゃん、鈴花ちゃんの「ふじしまん」、最高です!藤島さん萌えの私としては、早く藤島さんに春が来てほしいっ!!(お見合いのお話あったんですけど… 藤島さん、まったくその気がないようで…)あまり関係ないことですが、藤島ハウスと堀田家の間取り図、じっくり眺めて楽しんじゃいました!!
2012年08月05日
三匹のおっさん【内容情報】(「BOOK」データベースより)還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。三匹のおっさんがご町内のあれこれをスパッと解決。強盗あり、チカンあり、動物虐待あり、詐欺あり…なにかと物々しい街もあるものです。バイト先で強盗事件に巻き込まれ、窮地に陥った祐希が、キヨさん(祐希の祖父)の活躍を目の当たりにして、「ジジイ、すげぇじゃん」と思ったほどおっさん達は大活躍!痛快で、それでいてホロリとさせられて、一気に読み切ってしまいました。おっさんの活躍ばかりじゃ花がないとお思いの方々、ご安心を(?)。キヨさんの孫・祐希とノリさんの愛娘・早苗ちゃんの恋話も盛り込まれています。高校生同士の初々しさ満載です。早苗ちゃんがチカンにあったところを祐希が助けたのがきっかけで(チカンを撃退したのはおっさん達ですが)、二人は親しくなっていくわけですが、ここがちょっとしたツッコミどころ。早苗ちゃんはお母さん亡き後、家事一切をこなしているしっかり者。今まさにチカンにあったばかりの早苗ちゃんが、初対面の祐希にホイホイくっついていくってのはあり得ませんね。根は優しい祐希ですが、金髪だし、言葉づかいはアレだし、ぱっと見、チカンより怪しいのに。シゲさんの奥さんが詐欺にあう話はとても周到だったのに、それに比べてちょっとこれはないですね。細かいことは抜きにして、十分楽しめましたので、次は『三匹のおっさんふたたび』を読みます!須藤真澄さんのイラストが三人のキャラとぴったりで素晴らしいです!特にシゲさん。実際にこんな人いそうだなぁと思っちゃいました。
2012年08月02日
今号の特集は「文月。被災地からの手紙」。東日本大震災から1年4ヵ月。時とともに交通や情報網はかなり復旧し整備されてきました。しかし、なぜか、被災者の方々、そして被災地という空間はどんどん遠いものになってきています。くり返される日常の時間の中で、私たちの心や身体からこぼれ落ちるかのように被災者と被災地は忘れ去られていないでしょうか?そこで、被災地である福島、宮城、岩手で暮らす人々に、震災の直後から変わったこと、身の回りの暮らしの出来事などを、"文月のふみ"にちなみ、お手紙のかたちで被災地の外にいる人々や読者のみなさんに伝えていただきたいとお願いしました。そして、11人の方から、思いのこもったお手紙が届きました。以前にも書いたことですが、「THE BIG ISSUE JAPAN」は継続的に東日本大震災の記事を取り上げてくれていますね。もうひとつ印象に残った記事は、雨宮処凛さんの「世界の当事者になる」。サブタイトルは「弱いものは死ねというのか」。今回は生活保護に関してです。「芸能人の母親が生活保護を受けていた」問題が話題になりました。その中には「生活保護=悪」と受け取られるような報道も。生活保護を受けるのが悪いことなのではなく、不正に受けるのが“悪い”のです。今年一月、北海道で、姉妹の孤独死がありました。生活に困窮していた姉が3度も相談に行ったにもかかわらず、どういうわけか生活保護を受けられず、手持ちのお金が底をつき、妹は凍死、姉は突然の脳内出血で死亡。受けるべき人が受けられず、受ける資格のない人が受けている・・・そして、やむなく保護を受けている人でも「国の世話になって」と自分を責めている人がいて今回の報道で追いつめられたのではないか、と書かれていました。「報道にショックを受けて外に出られなくなった」人もいたそうです。そんな人たちまで監視するようなことにならないように、と思います。(不正に受け取っている人に罪悪感なんてないでしょうから、 こちらはびしびし調査してほしいと思いますが。)〆は「ホームレス人生相談」!!「どうしたらこのつるつる頭を受け入れられるでしょうか」“人は見かけじゃない”とよく言うけれど、本人にしてみたら気になることはたくさんあるわけで…この難しい質問に、回答者はどう答えているのか。たぶん、ごくごく一般的な回答なんだろうと思いますが、回答者の関西弁があったかいんですわ~~!
