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~第9鬼・笑いの館~ボクシングのデビュー戦から数日、試合で負ける絶望を知った俺は落ち込んでいた。その憂鬱を晴らそうとスナック「念」に来たが、看板が変わっていた。「あれ、店が変わってるじゃねぇか」スナックの名前は「念」から「笑いの館」になっていた。中に入ると店の雰囲気が変わっていた。前は薄暗くて不気味さを演出していたが、今は一変して明るく清潔感を強調していた。壁の色も白で統一してある。カウンターの場所も変わっていた。変わらないのはママだけだった。訊けば除霊の意味で、神社から神主を呼んでお払いをしてもらったと言う。笑いは景気の験担(げんかつ)ぎにもなるらしい。それに他人を恨んでストレスを解消するというのは、人としてどうかとも思うし、確かに笑うということは身体にも精神衛生上にも良いに違いない。それにしてもママや客達は、止め処(とめど)なくよく笑っている。飲めば飲むほど笑い声は大きくなるし、それはもう甲高い奇声に近かった。口元だけでなく、目じりも吊り上がっていた。何かにとりつかれているようにも見える。一人だけ浮いていた俺は辺りを見回すと、神棚があるのに気がついた。お稲荷さんが祭られてあるという。そういえば皆、狐の顔に似ていた。 完。
2009年01月21日
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~第三話・普通の人妻がホストに嵌(はま)る理由(ワケ)~ 庄司美幸(35才)は、都内の高級住宅街に住む専業主婦である。小学生の子供と主人を自宅から見送ると、独りソファに座った。公務員の夫、成績優秀な息子、家柄だって他人も羨(うらや)む上流階級である。何の不自由もない、満たされた家庭と毎日の生活……。しかし、だからこそ何か物足りなさを美幸は感じていた。美幸 (何か…急に独りになるこの時間って、いつも淋しいし、心の隙間が出来そうな…変な気分になる……)美幸 「何か、未知の危険な刺激が欲しいな……」 美幸は、TVを見たら『朝ホストの特集』をやっていた。美幸は興味深そうに見入った。 「へぇ~、朝からホストクラブ?」 TVでは、A子にインタビューを受けるホスト・愛澤がいた。愛澤 「風営法で警察の取締りが厳しいですから、深夜営業はできません。一部が、夜七時~十二時まで。二部は、日の出~昼の十二時までとなっています」A子 「朝のお客さんって、どんな人がいるんですか? 愛澤さんには、いつ逢えるんですか?」愛澤 「出勤前のOLの方とか専業主婦の方なんかが、いらっしゃいますね。僕は二部の営業ですから、もしこの時間に暇されてる女性は『DREAM』の僕に逢いに来てくださぁ~い」A子 「朝から、キャバクラやホストクラブで賑わってる歌舞伎町でした」 興味津々でTVを見ていた美幸は、胸の鼓動が高鳴った。 歌舞伎町『DREAM』の前に、美幸は立っていた。化粧とセクシーな洋服で、見違えるように変身していた。元々彼女は、くびれたウエストにFカップの美巨乳という抜群のスタイルを持ち、顔と雰囲気はどこか淫靡(いんび)なものを感じさせて、それが何ともいえない男のスケベ心をくすぐった。美幸 「ここだ」 心臓の鼓動を抑えながら、彼女は一階のドアを開けた。 「恐いもの見たさっていうか、いや騙されたりなんかしないから大丈夫……」 と、恐る恐る中を覗いた。「いらっしゃいませ~ッ!」 新人ホストが待ち受けていたように叫ぶと、美幸に訊いた。ホスト 「ご指名は?」美幸 「愛澤さん…を……」 と、たどたどしく答えた。エスコートしながらインカムのマイクに伝言した。 「素敵な女性一名様、ご来店です」ドア前の、大きな生け花の横を通ってフロントの前を通りホールへ。美幸 「うわぁ」そこは『世間の朝』という一般常識とはかけ離れた異質の空間であった。美幸は、目の前に飛び込んできたホストや客たちの風景を一望しながら、未知の世界を垣間見た。 (私はいつもこの時間、独りで暇を持て余してた。でも、ここは……) 美幸の目前に現れた愛澤。愛澤 「いらっしゃいませ。今日はありがとう御座います。初回ですから、お安くサービスしますからご安心ください」 美幸のうつむいた顔からは、その優しさに喜んだような笑みが洩れていた。愛澤は、美幸の手を取って自らエスコートした。 そして、色んなホストたちに囲まれた彼女は雲の上の夢心地のような心境であった。美幸 (人の妻であり母であることなんか忘れてしまいそうっていうか、私はここでは一人の女……)字幕 心の隙間に入り込んだのは、ホスト遊びだった。 美幸は、へそくりや貯金を崩しながら通った。美幸 「週二度、非日常的な刺激を味わうぐらい…別に悪いことしてるわけじゃなし、バレなきゃ平気!」 罪悪感を覚えることなく、コンビニのATMから二十万の現金を引き出した。しかし、通帳の預金残高が見る見るうちに減っていくとともに、美幸の心境は変化していった。家族と夕食を食べていても、独り蚊帳の外。美幸 (預金残高が減るとともに、不安になっていく。この先、どうなるんだろう?)字幕 ホスト依存症。であることを、美幸は自覚し始めていた。美幸 (知らず知らずのうちに、蟻地獄に引きずり込まれていくような……) 危険な刺激を得続けるために、さらなる欲望の道へ駆り立てた。字幕 気がついたら美幸は、待ち合わせ型・デリバリーヘルス『谷間の百合』という人妻風俗で働いていた。 客と待ち合わせしてホテルへ入った美幸は、シャワーを浴びてプレイ突入。美幸 (夫に対する罪悪感はあるけど、本番するわけじゃないから) と、自分を正当化した。そして、ホストクラブでの乱痴気騒ぎ。 そんなある日……、夫 「忘れ物しちゃったよ」夫の英彦は自宅のチャイムを鳴らすが応答が無く、部屋に入っても妻はいない。携帯で呼び出しても通じなかった。不審に思った彼は携帯で通話した。相手 「ありがとう御座います。こちら相田興信所です」夫 「妻の素行調査を、お願いしたいんですが」 ホストクラブから風俗での仕事、そしてタクシーで自宅へ帰る美幸。美幸 「早く帰って、夕食の準備をしないと……」字幕 結局、美幸を待っていたのは家族ではなく離婚であった。 愛澤の一言。「女を堕ちるところまで落すのがホストの仕事だけど、それが出来る俺はやっぱ魅力的ってことだよね!」END。
2009年01月10日
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