おぢさんの覚え書き

おぢさんの覚え書き

2017.04.23
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カテゴリ: 歴史/考古学/毛人
鏑川上中流域の矢尻を調べている。そこで困るのが鏃の年代(ここでは制作から使用停止までの時間差は無視)を知るにはどうしたらよいかという問題だ。考えられるのは以下のような方法だろうか。

①鏃の材質や形態
②鏃が出土した遺構と層位
③黒曜石水和層年代測定

それぞれ問題がある。①の方法は土器のように編年が確立されていないので他の手段による編年作業から始めなければならない。鏃は小さく形態も単純なため土器ほどの形態差が生じにくい。ほぼ同じ形態が非常に長い期間使われたり、古墳時代の鏃のように多様な形態が同時期に併存したことも考えられる。などの問題がある。②の方法も遺構の年代が特定されることと、鏃が遺構に伴うものであることが重要になる。③の方法は黒曜石にしか使えないため利用できるのは黒曜石製の打製石鏃に限られる。

いずれ、上記の方法で推定した年代を相互検証ということになるのだろうか。とりあえず汎用性の高い②の方法を考えるのだが、発掘調査報告書に必ずしも遺構の推定年代が載っているわけではない。

そうすると、土器の編年で割り出す必要が出てくる。当初、樽式土器の一般的な編年 [1] で推定すれば十分と考えていたのだが、この地域の発掘調査報告書を読んでいると樽式の一般的な編年では対応できないケースや判断に迷うケースが多いように思えた。東西交通の経路に位置して、箱清水式や吉ヶ谷式の影響を色濃く受けて複雑な様相を呈しているのが原因かもしれない。

鏑川上中流域の土器を基にした編年は既にいくつか発表されている。おぢさんの知るところでは以下がある。


pp.229-245『中高瀬観音山遺跡』(1995) 群埋文
pp.690-709『南蛇井増光寺遺跡V C区・縄文・弥生時代』(1997) 群埋文
pp.325-328『白倉上野遺跡(下小塚V遺跡)』(2014) 甘楽町教育委員会

これらは発掘報告書掲載の編年なので各遺跡を対象としている。相互に若干違う視点で書かれたこれらの報告書から共通する編年基準を抽出できれば、この地域全体に適用できる編年を作成できると考えた。おぢさんの労力の問題もあって上記のうち『中高瀬観音山遺跡』を除いた3つの編年を以下のシートで比較した。冒頭の「鏑川上中流域土器編年」シートにこの地域に適用できると思われる各期の特徴を示した。土器の編年図も示せるとよいのだが今回は見送り。

鏑川上中流域土器編年

各編年が対象としている期間は若干異なり以下のようになっている。


「器種構成」、「施文位置」、「簾状文の節」、「波状文スタイル」、「口縁部折返し」、「全体的形態」、「系統」について各編年の各期の記述からできるだけ共通する要素を抽出して「鏑川上中流域土器編年」に反映させたが若干おぢさんの推測で補った部分もある。

「器種構成」については一般的な樽編年と各編年が一致しているように思われた。片口の出現時期が2期に遡るかどうかは不明な点だ。

「施文位置」については『南蛇井増光寺V』では甕の口縁は無文が主体としているのに対して『白倉下原・天引向原遺跡Ⅲ』では「口頚部全体に波状文が及ぶ」とあり、報告書に示されている図中のⅢ段階の甕の口頚部を見ると波状文が充填されているものの方が多い。これは鏑川流域内での地域差かも知れないが「鏑川上中流域土器編年」では「口縁は無文が主体だが、口縁全体に波状文を施す甕も現れる」としておいた。

「簾状文の節」について『白倉上野遺跡(下小塚V遺跡)』では「3連止め」がⅡ期(古)=樽2期に現れることになっているが、一般的には2連から3連への変化は樽3期としている場合が多いのでそれに従いたい。

「波状文スタイル」について同一時期の記述が各報告書になく心もとないのであるが、1期は『白倉下原・天引向原遺跡Ⅲ』の記述に従い、2・3期は『白倉上野遺跡(下小塚V遺跡)』を利用した。

鏑川上中流域では単口縁が主体なので、「口縁部折返し」は一部にしか適用できないのだが、各報告書の記述を合わせて1段から2段へ、壺から他の器種へという流れを推測した。


樽式一般にみられる球胴化は各報告書でも指摘されている。しかし、実際の土器をみると球胴化とは程遠い器形が見られる。これはおそらく「系統」と関係するのだが、頸部が緩やかに湾曲する吉ヶ谷の甕や、胴部下位が大きく屈曲する箱清水の影響が当地域では強いのではないか。もっとも一般的樽編年でも頸部が緩やかに湾曲する器形 [2] は含まれていて、必ずしも他系統ではないのかもしれない。

「系統」に関しては、当初から箱清水系が少数含まれ継続し、3期を通じて吉ヶ谷系の影響が増加する。その他外来系の影響が3期に現れ、4期に急増するという流れは『南蛇井増光寺遺跡V』で示されているが、吉ヶ谷系の影響は他の報告書でも指摘され間違いないところだろう。

その他、頭に入れて置きたいこととして。
・この狭い地域内でも地域差がある。


[1] 若狭(2007)『古墳時代の水利社会研究』
[2] p.26 若狭(2007)の甕Ⅵ類


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Last updated  2017.04.23 21:33:28
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