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2025年12月01日
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カテゴリ: 御朱印:埼玉県
関東平野と中部地方の平野部を隔てるように、鬱蒼とした森と岩石が形作る峰々からなる秩父山地が広がっています。この秩父山地は山犬の伝承が顕著に残っており、それにい付随する形で山岳修験道も盛んに行われていました。平地とは隔絶された山の世界において、修験者たちは現実では考えられないような奇妙な出来事を何度も体験した事でしょう。それらがいつしか霊場の開創譚となり、後世にまで伝わり、今日に至るのならば、これほど面白いことはありません。
秩父山地の南方、妙法ヶ岳に鎮座する三峯神社も、山中での奇蹟的な体験が由緒に反映されているのかもしれません。山犬の伝承が色濃く残る山中へと、今足を踏み入れました。

2025.11.1
三峯神社


妙法ヶ岳の東麓、現在落石により分断されている県道140号の埼玉側。行き止まり地点のすぐ側に、三峯神社の一之鳥居が建っています。ここが登拝の起点となるのです。



鳥居の先には長い長い参道が伸びています。



すぐ側では狛犬ならぬ山犬が睨みをきかせておりました。



かつては本当に狼が何頭も生息していたんではないですかねぇ。



この大橋を越えると本格的に昇り坂が始まります。



霧けぶる峰々を分けて清水が流れていきます。これが関東平野に注いでいるんですねぇ。







ここから舗装は無くなります。文字通りの山道が伸びています。



山の斜面からは水が湧いており、これがもとでたびたび土砂崩れが起こるようです。秩父の御山が岩がちなのも、長年水によって表面の土が削られたからなんでしょうか。



登山道も半ばまで来ると、かすかに水のせせらぎが聞こえてきました。それは段々と大きく響くようになり、音のもとまで近づいてみると一筋の滝があるではないですか。



見えにくいですが滝の上部の木には注連縄がしてあり、この滝が信仰の対象となっていることは確かでしょう。近くには神社も置かれており、禊ぎ祓えの場という雰囲気が濃厚に漂っていました。この滝の名は清浄の滝。登山者の身も心も清めてくれます
今回の登山で最も印象に残ったのはこの滝で、苔の生し加減や涼やかな空気、上から降り注ぐ陽光、足を這い登るサワガニなどの要素が混然一体となって、強く脳裏に焼き付きます。登山終わりに茨城の友人と共に滝に手を合わせ、今日の無事を感謝し、明日の筑波山の道行安全を祈願しました・・・!



因みに祠には清浄宮と書かれていましたが、これは祭神不明。場所や名前からも祓戸大神や住吉三神といった祓えの神格が祀られていそうですが・・・。



清浄の滝から少々登った所には薬師堂跡があります。これはかつての女人堂でもあり、以前は女性の方はここまでしか上ることができませんでした。今ではそんな制限は当然なく、誰でも自由に登拝することができます。下に看板の説明書きを載せますねぇ。




薬師堂・施宿供養塔

 この道は、三峰山表参道といい、ロープウェイも車もなかった頃の三峰参詣のメインルートでした。この場所はその頃の参詣者のための休憩所だったところで、薬師如来の堂(女人堂)が併設され、病人などの看護も行っていたところです。遥かな道程を歩いて旅するものにとっては、医薬の神、薬師様がどれほど頼りになったことでしょう。
 また、ここは三峰施宿供養塔が建立されています。これは、当時登山を許可されなかった女人や、病気になった人、積雪のために進退できない人を無料で宿泊させたところで、その人数が3000人になったのを記念して明和9年(1772年)に塔が建てられました。
埼玉県・環境庁



薬師堂から神社までは結構かかります。途中には無人の宿のような建物が幾つもあり、当時の繁栄ぶりを伺わせます。
息も切れてきた頃、三峰神社の奥宮遥拝所についに到着!