2012年07月24日
累積疲労この頃疲れているせいか、引き寄せられるように読んでしまいました…“疲れたなぁ~~”と感じても、時間がたてば疲労感はなくなるんだろうと思っていました。 が・・・著者によると疲労は借金のようなもので、返済しないかぎりなくならないというのです!! そのうえにまた疲労がかさなっていけば借金で首が回らなくなるのと同じように大変なことになると警告しています。数年(あるいは数カ月)から十数年にわたって蓄積された疲労は、頭痛や微熱、胸の痛みや手足のしびれなどの症状となって現れるそうですが、検査をしても異常がみつかりません。(なので、堂々と休めないという非常にしんどいことになります。)お心当たりの方はぜひご一読を。【内容情報】(「BOOK」データベースより)頭痛、耳鳴り、胸の痛み、手足のしびれ…さまざまな症状を訴えて病院を訪れる人々。患者たちに日々応えてきた著者が説く累積疲労の怖さから、その自己治療法まで。【目次】(「BOOK」データベースより)開講の前に 時代の病「累積疲労」/基礎講座 累積疲労って、どんな病気?/実践講座 累積疲労を自分で治す/累積疲労Q&A 症例と治療のめやす/自己診断テスト あなたの累積疲労度は?/講義余録 アリとキリギリスの寓話
2012年07月17日
死を哭く鳥『氷姫』、『説教師』、『悪童』に続くエリカ&パトリックシリーズ第4弾。感想にまぎれてネタバレあります。ご注意!「アンナがルーカスを殺したって・・・。」前巻『悪童』の最後はホント衝撃的で、次はこの事件が核になるんだろうと思っていました。正当防衛とはいえ人を殺してしまったアンナは落ち込み、エリカ宅に引きこもり続けている状態(物語冒頭部分)。ダーン(エリカの元恋人)との散歩をきっかけに立ち直り始め、エリカとパトリックの結婚式の準備を嬉々として手伝うように・・・『悪童』のあの思わせぶりな終わり方は何だったんだ???それほど重要でない場面(または人物)に関してのしつこい描写があるかと思えば、「散歩に行った→気分が晴れた」で終わりっていうのも…が、妻に去られたダーンと、暴力夫に悩んでいたアンナが、ほのかに良い関係になったのはめでたいことです。今までの作品同様、過去の事件が発端となって殺人事件(はじめは単なる事故だと思われていた)が起きます。今回のキーワードは“飲酒運転”。哀しみは哀しみをよび、不幸は不幸を招くという切なさが残ります。とはいうものの、いつもこのパターンなので切なさも鈍り気味ですが。それにしても登場人物の多いこと!パトリックが勤務するターヌムスヘーデ警察署に赴任してきたハンナを筆頭に、TV番組のプロデュサー&出演者、ターヌムスヘーデ自治体の面々、そ・し・て・・・ メルバリの恋人になるローズマリーなどなど。細かい心理描写はいつものことですが、そんな人のことまで書かなくてもと思われるところもあります。(登場人物の名前も アンナ、ハンナ、ヨンナって・・・)そんな中、メルバリとローズマリーの話は・・・メルバリのいじらしさは意外でしたが、最後は「やっぱりね…」。彼には申し訳ないけど、世の中そんなに甘くないのですよ。エリカ&パトリック事件簿と銘打っていますが、今回エリカは結婚式の支度でそれどころじゃなかったようで、パトリック事件簿になっています。それとターヌムスヘーデ警察署のアンニカ、ユスタ、マーティンがそれぞれ重要なところで活躍してくれています。(メルバリは今までと同じ。ただし恋愛方面はがんばってました。)後半部分に、エリカが母親のことを調べ始めるようなことが書かれていましたが、アンナの事件のような肩すかしではないことを祈ります。同じ手を2回使ったらイカンよ・・・【内容紹介】(「BOOK」データベースより)酒を飲まない雑貨店経営の女性がパートナーとの喧嘩直後、飲酒運転で道路脇の木に突っ込み即死した。事故として処理しようとしたパトリックだったが、なぜか気になって資料室にこもるうちに、数年前の泥酔自殺に辿り着く。偶然、二つの出来事のあり得ない共通点を見つけ、さらに、スウェーデン各地で同じような事故と事件が起きていることが判明して…。世界で1000万部突破の大人気シリーズ第4弾。
