~文春文庫、 2016 年~
火村英生&作家アリスシリーズの短編集です。4編の短編が収録されています。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「アポロンのナイフ」 東京で、17歳の少年による高校生に対する連続通り魔殺人事件が発生した。アポロンと渾名された犯人が逃走中、大阪でも高校生が殺害されているのが発見された。近い時間に、二人の男女が殺されていた。犯人は逃走中のアポロンなのか、アリスが公園で話した少年はアポロンだったのか…。
「雛人形を笑え」 人気上昇中の漫才ユニット、雛人形のメビナが、自宅で奇妙な体勢で死んでいた。事故だったのか、殺人だったのか。メビナの相方、帯名やマネージャー、帯名の元相方など、メビナの周辺の人物に聞き込みをしていくが、なかなか決定的な手がかりが浮かんでこなかった。
「探偵、青の時代」 火村英生が大学生の頃に見せた名探偵の片鱗。雨の中、友人のもとでパーティーが開催されていた。火村が到着する前に、メンバーはある秘密を共有し、火村には黙っておくことにするが…。
「菩提樹荘の殺人」 アンチエイジングで人気を博していていたカウンセラーにしてタレントが、別荘近くの池のそばで殺されていた。被害者はなぜか、下着一枚以外は何も身に着けていない状況だった。被害者と関係のあった複数の恋人たちへの聞き込みを行うが、アリバイからは絞り込みが難しい状況だった。そんな中、現場の池から重要な証拠品が発見される。
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どれも、大がかりなトリックはなく、真相に至るまでの論理を楽しむ物語でした。ただ、「雛人形を笑え」はその中でも異色です。お笑いと作家に通じるものや、さらにお笑いが抱える難しさなどについての作中アリスの考察を興味深く読みました。
印象的なのは「探偵、青の時代」。アリスさんが学生時代の知り合いとばったり出会い、昔のエピソードを聞くのですが、若い頃の火村さんの様子もさることながら、論理的な解決も面白いです。また、第一話の「アポロンのナイフ」は単なるパズラーではなく、近年の問題を考えさせられる物語でした。
久々に有栖川さんの作品を読みました。やはり楽しい読書体験でした。
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