山間に広がる幾つもの民家・・・。あそこが秩父でしょうねぇ。随分と遠くまで来たもんだ。



遥拝所の向いには二之鳥居がしっかりと建っていました。当然の様に両部式!神仏混淆の霊場である証です。ちなみにこの近くに遠宮という社殿があったようなんですが、今回は参拝し忘れてしまいましたので、由緒だけでも載せたいと思います。




遠宮(御仮屋)

 三峯神社の御眷属(お使い神、お犬様で大口真神と称する)のお宮です。御春属は深い山中に身をひそめられている為ここを仮のお宮としてお祭りを行うので遠宮(お仮屋)と呼んでいます。
 今から1900年ほどむかし、十二代景行天皇の皇子 日本武尊が東夷御平定のかえり道に山梨県から奥秩父の山々を越えて当山に登り、初めて三峯神社を祀られた時、道案内をつとめたのが山犬で、その忠実さと勇猛さによって三峯神社の御眷属に定められたと伝えています。
 お犬さまはその霊力で三峯信仰の中心となり、山畑を荒らす害獣熊・猪・兎等を追い払い、家々を守護しては火防・盗難除・諸難除の神と崇められています。



境内説明書きより引用

かつては山中にニホンオオカミがいたんですねぇ・・・。絶滅してしまった現在でも、奉斎する社は建ち続けているという・・・。なんだか哀愁が感じられますねぇ。

鳥居をくぐると珍しく下り参道です。幾つもの行燈が立ち並び、奥に控える随神門へと誘います。まずは、門の手前を右にそれてヤマトタケル像を拝みに行きましょう。



高らかに腕を挙げて参拝者を迎えるのは、三峯神社を草創したヤマトタケルその人です。十二代景行天皇の皇子でありながらも、九州や東国、果ては陸奥まで平定に向かったとされる伝説上の人物であり、その実在性は低いみたいですね。
各書籍などでも言われている通り、ヤマトタケルは各地の勇士の説話が寄り集まって形成された架空の英雄だといわれています。この話を受けて、三峯神社の開創譚なども以前はヤマトタケルではなく、別の主人公がいたんでは?と思ってしまいます。

面白いことに、津軽ではヤマトタケルが来ていないにも関わらず、ヤマトタケルを祭神とする神社が幾つかあります。 津軽三不動尊 の札所 ​ 長谷澤神社 と​ 中野神社 ​、あとは​ 十和田神社 でしょうか。これらの神社はもともと修験の霊場であり、ヤマトタケルとは無縁の場所でした。ではなぜ、ヤマトタケルが祭神となっているのか・・・おそらくこれは明治初期の神仏分離・修験禁制と関係があるのではと思っています。日本神話において知名度抜群のヤマトタケルを祭神とすることで、霊場の存続を図ったのではないでしょうか?
こうした視点で考えると、三峯神社の開創譚も、まず話のモデルとなる人物がおり、神社の格を上げるためにヤマトタケルが行ったことにしたんではないかと思ってしまいます。本当の所どうだったのかは、まったくわからないんですがね。



話も道も本道に戻しましょう。
こちら随神門、あちらこちらに荘厳な装飾がなされています。・・・山の中腹にこんな豪華な社殿があるなんて誰が想像するでしょうか?本当にすんごい豪華さです
ここはもともと神仏混淆の霊場ということで・・・当ブログを見てきた方なら、だいたい察していると思うんですが、これ、元は仁王門でした。つまり寺院の門だったのです。中には随神像の代わりに仁王像が置かれていました。神仏分離によって神道式に変わり、現在の形に落ち着いたのです。県指定有形文化財となります。



仁王門時代の痕跡なのか、随神門には山号額のようなものが懸かっています。こちらも文字は力強いし、装飾は厚いしとかなりの豪華さ。



門の先には大杉立ち並ぶ参道。あとはこちらを見つめる山犬。



遂に神社の前まで来ましたよ!もう汗でシャツはびしょびしょです。道のりは長かったですが、そこまでキツイ道のりではありませんでした。早朝から登って、到着したのは9時ころでしょうか?その頃にはもうこんなに混んでいたんです。なしてこったに人来てらんだば!