2012年06月29日
鮫島の貌10本の短編が入った『新宿鮫』初の短編集です。短編だと鮫島の魅力が半減するんじゃないかと思っていましたが、そんなことありませんでした。相変わらずカッコイイですわ…(時々、鮫島の頭をなでなでしたくなるのはなぜでしょう?・・・)長編を読んでいるとどっぷり浸り切り、苦しくなったりするのですが、短編は軽い気持ちで読めますね。それでも読み応えは十分。特に、新宿署に赴任した鮫島と上司・桃井との出会いのエピソード「区立花園公園」、バーテンダーと客、そこへ現れた鮫島との会話を描いた「雷鳴」は秀逸です。『こち亀』の両さん、『シティハンター』の冴羽が登場する短編にはちょっと驚きましたが、まぁ、これもアリかなぁ~と・・・1~2時間もあれば読み終わってしまうので、気分転換にはもってこいです。【内容情報】(「BOOK」データベースより)新宿署刑事・鮫島。警察内の不祥事に巻き込まれたが一人屈せず、上層部や同僚には疎んじられ、食いついたら離れない単独捜査で、犯罪者には「新宿鮫」と恐れられる男。彼が街を行けば、ドラマが生まれる。新宿署異動直後の鮫島を襲う危機を描く作品や、腐った刑事や暗殺者との対決、人気コミック「こちら葛飾区亀有公園前派出所」両津勘吉、「エンジェル・ハート」冴羽?が登場する異色作、『狼花新宿鮫9』のサスペンスフルな後日談など、「鮫」にしかない魅力が一編一編に凝縮された全10作。【目次】(「BOOK」データベースより)区立花園公園/夜風/似た者どうし/亡霊/雷鳴/幼な馴染み/再会/水仙/五十階で待つ/霊園の男
2012年06月14日
5月21日現在の最新号は191号です。この188号はホイットニー・ヒューストンさんと、興味深い特集が載っていたので購入しました。ビッグイシュースペシャルに取り上げられているのは、2月11日に亡くなったホイットニー・ヒューストンさん。“偉大な歌姫”だったことを再確認させてくれる記事です。そして、特集記事は「市民がつくる地域電力 ― 若者と考える自然エネルギー起業」。 7月1日から自然エネルギーの固定価格買い取り制度が施行され、 その価格などは5月上旬に決まる。 これで、福島第一原発の事故以来初めて、 自然エネルギー転換への具体的な第一歩が踏み出されることになった。 この動きをさらに加速する鍵は、風力、太陽光、小水力、 バイオマスなどの自然エネルギー発電を、 過疎地も含めた地域おこしのための事業や 人々の雇用の場として使っていくことではないか。 また、電力を消費する市民が電力を選択して 購入できる仕組みも必要だ。 そこで、自然エネルギーにかかわる若い人たちに、 発送配電分離、地域独占の廃止、電力市場の自由化など、 その推進の仕組みを提案してもらった。 また、これまで自然エネルギー推進を地域で担ってきた先達に その経験を、さらに、新しく事業に取り組み始めた若い人たちに、 これからの展望を聞いた。原発事故後、俄然注目を浴び始めた自然エネルギーですが、その前から既に取り組んでいる先駆者たちがいらっしゃいました。その方達の地道な活動や、若い世代の活躍。全32ページのうち8ページを費やした力の入った特集です!毎号一番先に読むほど大好きな「ホームレス人生相談」。今回もいいですよ~~~!10歳の男の子からの相談で「6歳の妹のウソ泣きにどうしたら勝てますか」!!“う~~ん、これは大変だ。なんて答えたらいいかわからん!”と私なら思うところ・・・でも、いつも愛があふれているこのコーナー、10歳の子供が相手でも真剣で心温まる返答です。これ、大人が読んでもしみじみしちゃいますね。
