M17星雲の光と影

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2006.01.03
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カテゴリ: その他
 昨日は朝からどんよりと曇っていたが、やることもないので、昼前に明治神宮に初詣に出かける。何年か前、元旦に明治神宮に行った時には、砂利道に砂埃がもうもうと舞う中、参道をまるですもうとりのすり足のように何センチかずつにじり寄っていき、賽銭を投げるまでに一時間近くかかったように記憶しているが、さすがに二日、それもぽつぽつと雨が降り始める天候では、参道そのものはスキーの滑降のプレイヤーがひょいひょいとポールをかわしていくように人をかいくぐって歩いていける状態。人の出入りが規制されるのは門の入り口あたりから先だけである。雨は次第に本格的な降りになり、傘からぽつぽつとしずくが垂れはじめる。でもまあ、このくらいは正月の儀式をやっといてもいいかなという感じですね。よく考えると、毎日勤めている職場から徒歩で10分のところにわざわざ一時間かけて来ているわけで奇妙な感じもしないではないのだけれど。

 電車の中で「2」について考える。入試小論文で「人生で二番目に大事なことについて述べよ」という出題があって、なんか面白そうだなと思ったまま、練習にも使わず、塩漬け状態にされている。見た時の第一感としては、感覚的に悪くないなと思ったのだが、自分で何を書くかと考えると、これがいっこうに浮かばないのである。出題をする側としては、自分でなんにも浮かばないテーマは出さないというのが最低限の節度だと思っているので、まだこのテーマをとりあげる機会が訪れない。

 なぜ何も浮かばないのだろう。どうやら「二番目に大事なもの」なんて、そもそも大事なものとはいえないんじゃないかということのようだ。人生で自分にとって大事なものがあったとして(実際にそれはあると思うのだが)、それらに番号を振り、優先順位をつけるという発想自体に問題があるように思われる。

 「二番目に愛してるよ」という言葉は、要するに「愛してない」といっているのと同じ。そういうことなのである。

 ゼロか一か。この二進法の世界では、あるかないかという考え方をすればよいので、ある意味では単純明快、もやもやとしたグレーゾーンが存在しえない。昭和30年代には、こういう明快さが社会を包んでいたように感じられる。そして、まずは原則的にみんな「ない」ところから始まった。そこに自動炊飯器が、自動洗濯機が、(この「自動」ということばが上につくところが妙になつかしい。炊飯や洗濯が「自動」的には行われなかった時代については、今の子どもたちには特別な説明が必要になるだろう)、そして、電気冷蔵庫、電気掃除機、カラーテレビなどが、一つずつ「ある」状態に変わっていくことで、その家にともる灯りが一目盛りずつ照度を上げ、父親の威光が少しずつ上がっていく。それは実にクリアな時代だった。

 思えば、この国の家庭の崩壊が加速度的に進行してきたのは、家庭に二台目のテレビが存在しはじめた頃ではなかっただろうか。「ある」か「ない」かから、どのようにあるか、何台あるかという時代へ。「ある」という状態が無数のグラデーションの中の位置づけとしてとらえられる時代。そこからある種の混迷と淀みが生まれてきているようにも思える。

 人生で二番目に大事なこと、それは自分にとって大事だと思われることを序列化しないことではないか。人間にとって大事なことはいつも「ひとつ」なのだ。そのひとつが個々に独立した状態で、複数存在しているのが大切なもののあり方であり、そこに順位をつけることなどできるはずがない。だから、人生で一番大事なことは「大事なこと」そのものであり、二番目に大事なことは「大事なことに順位をつけない」ことなのだ。

 こう考えた瞬間、二番目に大事なことは自らの定義によって自然消滅する。だから、人生で二番目に大事なことは存在しえないということになる。このテーマについて中味のある文章が書けるわけがないのである。

書けなくて正解だったというわけである。





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Last updated  2006.01.03 09:55:50
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和久希世@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) >「彼はこう言いました。「それもそうだ…
kuro@ Re:「チャンドラーのある」人生(08/18) 新しいお話をお待ちしております。
あああ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 非常に面白かったです。 背筋がぞわぞわし…
クロキ@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光2(03/03) 良いお話しをありがとうございます。 泣き…
М17星雲の光と影@ Re[1]:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) まずしい感想をありがとうございました。 …
映画見直してみると@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 伊集院がトイレでは拳銃を腰にさして準備…
いい話ですね@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) 最近たまたま伊丹作品の「マルタイの女」…
山下陽光@ Re:大江健三郎v.s.伊集院光1(03/03) ブログを読んで、 ワクワクがたまらなくな…
ににに@ Re:非ジャーナリスト宣言 朝日新聞(02/01) 文句を言うだけの人っているもんですね ま…
tanabotaturisan@ Re:WILL YOU STILL LOVE ME TOMORROW(07/01) キャロルキングの訳詩ありがとうございま…

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