おぢさんの覚え書き

おぢさんの覚え書き

2018.09.29
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カテゴリ: 歴史/考古学/毛人
木島平村の根塚遺跡を訪れた。

朝鮮半島の加耶地方からもたらされた渦巻文装飾付鉄剣が出土したことで有名な場所である。遺跡は弥生後期の円形墳丘墓、集石墓、木棺墓が点在する小さな丘である [1]

周辺は田んぼが広がっており。大塚・平塚・小塚と呼ばれる丘が海に浮かぶ島のように田んぼから突き出している。これらの丘は古墳のようにも見えるが、基部の堅い安山岩が残って出来た自然残丘と考えられている。

根塚遠景。右側の杉木立が根塚。


大塚。


根塚から平塚を望む。平塚からも弥生時代後期の住居址が1軒見つかっている。

詳細は以下の報告書を参照。
 ​ 根塚遺跡




根塚は弥生時代後期には墓域として利用されている。墓の遺構が根塚の丘に点在する。遺構のおよその位置を以下の図に示す。

『根塚遺跡』「第1図 グリット設定図」に加筆《拡大可能》

遺跡の中心には円形墳丘墓(黄色円)がある。周溝までの斜面には河原石で2、3m幅の貼石がされていたとされる。円形墳丘墓の中央には南側が開口した円形周溝墓(オレンジ円)が有り、そのほぼ中央に6号木棺墓が位置する。根塚遺跡の木棺墓は木棺自体は残存せず痕跡から推定される。棺底からは細形管玉73点、ガラス小玉が134点、側板溝より3号鉄剣が出土した。そのほか、円形周溝墓の墳丘と周溝などから勾玉1点、管玉2点、砥石1点、多量の弥生土器が検出されている。


円形墳丘墓(『根塚遺跡』巻頭図版2より)

円形墳丘墓の北西には1~3号の集石墓が存在する。いずれも河原石を使用している。丘の西側では木棺墓が6基検出された。7号木棺墓に接して2号鉄剣が出土している。7号木棺墓の周りは三重の柱穴群が楕円形に取り囲んでいるのが検出され、その一番外側の楕円内で1号鉄剣が検出された。




2号鉄剣(木島平村『根塚遺跡』巻頭図版4より)

根塚遺跡の一番のお宝。2号鉄剣は朝鮮伽耶地方で製作された儀礼用の剣と考えられている。長さ74cmで弥生時代の鉄剣としては最大級。根塚遺跡では他に弥生時代の実用剣が2本出土しておりこちらも朝鮮半島で製作されたものと考えられている [2] 。渦巻装飾の類例は国内では京都市八幡市のヒル塚古墳(4世紀後半)にある。朝鮮半島では慶尚南道金海市酒村面の良洞里古墳にいくつか見られる [3] 。第162号の轡、第212号出土の鉄剣、第313号出土の鉄剣等がある。これら鉄製品は土坑木槨墓から出土し。第162号はA.D.2C後半、第212号はA.D.2C末~3C初に比定されている。

八幡の古墳と鏡(7)-ヒル塚古墳と渦巻状装飾付き鉄剣- (Y-rekitan 八幡)
京都府立山城郷土資料館 - 邪馬台国大研究
  ページ 3/4 辺りに写真あり
「八幡市ヒル塚古墳の発掘調査」『京都府埋蔵文化財情報』第33号
  (京都府埋蔵文化財調査研究センター)
慶州舍羅里130号墓  ページ中ほどに渦巻装飾写真あり
蔚山下垈遺跡43号墓  ページ中ほどに渦巻装飾写真あり
金海良洞里162号木槨墓  ページ中ほどに渦巻装飾写真あり
蕨手文様は伽耶出身王族のシンボル? (ひもろぎ逍遥) 後の時代であるが関連?

根塚遺跡の弥生時代の鉄剣はいずれも剣先を西に向けた状態で見つかっている。

これらの鉄剣や墓の年代推定の決め手となる土器形式は、報告書によると円形墳丘墓のあるK区の土器は尾崎式段階の終わり頃から箱清水式段階。1号と2号鉄剣が出土したB区の土器も尾崎式段階から箱清水式段階だがK区よりも若干新しい様相とされる。報告書で引用している「99シンポジュウム 長野県の弥生土器の編年」が手許にないこともあって、樽式との併行関係がいまいちはっきりしないが、だいたい樽式2期末期から3期初頭だろうか。朝鮮半島の渦巻装飾品の年代とも近いと思える。