2012年05月21日
ストロベリーナイト姫川玲子シリーズ第一弾。私は第四弾『インビジブルレイン』を一番先に読み、牧田の魅力に圧倒され、その勢いで第三弾の短編集『シンメトリー』、そして今回『ストロベリーナイト』を読了しました。まずグロイ描写が多いので、苦手な方は注意が必要です。誉田作品の『月光』とはまた違った不快感です。読書ブログを書くにあたって、できるだけ批判的なことは書かないように心がけているつもり(あくまでつもり)ですが、今回はちょっと辛口でいかせてもらおうと思います。いままで読んだ姫川玲子シリーズの中に、姫川の過去の事件のことがしばしば出てきました。詳しい内容には触れられていませんでしたが、“まぁ、大体あんなことなんだろうなぁ…”と勝手に想像しておりまして、この本を読んでみたら “あぁ、やっぱり”でした。(女性の過去の事件=性犯罪の被害者という路線はいい加減やめませんか?)姫川は裁判にも出廷し、堂々と戦う場面が作中にあります。その裁判シーンもひとつの山場なのでしょう。確かに姫川の証言(発言)はぐっときますが、傍聴していた大勢の警察官が敬礼をするのは現実味がなさすぎて、かえってシラけてしまいます。現実味がないといえば、捜査に関してもいえます。こんな猟奇的な連続殺人事件の捜査を、姫川の“勘”で進めていくなんて…若くして警部補に昇進したというふれこみなのに、姫川の実力ってそんなものなんでしょうか?(勘も実力のうち??)姫川を筆頭に、登場人物に共感できません。(姫川に共感できないのは、他の作品を読んだ時にも感じました。)辛い事件を乗り越えて人間的に深みが出てもよさそうなのに、姫川からはそれを感じることができません。泣いたり、怒ったり、放心したり… 作中ではいろいろな感情が出てきているのですが、こちらにはまったく伝わってこないのです。縦社会・男社会の警察の中でやっていくには仕方ないことだと思います。が、肩に力が入りまくりで、読んでいて痛々しさすら感じます。犯人も読んでいくうちに自然とわかってしまい、意外性が全然ありませんでした。【内容情報】(「BOOK」データベースより)溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動。
2012年05月14日
ステップファザー・ステップ久々に宮部みゆきさんの本を読みました。両親がそれぞれのお相手と駆け落ちしてしまい、二人きりで生活している中学生の双子の兄弟と、ひょんなことからステップファザー(継父)になった泥棒のおじさん。その三人が関わる7つの事件。双子が子供だけで生活しているという現実離れした設定が気にかかるものの、この双子、なかなかのキレ者で、ユーモア溢れる会話が楽しいです。ただのこまっしゃくれたガキお子さんではなく、泥棒さんに冷たくあしらわれてしゅんとなってしまったり、なかなか可愛いところもあって、そのバランスが絶妙です。ひとつひとつの事件はヒネリにひねったものではないので、重厚な宮部作品を期待する人には物足りないかもしれません。かる~~くさらっと楽しむ分にはオススメです。【内容紹介】中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてきたのは、なんとプロの泥棒だった。そして、一緒に暮らし始めた3人。まるで父子のような(!?)家庭生活がスタートする。次々と起こる7つの事件に、ユーモアあふれる3人の会話。宮部みゆきがお贈りする、C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作!