手水舎。あまりにもカラフル、且つ豪華です。使うのがもったいないですね。こちらも県指定有形文化財の指定を受けています。



手水舎の向いにあるこれは行燈?でしょうか?なにもここまで豪華にしなくても・・・。



そしてついに社殿に到着。・・・いやぁ、なんというか・・・。ここまでの装飾はここと日光東照宮くらいじゃないですか?どんだけ篤く信仰されたらこんな社殿が出来上がるんでしょうか。
豪奢な社殿の手前には、鳥居の他に老杉が一対屹立しています。鳥居の原型のような外観、良いですねぇ!文句なしに御神木でしょうねぇ。



御由緒です。
三峯神社

祭神:伊弉諾大神、伊弉冉大神

 三峯神社の由緒は古く、当山大縁起によると日本武尊が伊弉諾尊・伊弉册尊をお祀りしたのが始まりと伝わります。
 景行天皇の命により東国平定に遣わされた尊は、甲斐国(山梨)から上野国(群馬)を経て、碓氷峠に向われる途中三峯山に登り、山川が清く美しい様子をご覧になり、国をお生みになられた二神をおしのびになって仮宮を建てお祀りし、この国が永遠に平和であることを祈られました。この時、尊を道案内したのが狼(山犬)であったとされ、神様の使いとして一緒にお祀りされています。
 その後、景行天皇は日本武尊が平定した東国を巡幸された折に三峯山に登られ、三山高く美しく連らなることから「三峯の宮」の称号をたまわりました。

 降って文武天皇の時(697~707年)、修験の祖役小角が伊豆から三峯山に往来して修行したと伝えられています。この頃から当山に修験道が始まったものと思われます。
 淳和天皇の時(823~833年)には、勅命により弘法大師が十一面観音の像を刻み、社殿の脇に本堂を建て本地堂としました。
 こうして徐々に佛教色を増し、神前奉仕も僧侶によることが明治維新まで続きました。

 鎌倉期から畠山重忠などの東国武士を中心に篤い信仰をうけていましたが、正平7年(1352年)足利氏を討つ兵を挙げた新田義興・義宗等が、戦い敗れ当山に身を潜めたことから、社領を奪われ、山主も絶えて、衰えた時代が140年も続きました。
 文亀2年(1503年)、修験者 月観道満がこの荒廃を嘆き、27年という長い年月をかけて全国を行脚し、復興資金を募り社殿・堂宇の再建を果たしました。
 天文2年(1533年)山主龍榮が京都の聖護院へ参じ、「大権現」の称号をたまわって、坊門第一の霊山となりました。以来、 天台修験の関東総本山 となり観音院 高雲寺と称しました。更に、観音院第七世の山主が京都花山院宮家の養子となり、以後の山主は、十万石の格式をもって遇れました。現在社紋として用いている「菖蒲菱(あやめびし)」は花山院宮家の紋であります。
 やがて、享保5年(1720年)日光法印という僧によって、「お犬様」と呼ばれる御眷属(ごけんぞく)信仰が遠い地方まで広まりました。以来信者も全国に広まり、三峯山の名は全国に知られました。
 その後明治の神佛分離により寺院を廃して、三峯神社と号し現在に至っています。

中部の山地によく見られる役小角入峰の縁起を持ちます。祭神は伊弉諾大神・伊弉冉大神の2柱で、その本地仏とされたのが十一面観音。こちらは弘法大師御作の伝説があり、現在は三峯神社博物館にてご覧になれます。表面が錆で黒ずんでおり、相当の古仏といった印象を受けます。衣服・光背と冠だけが煌々と輝いており、不思議な存在感がありました。
一時戦渦によって荒廃しますが、後に天台宗の関東総本山となるなど、寺院としての格式も高かったようです(現在は東叡山 円頓止観院 寛永寺が関東総本山)。

参道脇にはまたしても山犬。シュッとしてかっこいい像でした。



拝殿の一部を見てみましょう。極彩色の塗りもすごいですが、木彫も見ごたえがありますよ。左・中央・右の蟇股には七福神が遊戯をしている木彫がなされており、縁起物といった感じ。奥の壁面には極楽鳥が並びます。