石川県埋蔵文化財情報 [PDF](石川県埋蔵文化財センター)
  長野県と石川県の併行関係が参考になる。

鉄剣の渦巻装飾からは蕨手刀を、二股に分かれた柄からは新保田中村前遺跡(高崎市)の鹿角製の柄を連想したが、関連はあるのだろうか?蕨手刀は7世紀後半に科野と上毛野で発生し、その後東北に波及したものと考えられるので直接の関連は考えにくい。鹿角製の柄は弥生後期と思われるので関連があるのかもしれない。


新保田中村前遺跡 鹿角製の柄

 ​ 2009/02/26 発掘情報館だより ​(群馬県埋文)
  鹿角製の柄を取り付けた鉄剣の復元画像あり

鉄剣、ガラス小玉、翡翠製の勾玉という副葬品や、円形周溝墓の主体部の木棺墓や礫床墓などは有馬遺跡(渋川市)とよく符合する [4] 。有馬遺跡の礫床木棺墓という墓制は長野方面から伝わったと考えられ、両遺跡ともに河原石を主に使用している。



〔左〕根塚遺跡のガラス小玉・管玉・勾玉 〔右〕有馬遺跡のガラス小玉・勾玉
(『根塚遺跡』巻頭図版6、『有馬遺跡Ⅱ 弥生・古墳時代編』《本文編》巻頭図版より)

有馬遺跡の集落は樽式の1期から形成され、3期に最盛期を迎え、古墳前期にも継続する。3期の単位墓群・周溝墓が27基、主体部として礫床墓87基が検出されたほか、土器棺墓46基も検出されている [5] 。時代的に根塚遺跡の礫床墓と重なっていた可能性もあるだろう。副葬品は、総数で鉄剣8本、鉄釧2、銅釧4、銅鏃1、翡翠製勾玉3、石製管玉8、ガラス小玉322などが見つかっている [6] 。ガラス小玉のガラスは両遺跡ともカリライム系ガラス。管玉も両遺跡で多数出土している。根塚遺跡の管玉は鉄石英と碧玉製、有馬遺跡の報告書では赤色ケイ質岩と報告されているものが多いが、根塚で鉄石英と報告されているものに相当するだろう。鉄剣の剣先は足元の方向を向く傾向があるようだ。主体部の方向は決まっていない。ガラス小玉は頭部付近、剣は腰のあたりから出土することが多い所から見ると、身に着けていたか、それに近い状態で埋葬したのだろう。

日本海側からの金属器の流入は、北近畿(特に丹後)→能登→善光寺平→毛野というルートを想定できる [7] 。北陸からの影響は根塚遺跡の土器からも窺われる [8] 。この道は丹後から、さらに朝鮮半島に通じていた。

出土品は村内の「農村交流館」内「木島平村ふるさと資料館」に保管されているが、担当者が不在で収蔵庫は見ることが出来なかった。事前に問い合わせた方が良い。

資料館には村内の弥生時代後期の三枚原遺跡出土の土器が数点展示されている。



[1] 吉原佳市ほか 2002『根塚遺跡』木島平村教育委員会
 根塚遺跡の遺跡および遺物に関する基本的な情報と、遺物の図版はすべてこの報告書に依った。
[2] p.112-137 大澤正己・影山英明「第Ⅶ章 鉄剣分析結果」『根塚遺跡』
[3] p.65『根塚遺跡』
[4] 佐藤明人ほか 1990『有馬遺跡Ⅱ 弥生・古墳時代編』群馬県教育委員会
 有馬遺跡の遺跡および遺物に関する基本的な情報と、遺物の図版はすべてこの報告書に依った。 
[5] p.9『有馬遺跡Ⅱ 弥生・古墳時代編』《本文編》
[6] p.466『有馬遺跡Ⅱ 弥生・古墳時代編』《本文編》
[7] p.27 深澤敦仁 2015「樽式土器文化圏の人々が感じた新たな時代のはじまり」
   『ゆくもの くるもの』
 深澤氏は田口氏と、豊島氏の言葉を紹介しながら弥生後期の情報ネットワークの帰着地として
 樽式土器文化圏を位置づけている。
 「田口一郎氏は樽3期の状況を「今、内陸の有馬の地から、遠く丹後の海を望む。」と表現し
 ている。」「豊島直博氏が「東日本型金属器文化圏」と示した動態」
[8] p.47, 54 『根塚遺跡』K区出土67甕が北陸系土器とされている。
 p.39-40, 56 田嶋明人 2009「古墳確立期土器の広域編年」​ 『石川県埋蔵文化財情報』第22号
  [PDF](石川県埋文)ではB区出土101高坏が能登宝達志水町宿東山6住例に酷似し、漆町2群併行としている。

関連文献
 福島孝行 2016 「洛東江流域の源三国時代墓制と丹後・但馬地域の弥生時代後期墓制」 [PDF]
  『京都府埋蔵文化財論集 第7集』 (京都府埋文)


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Last updated  2018.09.30 06:36:15
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