2012年05月11日
シンメトリー姫川玲子シリーズ第三弾!七編が収録された短編集です。・「東京」高校の屋上にあるプールから生徒が飛び降りた。手すりに残された指紋は不自然で、自殺とはいえない状況だ。どうやら水泳部の中には、いじめがあったようなのだか…“高校生にもなって、いじめとかやってるんじゃない!!”と思ったけど、大人社会にもいじめはありますもんね…・「過ぎた正義」心神喪失状態や未成年ということで罪を免れた二人の男が、不自然な死を遂げた。姫川玲子は、何者かが二人を罰したのではないかと考える。“こんなヤツに殺された人は浮かばれないよな…”というケース、自分に関係なくても噴飯ものなのに、当事者になってしまったらどうやって怒りを鎮めたらいいのでしょうか?…ということを考えてしまいました。・「右では殴らない」一人の女子高生がひょんなことから、違法な薬物を手に入れる。アブナイと思ったので自分では使わずに、援助交際の相手に渡すのだが…姫川玲子さんのお怒りはごもっとも!「右では殴らない」なんてことはおっしゃらずに、きっぱり殴っていただけたらよかったのに…・「シンメトリー」百人を超える死者を出した列車事故。原因は、踏切内に進入した飲酒運転の車だった。危険運転致死傷罪はまだなく、運転していた男の刑期はたったの五年。目の前で死んでいった顔見知りの女子高生、失った自分の右腕。元駅員は復讐を心に誓うが…(表題作)。行動に移すかどうかは別として、気持ちはすごくよくわかります。百人以上殺しておいて五年の刑期なんて…全然反省の色が見えない犯人を殺すことがなぜいけないのか?復讐を遂げた元駅員さんは五年の刑期なんてものじゃ済まないのでしょう…司法の限界をみるようで、とても切なくなります。・「左だけ見た場合」被害者の携帯に残された「045666」という番号は何を意味するのか?捜査にあたった姫川玲子は、過去にあった石膏ボード盗難事件にぶち当たる。他の短編とはちょっとカラーが違う(ように感じる?)作品。自分の中ではイマイチでした。・「悪しき実」「男が死んでいるので見にきてほしい」と通報が…そこに通報者の姿はなく、窒息死した男性の死体があった。すみません… 印象に残らない作品でした…・「手紙」かつての事件の犯人から、姫川玲子へ手紙が届く。それは玲子が先輩の女刑事と組んで捜査にあたった事件で、捜査一課に抜擢されたきっかけとなったものだった。う~~ん、これも印象薄い…「シンメトリー」のインパクトが強烈なので、その後の3編はすっかり影が薄くなってしまった感じです…短編集はさくさくっと読めるのがいいですね。ただ、この本は深く考えさせられる作品と、さらっと読み流してしまう作品との差が激しかったです。姫川玲子さんのキャラは、好きという人とちょっと…という人がすぱっと分かれる感じです。
2012年04月30日
小さなウォ-タ-ガ-デニング昨年ミニパピルスを買ってから、水辺の植物に関心を持つようになりました。この『小さなウォ-タ-ガ-デニング』の中に、パピルスを使った水生植物の寄せ植えが紹介されていまして、これがすっごく洒落ていたのです!まさに「インテリアプランツ」!!“ひと工夫加えるとこうなるのか…”という見本ですね。パピルスだけでなく、他の水生植物の使用例も掲載されています。「ちょっとしたことで随分ステキになるもんだ!」という参考例がたくさん!夏に読んだら納涼気分を味わえることでしょう!【内容】(「MARC」データベースより)ウォーターガーデニングとは、水辺の植物を使って、生活のなかに癒しや憩いを取り入れる園芸の1ジャンルです。睡蓮鉢や手のひらサイズの鉢に合わせたインテリア・プランツの作り方、育て方を紹介。全国水生植物園ガイド付き。
2012年04月28日