扁額は縁の部分の木彫が見事。菊の紋も捺されています。



本殿も見事な極彩色!紅葉も相まって最高の眺めです



社殿の隣には、摂末社の社がずらりと並んでいます。近い方から見ていきましょう。
こちらは 祖霊社 。三峯神社の縁者が祀られています。奥津城のようなものでしょうか。



その隣、 國常立神社 です。祭神は国常立神。木曽の御嶽山などかつて蔵王権現を祀っていた霊場において、神仏分離の際に仮の祭神に置かれることのある神格です。
拝殿・本殿に次いで装飾の素晴らしい社殿です。



その隣、他の社よりも一回り小さな社は 日本武神社 。祭神は言うまでもなく日本武尊。かつては役小角・前鬼・後鬼の尊像が収められていたそうで、修験と関りの深い社と言えます。尊像は現在、三峯神社博物館に展示されています。



ここからは小祠群です。左の大きなものから行きましょう(※祭神は神社名からの推測)。
  • 伊勢神宮:天照皇大神
  • 月読神社:月読大神
  • 猿田彦神社:猿田彦大神
  • 塞神社:猿田彦大神?
  • 鎮火神社:加具土命?
  • 厳島神社:市杵島姫神
  • 杵築神社:大国主神
  • 琴平神社:大物主神
  • 屋船神社:高龗神?
  • 稲荷神社:宇迦之御魂神
  • 淺間神社:木花咲耶姫神
  • 菅原神社:菅原道真公
  • 諏訪神社:建御名方神
  • 金鑚神社:天照皇大神、素戔嗚神
  • 安房神社:天太玉命
  • 御井神社:御井之神?
  • 祓戸神社:祓戸大神



突き当りにあるちょっと大きな赤い祠は東照宮。祭神は東照大権現(徳川家康公)。



春日神社、八幡神社、秩父神社の小祠を挟んで、また一回り大きな社があります。これは大山祇神社。祭神は大山祇神。山を住み家とする修験僧にとっても重要な神格だったでしょうね。



奥宮登拝のため、駐車場方面に抜けます。こちらには立派な三鳥居が建っておりました。大神神社などで見られる形式の鳥居です。



この辺にはおみやげ物屋なども立ち並び、一気に観光地感が増します。ここで登拝のための元気をチャージします。



駐車場からすぐの所に奥宮登拝の参道が伸びています。



ここから参道スタート。木の杖なども立て掛けられており、沢山の人々が足を運んでいることが分かります。入山届などもここで提出できます。



少し進んだところの鳥居は両部式です。ここから奥宮までなかなかの登りが続きます。



狭い斜面の道が終わる所に鳥居あり。奥宮最後の鳥居となります。



鎖場や急な岩道を乗り越えると奥宮に到着。石造りの小祠ではありますが、存在感はなかなか。何よりも登拝できた達成感でいっぱいです



側には石碑と共に、歴代の山犬たちが置かれていました。



斜めから。
秩父奥地に広がる山岳霊場、三峯神社でした。今では神社までの車道が整備されているため、わざわざ登拝することもないんですが、やはり山岳霊場は登拝してナンボという考えがあります。特に山犬の伝承がある山ともなれば、森厳な雰囲気を味わいつつ、伝承に思いを巡らせ、山路を踏みしめつつ神社に向かうのが一番エモーショナルな体験ができるんではないでしょうか。
かつてヤマトタケルが歩いたであろう道を遡りつつ、一之鳥居へと帰ります。途中、後ろに気配を感じて振り返ろうとすると、茨城の友人に山犬の話をされ止められました。送り狼という言葉の原義を思いだしつつ、足早に境内を去りました。



今回貰った御朱印です。



交通安全シール



有名なお犬様の御札



公式サイトへのリンクです。
・秩父 三峯神社

以上です。

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最終更新日  2026年03月15日 21時32分49秒
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