大人の流儀参考になるか、参考にすべきかは読んだ人次第。一番印象に残ったのは、夏目雅子さんとのことが書かれた章でした。その最後にあったチェチェンの老婆の言葉、「あなたはまだ若いから知らないでしょうが、 哀しみにも終わりがあるのよ」。心のどこかにとめておきたいですね。【内容情報】(「BOOK」データベースより)大好きな人に手紙を書きたくなったとき。上司に意見をしなければならないとき。人を叱らなければならないとき。大切な人を失ってしまったとき。嫌でもケンカをしなければならないとき。とてつもない悲しみに包まれたとき。こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのだろう。【目次】(「BOOK」データベースより)春(大人が人を叱る時の心得/不安が新しい出口を見つける ほか)/夏(「ゆとり」が大人をダメにする/敗れて学ぶこともある ほか)/秋(妻と死別した日のこと/生まれた土地、暮らしている土地 ほか)/冬(大人にも妄想が必要だ/女は不良の男が好きなんだよ ほか)
2012年04月26日
ドルチェ魚住久江、42歳。元捜査一課で、現在は練馬署強行犯係の女性刑事。彼女を主人公とした全6編からなる短編集です。事件も大がかりなものではないし、彼女にも派手さはないけれど、しみじみ読ませてくれる一冊になっています。(『月光』ですごい不快感を味わった後なので、余計そう感じました。) 上手に年齢を重ねた魚住久江の捜査は、人情味にあふれていて落ち着いた気持ちで読んでいられます。魚住と途中から加わった峰岸くん、いいコンビになっていくような感じです。【内容情報】(新潮社HPより)彼女が捜査一課に戻らぬ理由。それは人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていることが喜びだから――。練馬署強行犯係・魚住久江。本部復帰を断り続け、所轄を渡って四十二歳。子なし、バツなし、いまどき肩身の狭い喫煙者……。タフだけれど生き方下手な女刑事が駆ける新シリーズ!【目次】(「BOOK」データベースより)袋の金魚/ドルチェ/バスストップ/誰かのために/ブルードパラサイト/愛したのが百年目
2012年04月17日
月光これは… 後味悪い… 不快…なぜこんなに不快なのか考えてみたのですが…女生徒(涼子)と音楽教師(羽田)との不倫、それをネタに涼子を恐喝する2人の男子生徒(菅井と瞬)。恐喝されるがままになっていた涼子。どうもカギとなる登場人物たちが、揃いも揃って短絡思考の持ち主だったからなのでは?と思えてきました。短絡思考というより、勝手といった方がいいのかな?相手のことを考えているようで、実は全く考えていない。涼子の行動も決して褒められたものではないのに、どういうわけか「優しさ、強さ」にすり替わっている。 赦しの光 ここまで自分勝手な人達が、さんざんえげつないことをした後で、「赦し」を出してこられても…【内容情報】(「BOOK」データベースより)お姉ちゃんは殺された、同級生の男子に。偶然のバイク事故に見せかけて、殺されたんだ。美しくて、優しくて、心の真っ白な人だった。お姉ちゃんの死の真相は、あたしがはっきりさせるー。あとを追うように、姉と同じ都立高校を選んだ結花。だがそこには、覗いてはならない姉のおぞましい秘密がー。
2012年04月16日
カラスの親指ヤミ金融の汚い手口にひっかかり人生を狂わされた二人の中年詐欺師、武沢と入川(テツさん)。ヤミ金の取り立てで母を自殺に追い込まれたまひろとやひろの姉妹。やひろの恋人でマジシャンの貫太郎。この5人がヤミ金相手に仕返しを企てる!!うん、面白い!“こんなに上手くいくワケないよね…”と思いながらもぐんぐん引き込まれ、最後、ものの見事にやられました…騙された~~~!!でも… 明るい道筋が見えるラスト、こんなに清々しく騙されるのも悪くありません。あまり書くとネタがぽろっとばれてしまうので、ここまでにしておきます。とにかく面白い。細かいことは気にせず、最後まで一気に読みましょう!爽快です!!【内容紹介】(「BOOK」データベースより)“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んだ。戸惑う二人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは。
2012年04月15日
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